女体化して母親になったよ!天使な子供たちとファンタジー世界で幸せになります 作:きさまち
ラキエス先輩からの情報によると、セリスは私の大ファンらしい。
少々照れくさいが、幼馴染である彼女が今の私を見てどのような反応を示すのか楽しみでもある。
そう気軽に考えていたのだが、想像以上に私を推していたセリスは何かと限界な発言をした挙句に失神してしまったのだ。
なんか、思ってたのと違う。
セリスってばこんな子だったかしら?
私の知っているセリスは田舎の農村には似つかわしくない、垢抜けていて大変利発な女の子だったと思う。
文武両道で何でもそつなくこなし、曲がったことが大嫌いな彼女はいわゆる優等生で、年下や同年代の子供には慕われており、大人からの評価も高く将来を有望視される存在だった。
村一番の問題児であるロックと村一番の優等生であるセリス、そして村一番の凡人であった私(クロウ)は年齢が近かった事もあり、よく三人でつるんでいた。
ロックがバカ騒ぎを起こし、私がそれに巻き込まれ、連帯責任でセリスに説教されるのがお決まりのパターンだった気がする。
セリスがいなければ私はロックの悪影響を受け分別のない恥ずべき大人になっていた事だろう。
山猿以下の低能だったロックを根気強く矯正してチンパンジー並みに進化させた偉業は、セリスが起こした奇跡として故郷で長く語り継がれていたりする。
生まれながらに優秀だったセリスは予想通りエリート街道を邁進して、自他共に認める才色兼備な女性へと成長していた。
新聞や噂話で彼女の活躍を聞く度に、幼馴染だった私は誇らしくなったものだ。
帝国軍魔導兵団で部隊長に任命される魔導士というのはエリート中のエリートだ。
私が軽く喋っただけで失神するような貧弱虚弱な女ではないはずなのだが、これはどうした事だろう?
恍惚の表情で気絶しているセリスからは何だか残念な空気を感じる。
既視感があると思ったら、娘たちを見て『うへうへ』涎を垂らしていた皇帝陛下に似ているな。
帝国ではああいう奇病が流行っているのだろうか?
まあ仕方ないか、なにせ10年以上も会っていなかったのだ。
多少性格が変わっていても不思議ではない。
外見も性格も劇的ビフォーアフターした私が言うのだから間違いない。
●
10分程でセリスは目を覚ました。
自分が気を失っていたことを知った彼女はこちらが申し訳なるぐらいに平謝りして『師匠を殺して私も死にます!』と、無理心中を図ろうとしたので慌てて止めた。
ラキエス先輩が『こいつ破門にしようかな…』と、遠い目で呟いていたのが哀れである。
意識と落ち着きを取り戻したセリスを席に着かせ、改めてお互いに挨拶を交わすことにした。
「貴重なお時間を割いて頂きまして誠にありがとうございます。本日はよろしくお願い致します」
「はい、よろしくお願いしますね」
緊張しているのか、セリスは面接試験に臨む就活生みたいになっていて表情も強張っている。
もっとフレンドリーに接してくれてもいいのよ?
「あれだけの醜態を晒しておいて仕切り直した。うんうん、さすが私の弟子だ」
「師匠、うるさいです」
「でもかたい!硬いなあ。もっとリラックスしないとトークが盛り上がらないよ?」
「師匠、黙れ」
「最近ちょっと私の扱い酷くない?コルりんより直に世話を焼いている私を敬ってほしいんだけどなあ」
「絶壁、あっち行け」
先輩と二人の娘たちは私とセリスを二人きりにするため、同じテーブルには着かなかった。
とは言っても、すぐ隣の席なのでこちらの会話も向こうの会話も筒抜けである。
先輩の野次にイラついたセリスをなだめて会話を続行する。
私が名前を告げると『存じ上げております!』と、興奮した面持ちで何度も首を縦に振るセリス。
髪を振り乱す勢いのヘドバン!?
