とある国のとある森の中、木漏れ日の広場にポツンと一軒家が建っていた。
その家の出入り口付近には看板らしき物体が設置してある。
看板には『よろず屋《じゅげむ》』と書かれているようだ。
どうやらただの住居ではなく、何かしらの店舗らしい。
その店を茂みから覗く三人の男女がいた。
軽鎧に身に着け片手剣を腰に下げた、爽やかイケメン風の男。
槍と大盾に全身鎧を身に着けた大柄な男。
宝玉のついた杖を持ち、地味な色合いのローブを身に着けた女は魔術師だ。
「本当にあった…」
「あそこで間違いないのか?」
「そのはずよ。目撃情報と一致してるし、あの『ジュゲム』という単語がヤポン国のかな文字で書かれてて…きっとあそこにいるのね、生きる伝説が…」
僅かな緊張と興奮に声を震わせるローブ姿の女、陶酔したような顔をする彼女を見た男たちはヤレヤレと首を振った。
彼らは新進気鋭の冒険者パーティ『テスイカツ』のメンバーだ。
他にもあと二人、ここからやや離れた位置に弓兵と盗賊のスキルを持つ仲間を待機させているが、彼らの詳細は面倒なので割愛させて頂く。
「あそこにお宝が山ほどあるんだよな!燃えて来たぁ」
「バカ!声がでけぇよ」
よろず屋《じゅげむ》
世界中の様々な場所に不定期に出現しては消える、神出鬼没な店屋。
『幻の店』などと言われている癖に、実際に買い物をして来たと証言する者が割といるので実在はしている。
噂によると店内で販売されている物はその時々で品揃えが変わり統一感がまるでないという。
一般に広く流通している日用品から、万病に効くという謎の回復薬、最新式のマキナに神話級のレアアイテムまでも普通に陳列されていたのだとか。
先日も酒場でドワーフの一団が、運よく入店できた話を自慢げに語っていた。
『幻の火酒が格安で手に入ってよぉ。接客も丁寧で最高だったぜ』
『持ち合わせが無いと言ったら、物々交換にも応じてくれてな。本当に優しい御方だよ』
『オラ、思わず拝んじまっただ。あんな別嬪さんもう一生会えねぇ自信があるべ』
『本来なら地上におられる方々ではなかろうに、訳アリなのかねえ?』
『阿呆!余計な詮索はするな。天罰がくだるぞ』
『お、おっかねぇ…くわばらくわばら』
ドワーフたちは店の様子を面白おかしく語りながらも、何かを恐れているようだった。
その理由については心当たりがある。
あの店を経営しているのは普通の人間ではなく"魔女"と呼ばれる存在だからだ。
「わかっていると思うが、俺たちの狙いは魔女だ」
「おいおい!お宝はどうするんだよ?」
「お前は本当にバカだな。どんな金目の物よりも魔女ひとりの方が価値があるんだよ」
この世界において魔女とは、単に魔法を使う女性を指す言葉ではない。
人知を超えた奇跡をいとも簡単に行使することのできる、極々限られた一握りの逸脱者に付けられる称号。
それが魔女である。
彼女たちの力を恐れつつも、その力を利用しようとする者は後を絶たない。
大小様々な組織から膨大な額の懸賞金をかけられ、例え死体であっても欲しいと言う声がひっきりなしに上がる始末。
それほどまでに魔女とは価値ある存在なのだ。
冒険者たちにとって、魔女の捕獲ないし討伐というのは誰もが一度は夢見る、最大級のチャンスになる。
今回『テスイカツ』のメンバーはその魔女狩りに挑戦する腹積もりだ。
「一獲千金どころの話じゃない。一生遊んで暮らせる上に、俺たちは歴史に名を刻むのさ」
「そりゃあすげぇな!で、お宝は?」
「魔女を捕らえた後は好きにしろ。俺としては、魔女本人に興味があるがね」
「すげぇ美人だって話だったな。へへ、そっちの方も期待できそうだな」
「……はぁ…男ってサイテー」
下卑た笑みを浮かべる男たちを尻目に、女魔術師はため息をついた。
「全員、例の物は持ってるな?」
「おうよ。万事抜かりなくだぜ」
