女体化して母親になったよ!天使な子供たちとファンタジー世界で幸せになります 作:きさまち
初めてのダンジョン攻略、私と妹は『フレア洞窟』という初心者向けのダンジョンへ挑むことになりました。愛してやまない母さんも一緒なので気分が高揚します。
洞窟に出現するモンスターはハッキリ言って弱すぎました。
妹が『ざぁ~こざぁ~こ』と生意気に連呼していたので、どつきたくなりましたが母さんの手前我慢しました。やれやれ、これならば私一人でも楽勝でしたね。
物足りなさを感じていると母さんが制限を設けて戦ってはどうかと、提案して来ました。いわゆる縛りプレイというものらしいです。
格下を普通に相手するだけでは修行にならないと思った私と妹は、縛りプレイをすることに賛同しました。
その結果、後悔先に立たずという言葉の意味を、私は噛み締めることになるのです。
一戦するごとに変わる縛りの条件、そして母さんの妨害工作は思った以上に厄介で苦労させられました。
特に、自称通りすがりの魔女(母さん)があの手この手で邪魔して来るのが、もう本当に悪辣でして…私と妹は度々窮地に陥ります。ベトベトのスライムまみれになったときの不快感は忘れられません。
母さん酷いです。アレは絶対楽しんでいましたね。
『アイーン事変』のときも思いましたが、母さんは妙に子供っぽいところがあって、私たちに対し意地悪やイタズラを仕掛けて来ることがあるのです。
そういうお茶目な母さんも嫌いではありませんが、迷惑をかけられる身としては反省してほしい気持ちもあります。
罰として、家に帰ったらたっぷり甘やかして頂きましょう。
悪戦苦闘しながらも最奥である地下5階層までやって来ました。
5階層はお宝どころかダンジョンのボスすら見当たりません。
何もないだだっ広い空間だけの階層、道中で見かけた雑魚モンスターも、ここにはいないようです。
妹は目に見えてガッカリしていました。私も残念でなりません。
意気消沈している私たちを見かねた母さんが不敵な笑みで驚くべきことを言い出しました。
なんと、母さん自らがボスとして相手になってくれるそうです。
母さんが戦ってくれる!私の心は喜びで満たされました。
いつかは手合わせを申し込むつもりでしたが、こんな形でそれが叶うとは思っていなかったので嬉しい誤算です。
ボスになりきった母さん(ボスママ)は『くくくくく』と、不慣れな笑い声を上げながら、たくさん褒めてくれました。私たちが勝ったら大根をくれるそうですが、正直いりません。敗けたら一緒にお昼寝をしてくれるらしいので、そっちの方が魅力的だと思いました。
内蔵を食べるとか、鼻水を飲みつくすとか、不穏極まりないというか、恐怖すら覚える発言をしていたのは冗談だと思いたいです。
さすがの私も鼻水を飲まれるのは嫌ですし、鼻水を飲む母さんも見たくありません。
ボスママとの戦いやるからには全力で挑みましょう。
母さんには最高の私を見てほしいですからね。
ミカエリアス、いざ参ります!
・・・・・・・・・・・
戦闘開始直後、
自然体で一歩踏み出した母さんは一気に距離を詰めて来た。
気づけばその手には愛用する魔法の杖(巨大戦斧)が握られている。
穏やかな微笑みのまま―――
―――母親が、あなたに急接近する。
凄まじい移動速度。
あなたは咄嗟に反応できない。
今脳裏を走った構文は何だ!?
そんなことより、母さんの動きが速すぎる。
しかも、この凄まじいプレッシャー、つい先ほどまで『鼻水飲む』とか抜かしていた人と同一人物とは思えない!
見るからに凶悪な戦斧の刃が私を両断しようと迫り来る。
だというのに、私の体は母さんの発するプレッシャーに呑まれて硬直してしまった。
ヤバいって、ヤバいですって!
(強…!速…!避……無理!! 否 死!)
マズい!やられる。
動かないと、動け動け動くんだ、私。
戦い始めてまだ数秒しか経っていないのに終わるなんて、情けないやら恥ずかしいやらで母さんに顔向けできなくなる。
(オイオイオイオイ!死ぬわミカの奴)
なぜか妹の心の声が聞こえて来やがった。
うるせぇぞ!少しは心配しろや!
双子ならではのテレパシー能力とか、今いらねーんだよ!
妙に嬉しそうな妹ボイスがムカついたので、死んでやる訳にはいかない。ここで秒殺されたら、妹に一生バカにされてしまう。
そんなのは姉として我慢できるはずがない!
