女体化して母親になったよ!天使な子供たちとファンタジー世界で幸せになります 作:きさまち
C級冒険者に昇格した娘たちとダンジョンへ。
はじめてのダンジョンとして選んだのは、帝都からココボ車に乗って西へ一時間ほど行った先にある洞窟だ。
その名も『フレア洞窟』という。
名前から察せられるように皇后メガフレア様にゆかりのある場所だ。
その昔、メガ様のご先祖たちが、修行の一環で掘り進めた大穴が洞窟となりモンスターが住み着いてしまったことで誕生した、人工のダンジョンなのである。
洞窟は地下5階層まで存在し構造も単純で道に迷うことはまずない、ダンジョンとしては比較的小規模で安全な部類だ。
生息するモンスターもそんなに強くないので、まさに初心者の腕試しにはうってつけのダンジョンになる。
ここで採取できる植物は薬の材料となり、純度は低いが魔石も採掘できるで道中で見かけたら回収しておこう。
「それじゃあ攻略開始だ。レッツゴー!」
「気合を入れて参りましょう」
娘たちは鼻息荒くやる気に満ちている。
前からダンジョンへ行きたがっていたのは知っていたけど、二人は冒険というものに並々ならぬ期待を寄せているみたい。
「月並みですが、本で読んだ英雄譚や勇者たちの活躍劇には憧れを禁じ得ません」
「ルシフェルトの大冒険、始まるよ。ママ、ちゃんと見ててよね」
憧れは理解から最も遠い感情だよ。などと水を差すつもりはない。
神話や伝承に語り継がれる勇者たちのように、心躍るドキドキワクワクの体験をしたいと願う気持ちはわかる。幼馴染のロック程ではないが、私にもそういうものに憧れた時期があったはずだ。
子供らしくて大変微笑ましい反面、心配でもある。
ダンジョンって普通に人が死ぬからね?
昔ほどではないとはいえ、冒険者は年間何人も死傷者が出ている職業なのだ。
『さあ冒険だ!』と、意気揚々と出発して帰って来なかった人はそれこそ星の数ほどいる。
現実は物語のようにはいかない。
冒険とは常に危険と隣り合わせ、それだけは覚悟していてほしい。
ほら、言ってるそばからお出迎えが来たよ。
「出たぁ!第一モンスター発見~」
「キラーアント、ピンチになると仲間を呼ぶ習性があります。手早く倒しましょう」
洞窟に入ってすぐ、大きなアリ型のモンスターが複数体こちらへ向かって来た。ダンジョン低階層では割とポピュラーなモンスターで一体一体は大して強くないけど数で押し切ろうとしてくるんだよね。ミカの言う通り、仲間を呼ぶ前に倒すのがセオリーである。
「ママは手を出さないで」
「私たちの戦いをご照覧あれです」
「わかってる。二人とも、相手が格下だからと油断しないようにね」
「了解です。行きますよ、ルー」
「ラジャー。ミカには負けないからね」
今回、道中の戦いに私は参加しないと決めている。
二人の楽しみを奪ってしまうのは良くないので観戦に徹しよう。
改めてミカとルーの戦いっぷりを見させてもらおうかな。
どれどれ…ちゃんとできるかな?