わかったから、テーブルに頭をぶつける前にやめようね。
はい、次はセリスのターンだよ。
「はじめまして、コルニクス様。私はセリスというしがない魔導士でございます」
「またまた、ご謙遜を。【氷の女帝】のお噂はかねがね伺っておりますよ」
「ひぃ!コルニクス様を差し置いて、女帝だなんて恐れ多い!勘違いしないでください、私から言い出したのではないですから!周りのアホ共が勝手に…」
「ふふ、いいじゃないですか『
「そ、そうですか。なら今後も女帝でいいです。へへ、ふへへ」
褒められて満更でもない様子のセリス。
微笑みが若干ニチャっとしているのが気になるけど、元々美人なので、そんな顔も見栄えがする。
女帝…子供の頃からリーダーシップがあり、今も帝国軍で隊長をしている彼女には相応しい二つ名だと思う。
「私のファンとお聞きましたが 一体それはどういう経緯で?」
セリスの過剰とも思える態度から、私をとても慕っているのが嫌でも伝わって来る。
でも、ここまで好かれる理由がわからない。
私の情報は冒険者ギルドや風の噂話で耳にしたのだろうけど、それだけでこんな状態になるかな?
メディアの露出や知名度では帝国軍魔導兵団の小隊長をしている、セリスの方が断然上なので、私が彼女の熱心なファンと言うのなら十分にわかる話なのだが、現実は逆だ。
「コルニクス様は恩人なのです」
恩人?
そう言われても、心当たりがないなあ。
もしかして、思春期真っ盛りの時期にロックと同じ部屋に半日閉じ込めた件についてのお礼だろうか?
二人の恋路を進展させるため私なりに気を遣った上でやった事なのだが『お前ふざけんな!』と、滅茶苦茶キレられた記憶しかない。
せっかく絶好のチャンスを作ってやったのに何の成果も出さなかった二人には心底失望したものだ。
後に判明した事だが、閉じ込められて早々にセリスは暖炉にくべる薪を発見、そいつでロックの後頭部を強打して意識を刈り取っていたらしい。
怖っ!一切躊躇の無い凶行怖すぎるわ。
セリスは『身の危険を感じた』から仕方ないと言い訳をしていたけど、危険を感じる暇さえ与えられなかったロックの方が何倍も不憫だ。
無駄にタフだったロックの命に別状はなく、殴られた時の記憶を失っていたので、この件は私とセリスだけの秘密になった。
セリスは
だから、思い出エピソードに関係した恩を私に感じているわけではないはずだ。
むむ、やはり心当たりがないぞ。
「覚えていないのでしょう。あなたは当たり前のことをしただけ。でも、その当たり前に私の両親は命を救われたのです」
「ご両親が?」
セリスの両親は帝都には居らず、帝国東部の農業地帯にある小さな村で余生を過ごしている。
二年ほど前、その村の近辺で魔物の大量発生、いわゆるスタンピードという現象が起こった。
当時の帝国軍は殉教団という闇組織の掃討作戦に尽力しており、魔物の討伐は狩りを生業にした冒険者や、各地の警備隊に丸投げしている状態だった。
両親のいる村からの救援要請が届いていた事をセリスが知ったのはスタンピードが発生してから数日が経過した後だった。
絶望的な気分になりながらも部隊を率いて急行した先でセリスが見たのは、死屍累々の惨状ではなく、普段と変わらない穏やかな日常を営む村人たちの姿だった。
庭で呑気に家庭菜園の手入れをしている両親を見たときは安堵から腰が抜けてしまったセリスである。
「両親はこう言いました。たった一人の魔女が魔物の大群を撃退して、村を救ってくれたのだと」
「へぇー、すごい人もいたもんですねえ」
善行を成す魔女か、ラキエス先輩じゃないとすれば…
『岩砕』と『暴風』は性格的に除外するとして、『爆炎』の先輩かな?
「コルニクス様、あなたのことですよ」
「ほぇ?」
私だったんかい!