ムカつく妹の声で我に返る事ができた私は自身の魔力で双剣を形成し戦斧の一撃をギリギリで受け止めた。
とてつもない衝撃、数メートル以上の後退をしてようやく私の体が止まる。
吹き飛ばされなかっただけでもマシだと思うしかない。
(ぐっ…ぅぅ…なんて重い…)
危なかった。まともに食らっていたら、今の一撃で終わっていた。
ムカつくから妹のおかげで助かったなんて思ってやらない。
同じ状況になったら私も適切なテレパシーを送ってやるからな。
「お?ちゃんと防御できたね。えらいえらい」
母さんが褒めてくれるが、私には返答する余裕がない。
辛うじて防御には成功したが衝撃で全身が痺れたまま。形成した私の剣には亀裂が入り、魔力を注ぎ続けていなければ早々に砕け散っていたことだろう。少しでも気を抜けば今この瞬間にでも斧の重量に剣ごと叩き潰されそうだ。
がぁぁ!パワーが違いすぎる!
まだ初撃を受け止めただけなのに、力の差を思い知らされ足がすくむ。
(お姉ちゃんビビってる~、ヘイヘイヘイ!)
だからさぁ、私の脳に直接野次を飛ばすなよ!
あいつ(妹)マジうぜぇ。
母さんと戦う前に邪魔な妹を始末した方がいい気がして来た。
認めよう、確かに私は母さんの力に怖気づいた。
でも、それだけではない。
私の内よりこみ上げる感情は恐怖と、それをはるかに上回る歓喜だ!
私は心の底から嬉しい。
母さんが最高に素敵な人だって再認識できたのだから。
強くて優しくてこの世の何よりも美しく尊い人。
そんな人から生まれた私も母さんのように強く気高い存在になりたい。
いや、なってみせる。ならなくては意味がない。
未熟な自分の至らなさを嘆くのは後回しだ。
前を向け、武器を構えろ、力を出し切れ。
今は母さんと手合わせできるこの瞬間に全集中するんだ。
「胸をお借りします。母さん」
「いいよ。ケガをしない程度に楽しんじゃおうね」
楽しむ余裕、私にはないのですが?
せめて母さんにガッカリされないよう、全力で相手をするのみ。
出し惜しみはしない、している暇は最初からない。
私は双剣を魔力で補強しつつ刃に変化させた翼も動かして攻撃する。
それに気付いた母さんは面白そうな顔をして再び戦斧を振るう。
臆するな、行けっ!前に出ろ!
気持ちで負けてしまっていたら、勝てるものも勝てなくなるぞ。
双剣を握る手に力をこめ母さんに攻撃する。
時に激しく、時に鋭く、何度も何度も高速で斬撃と刺突を繰り出した。
その動きの間を縫うように翼刃による攻撃も忘れない。
伸ばした刃による死角からの複数同時攻撃、距離をとられたらすかざず刃そのものを連続発射して追撃してみせた。
その全てを事も無げに対処する母さんは化物です。
『おお!』『すごいすごい』『わぉ!そう来るんだ』
私が必死になって繰り出す技の全てに歓声や驚きの表情で応える母さん。超重量を誇るであろう戦斧を手でもてあそびながら回避と防御を行い、絶妙のタイミングで攻撃を仕掛けて来る。
私の攻撃がまるで効いていない!?
母さんは時々『あいたっ!』と声を上げるけど、反応はそれだけで全然痛そうにはしていない。指先ほどの小石が当たったぐらいにしか感じていないようみ見える。
力もだけでなく、防御力もかなりおかしい。
母さんにまともなダメージなど与えられるイメージが湧かない。
落ち着け、落ち着くのです私。クールになれ。
私の役目は一秒でも長く母さんの注意を惹き付けることだ。
そもそもこれは一対一の戦いではないのだ。
誠に業腹だが、ここは血を分けたアホに頼る他ない。
おいアホ、もう十分だろ?そろそろ働いてもらうぞ!
さあ!やってしまえ!
「ミカ!そのまま押さえてて……いっけぇぇー!!」
私の妹(アホ)が横合いから飛び出して来る。
今の今まで魔力チャージをして控えていたのが完了したのだ。
妹、ルーが魔法を撃つ。単発の魔法ではない。
両手、両翼も使った魔法陣の複数同時展開、そこから放たれるのは恐るべき威力を持ったエネルギーの塊たちだ。
炎と水、風と土に光と闇、それぞれの属性を含んだ力の奔流が混ざり合い私と母さん目掛けて殺到する。
私ごと巻き込むつもりなのは腹が立つが、今はそれでいい。
母さんを十分に惹き付け終えた私は、翼で自身をガードし後方へ飛ぶ。
寸前でルーの魔法を回避した私は、魔法の乱れ撃ちに呑まれる母さんの姿を見た。
「へ?……ぬおーーっっ!!」
炸裂した魔法により複合属性の大爆発が起こった。
フロア全体を揺らす轟音と衝撃により、母さんの悲鳴が掻き消える。
ちょっとやり過ぎたかもしれない。
いや、でも、アレぐらいしないと母さんは満足してくれないと思ったから……死んで、ませんよね?
