女体化して母親になったよ!天使な子供たちとファンタジー世界で幸せになります 作:きさまち
【神器】同士の衝突は周囲一帯に大崩壊を引き起こした。
轟音と閃光が巻き起こす破壊の奔流により、空は裂け地は抉られ、あらゆる命は否定された。
双子の天使たちはそれぞれが放った渾身の一撃を受け、光の中へ消えて行った。
その後、彼女らの姿を見た者は誰もいなかった・・・
━完━
ちょっと待って!?勝手に終わるな!
「まだだ!まだ終わってないよ…」
確かに死ぬかと思ったが、まだ生きてるってば!
天使の生命力なめないでよね。
双子天使の妹、ルシフェルトは生きていた。
全身ズタボロになりながらも、何とか翼を広げフラフラと頼りない飛行を辛うじて続けている。
姉が放った神器による斬撃は私の切り札である巨大魔力塊(黒太陽)を切り裂きいたばかりか、その刃は私の体を深く傷つけた。
今でこそ大分回復しているが、上半身が斜めにズレて臓物が出そうになった時は本当に焦った!マジで死にかけたよ!
まあ、姉の方も魔力塊の全てを断ち切れたわけではなく、圧倒的質量と破壊の力に押し潰されたはずだ。
かなりのダメージを与えてやった自負がある。
私がこうして生きているのだから、向こうも生存していると思った方がいい。
でも、これで時間が稼げた。
「これで…私が一番乗りだね…へへ」
姉よりも先に母に会いたい。
たったそれだけの気持ちでここまでやったのだ、少しは報われて欲しい。
母に対面したらなんて言おう?どんな反応をするのだろう?
ああ…早く会いたいよ、ママ…
「あ、ヤバい…ダメ…落ち…る」
母のことを考えて気が緩んだ。
治療に力を割き、ヘロヘロだった体が遂に限界を迎える。
翼を維持できなくなり急激に高度が落ち始める。
落下の衝撃を残された僅かな魔力で抑えるのが精一杯だ。
そうして私は無様に地面へと不時着した。
ズザザザザァーー!という音と共に体の各所を痛みが襲う。
「いたた…はぁ…参ったなぁ」
魔力を消費し過ぎた私の背から翼が消失する。
天使の翼は背中から直に生えているわけでなく、本人の魔力が形になったものだったりする。
下界で暮らす天使には種族を偽るため翼を出さないようにしている者もいる聞くが…
翼を出したくても出せない状況は、私が相当弱っている証拠だ。
今モンスターに襲われたら一溜まりもない。
なんだか地面が冷たい?
さっきから気になっていたけど、この白いのは何だ?天界では見たことないぞ。
地面の上に積もった白いのヤツのおかげで落下の衝撃が多少緩和されたようだ。
前に姉が読んでいた本に下界の天候に関するものがあったはずだ。
それによるとこれは…
「確か雪だっけ…初めて見た」
うつ伏せだった私はゴロンと仰向けに寝転がる。
空を見上げると曇り空からチラホラと雪が舞っていた。
雪は寒い所で見られる気象現象だったはず。
自分の吐く息が白いことに今になってようやく気付く。
いつの間にか私は下界でも気温の低い場所までやって来ていたようだ。
雪…綺麗だね…それに凄く静か…
ママと一緒に見たら、きっともっとキレイ…
疲労がピークに達していた私はそのまま意識を失ってしまった。
●
誰かの気配を感じて重い瞼を開ける。
私…どのくらい眠って…げっ!?
「……」
「あは…ははは…やっぱり生きてた」
視界に映ったのは最も会いたくない人物。
姉のミカエリアスが無言でこちらを見下ろしていた。
その冷たい瞳を見て、何故だか安心してしまった。
姉の状態は私と同等かそれ以上に酷く、衣服はズタボロで治療の間に合ってない傷が多数、翼も原型を留めておらず今にも消えてしまそうなほど小さく儚い。
彼女の手には残り少ない魔力で生成した戦斧が握られている。
今それを振り下ろされたら、間違いなく私は死ぬ。
やれやれ、万策尽きたか…
でも仕方ないよね。
勝負に敗けた私が悪いんだから。
「最後にひとつだけ、ワガママいいかな?」
「……」
「ママに会ったら伝えて『大好きだよ』って私の分まで…」
「……」
「ねえ?もうこれで最後なのに無視は酷くない?」
「………チッ」
舌打ちされた!?
そんなにも私が嫌いなの?