ちょっと待って、今思い出すから。
えーっと、二年前の帝国…
新鮮な野菜が豊富に収穫できる事で有名な農村に立ち寄った記憶があるな。
確かあの頃は大根の品種改良にハマっていて、武器としても使える伝説の超硬度大根『ヘビーメタル』を復活させるために、各地の農家を訪問して農作物の知識を教えてもらっていた。
植物の成長を促進させる魔法を使える私は、農家さんには大人気だったりする。
それで村の人たちが『魔物がいっぱい出て困まっている』という話をしていたので、それなら私がひと狩りして来まーす。
という感じで、うじゃうじゃ群れていた魔物たちに『ヒャッハー!』と襲い掛かった次第である。
お肉が美味しいイノシシ型の魔物が多かったので、食料も確保できて言う事なしであった。
魔物を駆逐して死体も処理も終えた私は、収穫した大量のお肉と村自慢の野菜でいろんな料理を作った。
一人じゃ食べきれないので、村の人たちに振舞ったらすごく喜ばれた。
『救い主』『英雄』『結婚してくれ!』なんて口々に言われて非常に照れくさかったけど、みんなが嬉しそうなのでよかったよかった。
つまり、あの村にセリスのご両親もいた訳ね。
ごめん!全然気が付かなった!
おじさんとおばさんには、私が育ての親を亡くしたときに随分と世話になった。
意図せず恩返しができていたのなら、私もすごく嬉しいよ。
「私が到着した時には、あなたはもう村を立ち去られていた。どうしても、お礼を言いたいと思って調べたら」
「それが私だったと?」
「そういうことです。コルニクス様、遅ればせながら両親と村を救ってくださったこと、感謝致します。あなたがいなければ、私は軍人としても魔導士としても立っていられたかったと思います。本当に、ありがとうございました」
セリスは何としても恩人である魔女に会いたいと願った。
軍の情報網まで使って調べた結果、判明したのはその人が世界各地で似たような人助けをして噂になっているという事実。
その名は 【夢幻の魔女・コルニクス】
最初はただ一言感謝を告げたい一心だった。
それが憧れと崇拝の感情に変わるまで時間はかからなかった。
こうして、セリスは
「ふひゅ、コルニクス様の冒険者ランクが上がる度に、一人焼肉でお祝い申し上げておりました」
「何してるんですか…って、私の冒険者ランクを知ってるんですか?」
「コルニクス様、あなたはご自身が思っている以上に有名で注目されてしかるべき人物です。軍の情報部が追跡調査するまでもなく、コルニクス様の噂やネタは巷に溢れておりますよ。最近では非公式のファンクラブまで設立されたとか、まあ、クラブ作ったの私なんですけどね、ふひゅひゅ…」
セリスさん、マジで何してんの?
『ふひゅふひゅ』言っているときにすごく生き生きしているけど、私を見る目が粘っこくて怖いよ。
セリスが私のファンになった経緯はわかった。
過大評価されているのは気になるけど、褒められて悪い気はしない。
フフ、あの優等生が私のファンになるとはね。
ここで『実は私、幼馴染のクロウだよ』とか言ったら信じてくれるかな?
たぶん信じてくれないだろうなあ。
セリスが仮に信じてくれた場合を想像してみる。
残念、コルニクスの正体はクロウちゃんでした!
ねえ、どんな気持ち?どんな気持ち?
『騙したなァァァ!やろうぶっ殺してやるらぁぁぁーー!!!!』
夢破れて逆上したセリスが刃物を握りしめて襲い掛かってくるシーンが脳裏をよぎる。
ベネット化したセリスさん怖すぎるッ!