街中ではないので、二人は既に天使の翼を出現させている。
娘たちの戦闘意欲に呼応するかのように、純白の翼が輝きを帯びた。
ミカの手には双剣が、ルーの手には小さな魔法陣が浮かび上がる。
ふむふむ、ミカは武器を使った近接戦闘、ルーは魔法での中遠距離戦が得意なんだね。
10秒足らずで初戦闘は終了した。
言わずもがな、娘たちの圧勝である。
アリンコたちが可哀想になるぐらいの一方的な戦いだった。
「はい楽勝!ザコすぎてつまんないなあ」
「全然物足りませんね。あの程度なら10倍の数で来られても余裕です」
エッヘン!と胸を張る娘たち。
この結果は私も予想していたので驚かない。
私の見立てだと、二人はA級冒険者とも十分に渡り合える戦闘力を持っていると思う。
たぶんナメック星編のピッコロさんぐらいには強い。
娘たちの相手をするには、このダンジョンのモンスターではあまりに力不足。それでは面白くないし、何より娘たちの修行にならないので私は二人にとある提案をする。
「次からは制限をつけて戦ってみようか?」
私の提案に二人は首を傾げていたが、戦闘にちょっとした条件を付け加えるだけと説明したら了承してくれた。
先に進むと、程なくして二回目のエンカウント。
前回倒したアリの群れに、今度はコウモリ型のモンスターも一緒だ。
武器を構え、魔法の詠唱を始める娘たちに私はルールを提示する。
「ルーは魔法禁止!ミカは武器の使用と素手による格闘禁止!」
「うぇ!いきなり!?」
「なんですと!?」
出鼻を挫かれた娘たちは素っ頓狂な声を上げた。
その間にモンスターは迫っており、二人目掛けて殺到して来る。
「ちょ!ミカ、早く魔法でなんとかしてよ?」
「わかってますって、あなたこそ!私に攻撃がいかないようにしてください!このままでは詠唱に集中できません」
「知るか!根性で耐えろ!」
「無茶苦茶言いますね!くっ、私だって高速詠唱ぐらいやってみせます」
いい感じに混乱してるね。
戦闘直前で得意なスタイルを崩されると焦るでしょ。
二人には丁度いいハンデかな。
最初こそ焦っていたが二人は何とか順応してみせ、被害を受ける前にモンスターの群れを全滅させた。
この調子でじゃんじゃん次に行ってみようか!
「二人とも攻撃禁止!回避か防御だけで3分間耐える、はいスタート!」
「うひー!数が多くて捌き切れないよォ」
「こっちに来ないでください!おいバカ私を盾にするなぁー」
「今度はルーだけが攻撃、ミカはアシストに専念して」
「面倒です。やる気が出ません」
「ちょっと!真面目にやってよ!」
まだまだ行くぞ。
ここからは私もゲストキャラとして参戦するよ。
「私は通りすがりの魔女、今無性に誰かの脇腹をくすぐりたい!お、ちょうどいいところに天使の美少女がおるやんけ、くすぐったろ」
「ママ!?…そこダメ、あははははははっ!」
「戦闘中に遊んでいる場合ですか?……わっ!こっちにも来た、ちょ、やめ、アハハハハハハッ!」
「また通りすがった魔女です。傷ついたモンスターさんを癒してさしあげましょう。痛いの痛いの飛んで行け~」
「モンスターに回復魔法を!?なんて迷惑な!」
「こうなったら回復できないほどのダメージを与えて一気にぶっ殺す!」
「はい毎度どうも、スライムを投げたくなった魔女です。オラッ!食らいなさい!こいつも持ってけ!オラオラオラッ!」
「うあっ!?スライムが顔に!う~ベトベトして不快です」
「さっきから通りすがりの魔女うっっぜぇぇ!!
毎回違うルールを設定した上で私自ら妨害行為に励んだため、戦闘に歯ごたえと緊張感を持たせるに成功した。さぞかしいい修行になったことだろう。
この縛りプレイこそ、お母さんの愛のムチだ!
二人なら乗り越えてくれると信じているからね。
・・・・・・・・・
娘たちの奮闘っぷりを応援しながら4階層までたどり着いた。戦いには参加していないが、応援に妨害や茶々もたくさん入れていたので、私もそれなりに忙しかった。
「酷い目に遭いました…縛りプレイ恐るべし」
「ママのドS!これもう虐待だよ」
「ごめんごめん。これも二人を思ってやった事だから許してね」
決して娘たちが憎くてやった訳ではない。
私は心を鬼にして縛りプレイという試練を課したのだ。
「その割には楽しんでいたようですが?」
「そ、そんなことないわよ」
「スライム投げて来たときのママ、めっちゃ笑ってた!鬼畜だよ!」
妨害行為が楽しくなって、少し熱が入ったのは認める。
慌てる二人が可愛くて、ついやっちゃったんだ!