思い当たる節は……うん、あり過ぎるなww
せめて痛くないように一思いにやってくれないかなあ。
なんて思っていると、胸倉を掴まれて無理やり引き起こされた。
「あなたの頼みなど聞いてあげません。母さんには自分の口で伝えなさい」
「ほぇ?」
状況が理解できず、間の抜けた声を上げる私に姉は肩を貸して歩くように促して来た。
「なんで?怒ってないの?」
「これ以上ないぐらい怒ってますよ」
「だったら…」
なぜ私の体を支える?
自分だってもう疲労困憊の癖にどうして?
「私は、自分が思っていた以上に聖人君子だったみたいです」
急に自画自賛されても困るんだけど?
「だから、妹がどんなにクズでゲスで人の心がないドブカス天使でも…」
言い過ぎじゃね?
そっちこそ人の心とかないんか?
「見捨てることが出来ないんですよ。一応、姉…ですからね」
そっぽを向きながら姉は呟いた。
珍しく照れているのが伝わって来る。
何だよそれ、バカじゃないの?
本当にバカ!
そんなんだから、もっとバカな妹が付け上がるんだよ。
「姉って面倒なんだねw私は妹でよかったかも」
「そうですよ。厄介な誰かさんのおかげで、面倒なこと極まりないんですから」
姉に肩を借りながら雪道を歩く。
ひとりじゃないというのは、いいものだと思った。
「お姉ちゃん」
「なんですか?」
「ありがとう……それと、抜け駆けしようとして…ごめん」
「あなたの口からお礼と謝罪が同時に!?今日は雪が降りますよ」
「もう降ってるよw」
素直に謝ったんだか茶化さないでほしいな!
「今回の凶行に及んだ気持ちはわかります。私だって母さんを独り占めしたいって思ってますから」
そっかぁ…姉も同じことを考えていたんだ。
やっぱり双子なんだなぁ。
そして結局私たちはママを巡って争う運命なんだね。
勝負は次回に持ち越しだ。
「今後の母さん争奪戦は、なるべく平和的にいきましょう。いちいち神器を撃ち合っていたら下界が人の住めない環境になる恐れがあります」
そうなったら私たち殺されるんじゃないの?
あれだ、世界がピンチのときは勇者とかいう英雄が発生するって聞いた気がする。
「双子の魔王として歴史に刻まれたくないですね。母さんのためにも回避しましょう」
「異議なーし」
いっぱいケンカして、ほんのちょっとだけ姉妹の絆は深まった。
何だかんだ言って、二人は両親の善性をしっかりと受け継いだ娘たちなのである。
●
「方向合ってます?」
「うん。こっちで間違いないよ」
互いの体を支えながら双子天使は歩みを進めた。
妹、ルシフェルトの手には母の居場所を指す魔道具『愛の羅針盤』がある。
「羅針盤の針が激しく荒ぶってるよ」
「母さんが近くにいる証拠ですね。心の準備はいいですか?」
「う…緊張して来た。大丈夫かな?私たち服ボロボロなんだけど?」
「天界で流行中のファッションだということにしましょう」
「いや、さすがに無理があるよw」
姉、ミカエリアスは真面目な癖に唐突に珍妙な発言をすることがある。
それが今は緊張を解す手助けをしてくれた。
服の件は、結界層を抜けた弊害だとでも言ってやり過そうと思う。
羅針盤を頼りに、更に歩みを進める。
魔力が枯渇し疲労が蓄積した体での雪上歩行は正直かなり堪える。
それでも二人は足を止めない。
もうすぐ待ち望んだ人に会えるのだ。
立ち止まってなどいられない。
・・・・・・・・・
「こんな人里離れた場所にに家ですか?」
「なんだか妙に気になる」
シンシンと雪が降り積もる森の中、前方にポツンと一軒家が現れた。
すごく怪しい家だが、確かに気になる。
「ママがいるかもしれない、行ってみよう」
「それしかありませんか」
二人は期待を込めて前進を続ける。
もし母がいなくても、少し休ませてくれるよう交渉してみよう。
住民が子供に優しい人であればいいが…
「ルー、怖くありませんか?」
「ん?大丈夫だよ。家の中からモンスターが出てもミカを囮にして逃げるから」
「早速クズですね。いや、そうではなくて…」
何かを言いよどむ姉、そんな姉の気持ちを妹は察した。
「ミカは、ママに会うのが怖いの?」
「どう…なのでしょう。自分でもよくわからないのですが、ここに来て不安が強くなってきました」
「不安ねぇ…胸のモヤモヤは今の内に吐いちゃった方がいいよ」
妹に促され姉は心情を吐露する。
「母さんが、私たちを拒絶しないか不安です」
天界で暮らしていたとき、母のことを侮辱する奴らは結構いた。
そういう輩には叔父もブチギレて制裁を加えていたが、叔父が気付く前に双子が直接わからせてやった連中も多いのだ。
