うちの子は天使です   作:きさまち

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身代わりの花嫁

 黒幕はなんと敬愛するリリアナ様だった。

 衝撃の事実に俺は感情が追いつかない。

 オンドゥルルラギッタンディスカー!!

 

「俺を…裏切った…」

「まあそうなるわね。でも、あたなたのことを気に入っていたのは本当よ?一緒にいて楽しかったもの」

 

 悪びれもせず裏切りを認めるリリアナ様。

 未だ感情の波が落ち着かない俺とは逆にリリアナ様はすごく上機嫌だ。

 そのことが酷く癇に障る。

 

「ここは一体どこだ?」

「私が所有する秘密基地。フフ、こういう言い方だとワクワクするわね」

「あの怪しい奴らは?」

「仕事熱心な協力者よ。何かと重宝しているわ」

 

 俺を実験動物のように扱った奴らとリリアナ様は繋がっていた。

 すごくショックだ、本当にショックだ。

 ショックが大きすぎて頭がどうにかなりそう。

 

「どうして笑っていられる!あいつらがここで何をしていたか知っている癖に!」

「大きな声を出さないで、ちゃんと聞こえてるわ」

 

 この秘密基地とやらには、俺のような仕打ちを受けた人が他にもいたはずなのだ。

 彼らが無事ここから生還できたとは到底思えない。

 ローブ姿のあいつらは身勝手な理由で人を殺している。

 それにリリアナ様も加担しているなんて…

 

 リリアナ様は慈愛に満ち溢れ、誰もが慕い褒め称える『善』なる人ではなかった。

 聖女の皮を被った紛れもない『悪』だ。

 

 その証拠に彼女は罪の意識を感じてはいない。

 悪戯がバレた子供のように舌を出し、この状況を楽しんでいる素振りすら見せている。

 

 ああ、イライラする。

 俺がいつも見惚れていたはずの笑顔が不愉快で堪らない。

 今まで様付けの敬称で呼んでいた自分が途端にバカバカしくなる。

 

「全部説明しろ。目的は何だ?俺は一体何に巻き込まれた?」

「痛いわ、クロウ。手荒な真似をする男はモテないわよ?あ、もう女だったわねw」

 

 こいつ…どこまでもふざけやがって。

 

 リリアナの肩を掴み問い質す。

 俺がどれだけ苦しんだと思っているんだ。

 お前のような奴を信じて、必死に命をつないだ俺をバカにしてんだろ?

 なあ?

 

 この女には説明する義務がある。逃げることなど許さない。

 もし口を割らないようなら、力づくでも…

 

「跪け」

「な!?…ぐ…ぅ…」

 

 体が勝手に…

 リリアナが『跪け』と命令した瞬間、俺の体は片膝をついてしまう。

 首に装着された首輪から妙な魔力を感じる、原因はこいつか。

 

「『隷属の首輪』と言うのよ。その首輪がある限り、あなたは私の命令には逆らえないのw」

 

 クソッ!やっぱりろくでもないアイテムだった。

 首輪の効果により、俺の体はリリアナの命令に服従する。なんてこった!

 歯を食いしばり必死に抵抗しようとするが、体はまるで言うことを聞かない。

 

「まだ頭が高いわね。這いつくばってちょうだいな」

「が…ぁ…」

 

 途端、体が一気に重くなり押しつぶされるような感覚に襲われた。

 命令通り床へと倒れ伏してしまう。

 血の味がする。顔を打ち付けたせいで口の中が切れたようだ。

 

 無様な俺をリリアナが嘲るように笑う。

 くっ、悔しい。こんな奴にいいようにされるなんて。

 顔だけを何とか動かし、リリアナに恨みのこもった目線を飛ばすぐらいしかできない。

 

「そんなに睨まないで、望み通り説明してあげる。私の事情を知れば、あなたも同情したくなるはずよ」

「同情…だと?」

「聞いてくれる。私ってばね、とってもかわいそうなの」

 

 媚びるような表情を作り、リリアナはペラペラと自分語りを始めた。

 

 ・・・・・・・・・・・・・

 

 リリアナは数多くの優秀な魔術師を輩出する家系に生まれた。

 彼女は幼い頃から神童と呼ばれ、周囲からの称賛と羨望を絶えず受けて育つ。

 恵まれた容姿と優れた魔法の才能、なによりも彼女には人を惹き付ける妖しい魅力があった。

 

