女体化して母親になったよ!天使な子供たちとファンタジー世界で幸せになります   作:きさまち

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おっぱい星人

 ゼルフィード様の粋な計らいで我が子と暮らせるようになった。

 よっしゃ勝ったな!人生勝ち組ルートに入ったわ。

 

 ハハハハハ!我が世の春が来た!

 最高にハイってやつだアアアアアア!!

 

 嬉しさのあまり濃い顔で叫び出したい衝動に駆られてしまう。

 だが、私は可愛い天使娘たちのお母さん。

 母親としての体裁を保つため顔芸は自重せねばならぬ身だ。

 

 だ…駄目だ、まだ笑うな…こらえるんだ…し…しかし…

 いかんいかん。

 ここは愛娘たちとハグをして精神を安定させよう。

 

「ママにぎゅってされるの好き!」

「母さんに抱きしめられる。まさに至福ですね」

 

 全く以って同感である。

 この世の何よりも愛おしい存在との触れ合い、幸福で堪らんな!

 娘たちとのスキンシップは母としての悦びを実感させ、心身を劇的に回復させる。

 異論は認めませんよ。

 

「柔らか~い、あったか~い、いい匂い~、二人とも大好き」

「私も大好き!お揃いだね」

「母さんの癒しになれたのなら本望です」

 

 まったく天使な娘たちは最高だぜ!

 こんなにも素晴らしい生命を産み落とした、私ってば結構すごいお母さんなのでは?

 少なくと聖母(臭)とか呼ばれている汚物よりは、ママレベルが上だと思いたい。

 

 ひとしき娘たちを抱きしめて満足した。

 ふぅ…落ち着いたぜ。

 自分で言うのもアレだが、私は少々情緒不安定気味だ。

 今後もトチ狂いそうになったら娘ハグで頭を冷やすことにしよう。

 

「本懐を遂げられましたこと、心からお祝い申し上げます」

「ガブリゼルさんが手助けしてくれたお陰ですよ」

 

 念願の叶った私を労ってくれるガブリゼルさん。

 さすが兄弟、笑うと旦那様に似ている。

 

「本当にありがとう。あなたが旦那様の弟でよかった」

「そうですか?私は兄上の、ベルゼクティオ名に恥じない天使になれているのでしょうか?」

「もうなってますよ、立派な熾天使様。あなたは私と旦那様の大切な弟ですもの」

「あ、姉上~…身に余る光栄です」

 

 感涙するガブリゼルさんをそっと抱きしめる。

 少し驚いたみたいだけど、素直に抱きしめ返してくれたのでそのまま抱擁を続けた。

 体は私より大きく年齢も恐らくかなり上だけど、何だか可愛いと思ってしまうな。

 それは私が母親であり、この人の姉でもあるからだ。

 姉として弟のことも可愛がっていいよね。

 

 旦那様を亡くして途方にくれていた私に手を差し伸べてくれた恩は忘れない。

 ガブリゼルさんは私と娘の家族であり、敬愛すべき熾天使なのだ。

 そうですよね、旦那様?

 

「ええのう。羨ましいのう。ワシもハグされたいのう」

 

 ガブリゼルさんと抱擁を交わしていると、ゼルフィード様が不満気な声を漏らした。

 

「ゼルフィード様、空気を読んでください」

「ハト爺ちゃん、今はガブおじのターンだから我慢して」

「嫌じゃぁ~ワシもコルニクスに抱きしめて欲しいんじゃぁ~」

 

 娘たちにたしなめられても聞く耳持たず、大人気ないゼルフィード様は駄々をこね始めた。

 雪のテーブル上にひっくり返った鳩がジタバタ暴れる姿は結構シュールだ。

 いいシーンを邪魔されたガブリゼルさんは、苛立ちを隠すことなく鳩を睨みつける。

 どう考えても上司を見る目ではない。

 

「見るに堪えません。この鳩は焼却処分しましょう」

「嫌じゃぁ、オーブンでじっくり火を通してくれんと美味しくなれんのじゃぁ~」

「ついに自分で調理(処刑)方法提案して来ましたよ?」

「エロ鳩のローストチキン。クッキングスタート!」

 

 はいはい、そこまで。

 クッキングスタートしたらダメだからね?

