女体化して母親になったよ!天使な子供たちとファンタジー世界で幸せになります   作:きさまち

22 / 27
滑るファミリー

 母娘三人水入らず、愉快な旅のはじまりはじまり。

 

「よーし!帝国までひとっ飛びだ」

「待ちなさい、ルー。母さんを置いていくつもりですか?」

「あ、そっか。ママは空を飛べないのか…だったら私がママを抱っこして飛ぶね」

「却下です。母さんに墜落死されては堪りませんから」

「そんなことしないもん!」

「やはりここは私が責任をもって、安全第一で母さんを運びましょう」

「ママを独り占めしたいだけじゃん。姉なら妹に譲るをことを覚えたら?」

「いも…うと…??う…頭が…」

「一瞬で私の存在を記憶から抹消したのかよ!?なんだこのクソ姉貴は?」

 

 じゃれ合う娘たちは可愛いなあ。

 ルーがミカの肩を掴んでガクガク揺さぶっている。

 きっとお姉ちゃんに甘えたい年頃なのね。

 

 小柄な娘に抱えられて空を飛ぶ。

 悪くない提案だが、生憎その必要はない。

 

「ミカ、ルー、聞いてちょうだい…」

 

 私は重大な事実を告げる雰囲気を醸し出す。

 娘たちはゴクリと唾を呑み込み、私の言葉を待ってくれた。

 ノリがいい子は大好きよ。

 

「お母さんは飛べます!!」

「「さすが母さん(ママ)!!」」

 

 私は実際にその場で浮いて見せ、飛べることを証明する。

 これも風魔法のちょっとした応用ってヤツだ。

 娘たちの称賛は素直に嬉しいね。

 

 天界暮らしをするにあたり浮遊魔法の修得は必須、というより使えないと危険なので旦那様がマンツーマンでみっちり指導してくれたのだ。

 そのお陰で空中に留まる術はすぐに覚えることができ、万が一浮遊島から転落しても安心出来た。

 

 魔女になって魔力制御が上手になると、空を自由に飛び回ることも可能になった。

 箒があろうが無かろうが結構なスピードで飛べるから、空中での高機動戦闘だってやれちゃうのよ。

 

 師匠と弾幕ごっこ(空中での魔法の撃ち合い)をした時は、スリル満点で楽しかったなあ。

 結局、全然勝てなかったのは今でも悔しい。

 あの曲がるレーザー、何回やっても避けれない!

 

 翼が無くても人は空を飛ぶ。

 魔法の心得がある者は適性さえあれば浮遊魔法を使いこなせるので、魔導士の三人に一人ぐらいは飛べると思っていい。

 魔法が使えない者や適性がない者でも、魔道具の補助があれば十分に飛行可能。

 ただし、飛行系の魔道具はかなり貴重で高価な品だから一般家庭にまで広く普及してはいない。

 自由に飛べる能力は未だに重宝され、就職活動にも有利に働く特技となる。

 

「ママも飛べるなら、帝国まで一気に行っちゃう?」

「風情はありませんが、時間の短縮にはなりますね」

 

 空を飛んで帝国まで一直線というのもアリだけど、自分の足で大地を踏みしめながら、少しづつ進むのも旅の醍醐味だと思う。

 ゆっくり歩きながらその土地の自然や空気を肌で感じたり、たまには乗り物に揺られて楽チンな移動をしてもいい。

 空中をバビュン!と飛ぶだけでは味わえない体験を娘たちにはしてほしいと思うのだけど、どうだろうか?

 

「賛成!ママと一緒に歩いたり走ったりする~」

「天界では飛んでばかりでしたからね。足腰を鍛えるには丁度いいでしょう」

 

 娘たちと相談して陸路を選ぶことに決定した。

 母娘で空を飛ぶのはまたの機会ということで。

 

「じゃあ改めて、出発進行~」

「「はーい!」」

 

 いざ行かん。ムール帝国へ!