『幸せね、幸せだわ。でも、足りない、全然足りない、これっぽちじゃ満たされない』

 

『もっと欲しい、もっとちょうだい、もっと寄こせ、もっともっともっともっともっと…ヨコセ』

 

 人並み外れた才を持つ彼女は、人並み外れた欲望を併せ持っていた。

 他者から認められたい。自分を価値ある存在として認めたい。

 幼少期の小さな承認欲求は成長と共に肥大化し歪んで行く。

 

 いつしかリリアナは自分こそが、この世界の主役(ヒロイン)だと信じて疑なくなった。

 

 そうあるべきだと思い。そうなるように努力した。

 日々善行を勤しんで人望を集めていく傍ら、裏では邪魔者を蹴落とすことに尽力する。

 人心掌握に長けていたリリアナは心理誘導で他者を都合よく動かし、障害となりえる者を次々と排除していった。

 どんなゲームより面白かった。

 

 自分の魅力が通じない相手などには、実家の力も全力投入して陥れた。

 彼女にはそれができるだけの家柄と財力、そして躊躇なく悪を成す行動力があった。

 人が落ちていく様を見るのは実に痛快なのだとリリアナは学んだ。

 

 リリアナはその本心を、誰にも知られる事のないまま大人になっていく。

 彼女の欲望は際限なく成長していった。

 

 王立魔法学院を首席で卒業したリリアナは周囲からの後押しもあり、聖女の座へと就いた。

 【祝福の聖女】リリアナの誕生である。

 もちろんリリアナ本人に他者を救いたいと願う心や、神への大いなる信仰心がある訳ではない。

 聖女になる道を進んだのは、単純に今よりもっとチヤホヤされる立場を得るためだった。

 聖女というのはリリアナには打って付けの天職に他ならない。

 ちょっといい顔をすれば国中の老若男女どころか、国の重鎮や王族ですら自分に心酔した。

 どいつもこいつもチョロすぎて、笑いを堪えるのが大変だったww

 

 リリアナの実家には表沙汰に出来ない秘密がある。

 

 彼女の先祖にあたる人物は平民出身のどこにでもいる魔術師だった。

 だが、ある時から魔術の才能を急激に開花させ、途方もない実績と莫大な富を得て一躍上流階級の仲間入りを果たしたのだ。

 当然この成功譚には裏があった。

 彼はとある魔女から奪った物品を用いて禁術を使い『邪神』と呼ばれる異形の存在の召喚に成功する。

 邪神は『代償と引き換えに願いを叶える』そんな取引を持ち掛けた。

 その取引に魔術師は二つ返事で応じ、類まれなる魔力を得ることに成功する。

 代償は愛する妻の命だったが、それぐらいなら安いとさえ思った。

 

 それ以来、長年に渡り邪神と魔術師は協力関係を築いていくことになる。

 邪神は人の命を欲したが、そんなものでよければいくらでも用意した。

 このおぞましい関係性は代々受け継がれ、リリアナの世代になっても続いていた。

 聖女として認めらる程の才能も邪神の力によるものだ。

 リリアナの一族は最早、邪神とは切っても切れない関係になっていたのである。

 その秘密を守るため、そして邪神のもたらす恩恵を有効利用するために『殉教団(マルティール)』という秘密結社と手を結び、多くの犯罪にも手を染めた。

 

 リリアナを筆頭にした清廉潔白な一族は、蓋を開けてみれば邪神を崇め、殉教団に汚れ仕事をさせる醜悪な存在でしかなかった。

 

「ここまではいいかしら?」

 

 一端話を区切ったリリアナが俺の表情を伺う。

 邪神とか出て来てもう何が何やら、頭がパンクしそうになったが、リリアナもその一族も先祖代々のクソ野郎だと理解した。

 そして、俺を実験動物扱いした連中…殉教団、その名前覚えたからな。

 

「それで、俺を女にした理由は?」

「焦らないで、本番はここからよ」

 

 年に一度、邪神は恩恵の対価を請求する。

 準備期間も加味して事前に通達が来るのだが、今回、邪神が望んだものが問題だった。

 

「あいつはね、よりにもよって()()()()()()()の。酷い話でしょ?」

 

 邪神は召喚された時からずっと機会を窺っていた。

 自身の恩恵に縋り、魔力を高め、その血を継いでいった先に実るであろう極上の果実を待ちわびていた。

 すなわち、リリアナこそが邪神の目的だったのだ。

 

「なんの…ために?」

「それが最悪なの!私を嫁にするとか抜かしたのよ。信じられないわよねぇ」

「何?」

「私に邪神の子を産ませたいんだってwバカバカしいにも程がある!そう思わない?」

 

 子を産ませるだと…

 邪神ってのはその目的ために、魔術師の一族をずっと養殖して来たってのか?