とにかく、今のはいい連携だった。
私が接近戦で相手をしている内に、妹が高威力の魔法を準備する。
前衛と後衛の役割をキッチリ果たした、王道の戦い方だ。
「やりましたか?」
「お姉ちゃんのバカ!それフラグだよ」
隣に降り立った妹から非難の声が上がる。
フラグとは何ぞや?
その疑問はすぐに解消された。
「あー、ビックリしたぁ…一度にアレだけの魔法を撃たれたの久しぶり」
爆発の煙が晴れる。
そこには、ほぼ無傷の母さんが立っていた。
土埃で多少服が汚れてしまっただけで、大きなダメージを負った様子は微塵も見られない。
妹の攻撃魔法をアレだけ食らっておきながら、ビックリした程度で済むのは意味が解らない。
「ルー!撃ち続けなさい」
「言われなくても!」
再び妹が魔法を練り上げ連続発射する。
私も翼から出来うる限りの刃羽を形成して射出した。
しかし、母さんはそんな私たちを嘲笑うかのように、ひらりひらりとリズミカルに攻撃を避けてみせた。
「ぐぬぬ、全然当たりません」
「ママ、踊ってるみたい」
尋常ではないスピードとアクロバットな動きで魔法を避け、時には戦斧を振るって刃羽を撃ち落とす母さん。
銀髪の舞姫による曲芸ダンス、思わず見惚れそうになる。
「見えるっ!ふふ、そう簡単に当たってあげな……痛ぁっ!?」
刃羽の一枚が額に命中した母さんは大きくのけ反ってすっ転んだ。
当たる時は当たるんですよね…
「や、やるじゃない。でも負けないからね!ギアを上げて行くよ」
額のダメージと羞恥で顔を赤くした母さんは戦斧をしっかりと握り直し、外に放出する魔力を一段階上昇させた。
更に跳ね上がったプレッシャーが私と妹を襲う。
「ヤバいって、全然効いてないって、ママ強すぎるって!」
「これはもう玉砕覚悟で突っ込むしかないですね。行きますよ、ルー!」
「嫌だよ。犠牲になるのはお姉ちゃんだけにしてよ」
「母さんに『ヤダ、うちの子たち弱すぎッ!』と思われてもいいんですか?いいからついて来い!」
「あーもう!神器使いたくなって来た」
それについては私も同感だ。
だけど、母さん相手に神器を使っても、どうにもならない気もする。
私と妹のダブル神器を普通に耐え切りそうで怖い。
悠然とこちらへ迫る母さんを見て私の頬を冷汗が伝う。
今更だが、母さんと手合わせするのは時期尚早だったかもしれない。
●
ヤバいよヤバいよ、思った以上にママ強すぎるよぉ。
相手がガブおじだったら既に100回以上殺しているぐらい膨大な数の魔法を撃ち込んでいるのに、ピンピンしているんだけど?
何なのアレ?耐久性は結界層より上なんじゃないの?
お姉ちゃんが接近戦で押さえている内に、私が溜めた魔法の一斉射撃で仕留める作戦だったのに…魔法が効かないんじゃ全てが無意味になる。
「あらら、動きが鈍ってるね。もう疲れちゃったかな?」
「ぐ…まだです。まだやれます!」
お姉ちゃんの動きが精彩を欠いている。
近距離でママの圧を受け続けながら、戦斧の剛撃と何度も打ち合っているから疲れて当然だ。お姉ちゃんの顔は常日頃の余裕が抜け落ちて、必死の形相になっている。マズいな、これもう長く持たない。
私もずっと魔法で攻撃しているんだけどそのことごとくが、弾かれたり躱されたり。しかも、命中したところでママは全然止まらない。
火球がぶち当たろうが、氷の矢が突き刺さろうが、風の刃で切り刻まれ岩石に押しつぶされても、光の熱線を浴びても闇の瘴気を諸に食らっても、平気なのは本当にどうかしている。
『わぁ!』『んぎゃー!』『いだぁぁい!』『もっとちょうだい!』
魔法が命中するたびママは悲鳴を上げるんだけど、元気すぎて余裕を感じる。ちょっと嬉しそうなのも何なんだろう?
