女体化して母親になったよ!天使な子供たちとファンタジー世界で幸せになります   作:きさまち

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帝都繚乱

 山を越え、谷を越え、雪原を横断した我々母娘はついに目的地へと到着した。

 

 ムール帝国繁栄の象徴である一大都市〖帝都ゼムルダ〗

 

 温かみのある暖色レンガを基調とした美しい街並み。

数多くの歴史的建造物が立ち並ぶ中、近年の技術革新により大いに発展を遂げた街には様々な導力機器や設備が溢れており、それを人々が当たり前のように利用していた。

 

「これが帝都…想像していた以上の大都市です」

「天界の聖都より大きいね!今まで見て来た町や村がカスみたい」

「カスは言い過ぎですが、確かにここは文明レベルが段違いだと判断します」

 

 帝都の大きさと豊かさに娘たちが興奮気味だ。

 私も田舎出身なので、最初にここへ来た時はひどく驚いたものだ。

 

「ねえ、なんかあったかくない?」

「今頃気付いたのですか?帝都に入った瞬間から気温が明確に上昇しています。その証拠に、積雪が欠片も存在しません」

「ふむふむ…街中に魔力の網が張り巡らせてある。これが原因みたい」

「何らかの大魔法か魔導機器を用いて都市を丸ごと暖めていると考えられます」

 

 ヤダ、うちの子たち賢すぎる!天才じゃん!

 雪深い土地でありながら、温暖な気候を保ち続ける帝都の仕組みを即行で紐解いちゃったよ。

 

「街が暖かいのは皇帝陛下の御力によるものよ。歴代皇帝はその力をもって、厳しい寒さから皆を守って下さっているの」

「皇帝すげぇ!ウボァー!」

「どこかの鳩と大違いですね」

 

 天界の聖皇様も結界層の維持とか頑張ってるらしいので、たまには褒めてあげて。

 

「魔導車が普通に走っています。本当に豊かな街ですね」

「私も運転したいなー」

「絶対にやめてください。人を轢いておいて『ブレーキとアクセル間違えた、テヘッ!』と、ほざくルーが容易に想像できます」

「そんなボケ老人みたいなことしないよ、たぶん」

 

 帝都の車道は、田舎ではまだ珍しい魔導車が馬車とココボ車に混じって走行していた。 

 魔導車というのは、ガソリンの代わりに魔力を補給して動く、この世界の自動車だ。

 排気ガスが出ないから、とってもエコロジー。

 軍隊や要人の移動目的で利用されることがほとんどだが、最近ようやく富裕層を中心に自家用魔導車を所有する人が増えて来たのだ。

 

 機会があれば私も運転をしてみたい。

 娘たちを乗せてドライブするとか素敵やん。

 

「母さん、アレも魔導車ですか?」

「あれは魔導トラム。道路上に敷かれた線路を走る、公共交通機関だよ」

「おー、みんなアレで移動しているんだ」

 

 魔導トラムとはいわゆる路面電車だ。

 電力ではなく、こいつも例に漏れず魔力で動いている。

 魔力万能説あると思います!

 

「せっかくだから乗ってみる?」

「いいの!乗りたい乗りたい」

「ルー、他の乗客もいるのですから騒がないように」

 

 娘たち初めての導力トラムに興味津々。

 ルーは元気にはしゃいで、ミカは落ち着きながらも周囲を観察している。

 うちの子は今日もカワイイな~!

 

 運よく三人分の席が空いていたので並んで座る。

 料金は後払いで、帝都のどの区画で降りても一律料金だ。

 子供割引とかないのかしら?

 

「今ここで爆弾が爆発したら、いっぱい死ぬね」

「なんてことを言うんだ。このサイコパス妹は」

「大丈夫よ、例えトラムがズタボロのグチャグチャになっても、あなたたちは私が必ず守るからね」

「私もママを守る!ミカは知らん」

「母さんは私が守ります。ルーは爆弾を抱えてトラムから飛び降りなさい。尊い犠牲となって爆発四散したら褒めてやる」

「なんてことを言うんだ。この姉、血も涙もないよ」

 

 爆弾程度で私たちの団欒を止められるとは思わないけどね。

 独特の揺れ感じさせながらトラムはゆっくりと進んで行く。

 娘たちとの会話を楽しみつつ華やかな街並みを眺めるのは、趣があって大変よろしい。

 

 トラムでの移動に満足した私たちは降車してから再び歩き出す。

 帝都ほどの大都市もなると、いろんな種族の人たちが集まっている。

 人間、エルフ、ドワーフ、獣人、その中で一番多く見かけるのは魔族だ。

 