「これ高いんだからね。無駄にするんじゃないわよ」
鎧の男が銀色の輪っかを見せつけるように取り出す。
この輪は『魔術師殺し』と言われる物で、装着した者の魔力制御を混乱させる効果がある。
名前の通り、対魔術師用の切り札となるアイテムだ。
本来は魔法を使う魔獣や奴隷用に開発され一般には流通していないはずだが、金さえ積めば闇市などで簡単に手に入る。
その『魔術師殺し』をメンバーの全員がそれぞれ1つづつ所持していた。
これで魔女の魔法を完全に封じ込めようという算段なのだ。
魔法さえ封じてしまえば魔女は無力化できる。
そのことを魔術師である女も、仲間の男たちもよく理解していた。
「まずは魔女に接近する。愛想よく友好的に話しかけろ」
「そんで油断したところに、この輪っかを嵌めちまえばこっちのもんだ」
「いい?魔法を撃たれたら即刻終わりよ。一応、魔力障壁の準備はするけど当てにしないで」
「ドラゴンのブレスも弾いた、お前の腕を信じるさ」
「フフ、報酬には色をつけて欲しいわね」
魔女の魔法は強力無比だと聞く。
それが本当なら、三人まとめて即死してもおかしくない。
しかし、死というリスクを負ってでも『魔女狩り』の成功報酬は美味しすぎる。
冒険者たちは富と名声、そして絶世の美女だといわれる魔女を屈服させたいという支配欲に取りつかれる。
そんなものに目が眩んだ時点で、彼らの命運は定まっていた。
●
周囲を警戒しながら店に近づく。
客は小一時間前にリザードマンらしき男が退店して以来見ていない。
店内には今、魔女がひとりで店番をしているはずだ。
何か異常があれば、残して来た二人の仲間たちが知らせてくれる手筈になっている。
『テスイカツ』の三名は何事もなく店の出入り口にたどり着いた。
〖どんな種族の方も大歓迎、仲良くお買い物をお楽しみください〗
〖貨幣をお持ちでない方、そもそも金銭という概念が無い方もご相談ください。可能な限り物々交換に応じる所存です〗
〖他のお客様のご迷惑となる行為や、スタッフの指示に従っていただけない場合は、ご退店をお願いすることがございます〗
〖その際は実力行使をさせていただきますので、命の保証は出来かねます〗
看板の隣には掲示板のような物があり、入店時のマナーや脅しのような注意事項が羅列されていた。
「なんか物騒なことが書いてあるぞ?」
「さすがに警戒しているのかもな。おい」
「わかってる……うん、特に罠があるようには見えないわね」
女魔術師の手がほのかな光を放つ。
魔力によるサーチで出入口ドアに罠がないかを調べたのだ。
手際の良さから、彼らがそこそこの修羅場を潜って来た猛者だとわかる。
だからこそ、魔女狩りなどという大それた行いをしているのだが・・・
仕掛けがないと判断したリーダー格の男がドアノブに手をかける。
全員がもう一度段取りを反芻して呼吸を整える。
妙な緊張感が漂う中、ゴクリと誰かが唾を呑む音がした。
「いくぞ…」
抵抗なくドアが開いていく。
来客を告げるドアベルがカランカランと音を立てた。
温かな魔力灯に照らされた店内は明るい。
そして、思った以上に広い!?
外観から推測した2倍以上のスペースが眼前に広がっていた。
空間を拡張するなどという高度な魔術が存在しているというのも、あながち眉唾ではなかったのだろう。
「おお、これが…」
「わっ、ちょっとこれ魔晶石じゃない!なんでこんな高純度の物が…」
店内は用途が明瞭なものと不明瞭な物品で溢れかえっていた。
棚の上に綺麗に陳列されているかと思えば、床の上に無造作に置かれている物も多数見受けられる。
武器や防具に薬品の入った小瓶、魔獣からはぎ取った爪や牙らしき素材、植物の鉢植え等々。
人族ではない角のある髑髏にモヒカンのカツラが被せてあるのも意味がわからない。
仄かに漂う甘い香りは魔女の扱う薬品やハーブだろうか?