 変な物を食べてお腹壊したら嫌でしょ。

 

「む…むかしのように……もう一度ぬくもりを…」

 

 鳩が哀愁たっぷりに何かを呟いている。

 あなた聖帝じゃなくて聖皇でしょうが。

 

 ローストされたい願望の鳩がなんだか可哀想になって来た。

 娘たちと暮らせるようになったのはゼルフィード様のおかげでもある。

 少しぐらい恩返しをしてもいいか。

 

「ゼルフィード様、失礼します」

「なんじゃ?ハグしてくれる気になったかの?」

「そうですよ。力加減はこれぐらいにして…はい、これでいいですか?」

「な……ふぉおおおおおおお!!」

 

 私は鳩を両手で持ち上げ、優しく胸の中にぎゅっと抱きしめる。

 その途端、鳩が奇声を発した。

 

「血迷いましたか、姉上!?その鳩を甘やかしてはダメです!中身はただの好色爺ですよ!スケベ菌がうつる前に投げ捨てて!今すぐ!!」

「『ふおおお』だって…変態みたい」

「みたいじゃなくて、正真正銘の変態ですよ。ああ、私の母さんが穢されてゆく…」

 

 鳩をちょっとハグしただけで、みんな心配性だなあ。

 私に抱きかかえられたゼルフィード様はウットリとした表情を浮かべて幸せそう。

 喋らなければ普通に可愛らしい鳥類だな。

 

「服越しでもわかる柔らかな感触…なんと素晴らしい」

「私、おっぱいあんまり大きくないのですけど、ご満足頂けてます?」

 

 私の胸は人様に誇れるような巨乳ではないが、ぺったんこという訳でもない。

 旦那様曰く程よい大きさの美乳らしい。

 形には自信があるし、谷間だって出来るので個人的には今ぐらいの大きさで満足だ。

 当初の目的が『ぱふぱふ』だった相手に私の胸は通用するか?少し興味ある。

 

「おっぱいに貴賎なし!美少女系未亡人の胸なら尚更じゃ。大きさばかりに拘る奴はワシに言わせれば阿呆じゃよ。ちっぱいじゃろうがビッグボインじゃろうが良い物は良いと認めてこそのおっぱい星人じゃからのう。おっぱいに触れる時はの誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてきゃあダメなんじゃ、独りで静かで豊かで……」

 

 長い!おっぱい語りが長いですゼルフィード様!

 おっぱい星人??

 このファンタジー世界に星人という概念があったことにビックリだ。

 

「楽園は…ここにあった。ワシもうここに永住するもん!」

「『もん!』じゃねーよ。いい加減、姉上から離れろエロ畜生が!」

「待つのじゃ!もうちょっと、もうちょっとだけ、後生じゃから~」

 

 ガブリゼルさんが私からゼルフィード様を引き剥がす。

 おっぱい星人の鳩は必死の抵抗を試みたが、ガブリゼルさんに鬼のような形相で睨まれて泣く泣く諦めるのだった。

 

「あの様子では叔父さんが謀反を起こす日も近いですね」

「ガブおじが天界のトップになったら、仕事が増えて余計にハゲが進行するんじゃないの?」

「待て、私は別にハゲていないぞ!」

 

 娘たちが無邪気に恐ろしい発言をしている。

 本人たちの前で滅多なことをいうものではないよ。

 

「おっぱいだけでは飽き足らず、ワシから聖皇の座まで奪うつもりか!このハゲー!」

「だからハゲとらんわ!今すぐ下剋上してやろうか!」

「ほざいたなひよっこ!ならば、コルニクスのおっぱいを賭けて勝負じゃ!」

「望むところだ。姉上のおっぱいは私が死守してみせる」

「戦いの主旨が変わってますよ?」

 

 なんで私のおっぱい争奪戦になってるの!?

 男の人ってバカだなあと、元男の私は思ってしまう。

 あ、ちょっと!狭いかまくらの中で暴れないでくださいよ。

 

「ミカ、ルー、二人を止めるよ。手伝って」

「ラジャー」

「お任せください」

 

 娘たちの教育に悪い大人は喧嘩両成敗だ!

 

「なにをするんじゃ、はな……ぽゎ!?」

「鳩ざまぁ!え?なに、私も?……こひゅ!?」

 

 ミカが鳩の首をむんずと掴んで絞め落とし、ルーが叔父の頸動脈を絞めて意識を刈り取った。

 私が出るまでもなく瞬く間に制圧完了。

 うむ、パーフェクトな仕事ぶりだぞ二人とも!