 魔族、魔人とも呼ばれる帝国内で最大勢力を誇る種族だ。

 先天的に高い魔力を持って生まれるため、魔法の扱いにかけては天使と並び最優と目されている。

 

 基本的な外見は、頭部に角が生えていて、背中にはコウモリやドラゴンを思わせる皮膜のある翼があり、先端が矢印や三角形状になった尻尾を持っているが特徴だ。

 

 外見にはかなりの個人差があるので、各部位の形状や大きさは人によって様々。

 色はやはり黒っぽい色彩が多い。

 

 元々帝国は魔族がつくった国。

 歴代の皇帝陛下も全てが魔族の血を引いている。

 人口の半数以上が人間だったレシアン王国では、魔族は珍しい種族だったが、ここでは逆にただの人間の方が少なかったりする。

 天使は、天界以外ではどこに行ってもレア種族扱いだけどね。

 

「ミカ、ルー、お母さんとの約束、覚えてる?」

「はい。翼は収納してなるべく出さないようにします」

「こうしちゃえば、見た目はママと同じ人間だね」

 

 帝都入りするにあたり、私は娘たちとある約束を交わしていた。

 『天使の翼は目立つので隠しておくこと』

 魔力で構成された翼は彼女たちの意思で自由に出し入れ可能だ。

 翼を出すときは、人目がない場所か、私が許可した場合のみにしてもらう。

 

「もし、誰かに翼を目撃された場合は?」

「『趣味のコスプレです』と答えます」

「本物の天使じゃないよ作り物だよ。で、いいんだよね?」

「よろしい。窮屈な思いをさせるけど我慢してね」

 

 よし、口裏合わせもバッチリだ。

 これで万が一、正体が露見しても言い逃れができる。

 今いる帝都で娘たちが天使だとバレるのは少々都合が悪いのだ。

 

「そこまで天使は嫌われているのでしょうか?悲しいですね…」

「天界にも魔族の人いたけど、特に敵意は感じなかったよ」

「嫌われてはいない。むしろその逆」

「ぎゃく??」

 

 魔族の本拠地であるムール帝国の帝都ゼムルダ。

 ここでは天使に対する迫害も差別も行われていない。

 まったくの逆だ。

 

「帝都とそこに住む魔族は、天使を特別扱いして手厚くもてなすことで有名なのよ」

「それは良いことなのでは?」

 

 それがそうでもないのだ。

 ちょうど、観光客らしき鳥人族の男が翼を出したまま無防備に歩いている。

 すまないが、彼には娘たちの教材になってもらおう。

 

 あの人を見てごらんと、娘たちの視線を誘導する。

 僅かな時間で、鳥人族の男は地元民らしき魔族に囲まれていた。

 

「その雄々しい翼、あなたは天使様では?」

「や、違います。僕は鳥人族の観光客で」

「わかります、わかりますとも、天使というのを隠しておきたいのですね」

「なんと謙虚な。さすが天使様だ」

「だから、ちがっ……」

「どうぞ、うちの宿に泊っていってください。もちろん、お代は結構ですので」

「あ、ズルいぞ。天使様、俺の店にも寄ってくれよ」

「天使様、お守りにどうかその羽を頂けないでしょうか、家宝にしますので!」

「だれか、タスケテ……アアーーッ!!」

 

 鳥人族の男はあれよあれよと言う間に、人々に担ぎ上げられ、何処かへと連れさられていった。

 

「何ですか今の!?白昼堂々、拉致されて行きましたよ」

「あの人、どうなっちゃうの?」

「命に別状はないよ。三日三晩、至れり尽くせりの大歓迎を受け、羽をクレクレせがまれるだけだから」

「ホッ、なら安心だ」

「解放された時には全ての羽をむしり取られ、禿げあがった翼を見て絶望するけどね」

「「怖いよッッ!?」」

 

 天使に対して崇拝に近い激重感情を向ける帝都民は、似たような翼を持つ鳥人族を天使だと決めつけて勝手にもてなし、ご利益があるからと翼に生えた羽を欲しがる傾向にある。

 大量の酒を飲まされて気付いた時には、自分の翼が丸裸にされ警備隊の詰所に泣きながら駆け込むことになってしまう。

 恐ろしい事に、帝都ではよくある風物詩のようなものだ。

 

 帝国観光ガイドブックにはちゃんと『有翼人向けの注意事項』として目立つように記載されている。

 先程の彼は、その注意書きを見逃したのだろう…哀れな。

 

「本物の天使だってバレたら、私たち…」

「かなり面倒なことになると思います」

 