この店は居心地がいいのだろう。
軽く見て回るだけでも楽しそうだ。
子供の頃に自作した秘密基地的なワクワクを感じてしまう。
郷愁に浸りそうになる己を制して、三人は気を引き締める。
自分たちは買い物をしに来たのではない。
ここの主人である魔女を手に入れるために来たのだ。
店の一番奥、カウンター内にその人物はいた。
彼女は自分たちが入店してからずっと、こちらを見ていたのだ。
目が合ったと思った瞬間、その女はペコリと会釈してはパタパタと小走りで駆け寄って来た。
「いらっしゃいませ、お客様。よろず屋《じゅげむ》へようこそ~」
「お、おう////」
「あっはい。どうも////」
「アンタら何赤くなってるのよ?」
それは銀髪の非常に見目麗しい少女だった。
大海を思わせる青い瞳で見つめられると、何やらむず痒い衝動が湧き上がって来る。
エプロンを付けた少女はニコニコ顔で三人を出迎えた。
「何か商品をお探しですか?それとも、護衛やダンジョン攻略のご依頼でしょうか?」
「い、いや、俺たちは」
「すみません。依頼の方は少々お待ちいただけますでしょうか?あの子たち、もうすぐ帰って来ると思うので、お話はそれから…」
こちらを完全に客だと思っているのか、少女は笑顔のまま接客を続ける。
しどろもどろな男たちに代わり、女魔術師が口を開いた。
「あなたがここの店長?」
「その通りです。私がこの店を切り盛りして…いや、でも最近はあの子たちが張り切りってるから私は店番ばっかりで退屈…私だって、ダンジョン行きたいのに、魔獣ぶっ飛ばしたいのにー!」
店長が何やら地団駄を踏み始めた。
その姿が愛らしく、男たちはホッコリした。
「店長、あなたが【夢幻の魔女】なのね?」
「むげん?……ああ、そういうのは周りが勝手に言ってるだけなのでお気になさらず。私は人畜無害な店長であり二児の母でもあります」
「二児!?」
「アンタ子供がいるのか!?」
「はい。こう見えても、立派なお母さんなのです」
エッヘンと胸を張る少女店長。
どう甘く見積もっても十代中頃にしか見えない。
多種多様な種族が住まうこの世界、外見が若く見えても年齢は数百歳とかいう長命種もいるにはいる。
そう頭では分かっていても、実物を見てしまうとやはり驚きが勝った。
男たちが動揺している間に、女魔術師は銀の輪を店長の腕に装着した。
自然な動作で、何事もなかったかのように、それは実行された。
サイズの合わないはずの輪は店長の右腕にかかると、その大きさを彼女の腕にピッタリ合うよう縮んでみせた。
そういう魔法の道具なのである。
「ん?えっと…お客様?」
「何ボケっとしてんの、サッサと『魔術師殺し』嵌めるのよ!」
「おっと、そうっだった」
「悪いな店長、いや魔女だったな」
「え、ちょ、お客様!これは一体何事ですかぁ~」
店長改め、魔女の両腕と首に『魔術師殺し』が装着された。
銀の輪ひとつでも、高位魔術師をただの人に貶める品が三つも着けられたのだ。
これでもう、この魔女は魔法を行使できないだろう。
何が起こったのかわからず、アタフタしている魔女。
あっけなくミッションコンプリートしてしまった三人は苦笑した。
「まさかこんな簡単に行くとは、拍子抜けだぜ」
「魔女が強いってのもハッタリなのかもな。よっしゃ、この辺の物はいただいて行くぜ」
「あー!ちょっとやめて、やめてください!泥棒さんは死刑ですよ!」
「アンタは商品より自分の身を心配したら?」
「いやぁぁ!店番も出来ないママになりたくないぃぃ!」
鎧の男が持参した袋へと乱雑に商品を詰め込む。
魔術師の女も貴金属や宝石類を手あたり次第懐に収め始めた。
リーダー格の男は『やめて~』と涙ながらに訴える魔女をニヤついた顔で拘束していた。
やっている事は完全に強盗である。
店の入り口に書いてあった注意書きなど、三人組は完全に忘れていた。
●
一通りの物色を終えた強盗たちは満足そうに顔をほころばせる。