奴らの発言の大半は戯言だと聞き流したが、ヘドロのように今も胸中へとこびりついたモノもある。
『母親は羽無しの劣等種だって』
『弱い人間だろ?天使の力を恐れて逃げたんだよ』
『可哀想に、お前たちは捨てられたのだ』
捨てられた?私たち母親に怖がられて…
「そんなことないよ!ガブおじも言ってたじゃん。ママは私たちのこと、すっごく愛してくれたって!」
「わかってます。わかってますけど…15年ですよ?人間の15年はとても長い、顔も見せなかった私たちを、母さんは今も思ってくれているでしょうか…」
「それは、だって…卵だったんだから」
十年以上の時というのは人間にとって決して短くない時間だ。
その間に心変わりをしてしまうことだってあり得る。
それに種族差というのは、埋めようのない溝があると知っている。
異種族同士で結婚した夫婦が、我が子の力に恐れおののき離婚したという話は少なくないのだ。
力ある天使として生まれてしまった自分たちは、人間の母親から忌避されるかもしれない。
少し前に神器をぶっ放したばかりだし、アレを見たら母は…
私たちを化物だと思うのではないのか?
「ネガティブになったらダメだよ。ママを信じなきゃ」
「ルー、あなたは能天気で強い子ですね。見習いたい…」
「もう!しっかりしてよお姉ちゃん!シャキッとせんかー!」
「いだっ!や、やめてください。頭突きやめて」
なぜか頭突きという攻撃方法を選択した妹から怒られる。
「大丈夫。もしミカがママに嫌われても、私が慰めてあげるってば」
「なんで私だけ嫌われる展開になっているんですかねぇ?」
二人ともまとめて嫌われた場合はどうするんだ?
「その時は…二人で傷を舐め合う?」
「ゾッとしないですね!でも、まあ、ルーがそこまで言うなら覚悟を決めますか」
「そうそう、まずはとにかく会ってみよう。最悪の結果になっても、ママがちゃんと生きていることがわかっただけでも、下界に来てよかったと思わなきゃ」
「ふふ…あなたにしては良い事を言う」
この妹、バカではあるが、頭の回転は決して悪くない。
認めたくはないが、たぶん私より地頭は優れていると思う。
気を取り直して二人は歩き出す。
目指すはあの少々怪しい家だ。
そして、二人は遂にたどり着いた。
もう体が限界で今にも倒れそうだが、なけなしの気力を振り絞る。
もうすぐ、あとちょっと、あの扉の先に、いるかもしれないのだ。
「行きますか」
「うん。行こう」
頷きあった双子は玄関扉へと手を伸ばす。
せーのっ!で扉をノックしようとしたところで…
内側から勢いよく扉が開いた!?
「「ぶへぁ!?!?」」
あまりに勢いよく開け放たれた扉にぶつかり、ぶっ飛ばされてしまう双子。
二人して雪上をゴロゴロ転がってしまった。
な、何が起こった?
「待っててね。お母さんが今行くよ!」
扉を開けた人物の声がする。女性のものだ。
今『お母さん』と言ったか?
私たちも母親を探しているんだけどなあ。
「忘れ物なし、家も施錠して、それからえっと、どこを探せばいいか…そうだ、魔力サーチをかけながら移動をして…」
なんだか焦ってるみたいだ。
自分が天使をぶっ飛ばしたとは微塵も思っていないらしい。
すみませーん。
ここに目を回した双子がいるので助けてくれませんかねえ?
「こういう時は母親の勘に賭ける!あの子たちは……たぶんこっち!」
勘で何を探すと言うのかね?
それよりも、雪に埋もれた私たちに気付いて。
「んん?何アレ、あんなところに死体?昨日はなかったけど」
死体じゃねーよ。
もうちょっとで死にそうなぐらい疲れてるけどさぁ。
声の主が駆け寄って来る気配がする。
私たちはようやく三半規管がまともになって来たところだ。
「うぇ!?こ、子供!それも二人!?なんでこんなところに、良かったまだ生きてる!大丈夫しっかりして!!」
「ひゃっ!あなたたち傷だらけでボロボロじゃない!服がもう服と呼べるレベルじゃないわよ。二人とも乳首見えてるわ!その歳でエッチなのはアカン!」
「とりあえず、回復魔法かけるわね。あとこれ、お薬だから飲んで!味はイマイチだけど効果はバツグンだから。ささ、グビっと飲んじゃって」
ひとりで大騒ぎする女性が回復魔法をかけてくれた。
温かな光が身を包み、たちどころに傷を癒していく。
すごい、この人の魔法…かなり高位なヤツだ。
瓶に入った謎の液体も、言われるままに飲んでみたら、スッと疲労が和らいで魔力も少し回復した模様。
魔力回復薬は天界でも高額で取引されている品だ。
そんなものを惜しげもなく飲ませてくれるとは、この人は一体何者だ?