投擲したスライムは私お手製の無害なヤツだから安心してね。
冒険やダンジョン攻略に不測の事態は付き物だ。
自分より弱いモンスターしかいないと高を括っていたら、思わぬ出来事が発生してピンチになることもある。ウザったいお邪魔魔女に遭遇するかもしれない、そうなったときにも冷静に対処できる心構えというものを学んでほしかったのだよ。
「そんなジト目で見ないで。やり過ぎたのは謝るから、ね?」
「もう、ママの意地悪!でも好き」
「私たちを鍛えるためならば仕方ありませんね」
むくれていた娘たちが抱き着いてきたので、その頭を優しく撫でる。
よしよし。
雨にも負けず風にも負けず、意地悪なお母さんに負けることなく、たくましく成長するんだよ。
私たちは街中だろうがダンジョンだろうが、所構わずスキンシップしちゃう仲良し母娘なのだ。
空気を読まないモンスターがゾロゾロと近づいて来ていたが、邪魔されたくない娘たちが一瞬で葬り去っていた。
私に抱き着いたまま翼から刃や魔法を飛ばしての瞬殺。お見事だね!
本当に天使の翼ってのは不思議で便利だ。
攻撃や防御だけでなく他にも様々な使い方ができ、翼の中は異空間に繋がっていて魔法の鞄以上の収納スペースすらも存在する。
旦那様やガブリゼルさんが、何もないところから急に道具を出していたのはそういうからくりである。
強靭な肉体に豊富な魔力、翼という万能武装、そして神器という超常の切り札まで持つ……天使はマジでぶっ壊れ種族だよ。
そんな天使の母親になった私も、娘たちに負けることなく強くあらねばと思う。
●
5階層、娘たちは縛りプレイに四苦八苦しながもダンジョンの最奥へとたどり着いた。
「ここがゴール?お宝はどこにあるの?」
「こんな浅い洞窟に何を期待しているのですか?よくて魔石の欠片が転がっているぐらいだと思いますよ」
「えぇ…じゃあせめてボスは?ダンジョンの奥には強いモンスターが待ち構えているのがお約束だよね?」
「頭がフィクションに毒されてますね。どうやらボス的存在も見当たらないようですが」
「ガッカリだよ。こんなの私が求めたダンジョンじゃない!」
ルーが地団駄を踏み、ミカも心なしか残念そうにしている。
残念ながら、このフレア洞窟には貴重なお宝どころかボスモンスターもいないのだ。数年前にキラーアントの変異個体が出たらしいが、それもメガ様がワンパンで退治してしまったと聞いた。
はじめてのダンジョン、せっかく来たのにここで終わってしまったら消化不良だよね。
よし、ここはお母さんに任せなさい。
「二人ともボスはちゃんといるよ?」
「え?どこどこ?」
「???このフロアには私たち三人以外はいないはず。周囲の地形に擬態して隠れているのでしょうか?」
キョロキョロして辺りを見回す娘たち。
しかし、何も見当たらないし、出て来る様子もない。
私の言う事がわからなくて首を傾げてしまう。
「ちゃんと見て、ボスは二人の目の前にいるよ」
「目の前……まさか!?」
「え?…マジでぇ!いいの!そんなのあり?」
ふふふ、やっと察してくれたわね。
そうだよ。このダンジョンのボスはずっと一緒にいた。
「二人の相手はこのコルニクスだッ!!」
「「な…なんだってーー!!」」
『このディオだッ!』ぐらいのテンションで言ったら、娘たちもナイスリアクションで応えてくれた。ノリがいい子は大好きよ。
「本当にママが戦ってくれるの?嬉しいなあ」
「これは思いがけない幸運です。母さんに実力を見せるまたとないチャンス」
「二人ともお手柔らかにね」
歓喜した娘たちから並々ならぬ魔力がほとばしる。
私と戦えることが嬉しくてたまらないらしい。
『ママとは戦えない』『母さん…私には無理です』
みたいな感じの展開も期待していたが、そうはならなかった。
うちの子たちは基本的に好戦的なのである。
「全力全開で行くからね!ママに私のすごいところ見せちゃう」
「手加減などできるはずがありません。殺す気でお相手します」
「あの、本当にお手柔らかにね。お母さんまだ死にたくないから」
私をボコボコにできるのが嬉しいとかじゃないよね?