上手く行き過ぎて怖いぐらいだが、人生こういう事もあるのだと勝手に納得した。
意気消沈した魔女は『ひどい~』シクシク泣いている。
「うぅ…私に何の恨みがあるんですか?」
「別にアンタ個人に恨みはないよ」
「強いて言えば、魔女だったのが悪い」
「こいういのなんて言うんだったか、カモネギ?まあ、運がなかったと思って諦めな」
ゲラゲラと笑う強盗たち、それを見た魔女は三人をキッと睨みつけた。
「そんなに、死にたいんですか?」
「はぁ?急に何を言ってんだコイツ」
「魔法で俺たちを殺すってか?やってみろよ、できるもんならなw」
またしても嘲笑される。
精一杯虚勢を張っている魔女の姿が可笑しくて堪らないといった感じだ。
魔女は諦めたようにため息をついた。
「いつの世もバカに付ける薬はないか…」
そんな魔女の呟きを三人は聞き逃した。
三人組の頭にはこれからの輝かしい未来しか頭になかったのだ。
「なあ、コイツはどうする?今ここでやっちまうか?」
「勘弁してよ。そういうのは宿に帰ってからにしてよね」
「そうだな、外の二人と合流して、お楽しみはその後に考えようぜ」
「……クズめ」
「あん?なんか言ったか?」
「別に、楽しそうだな~と思って」
拘束した魔女の背を押しながら出入口へ向かう、ここを出たら残して来た仲間と合流、街にもどって今夜は宴会だなと考えを巡らせる。
ドアを開ければすぐ外に出られるというところで、魔女の足が止まった。
「最初で最後の忠告です」
「おい、止まるな」
「盗んだ物を元に戻して、散らかした所を掃除して、この輪っかも外して出て行きなさい」
「気でも触れたか?」
「今なら間に合います。命だけは取らないよう、私からも提案してみるので」
「ははっ!魔女様がお怒りだ。怖い怖いww」
魔女の戯言に耳を貸さない連中はドアを開けて外に出た。
眩しい太陽が自分たちを照らす。
さあ凱旋だ。魔女を捕らえた英雄として『テスイカツ』の名前は国内外に轟くことだろう。
勝った、俺たちは人生最大の勝負に勝ったのだ。
魔女の伝説など所詮はハッタリだった。
蓋を開けてみれば、警戒心など皆無の少女がいるだけで何の危険もない。
魔法さえ使わせなければ、こっちのものである。
さあ、これから忙しくなるぞ。
ギルドへの報告は後回しでいい、今夜は酒場を貸し切りにしてやろう、たらふく飲んで食って後は宿に戻ってお楽しみだ。
この魔女がどんな声で鳴くのか楽しみで仕方がない。抱き心地を想像しただけで、今にも欲望が弾けそうだ。
ああ、これからはこんな贅沢で優雅な毎日が・・・
「死体…片付けるの嫌なんだよなあ」
魔女が何かを呟いた。
それとほぼ同時に上空から光の柱が降って来た。
ジュ・・・
「は?…へ?」
魔女を後ろ手に拘束していた男は間の抜けた声を発した。
今起こった事が理解できない。
いや、そうではない、理解したくないのだ。
何かが倒れる。
それは上半身を失った鎧の男の足だ。
何かが地面に落ちた。
それは持ち主の体を丸ごと失った魔術師の杖だった。
一瞬のうちに鎧の男と女魔術師は絶命していた。
光の柱は彼と彼女の体を蒸発させて死に至らしめたのだ。
光の正体は濃密な魔力で構成された破壊光線、いわゆるビームというヤツなのだが、それに気付くだけの余裕が男にはなかった。
「な、な、なに、何が、なんで?なんだ、なんだよコレは…」
仲間を失った男はガタガタと身を震わせた。
この異常事態に対して、微塵も動揺していない魔女が今更ながら恐ろしくなったのだ。
その時、上から鈴を転がすような声がした。
「下手くそだね~。足残ってるじゃんww」
「残したんですよ。あの位置だと母さんに当たってしまいます」
「私なら10キロ先からでもママに当てたりしないよ?照準も頭も狂ってるんだねw」
「凄いですね尊敬します。ムカつくから地獄へ落ちろ」
空に何かいる。
翼の持った人型が二体・・・アレは何だ?
アレが二人を殺したのか?