あんな鬼気迫る顔で殺害宣言されたら漏らすわ。
でも、あの顔したセリスは面白いので漏らしながら笑うと思う。
子供たちのためにも私はまだ殺されるわけにはいかない。
セリスへのネタ晴らしは当分の間しない方針で行くと心に誓った。
●
「お子さんたち、大変可愛らしいですね」
「ありがとうございます。親の贔屓目になりますが、二人ともとても良い子で毎日が幸せなんです」
「わかります!あんな可愛い双子なら、そこにいるだけで幸福度が爆上がり間違いなしですよ」
セリスが娘たちを褒めてくれた。
嬉しいこと言ってくれるじゃないの。
母親としての誇らしさで得意満面になっちゃうわ。
「ふひゅ、推しの子が尊い…いいなぁ、貢ぎたいなぁ」
「貢がなくていいですから」
推しの子て…
私の娘はアクアでもルビーでもないし、芸能界に入れる予定もない。
可愛い衣装を着て、踊ったり歌ったりする娘たちは見たいけどね。
「セリスさん、ご結婚は?」
「いや、はははは、それがですね。仕事の方が忙しいので、ご縁がなく…はい、見事な行き遅れです」
「そんな!セリスさんぐらい美人でしたら、すぐにでも良い人と巡り合えますよ」
「コルニクス様の優しさが辛い。悲しいことに、現実はそうでもないのですよ」
結婚はまだしも、彼氏の一人ぐらいはいるかと思って話を振ったのだが現実は厳しいらしい。
そういえば、ロックとはどうなったのだろうか?
あいつは冒険者としてそれなりの実績を上げて成功しているらしいが、セリスとは連絡取っていないのかな?
「もしかして、心に決めた方がいます?幼馴染の男性がいたりして?」
「いやいやいやいや!あいつとはそんな関係じゃありませんから!」
「あいつ…ふーん、あいつですかぁ。セリスさんも隅に置けませんねえ」
「やめてください、本当に何でもないですので」
「かーらーのー?」
「怒りますよ。コルニクス様は意地悪なんですね」
「嫌いになりました?」
「まさか!一生お慕い申し上げます!」
私に向ける愛情のほんの少しでもロックに分けてやって!
サッサとくっ付けと私が散々言って聞かせたのに、二人とも何をやっているのかねえ。
特にロック、お前なあ…
セリスは素直になれないツンデレちゃんなので、お前からグイグイ押せと何度も行ったはずだが、お前もツンデレ拗らせてどうする。
ツンデレ同士の恋愛ってマジ面倒臭い。
そのうちTSした幼馴染に百合NTRされても知らんからな!
旦那様なんて私とあったその日に『ヤらせろ』と言ったからね!
あの時はドン引いたけど、今思えば男らしくて素敵☆
男はアレぐらガッついていかないと駄目だな。
ロック、山猿だった頃のエロ過ぎた自分を少しは取り戻せ。
セリスも優秀すぎて並みの男より仕事ができるから、お堅くて恋愛に発展し辛いと思われてるんだろうなあ。
美人だけど超強い軍人だから、ちょっと怖いイメージあるし。
決して彼女がモテないわけではないと思うのよ。
体内魔力の活性化でアラフォーとは思えない若さと美貌を備えたセリスは軍の広報誌で特集が組まれるほど人気がある。
子供の頃から美少女でモテモテだったもんな。
ロックを含む村の少年たちは皆セリスに気が合ったと思う。
私だって恋愛感情こそ無かったが『こいつ可愛いな』と思うぐらいにはセリスのこが好きだった。
大人になってその美貌に磨きがかかり、エリート軍人として高収入で社会的地位も十二分ある。
ラキエス先輩曰く、縁談の話や交際を希望する男は後を絶たないが、セリス自身にその気がないらしい。
ご縁が無い訳じゃなくて、縁をぶった切っているよセリスさん!
やっぱり、あいつのことまだ気にしてるんじゃね?
ロックのこと好きなんじゃね?好きって言えよオラッ!
お前アラフォーだろうがぁ!
ロックもセリスも適齢期を過ぎているから、少しで脈があるなら早く身を固めてほしい。
二人を見守って来た、私をこれ以上ヤキモキさせるな!