 

 ●

 

 私たちは、雪山の頂から見える雄大な景色を堪能している。

 登山の予定はなかったのだが、気が付いたらここにいた。

 

 雪に覆われた銀世界を眺めながら娘二人と楽しくお喋りして、時々現れるモンスター適当にあしらいつつ歩みを進めていただけなのに、いつの間にか山頂にまでたどり着いていたのだ。

 少々はしゃぎ過ぎてしまったようだ。反省。

 私も大概だが、娘たちも中々の健脚で感心した。

 

 旅の開始直後にいきなり本格的なトレッキング付き合わされても、文句ひとつ言わない娘たちは出来た子だと思う。

 

「二人とも疲れてない?」

「体力、魔力、気力、全てが十全。問題ありません」

「元気元気、まだまだいけるよ」

 

 さすが旦那様の血を引く天使、持って生まれたフィジカルが最初から高くて羨ましい限りだ。

 元気な娘たちに置いて行かれないよう、私も精進せねば。

 

 山頂から見える絶景を堪能しながら、ちょっと休憩。

 保温容器に入れておいた温かいココアをカップに注ぎ娘たちに配る。

 受け取ったココアをフーフーしながら飲む、双子天使がすっごく可愛い!

 

「甘くておいしい~」

「染み渡りますね」

 

 甘い飲み物に顔をほころばせる娘たち。

 その格好は半袖短パンという真夏の健康優良児スタイルに、私の物であるぶかぶかのアウターを羽織っているだけ。

 サイズの合う服が用意出来なかったとはいえ、見るからに寒そうで何だか申し訳なくなる。

 

「何度も聞くけど寒くない?」

「平気だよ。子供は風の子だからね」

「母さんから借り受けた上着が暖かいのです」

 

 天使である娘たちは、魔力を操作して周囲の環境に体を即時適応させることが出来る。

 そうやって獲得した耐性があるため平気なのだと二人は言うが、耐えれるだけであって暑さ寒さはしっかりと感じとっている模様。

 現にくしゃみをしたり、何度か鼻もかんでいる。

 我慢できるけど、寒いものは寒いよね。

 

 やはり娘たちにはTPOに合った格好をしてもらいたい。

 それに、我が子に服のひとつも買ってやれないで何が親か!

 いろんな服を着せて、可愛い娘をもっと可愛く着飾りたいという私的な願望も大いにある。

 

「町に着いたら服を買いに行こうね」

「服装には頓着しませんが、母さんが用意してくれるなら有難く着させて頂きます」

「下界のファッション、どういうのが流行っているか楽しみ」

 

 二人にはどんな服が似合うかな?きっと何を着ても似合うんだろうな。

 娘たちとアパレルショップ巡り、今から楽しみである。

 

 ●

 

 ムール帝国までの道のりは長い。

 私たちは焦らずにいくつかの中間地点を経由する旅路を予定している。

 地図によると、ここから真っ直ぐ下山した麓に町があるらしい。

 本日はそこに宿を撮って一泊することにしよう。

 

「今度は下りですか、転ばないよう注意しないと」

「飛ぶ以外で楽に移動……そうだ!私にいい考えがあるよ」

「嫌な予感しかしませんが、一応言ってみなさい」

 

 ルーが何か思いついたようだ。

 嫌な顔をしながらも意見に耳を傾ける、ミカはいいお姉ちゃんだな。

 

「まずミカがうつ伏せに寝る。その上に私とママが乗る。ミカが雪の斜面を滑る。私とママとっても楽チン!どう?最高のプランでしょ?」

「どこがじゃ!何で私が人間ボードなんですか!ボード役は発案者のお前がやれ!」

「大丈夫、ミカのつるぺたボディなら人間ボードにピッタリだって、自信をもって」

「お前も平たい胸族だろうが!」

「ミカと違って私の胸には将来性が詰まってるんだよ」

「知るか!貧相な乳首削り落すぞ?」

 

 コラコラ、おっぱいネタで揉めるのはやめなさい。

 エロい鳩が戻って来ても知らないわよ?

 

 人間ボードはともかく、雪の斜面を滑るというアイデアはいいと思う。

 ええと、確か収納鞄の中に……あったあった。

 魔法の収納鞄から私は目的の物を取り出す。

 いつも思うのだが、鞄の開口部より大きな物を出し入れする瞬間は物理法則もあったもんじゃねぇな!