お姉ちゃんの持つ双剣がついに砕け散った。
度重なる攻撃を防いだことで魔力の補強が追いつかなくなったのだ。
すぐさま新しい武器を形成しようとするが、間に合わない。
「ボディがガラ空き。ちゃんと防御して!」
「っ!?…がはっ」
ガラ空きになったところに、ママの回し蹴りが腹にクリティカルヒットする。お姉ちゃんはその勢いを殺し切れずに吹き飛ばされ、洞窟の壁に叩き付けられてしまった。ズルズルと壁から滑り落ちたお姉ちゃんはぐったりして意識を失ったみたい。事前にママが攻撃を当てると警告したので致命傷にはならないと思うけど、戦線復帰まで少し時間がかかりそうだ。
おいィィィ!前衛が崩れたら誰が私を守るんだよ!
そうなると、ママの相手は私一人がしないといけないわけで…
姉という肉壁を失った私はピンチなのである。
あ、ママとバッチリ目があった。
ママはいつ見ても綺麗だな~。
私の自慢のママは誰よりも美人なのだ。
「次はルーの番だね。お母さんと遊ぼっか?」
うわっ、ニッコリ笑ってる。怖っ!!
……逃げてもいいかな?
ママはおもむろに手に持った戦斧の柄を折った。
ポッキーを折るみたいな感覚で、躊躇なく折られた柄から新たな刃が出現し、瞬く間にママは両手には二振りの戦斧が握られる。
斧の二刀流!?前にミカが形成していた物とは威圧感が段違い。
「ブーメラン行くよ!そぉれぃ!」
「わっ!ちょ!ヤバッ!?」
出来立てのダブルトマホークをママが投げつけて来た。
あんなの当たったら痛いじゃ済まない。
お姉ちゃん程じゃないけれど、私だって飛行性能には自信がある。
これぐらい避けてみせるんだから。
くそっ、天井があるのがうっとうしい、ここが洞窟じゃなかったらもっと自由に動けるのに…
回転しながら迫る二つの凶刃を躱し、お返しに魔法を撃ち返す。
ママにどんな属性の魔法が有効なのか推理している時間はない。
今撃てるだけ全部撃つ!!
ブレイズウォール、メガスプラッシュ、エアブラスト、ストーンバレット、セイントビーム、ダークフォース……あれもこれも、全部まとめて持って行けぇーー!
・・・・・・・・・
「すごい。こんなにたくさん魔法が使えるなんて、ルーはもしかしなくても天才だね」
「……はぁ…はぁ…えへへ、ママの娘だからね…これぐらい当然…」
魔法を発射する移動砲台となりながらママと戦闘をした。
数分ぐらいしか経っていないけど、私はもうヘトヘトだ。
魔法での射撃戦を挑む私に対し、ママはあくまでも戦斧による攻撃を見舞って来た。あの武器、二つに分かれたかと思ったら、またくっ付いたり伸びたり形が変わったりと随分と芸達者な得物だった。ママ曰く魔法の杖らしいが、訳アリのヤバい武器なのは間違いない。
武器を投げて手ぶらになったママは素手での格闘戦に持ち込んで来た。
素手っておま……なんて最初は思っていたけど、ママは徒手空拳でもべらぼうに強かった。高速で飛び回る私を捕まえて投げ技をかましたり、関節を決めたりするのは、もうわけがわからないよ。
お姉ちゃんもママも、私の弾幕を物ともせずに突破するのやめてくれないかなぁ!
天界ではオカマ先生に『最強の魔法使い』になれるなんて褒められたから調子に乗っていたけど、自信なくすわー。
斧でぶん殴られ、素手でボコボコにされて、私の体はもうボドボドだぁ。常時全身にまとっているバリヤ機能、魔力障壁が無ければとっくの昔にやられてしまっていた。
ママはこれでも手加減しているというのだから、本当に笑えない。
たった数分で私はかなりの魔力を消費したというのに、ママに疲れはみえない。どんな体力と魔力してるんだかと呆れてしまう
くそっ、お姉ちゃんはまだ起きないの?
(あと5分…むにゃむにゃ…)
(オイ!寝たふりやめろ!私超ピンチなんだけど!)
(ざまぁ…)
(このクソ姉、あとで覚えてろよ)
あいつ(姉)、このまま私がやられるまで起きないつもりだ。
なんて薄情な姉なんだろう。
ママのダイコンブレードでお尻ぶっ刺されたらいいのに…
『ママと戦えるなんて嬉しい!』とか思っていた自分を殴りたい。
こんな無茶苦茶な人にどうやって勝てばいいの?
(犠牲のない勝利はありません。よろしいですね?)
(よろしくないわ!)
(今です!自爆しかありますまい!)
(誰がするか!お姉ちゃんがしてよ!)
いい加減、起きて加勢してくれないかなあ?
私から始めたけど双子テレパシー、ウザすぎる!!
ここまでお付き合いいただき、心から感謝申し上げます。