何であれ普通じゃない、アレは常識外の化物だと冒険者の男は悟った。
「二人ともお帰り~」
魔女が両手を広げ、空の何者かに声をかける。
ついさっき人が死んだことなど、まるで意に介していない。
そのことが、男の恐怖を更に煽った。
上空にいた何者かはふわりと魔女の前に着地する。
空から地上まで風切り音すらさせない高速移動。
男の目には着地の瞬間しかわからなかった。
「ただいま、ママ!」
「ただいま帰りました、母さん」
「お帰り。ダンジョン攻略のお仕事はどうだった?」
「それがさぁ、聞いてよ。90階層のボスがもうクソ雑魚で」
「面倒だからと階層をぶち抜いたバカが一番厄介でした」
「なんでチクるの!?それ内緒にしてって言ったじゃん!」
「母さん、バカから離れて下さい。バカ菌がうつったら大変です」
「そんな菌持っとらん!」
「あははは、楽しかったみたいだね」
魔女に抱き着いてケンカを始める二体の化物。
魔女はそんな化物たちを優しく抱きしめて、その髪を愛おしそうに撫でていた。
微笑ましい光景のはずなのに、震えが止まらない。
母?母だと?この化物たちは魔女の子供なのか?
これはダメだ、これはダメだろ。
こんなのが、こんなモノが、存在していることが恐ろしくて堪らない。
化物は魔女にも劣らない美しい容姿をしていた。
まさしく人外の美貌、なんと美しいことか、なんと恐ろしいことか。
そして翼だ、翼がある!
化物たちの背には純白の翼が生えている。
アレは鳥人のそれとは似て非なるモノ、圧倒的な力の具現であり象徴だ。
純白の翼を持つ化物たちが何かを、男は知っていた。
竜種と並ぶ、この世界の絶滅危惧種にして、最も強く最も恐ろしい最上級種族。
即ちそれは・・・
「て、て、天使ぃぃ!!」
『天使を敵に回す事は一国と戦争するのと同義』
西の大国、ムール帝国の初代皇帝の発言は子々孫々に今もなお語り継がれている。
自分は皇帝すら恐れた禁忌を侵したのだと、男はようやく理解した。
ガチガチと歯を鳴らしながら言葉を吐いた男に天使たちは視線を向けた。
それは母親に向けるものとは真逆の絶対零度の視線。
「何見てんの?殺すよ?」
「母さんに無礼を働いたようです。万死に値する」
完全にゴミを見る目だった。
「二人とも待って、処分するのは情報を聞き出してから、ね?」
「わかってるよ。他にも仲間がいたら面倒だもん」
「手早く終わらせましょう。お店の片づけもしないといけません」
「二人ともいい子だなあ。嬉しくてママ泣いちゃう」
自分の運命を理解した男は必死に後退ろうとするが、腰が抜けてしまい立ち上がる事すらできない。
「ああ、あああ、ああああああああああああ!」
悲鳴にすらなっていない声を上げ無様に泣き叫ぶことだけが、男に許された最後の抵抗だった。
その後、冒険者パーティ『テスイカツ』の姿を見た者はいない・・・
●
店の近辺に隠れていた強盗の一味は子供たちが排除してくれた。
いやはや、持つべきものは優秀で可愛い子供だよね。
強盗に遭うのは久しぶりだったけど、ああいう連中は定期的に湧くので粛々と対処するのに限る。
一応、ギルドには『迷惑な輩を寄越すな』と警告しておこう。
これ以上面倒事が増えても嫌だしね。
え?殺さずに警察機関に引き渡せば良かったって?
おいおい、強盗に誘拐までした罪はとっても重いんだぞ。
国の法律で裁いても極刑は免れない重罪だ。
つまり、私たちは国が税金使って死刑執行する手間を省いてやったのだ。
本当は手間賃を払って欲しかったけど、私たち仲良し家族は善良なのでボランティア活動にも積極的だ。
子供たちの情操教育にもなるから、こういうのも偶にはいいだろう。
「母さん、店の片付け終わりました」
「ありがとう。お、前よりきれいになってる。さすがだね」
「ママ、私も頑張ったよ。褒めて~」
「よしよし。髑髏ゾーンが増えてるけど、これはこれでアリだ」
お片付けを手伝ってくれた子供たちを労う。
うちの子たち、死体のお片付けも得意だから頼もしい。
「ちょっと早いけどご飯にして、今日は早めに寝よう。朝にはここを出発して場所を変えるよ」
「やった!引越しだ。今度は海が見える所がいいなあ」
「母さんが望むなら何処へでもついて行きます」
さて、次は何処へ行こうか?
愛しい我が子とのかけがえのない日常は続いて行く。
これは名実共に天使な子供たちと、二人の母親である私のハートフルストーリーだ。
あ!言い忘れていたけど自分、元男です。
あの頃はまさか、二児の母になるとは想像すらしなかったなあ。