 繁殖のために人間を…

 なんとも気持ちの悪い話である。

 

 当然リリアナは抵抗した。 

 女なら代わりをいくらでも用意すると提案したが、邪神は応じてくれない。

 『純潔の乙女』であるリリアナに身も心も捧げよと、邪神は頑なだった。

 そこで仕方なく、リリアナは真実を告げた。

 自分はとっくの昔に生娘ではない。お腹には既に子がいることを暴露した。

 

「……は?」

「気付かなかった?私今、妊娠してるのよ。相手はこの国の第二王子」

 

 全然気付かなかった、しかも第二王子って…

 

「本当は第一王子の方がタイプだったんだけど何故だか嫌われちゃったのよね、残念。まあ第二でも王子だし顔も合格点、何より扱いやすいから伴侶にするにはこっちの方が最適だったわ」

 

 こんな女と子作りした、第二王子が哀れでならない。

 きっと本性知らないんだろうな。

 女を見る目がある、第一王子には心からの称賛を送りたい。

 

 第二王子は熱愛の末にリリアナを伴侶にしたと思っているが、それは一方的な思い込みである。

 全ては聖女という肩書では飽き足らなかったリリアナの目論見だ。

 次代の国王を産む王太后ともなれば、自分の地位は更に盤石なものとなる。

 そのために第二王子と関係を持った。

 リリアナにかかれば王族も、そして生まれて来る我が子も自分を飾り立てるトロフィーにすぎなかった。

 

 リリアナが妊娠していると知った邪神は激怒した。

 下げたくもない頭を必死に下げて許しを請うたが、徒労に終わる。

 荒れ狂う邪神によって、長年一族に仕えて来た多くの従者を失うことなった。

 まあ、その程度の損失で済んだのは幸いだった。

 自分という至高の存在(ヒロイン)が生きていれば、他の有象無象がいくら死のうが些事である。

 

 ひとしきり暴れた邪神は、落ち着きを取り戻した後、リリアナに責任を取るよう告げた。

 『代わりの花嫁を用意しろ』できなければ、一族郎党地獄を見せてから殺すという。

 死の宣告を受けたリリアナは代用品を探すことに奔走することになる。

 

 花嫁の条件、聖女級の魔力を持つ純潔の乙女、おまけに容姿端麗でなければいけないという。

 邪神の癖に面食いなのかよ!

 非常に面倒で呆れてしまったが、命がかかっているので従うしかない。

 最初は同僚である既存の聖女から適当に見繕ってやろうとしたが、彼女らは常に多くの護衛に守られており、かどわかすにはリスクが大きすぎた。

 聖女級の魔力有した人材など簡単に見つかるはずもなく、仮に見つかったとしても美人かつ生娘となると更に限られて来る。

 ようやく発見したと思ったら、そいつは手練れの魔女で殉教団の兵隊が返り討ちにあう始末。

 

 さすがのリリアナも今回ばかりは頭を抱えた。

 年端も行かない一族の聖女候補を全員まとめてくれてやるから勘弁してほしいなあ。

 なんて思っているところで、普段なら気にも留めない、殉教団からの報告書に目が留まった。

 

『第13回聖遺物投与実験レポート』

『投与してから数分後に被験者の肉体に変化あり』

『肩部から腕のようなモノが数本生え増殖、頭部が二つに分裂したままうわ言呟き続ける』

『更に数分後死亡確認、肉体の急激な変化に耐えられなかった模様』

『これまでの実験結果から生物(人類)の進化を促進する作用があると考えられる』

『なお、モルモット等のげっ歯目や猿などの霊長目に対する投与実験では肉体の変化は見られず』

 

『第42回聖遺物投与実験レポート』

『被験者は男性、死亡確認、胸部に膨張した乳房らしき部位が見受けられる』

『男性器が縮小したような…元から小さかっただけかもしれない』

『被験者はいつものように解剖検査の後、廃棄処分…』

 

『第79回実験レポ』

『今回の実験結果で確証した。聖遺物はただ進化を促すだけではない』

 

『この聖遺物は、男性を女性に性転換させようとする

 