 娘たちも身バレの危険性を理解してくれたようだ。

 市民に拉致監禁され一生崇められるか、帝国軍に保護という名目で拉致監禁されるか不自由を強いられるか…

 どちらのせよ、旅を続ける上で非常に面倒極まりない。

 そういった理由から、娘たちには翼を隠してもらっているのだ。

 

「魔族の人が『天使大好き!』ってのはわかったけど、ちょっとやりすぎだと思う」

「何か深い事情があるのでしょうか?」

 

 あるんだよな。

 それも、私たちの身内が関係しているのだ。

 

 ●

 

 帝都の中心地は大きな広場になっており、巨大な記念碑が鎮座していた。

 帝国屈指の観光スポットである帝都広場では、記念碑をバックに撮影している人々で大勢いる。

 巨大モニュメントは、たくましい肉体美を誇る魔族と天使の男が固い握手を交わしているシーンの像だった。

 台座には像の題名と説明文が記されいる。

 

 『戦友との絆は永遠なり』

 

 戦友と書いて『とも』と読むヤツみたいだ。

 

「二人とも筋肉ムッキムキだ!それにアゴが尖りすぎて刺さりそうなんだけど!」

「500年前のムール帝国皇帝と、こちらの天使は…6枚翼からして熾天使でしょうか?」

「お父さんよ」

「は?」

「へ?」

 

 私は握手している像の天使側を見つめる。

 本人とは似ても似つかないが、この天使像は旦那様…

 

 救国の大英雄〖天魔王ベルゼクティオ〗がモデルなのである。

 

「パパ!?無駄にでっかっ!!」

「等身大なわけないでしょ!このハンサムを履き違えた天使が、父さん…だと…」

「何回見てもアゴがヤベェ!狂気で凶器だよ」

「待って待って、本物はもっとカッコイイから!このクソみたいな像はお父さんのハナクソ以下の残念クオリティだから!!」

 

 なんてこった!

 娘たちが父親を学園ハンサムなヤツと誤解し始めたじゃないか。

 この記念碑を作った職人の美的センスが恨めしい!

 こんなの旦那様の魅力を1%も表現できていない。

 ちょっと、皇帝陛下に抗議したくなって来た。

 

「残念な父さん像はともかく、500年前に何かあったのですね」

「パパ、何をやっちゃったの?」

 

 ふふふ、知りたいかね。

 よしよし、お母さんが語ってあげよう。

 

「その昔、戦争があった…」

「「(あ、この語りは長そうだ)」」

 

 私たちが生まれるずっと昔、この世界では大きな戦が行われていた。

 地の底から来たる災い〖厄神〗と呼ばれる存在が、全人類を滅ぼすために動き出したのだ。

 

 厄神との戦いは壮絶を極めた。

 この未曾有の危機に、人類は種族を問わず過酷な戦いに身を投じた。

 戦闘能力に優れた天使と魔族の戦士たちも世界各地で戦いを繰り広げた。

 

 当時の帝国は魔族のみが暮らす閉鎖的な小国であった。

 各種族が垣根を越えて互いに連携を取り合う中、魔族は頑なに自軍のみでの戦いを貫く。

 

 魔族には自分たちこそが世界最強の種であるという矜持があり、強者として世界を滅びから救うのことが求められ、それができると信じていた。

 

『血を流すのは我らだけでよい』 『弱者はそこで見ておれ』

 

プライドと選民思想、ノブレス・オブリージュ的なツンデレ感を発揮した彼らは常に最前線へと赴き戦い続けた。

 

 そんな魔族を目障りに思ったのか厄神は戦力を帝国に集中させ、魔族を一気に殲滅してしまおうと画策する。

 他国と連携を密に取っていなかった帝国は、厄神率いる敵勢力により完全に孤立させられ救援を呼ぶことすら不可能な状態に陥ってしまう。

 迫り来る厄神の殺戮兵器、ジリジリと後退する友軍、泣き叫び逃げ惑う人々、戦火に沈む帝国の集落……

 帝国は滅ぶ、誰もがそう思わざるを得なかった。

 

 しかし、そうはならなかった。

 厄神の魔の手が帝都付近にまで及び、戦士たちがいよいよ玉砕覚悟で討って出ようとしたその時、空から援軍が訪れたのだ。

 

 それは天界からやって来た天使たちの軍団。

 黒き6枚翼を持つ天使を筆頭にした天軍は勇猛果敢に戦い、前線を押し返し厄神たちを帝都から遠ざけることに成功した。

 この戦いで魔族の戦士や多くの市民たちが救助され、当時の皇帝とその一族も難を逃れた。

 その代わり、援軍に駆けつけた天軍は少なくない損害を被り、数多くの天使たちがその命を散らしたという。

 

 『なぜ我らを助けた』

 『何故だと?お前は阿呆か、戦友を助けるのに理由がいるとでも?』

 