 魔法という力が存在する世界では今更なんだけどね。

 

「これ何?斬新な棺桶?」

「斬新なのは、あなたの脳みそです」

 

 木で出来た箱型の本体の底に、スキー板のようなものが留めつけてある物体。

 とある冬の日に子供たちへプレゼントを配る赤服のジジイが乗りこなし、トナカイが引っ張っていく例のアレ。

 見慣れない物に娘たちは興味津々だ。

 

「私の知識が確かならば、これはソリという乗り物です。雪や氷の上を滑らせて人や荷物を運ぶことができるはず」

「正解。みんなでこれに乗って楽しく下山するよ」

「「おお~」」

 

 せっかく山頂まで来たのだ。普通に歩いて下山するのは勿体ない。

 雪の斜面、いわゆるゲレンデがあるのだからスノーアクティビティに挑戦するのも一興だと思ったのだ。

 

 このソリは、先輩魔女である【氷絶の魔女】と一緒に遊んだ時に作ってもらった品だ。

 前回使用してから長い間、鞄に突っ込んだままだったのを思い出した。

 特に故障はないようだし、本体のスペースは母娘三人乗れるぐらいの広さがある。

 これを使って、雪山の楽しい思い出を作ろうじゃないか。

 

「さ、二人とも乗って」

「わーい面白そう!乗る乗る~」

「もう、調子に乗って落ちないでくださいよ」

 

 娘二人の搭乗を確認して、私はソリを後ろから押す。 

 少し助走が付いたら私も乗り込むつもりだ。

 娘たちは軽いので身体強化を施さなくても大丈夫だろう。

 

 よいしょ…うんしょっ…もう少し…そぉーれっと!

 

 ソリを押す手に力を入れた時、それは起こった。

 私は積雪に足を取られ、その場にすっ転んでしまったのだ。

 

「…ひでぶっ!?」

 

 受け身を取る暇もなく無様に顔面から倒れる。

 その拍子に手がソリから離れ押し出してしまう形になった。

 

(ヤダっ!私かっこ悪すぎ!超恥ずかしいよぉぉ~!!)

 

 顔面強打と羞恥心で赤くなった顔を上げた私が見たのは、

 勢いがつき急斜面を滑って行くソリと、それに乗ったまま呆然としている娘たちの姿だった。

 

「ちょ、ママーっ!?」

「え?ウソ?…か、母さーんっ!?」

 

 娘たちの悲痛な叫びがドンドン遠ざかって行く。

 アカーン!!やっちまった!!

 

 いやぁぁぁぁぁ!!!!

 待って!私の、私の可愛い娘たちがぁー!!

 遥か彼方に行ってしまう!

 やらせはせん!やらせはせんぞぉ!

 

「絶対に追いつく!」

 

 ノータイムで身体強化を発動。

 前傾姿勢をとり下り坂を猛スピードで駆け下りる。

 強化された私の脚力により、地面に積もった雪が爆発したかのように飛び散っていった。

 

 うおぉぉぉぉ!待ちやがれぇーー!!

 

 直ぐに行動したのが功を奏したみたい。

 何とかソリに追いついた私はデッキ(乗車面)へと飛び込むようにして乗ることに成功した。

 飛び込んだ私を受け止めるように支えてくれた娘たち、ご心配をおかけしました。

 

「お疲れ様です。見事な疾走でした」

「ハァ…ハァ…ご、ごめん。ドジなお母さんでマジごめん」

「ビックリしたぁ…一瞬、捨てられたのかと思っちゃった」

「本当ッッにごめんね!捨てたりなんか絶対しないから、許して」

 

 我が子を雪山に連れ出し、山頂からソリに乗せて捨て去る。

 どんだけ鬼畜な親なんだよ!

 少しでもそんな風に思わせてしまった自分が情けない。

 

 心配をかけた娘たちを抱きしめて目一杯謝罪した。

 あのような無様を晒すとは痛恨の極みなり!

 我が子には自分のカッコイイ姿だけを見てほしかったのに、そう上手くはいかないようだ。

 

 旅の初日からこんなので、この先本当にやっていけるのか?

 お母さん、自己嫌悪で泣きそう。

 そんな私はまたしても娘たちに『よしよし』されてしまうのであった。

 うひょ!実の娘にバブってもいいっスか?いいっスよね!