うっかり殺されたりしないよう、私も気合を入れなければ。
このまま戦闘開始したら娘たちが無茶苦茶しそうなので、事前にルールを決めておく。
神器の使用禁止は当然として、洞窟そのものを崩壊させるような攻撃禁止、降参または大きな怪我をした場合は即時戦闘中止、殺害は絶対にアカン!
こんなところかな?これだけ注意しておけば大丈夫だよね。
始める前にせっかくなので雰囲気作りもしておこう。
今から私はこのダンジョンのボス、ボス役をするお母さん。
いわゆるボスママとして娘たちの前に立ちはだかるのだ。
「くくくくく、よくぞここまでたどり着いた。褒めてやろう」
「急になんか始まったよ!?」
「母さんによる演習です。空気を読んで私たちも合わせましょう」
私のやりたい事をミカが察してくれたので、ルーもそれに従う。
付き合ってくれてありがとね。
「しかし驚いたな。まさか伝説の勇者が双子だったとは、褒めてやろう」
「そういう設定?私たち勇者なんだ」
「さしずめ母さんは魔王の先兵という役柄みたいですね」
「ほう、よく気付いたな。褒めてやろう」
双子の勇者が旅の途中で立ち寄った洞窟、その奥には魔王の手先が待ち構えていたのであった。というシナリオで行くつもりだからよろしくね。
「それにしても二人とも異様に可愛いではないか。褒めてやろう」
「さっきからメッチャ褒めて来るんだけど?」
「敵になっても母さんの愛は変わりませんね」
「褒めるところしかないな。褒めてやろう」
おっといけない。
今の私は二人の敵だと言うのに褒めすぎてしまったようだ。
敵ですら魅了するとはさすが私の娘たちだ。褒めてやろう。
褒めてばかりで話が進まないので、そろそろ本気出す。
「くくくくく、お前たちが私に勝てたなら伝説の武器『魔剣ダイコンブレード』をくれてやる。夕飯の食材にでもするがいい」
「それだたの大根ですよね?」
「あんまり欲しくないなあ」
「私が勝ったら、お前たちを抱きしめながらフカフカの布団でお昼寝してくれるわ!くははははははは!」
「すごく敗けたくなって来た!」
「大根より断然嬉しいご褒美です」
敵ボスのロールプレイなかなか難しいな。
私としてはもっとこう、強敵を前にしたピリピリした空気を演出したいのだが。
「さあ行くぞ、勇者たちよ。かかって来るがいい」
「大根は欲しくありませんが、敗けられません」
「勝ってママとお昼寝するんだもん」
勝っても敗けてもお昼寝はするつもりだ。
だから、ワザと敗けようとするのは無しだからね?
よし、このタイミングで言ってみたかったセリフを投入だ。
「貴様らのはらわたを喰らいつくしてくれるわっ!」
「何かグロいこと言ってる!?」
「母さんは私たちの内蔵を食べたいのでしょうか?」
あ、娘たちがちょっと引いた。
ごめんね、もっとマイルドな表現にすればよかったね、お母さん反省。
内蔵完食宣言は気持ち悪いから、やり直すね。
「貴様らの鼻水を飲みつくしてくれるわッッ!!」
「「よけいに気持ち悪いっ!!」」
失敗した。
私ってほんとバカ。
読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。