仲人ぐらいやってあげるから、早くゴールインしろってね。
「幼馴染さんに連絡してみたらどうでしょう?」
「は、はぁ?なんで私が……あいつが幼馴染だって言いましたっけ?」
「フフフ、魔女の勘を侮ってはいけませんよ」
「もうコルニクス様ってば」
よし決めた。
ロックとセリス、幼馴染の二人をくっ付けるという、過去の私が抱いた野望の復活だ。
このじれったいを通り越して、最早イライラするアラフォーどもを結婚させてやるぜ!
とは言っても、私にできることは精々セリスを煽ってロックと交際する時間を捻出させることぐらいだが、どこかでロックに会ったら同じように奴を煽り散らかしてやろうと思う。
私の一番の目標は娘たちと幸せに暮らす事だけど、それ以外の目標を持ってもいいよね。
再会した旧友の恋路を応援しちゃう、恋愛の魔女・コルニクスです。
恋の呼吸、頑張ったら使えないかなぁ?
なんて考えていると、セリスが私の顔をじっと見つめていることに気付いた。
ん?私の顔に何かついてる?
芋けんぴついていたら取ってね。
「あの…私たち、どこかで…いえ、すみません。なんだかコルニクス様とお会いするのが初めてではない気がして、最初に見たときから懐かしいだなんて思って……はは、初対面の癖に何を言っているんでしょう、忘れて下さい」
君のような勘のいい女は嫌いだよ。
嘘です!友人として大好きです!
かぁー、もう鋭いなあ。
さすが魔導兵団の隊長やってる女帝様ってか。
これだけ様変わりした私を少なからず、懐かしいと思ってくれるだなんて……嬉しくて目から汁が出そうになるじゃんよ。
「実は私もセリスさんとは初対面の気がしないのです。」
「え?」
「私もレシアン王国の出身ですので、もしかしたら、子供の頃に会っていたかもしれませんね」
「わ、私とコルニクス様が…あり得ません」
ちょっとだけヒントというか、匂わせてみたけどセリスはブンブンと首を振って否定した。
「コルニクス様ほどの美形を、子供とはいえ見逃すはずはありません。仮に私の故郷にいたらモテまっくった挙句、現人神として祭り上げられていたはずです!ロリ神万歳です」
故郷で一番モテていたのはセリスだけどな。
「そうですか。私は幼馴染から『アンタってザ・凡人みたいな顔ね』と言われていましたけど?」
「なんと無礼な!その幼馴染、目玉腐ってますよ!」
お前のことだけどな!
目玉の腐った幼馴染セリスさんは、過去の自分自身に憤慨していた。
「コルニクス様にも幼馴染がいたのですね?」
「ええ、いましたね。やんちゃでおバカな男の子と、しっかり者の可愛い女の子が」
「その子たちがうらやましいです。いえ、心の底から憎たらしい」
今度は自分自身に憎悪を向け出したよ。
おもしれーなこの女。
ロック共々、今後もいじって遊んでやろうとほくそ笑む、私は悪い魔女なのです。
「私とセリスさんが幼馴染だったなら、きっと仲良く遊んでいたのでしょうね」
「それ最高です。きっと私はコルニクス様にベッタリで…ああ、コルニクス様に『タイが曲がっていてよ』と、言われたい人生だった…」
「ウフフ、いきなり私の尻を思い切り蹴り上げるセリスさんが目に浮かびます」
「そ、そんなことしませんってば!」
したんだよなぁ。
しかも、腰の入ったタイキックだったのでメチャクチャ痛かったぞ。
ある日、発情期に入ったロックがセリスのスカートを捲っていつものように殴り倒された。
偶然その光景を目撃した私に『今の見た?』と聞いて来たので、正直に答えたところ、尻を蹴られたのだ。
『ああ、なかなかエロい下着だな。似合ってるぞ』
『死ねッッ!!』
てな感じでタイキックされたのは今考えても理不尽だ。
素直に褒めたのに何がいけなかったの?