 

 ●

 

 さて、バブってばかりもいられない。

 母娘愛を深めている最中もソリは速度を上げて滑っているのだから。

 

「母さん!前方に障害物が」

「わわっ、避けないと…このソリ、どうやって操縦するの?」

「ちゃんと考えてあるから、任せて」

 

 ソリはただ真っ直ぐ斜面を滑っていくのみ。

 前方の岩にぶつかってしまう前に進路を変更しなければならない。

 だが、ソリには牽引してくれる動物はいないし、デッキにはハンドルやコントローラーも見当たらない。

 ではどうするのか?

 もちろん、こういう時は魔法の出番だ。

 

 風魔法で生み出した気流を操作、空気の壁がソリを横に移動させ進路を調整、障害物を見事回避する。

 ね?簡単でしょ?

 速度調整も方向転換も魔法でちょちょいのちょい。

 私だって魔女ですから、これぐらいはやれるよ。

 

「なるほど…これなら私にも出来そうです」

「私もやっていい?もっとスピードアップしようよ」

「いいけど、安全には十分に注意すること。お母さんとの約束だからね」

「「はーい」」

 

 一度お手本を見せると、娘たちはすぐにソリの操縦方法を理解したようだ。

 二人とも自信あり気なので操縦を任せてみる。

 いつでも補助できるように見守っておこう。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

 子供は遊びの天才だと言うが、その通りだと思う。

 ミカとルーは、ソリの操縦をあっという間にマスターしてしまった。

 

 天使の翼から発生させた風で方向を変えるだけではなく、水魔法で作った氷で底板の滑りを強化、土魔法で進路上の地面を隆起させジャンプ台まで用意するなど、私にはない発想力で魔法を使い、工夫しながらソリ遊びを楽しんでいる。

 

 ちゃんと安全にも気を配っているようだし、うちの子たちは頼りになるなあ。

 

「ねえ、後ろからなんか来てるよ?」

「……あれは?岩石?いや、雪玉でしょうか?」

 

 後方を見ると私たちのソリを追うように巨大な丸い物体がゴロゴロ転がって来ているのを発見する。

 一見すると大きな雪玉にしか見えないが、私はアレの正体を知っている。

 

「熊だね。熊型のモンスター」

「クマ!?あんなに丸いの?」

「下界はモンスターも多種多様ですね」

 

 もちろん、ただの熊ではない。 

 アレは〖ローリングベア〗というモンスターだ。

 異様に発達した超硬度の外皮を持ち、並みの攻撃は全て弾いてしまう。 

 鎧熊なんて言う別名もあるぐらいだ。

 奴らの攻撃方法はダンゴムシのように体を丸めての体当たり。

 自分が轢き潰した得物の死肉を貪るのがお好みらしい。

 

 転がって来ている奴は白い外皮と体毛を持つ、寒冷地仕様ヴァージョン。

 雪国では結構上位に入る危険なモンスターだったはず。

 そいつが今、私たちの方へ向かって来ている。

 

「ただ転がっているだけ?あいつも遊んでいるのかな?」

「いや、完全にロックオンされていますよ。その証拠に、こちらが進路を変えてもピッタリ追いついて来ます」

 

 ミカの言う通り、熊は私たちを得物と見定めて追いかけて来ている。

 まさかこんな雪山で煽り運転をされるとは思わなかった。

 母娘の楽しい時間を邪魔しおってからに……処されたいのか?

 

「仕留めますか?」

「面倒だから逃げよう。煽り運転をするようなバカに付き合う義理はないよ」

「了解~。加速装置!ファイア!!」

 

 ルーが翼を大きく広げ、そこから後方に炎が噴き上がる。

 ロケットブースターとなった翼は、ソリを一気に加速させてローリングベアの追走を振り切った。

 

 残念だったなぁ!愚かな熊よサヨナラだ。

 

「進路このまま、安全運転でお願いね」

「任せて。お姉ちゃん、あとよろしく~、私はママとスキンシップしてるから」

「結局私に丸投げですか!?…まあ、いいですけど。3分で交代してくださいよ」

 

 邪魔者のいなくなったソリは悠々とゲレンデを滑って行く。

 子供たちが楽しそうで何より。

 




ご一読いただきありがとうございます。
お話を気に入った方は、ご感想や評価をよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。