扉でぶっ飛ばされたのはともかく、彼女は恩人である。
ちゃんとお礼を言わなければ。
回復した私たちは、そこでようやく彼女の姿をしっかりと目に収めた。
銀髪に深い青色の瞳が印象的な、とんでもない美女だった。
アレ?あれ?なんだ?何だコレ?
この人、どこかで…
それにひどく懐かしい気がして堪らない。
私たちは揃って呆けたまま美女を見つめ続けていた。
そんな双子を訝しく思ったのか、美女も見つめ返してくる。
視線が合う、それだけで全身に雷が落ちたかのような衝撃が走った。
知ってる。知っているぞ。
私は、私たちはこの人を知っている。
この人を求めて、ここまで来たのだから。
母だ、彼女が母だと確信した。
叔父が前に見せてくれた写真では金髪だったが、青い瞳と美貌はそのまんまだ。
写真より若返っているように感じるのは気のせいか?
まあ、そんなことはどうでもいい。
私たちはあなたの子供だと、今すぐに伝えないと。
(お姉ちゃん!ママだよ!ママが本当にいたぁぁぁ!)
(わかってます!母さん、本日はお日柄もよく、えっとえっと…)
(ちゃんと声に出して言ってよ!ママが変な物を見る顔してる)
(あなたこそ!いつもみたいに切り込んでくださいよ。ほら、勢いで何とかしろ)
(無理だよぉ、緊張して声出ない)
(私もです。母さんを前にしたら、もう頭真っ白ですよ)
双子はテンパった。大混乱である。
これほどまでにテンパった経験のなかった双子は、声なき声で会話しつつ呆然としたままだ。
ヤバいって、このままだと母に変な子だと思われる。
第一印象最悪だぁ!
混乱して固まった二人の頬にそっと手が添えらた。
母の手だ。
え?何?なんで手を…
母の手から包み込むような優しさを感じて、嬉しさがこみ上げて来る。
そして、もっと嬉しい事が起こった。
「ミカエリアス?ルシフェルト?」
「「っ!?!?」」
名前を、名前を呼んでくれた!
聞き間違いでも、空耳でもない!
今、母は私たちを呼んだ、呼んでくれたのだ!
「ずっと、ずっと、ずーっと覚えてた。何度も何度も夢に見た、この強い魔力反応、間違えるはずがない!」
「ミカエリアス!ルシフェルト!そうなんでしょ?ねえ?」
「あなたたち、私が産んだ子供なのよね。こんなことって…」
母の目に大粒の涙が浮かぶ。
覚えてくれていた。
十年以上離れていても、母は、ずっと私たちを想い続けてくれたのだ。
「ああ、もっと顔をよく見せて。なんで女の子なの!?メッチャ可愛い~」
「二人とも会いたかったわ。本当に本当に会いたかったのよ!」
「見てますか旦那様、私たちやっとこうして…ああもう涙が止まらい!」
嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい。
母から堪え切れない歓喜の感情が伝わって来る。
当然、私たちも同じ気持ちだ。
嬉しい嬉しい嬉しい、嬉しくてどうにかなってしまいそうだ。
「よく来てくれたわね。ミカエリアス、ルシフェルト」
私たちの頬を撫で回し、頬ずりを決めていた母が顔を上げる。
涙で赤く腫らした目元を拭い、とても綺麗な笑顔を浮かべた。
「私が、あなたたちのお母さんよ」
そのとき見た眩しい笑顔を、私たちは永遠に忘れない。
「母さんっ!!」
「ママぁ!!」
言いたいこと、話したいことは、たくさんあったはずだ。
挨拶だって事前に考えて来たのに、その全てがどうでもよくなった。
「おっとと…二人とも元気だね」
感極まった私たちは母の胸に飛び込む。
結構な勢いでぶつかってしまったが、そんな私たちを母は優しく受け止めてくれたのだ。
ここが私たちの居場所だ。もう絶対に離れたくない。
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