インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』   作:suzuki00

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【修学旅行・京都編】『柊家の長き夜:貴船・伏見の神風と、京の銘酒』

【修学旅行・京都編】『柊家の長き夜:貴船・伏見の神風と、京の銘酒』

1. 昼の部:新緑の貴船流しと、伏見稲荷の千本鳥居

京都での滞在先は、文政元年創業の老舗中の老舗旅館『柊家(ひいらぎや)』。 川端康成が愛したとされる数寄屋造りの静寂な佇まいは、一歩足を踏み入れるだけで、IS学園の喧騒もマフィアの緊迫感もすべてを忘れさせる圧倒的な格式を備えていた。

だが、その門をくぐる前の昼間、零士はやはり四人の嫁たちに振り回されることになる。 本日最初の目的地は、京都の奥座敷、新緑が眩しい「貴船(きぶね)」。

「涼しいな、零士。川床(かわどこ)から聞こえる水の音が、私の紅椿と響き合うようだ。……ほら、川の水で占う『水占いみくじ』をやってみたぞ。『大吉』だ。……『恋愛:一途に突き進めば叶う』とある。よし、今夜の夜襲の成功率は100%だな!」 箒が浴衣の袖を揺らしながら、嬉しそうに白銀のリングを嵌めた指でみくじを見せてくる。

「あら、箒さん。おみくじに頼るなど、武士らしからぬ信心ですわね。私など、貴船神社の縁結びの神様に、アルコット家の資産を全額賭けてでも零士との永遠の愛を誓ってまいりましたわ!」 セシリアが青い炎をほんのり灯したブルー・ティアーズのデバイスを弄びながら、京の冷涼な風に縦ロールをなびかせる。

「二人とも、せっかくの川床料理なんだから、落ち着いて食べようよ? はい、零士。京都の鮎の塩焼きだよ。骨は霧の炎で柔らかくしておいたから、そのまま食べられるよ?」 シャルロットが器用に箸を使い、極上の笑顔でおねだり(あーん)を仕掛ける。

「ふん。私は鮎よりも、あの流しそうめんというシステムに興味がある。流れてくるそうめんを増殖の炎でキャッチすれば、理論上無限に食えるはずだ!」 ラウラが真面目な顔で箸を構え、雲の炎をパチパチと輝かせていた。

「お前たち、神域で炎の出力を上げるな。あとラウラ、そうめんを増殖させるな、麺汁が薄まる」 零士が臨機応変にツッコミを入れつつ、一行は午後に「伏見稲荷大社」へと移動する。

どこまでも続く鮮烈な朱色の「千本鳥居」。 異界への入り口のようなその空間で、四人は零士の腕を巡ってさらにヒートアップした。 「シャル、霧の炎で鳥居の数を増やすな! 迷子になるだろ!」「セシリア、雨の炎で階段の摩擦係数を下げるな! 滑る!」「箒、雪の炎で境内を涼しくしてくれるのはありがたいが、少し冷えすぎだ!」

鳥居の遥か後方では、鈴に「ほら一夏、千本鳥居の前で写真撮るわよ!」と手を引っ張られている一夏が、 「……あはは。やっぱり京都の神様も、白崎先生のあのカリスマ(ハーレム)には敵わないみたいだな……」 と、きつね煎餅を齧りながら遠い目をしていた。

2. 夜の部:柊家の格式と、京の銘酒『澤屋まつもと』

夜。すべての強行軍を終え、一行は『柊家』へとチェックインした。 伝統的な木造建築、磨き上げられた廊下、美しい中庭。その格式の高さに、流石の四人も「……流石に、ここでは粗相はできないな(箒)」「ええ、英国の王宮とはまた違う重厚さですわ(セシリア)」と圧倒され、大人しく部屋で眠りについた。もちろん、零士が部屋の周囲に「雪の炎による完全な遮音・気配遮断の結界」を張り巡らせたことも大きい。

最上階の特別室。格子窓から京都の静謐な夜空と、遠くに見える東山のシルエットが一望できる縁側。 そこには、今夜も艶やかな浴衣姿の織斑千冬が、どっしりと胡坐をかいて座っていた。

「……待たせたな、白崎。柊家の宿守(おかみ)から、最高の京の酒を預かったぞ」 千冬が机の上に置いたのは、京都・伏見の歴史ある銘酒『澤屋まつもと 守破離(しゅはり)』の一升瓶だった。

「お疲れ様です、千冬先生。貴船と伏見稲荷の階段で、流石に脚にきました」 零士が講師用の緊張感を解き、浴衣の襟を少し緩めて千冬の対面に座る。

トトト……と、柊家の美しいお猪口に透明な酒が注がれる。 一口含むと、微発泡の爽やかな酸味と、上品な米の旨味が口いっぱいに広がった。

「うむ、美味いな……。『守破離』か。伝統を『守』り、それを『破』り、新たなる境地へ『離』れる……。まさに、ISと死ぬ気の炎を融合させようとしている貴様の嫁どもにふさわしい名じゃないか」 千冬がお猪口をクイと干し、ふぅ、と白い息を吐く。

「……ええ。昼間、伏見稲荷の千本鳥居の中で、四人が真剣に『ボンゴレの守護者としての役割』について議論していました。セシリアは雨の炎で戦場を鎮静させ、ラウラは雲の炎で戦力を増殖させる。彼女たちはもう、IS学園の生徒という枠を『破り』始めています」

「そうだな」 千冬は静かに笑い、二杯目の酒を注いだ。 「寂しくもあるがな。私が手塩にかけて育てた世界各国の代表候補生たちが、一人の非常勤講師(マフィアのボス)の手によって、完全に『大人の女』の顔になり、世界の裏側へと羽ばたこうとしている」

その時、部屋の隅の畳の上から、「ふにゃぁ……」という気の抜けた声が聞こえた。 見ると、山田真耶先生が、柊家のふかふかの座布団を枕代わりにし、完全に横たわって爆睡していた。手には京都の梅酒のグラス(すでに空っぽ)が握られており、眼鏡が完全に横にズレている。

「……山田先生、今夜も一瞬でしたね。貴船の階段が相当堪えたと見えます」 「放っておけ。昼間、貴様らの警護と同時に、他の一般生徒たちが京の街で羽目を外さないよう、あいつはあいつで四方八方に目を配っていたからな。……よくやった、と褒めて寝かせてやれ」 千冬は優しく山田先生に布団をかけ直してやると、再び零士と視線を合わせた。

「白崎。……私は、お前が羨ましいよ」 千冬が、少しだけ酒の入ったトロンとした瞳で、いたずらっぽく微笑む。 「世界最強のIS操縦者と言われた私ですら、世界の『表』のルールの中でしか生きられなかった。だが、貴様は『裏』の絶対聖域を持ちながら、この『表』の美しい京都の夜を、こうして私と楽しむ余裕を持っている。……大した男だ」

「千冬姐さん、それは買い被りです。俺はただ、あいつらが卒業するその日まで、この日本の平和な空気を一緒に吸っていたいだけですよ」 零士がお猪口を差し出すと、千冬の持つお猪口とチリン、と心地よい音を立てて重なった。

格子窓の向こう、京都の古い街並みに静かに夜風が吹き抜ける。 階下では、四人の嫁たちが「むにゃ……零士……」「ずるいですわ……」「私の特等席……」「うむ、突撃……」と、幸せそうな寝言を言いながら雑魚寝している。

その温かい気配を感じながら、表の最強の女と、裏の白銀の講師は、柊家の格式高い静寂の中で、夜が明けるまで静かに京の銘酒を酌み交わし続けるのだった。

 

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