 惚れ惚れするような無駄のない動き、お母さん思わず拍手しちゃった。

 

 ●

 

 気絶していたガブリゼルさんたちが意識を取り戻した頃、天界からの応援だと言う人たちがゾロゾロやって来た。

 彼らはガブリゼルさん直属の戦闘部隊で、娘たちの見知った顔もチラホラいるらしい。

 

 雪だるまになっていたクズ天使とその仲間たちは、彼らによって連行されていった。

 近くの空き地に着陸させた飛行船があるので、そこの貨物室にでも放り込むのだろう。

 私がビンタでぶっ飛ばしたトラ男も回収済みだってさ。

 

「やれやれ困ったもんじゃのう。上級天使まで登り詰めておきながら、つまらぬ悪事に加担するとは嘆かわしい」

「全くです。あのような愚か者どもは性根から叩きなす必要があります。更生の余地があればの話ですが」

 

 先程まで愚かな争いを繰り広げようとしていた鳩と義弟が何か言ってる。

 天界に戻り次第、悪人たちには厳しい沙汰が下るとのことだ。

 私からは特に言う事は無い。奴らの処分は天界の司法にお任せしよう。

 

「恐れ入ります。あなたが、コルニクス様であらせられますか?」

「?…ええ、はい。私がコルニクスですけど」

 

 連行されていく悪人たちを見学していると、おずおずといった感じで声をかけられた。

 ケモ耳の生えた獣人族の女性隊員、緊張しているのか視線に落ち着きがない。

 名前を答えると彼女だけでなく周りの隊員たちもざわついた。

 

 ざわ・・・ざわ・・・

 

「ベルゼクティオ様の伴侶となられた御方だと!?」

「…う、美しい。噂以上の可憐さだ」

「ミカ様とルー様の母君…確かに面影がある」

「いい匂いしそう」

「お近づきに、いや、せめてその視界に入りたい」

 

 好奇の視線に晒されてヒソヒソされてますね。

 この感覚知ってるよ。私が冒険者ギルドで毎回味わう空気だ。

 

「私、何かおかしなことでも?」

「い、いえ!決してそんなことは、すみません!あの…不躾ですが、握手してくれませんか?」

「いいですよ。はい」

「ありがたき幸せ。この手、もう一生洗いません」

「なんで!?普通に洗って下さいよ」

 

 ケモ耳さんが飛び跳ねながら喜んでくれたのはいい。

 でも、その後から『俺も!私も!』と握手を望む人たちが手を挙げ始め、気付けば行列が出来てしまっていた。

 

「ママがモテモテだ!私のママなのにー!」

「誇らしいですが、母さんが取られたようで悔しいです」

「ちゃんと並ぶんじゃぞ。最後尾はこっち、握手は一人2秒までじゃ!」

「何やっているんですか、ゼルフィード様?アホですか?」

「三回も並んどるお前さんの方がアホじゃ」

 

 何故か握手会のスタッフを買って出たゼルフィード様。

 何度も列に並ぶガブリゼルさんも意味が解らない。

 拗ねてしまった娘たちが引っ付いて来たので、それを宥めつつ握手の列を捌いていく。

 私は何をやっているんだろうか?

 

 ・・・・・・・・・・・・・

 

 悪人の収容と握手会もなんとか終えて、ガブリゼルさんとゼルフィード様も天界へ戻る頃合いとなった。

 名残惜しいが、二人とも天界の要職に就いている身なので、いつまでも地上でブラブラするわけにもいかないのだ。

 

「娘たちがお世話になりました。そして今回多大なるご迷惑をおかけした事、母娘一同改めてお詫び致します」

「「勝手なことをしてごめんなさい」」

 

 私たちはもう一度、誠意を込めて謝罪した。

 親しき中にも礼儀あり、筋を通すべきところはしっかりしないとね。

 

「もうええんじゃよ。美人母娘の強い絆に完敗じゃわい。あと、おっぱい最高じゃった。いつかまた、その時は本体に直接ハグをお願いします!」

「はい。機会があれば是非」

「言ったな?言質取ったからの!くるっくー!長生きする理由が増えたぞい」

 

 ゼルフィード様の本体か、いつか会うこともあるのだろうか?