 魔族の皇帝の問いかけに天軍の長は当然だと言うように答えた。

 

 『驕り高ぶり他種族を見下していた我ら魔族を、戦友と呼んでくれるのか?』

 『くだらんな。あの厄神を前にして、種族などもはや関係あるまい』

 

 『厄神にとって、この世に生きる命、全てが目障りなゴミよ』

 『ゴミか…確かに奴らはそう思っているのだろうな』

 

 『理解したのなら力を貸せ、妙にプライドだけは高い魔族よ!』

 『くっ…言い返せぬわ』

 『同じゴミ同士、あの侵略者どもを精々汚してやろうではないか!ふははははははは!!』

 『いいだろう。我ら以上に傲慢なる天使よ!ゴミのプライド、厄神に嫌というほど味わわせてやるわ!ぐはははははははははは!!』

 

 天軍の長と魔族の皇帝は真の意味で友となり、これ以降、多くの戦場を駆け抜けるのであった。

 

 魔族が合流し、一丸となった世界連合軍は勢いを取り戻す。

 長き戦いの末に、厄神は撃退され、世界に平和が戻ったのである。

 

 以上、500年前に起こった〖厄神大戦〗の記録でした。おしまい。

 

「その天軍の長だった人が、父さんだったのですね」

「パパが大活躍しとる。ガブおじが自慢する訳だ」

 

 帝国に住む魔族の多くは、天使に自分の先祖を救ってもらった大恩がある。

 魔族は過去に天使から受けた恩を今も忘れておらず、天使を見れば何が何でも恩返しをせねば!という極端な思考に走ってしまうのだ。

 皇帝の一族間では親から子へ『天使を優遇せよ』という思想が代々受け継がれているらしい…

 

「そう言えば、叔父さんのところにいた魔族の従者、物凄く腰が低かったです」

「あの人たち、私を見る度に感涙していた気がする」

 

 魔族にとって天使は救国の英雄、まさにヒーローなのだ。

 その中でも天魔王ベルゼクティオの名と功績は、歴史の教科書にすら記載があるほどだ。

 

 当時の旦那様の活躍、私も見たかったなあ。

 『ふはははは!喜べ!この俺が来てやったぞ!』

 とか言って、みんなを助けていたはずだ。

 旦那様は私にとって永遠の№1ヒーロー。

 オールマイトより強いんだからね!

 

「行き過ぎた天使優遇…全ての発端は父さんですか」

「パパのせいじゃん!」

 

 あれれ?おかしいな、娘たちの反応がイマイチだ。

 ここは父親を誇らしく思い、感動する場面だよ。

 ため息をついて呆れたら、天国のお父さん泣くよ?

 

 前から思っていたけど、この子たち、旦那様のことをあんまり聞いて来ないんだよね。

 ガブリゼルさんから、耳にタコができるほど聞かされてウンザリなんだって。

 そんな悲しいこと言わないでよぉ、お父さんの情報もっと知ってあげて!

 

「父さんがすごい人なのは十分理解してます」

「最強無敵なのはわかったから、もっと面白いエピソードが知りたいな」

「例えばどんな?」

「弱点とかないの?顔が濡れたら力が出ないとか」

 

 アンパンマンじゃないんだから…

 でもそうか、今までガブリゼルさんも私も、旦那様が如何にカッコイイかを語り過ぎていたのだ。

 そうではなくて、娘たちが知りたいのはもっと普通の、家族にしか見せない部分、ただのベルゼクティオとしての顔だ。

 

「お父さん、私を口説いたとき土下座したよ」

「「うわっ、カッコ悪っ!?」」

「プロポーズにOKしたら、号泣しながら地面を転がってた」

「ママ、よく結婚したね…」

「私だったら、その場で婚約破棄します」

 

 試しに、旦那様の恥ずかしエピソードを披露してみた。

 よし、思った通り娘たちの食いつきがいい。

 

 他にも、ピーマン食べるの嫌がったり、ペガサスのウンコ踏んで落ち込んだり、

 『ふはははは!』と笑い過ぎてゲホゴホむせたりしていたなあ。

 今となっては彼と過ごしたどの瞬間も、大切な思い出だ。

 

「父さんのイメージが変わりました」

「うん。思ったよりダサい人だった」

 

 娘たちの父親に対する好感度が下がった気がする。

 『もうやめて!俺のライフはゼロよ!』

 天国の旦那様が羞恥心で悶絶している姿が浮かんだが、気のせいだろう。

 

 これからも父親に親しみが湧く話をたくさんしてあげよう。

 安心してください旦那様、私がちゃんとあなたの素晴らしさを娘たちに伝えますからね!




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