『似合ってねーよ、マセガキが!』とか言ったら殺されていたはずなので、私は正解の選択肢を選んだと思う。
被害を最小限に抑えたが故のタイキックだったのだ。
私にキックした際にスカートが激しく捲れ、倒れたままそれを見たロックが『丸見えじゃねーか、もっと見せろ』とほざいたので顔面を踏まれていた。あいつ本当にバカだ。
思い出して来た、私って結構セリスから暴力受けてるな。
まあ、ロックほどじゃなかったけど。
懐かしいな、あの頃は何だかんだで毎日が楽しかった。
二人の幼馴染がいてくれたおかげで、私は幸せだったのだ。
「うう、あいつならともかく、コルニクス様に暴力を振るったりなんかしないのに」
「ねえ、セリスさん。その『コルニクス様』と言うのやめませんか?」
「あ、すみません。私のような雑魚魔導士がお名前を口にするなど不敬でしたね」
そうじゃなくて、『様』と付けるのをやめてほしいんだわ。
私のことを敬ってくれるのはいいけど、個人的には昔みたいな気の置けない関係になりたいのだ。
もう一度、友達としての関係を築きたい。
「呼び捨てで構いません。もっと気軽に接してください。私もセリスと呼ぶことにします」
「そそそ、そんな!勿体ない!でもうれしい!でも私なんかが」
「なんかじゃない!私も敬語をやめるから。セリス、私の友達になってよ」
「……なんだ、夢か、推しの夢なら覚めないでほしい」
「夢じゃないからね。現実を見ろセリスー!」
「アーッ!コルニクス様からのビンタ、ありがとうございます!」
セリスの頬を軽くペチペチ叩いて、夢ではないことを教える。
しばらく押し問答した末、ようやく現実を認めた彼女は様付けをやめて私の友人となることを了承してくれた。
「よろしくお願いね、セリス」
「は、はいぃぃ。コルニクスさん」
「もう、呼び捨てでいいのに」
「さすがにそれは無理です勘弁してください~」
本当は今すぐにでも呼び捨てにしてほしかったけど仕方ない。
セリスにも心の準備というのもがあるのだろう。
また以前のような気安い関係になれたらいいな。
「コルニクスさん、私の知り合いに似ている気がする」
「へぇ、どんな人?」
「私のもう一人の幼馴染で『クロウ』っていう奴がいたのだけど、この男もロックに負けず劣らずの変人…」
「え…私、変人だったの?」
「ごめんなさい、口が滑った」
変人?私、変人だったの?
違いますよね、旦那様?
「ええと、そいつ自分のことをまともだと思っているけど、実は一番ヤバい奴で、私とロックがドン引きする事件を何度も起こした変人というか狂人で…ああ!悪い意味じゃなくて、コルニクスさんも自己評価がちょっとその、ねえ?」
ねえ?ってなによ。
私の自己評価が間違っているとでも言いたいのか?
狂人ってのはさすがに酷くないか。
セリスにそんな風に思われていたのがちょっと、いや、かなりショックだ。
故郷の村で、私ほどの常識的かつ平凡な男はいなかったはずだけどな。
「クロウ…あいつとはもう何年も会っていないんです。酷い事件に巻き込まれて行方不明になったんですけど、絶対に生きてるはずなんです。だって、大根が尻に…」
「ダイコン?」
「んんっ!?……い、いえ、何でもありませんのよ、オホホホ」
何だか知らんが、セリスは私が生きていると確信しているようだ。
はて?彼女が私の生存を信じる理由とはなんだろう?
アレか、やっぱり幼馴染の熱くて硬い友情パワーのなせる技か。
ゆゆうじょうパパワー!
「はぁ~、クロウ…あいつ今どこでいるのかしら」
「目の前にいたりして」
「まっさかぁ!コルニクスさんって冗談がお好きなんですね」
そのまさかですけど何か?
ごめんなセリス、俺…
女体化して結婚して子供産んで魔女になったんだぜ。
今じゃ、双子の娘たちと母の幸せ満喫しているお母さんだぜ!
お気に召しましたら、ご感想や評価をよろしくお願いします。