 

「叔父さん、短い間でしたが大変お世話になりました。この御恩は忘れません」

「ガブおじ、いっぱいありがとう!お仕事頑張り過ぎて過労死しないでね」

「くっ……お前たち…姉上と仲良く暮らすんだぞ、あまり心配させてはダメだ、それと力加減を間違えないように…うぅ…とにかく、元気で兄上のような立派な天使に…ずずっ」

「叔父さん、涙と鼻水が凄まじいです」

「もう、泣き虫さんだなぁ」

「泣いてない、これはただの汗だ。別れるのが寂しいからじゃないぞ、姉上とお前たちが幸せならば私は本望なのだ…」

 

 ガブリゼルさんは15年間、娘たちをずっと見守って来た。

 親代わりとして育てた双子が巣立っていく、寂しくない訳がないのだ。

 その事は娘たちにもしっかり伝わっている。

 

「絶対また会いに行きます。母さんとルーも一緒にです」

「ママ程じゃないけど、ガブおじのことも好きだよ。ほら、涙拭いてシャキッとして」

「ミカエリアス、ルシフェルト、兄上の忘れ形見。お前たちは私の誇りだよ」

 

 ガブリゼルさんと娘たちが別れを惜しむように抱き合っている。

 天使たちの尊い光景に私までもらい泣きしそうだ。

 とりあえずゼルフィード様を撫でて落ち着こう。

 

「ふむ。双子ちゃんがナイスバディに成長した暁には『ダブルぱふぱふ』も夢ではないのう」

「ゼルフィード様、そればっかりですね」

「おっぱい星人の業じゃよ」

 

 ろくでもないカルマを背負っている鳩だなあ。

 

 別れの挨拶とその他諸々を済ませ、ガブリゼルさんとゼルフィード様は飛行船へと乗り込んだ。

 大きくて立派な飛行船がゆっくりと離陸していく。

 

「三人とも息災でな。お主たちの幸せを空から祈っておるよ」

「姉上、どうかお幸せに!ミカエリアス、ルシフェルト、くれぐれも無茶だけはするんじゃないぞ!」

 

 二人の声に応えるように、私たちは飛行船へと大きく手を振って見送る。

 飛行船の甲板にはガブリゼルさんたちの他にも、握手会に参加した部隊員たちの姿も見えた。

 彼らも応えるように手を振り返してくれている。

 

「ガブおじー!ハト爺ちゃん!元気でねー」

「体に気を付けて。お仕事頑張って下さい」

「ゼルフィード様、ガブリゼルさん、部隊員の皆さんも、本当にありがとうございました!」

 

 私たちの声が届いたガブリゼルさんが笑顔を見せる。

 ゼルフィード様の『くるっくー!』という鳴き声が空に響くと同時、飛行船は姿を消した。

 認識阻害の魔法が発動してステルス航行に入った船は天界へと昇って行く。

 微かに残ったエンジンの駆動音だけが、その事を教えてくれた。

 

 ●

 

 飛行船を見送り雪原の中に取り残された。

 だけど寂しくはない。

 今の私には血を分けた二人の娘が一緒にいてくれる。

 それに天界とはヤタを介して通信ができるので、ガブリゼルさんたちとは今後も連絡を取り合うつもりだ。

 

 旦那様や応援してくれる皆のために、何より自分と娘たちのために幸せになるのだ。

 よし!頑張るぞー!

 

「ここから私と母さんの摩訶不思議アドベンチャーが始まるのですね。胸が熱くなります」

「お姉ちゃん、私もいるよ?」

「チッ…」

「舌打ちは酷くね?」

 

 先ずは何をしようか?

 壊れた『どこでもホーム』の修理と、ゼルフィード様に頼まれたおつかいクエストもあるから…

 となると目指す場所は自ずと限られてくるな。

 やりたい事もやるべき事も、いろいろあるけどひとつづつこなしていこう。

 もちろん娘たちと一緒にね。

 

「ミカ、ルー、二人は何がしたい?どこか行ってみたい所がある?」

「母さんと一緒なら何処でもいいです」 

「そうだね。ママとやりたい事が多過ぎて、すぐに思いつかないや」

 

 そうか私と同じだね。

 私も娘とのやりたいことリストが目白押しで迷うぐらいだ。

 

「じゃあ、とりあえず最初の目的地は私が決めていいかな?」

「お任せします」

「私もそれでいいよ」

 

 家族揃っての旅路、記念すべき最初の目的地にしたのは…

 

「ムール帝国に行くよ。あの国なら必要な物が全部揃うからね」

「了解しました」

「どんな所なんだろう。ワクワクするね」

 

 目指すは三大国家のひとつ魔導帝国ムール。

 さあ、母娘水入らずの新生活スタートだ。

 




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