『それが何を意味しているのか今のところ不明』

『聖遺物を発見した遺跡は〖神の断片〗なるモノを埋葬したと目される禁測地だ』

『これは我々が想定している以上の代物なのかもしれない』

『そんなことより、この聖遺物の謎を解析すれば、性別を自由に変更できる…』

『被験者を男性に絞って研究する申請を…』

 

『○○○レポ』

『被験者の魔力値が高いほど生存時間が伸びる傾向にある』

『実験の完遂にはある程度の魔力を保有しているのは当然として…』

『変化に耐えられるだけの強靭な肉体と精神の持ち主が必要だ』

 

『追記、後で判明したが二日間生き延びた被験者の魔力値が著しく上昇していた』

『聖遺物が肉体を変化させる際に何かしらの相乗効果が発現したと推測する』

『その上昇率は邪神が提供する秘薬の効果を大きく上回っている』

『聖遺物の新たなる可能性、魔女ないし聖女の量産も夢ではな…』

 

 邪神の指定した期限が迫る中、リリアナはひとつの光明を見た。

 レポートを読んでいくうちに、期待は大きくなっていく。

 そうだ、何故今まで思いつかなかったのだろう。

 見つからないのなら、作ってしまえばいいではないか。

 

 自分たちの手で、邪神の花嫁を作ればいいのだ。

 

 すぐに殉教団の研究チームに連絡を取り予算を増額する。

 彼らが必要と言えば、あらゆる手段で被験者をかき集めた。

 実験の進捗はトントン拍子とは行かなかったが…

 リリアナはこの手法が成功するという奇妙な確信があった。

 

 ちょうどそんな時、リリアナは【薬りのクロウ】に出会ったのだ。

 

「あなたを一目見て思ったわ。私を救ってくれるのは『この人だ』ってね」

 

「見てくれは悪くないし、魔力もそこそこ、それにあんな綺麗なポーションを作れるんですもの」

 

「聖遺物との相性だってきっと悪くないと思ったわ」

 

「私はあなたに自分の運命を託したの。あなたに全てを賭けてあげたのよ。そうして…」

 

「一世一代の大勝負に私は勝った!」

 

 クロウへの実験が始まってから、リリアナは生まれて初めて心の底から神へ祈った。

 どうかクロウが生き残りますように、私の身代わりになってくれますようにと…

 クロウが絶望に染まらぬようリリアナを思っていたように、リリアナもクロウを思って祈りを捧げていた。

 もっとも、後者は自分可愛さ故の行動だったが。

 

「勝ったのよクロウ!私たちは勝った!ねえ、もっと喜んで、あなたは私を救う英雄(ヒーロー)になったのよ。光栄でしょ?素敵でしょ?泣きたいぐらい嬉しいでしょ?だってこの私の役に立てるのだから!ねえ、そうでしょ?何とか言ってちょうだい、今どんな気持ちか教えてちょうだいクロウ。ねえねえねえねえねえ、ねえってば!」

 

 気持ち悪い。

 

 リリアナの計画を聞き終えた俺の感想は気持ち悪いの一言に尽きた。

 目を見開き涎を垂らさんばかりの表情を見せる女が気持ち悪くて仕方がない。

 

 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!

 

 この女の出生も生い立ちも考え方も、こいつを取り巻く全てがキモすぎる。

 そんなキモい奴に騙されて女体化までしてしまった、俺自身も気持ち悪い。

 今まで感じた事の無いような圧倒的不快感に鳥肌が立ってしまう。

 

 次に湧いて来たのは激しい怒りだった。

 こいつ、今までどれだけの人を奈落に突き落として来たのか?

 数多の屍の上で平然と笑う、聖女の面汚しめ。

 こいつの外面に気を許してしまった事は、本当に痛恨の極みである。

 

「さっきから聞いていれば、ふざけやがって!何様のつもりだ?」

「ふざけてないわ。私はいつも大真面目よ」

「こんなこと許されない。お前の悪事はいずれ白日の元に晒される」

 

 人ひとりが消えたのだ。

 どれだけ隠しても何かしらの痕跡は残る。

 薬売りだった俺は村にも街にも顔見知りは多かった。

 あれから何日経ったか定かではないが、数週間も行方不明だったら誰かが不審に思うはず…

 

「残念だけど、それはないわ。根回しは得意なのよ」

 

 リリアナが何かの紙片を投げて寄越した。

 それは新聞であり、日付は一週間も前の物だ。

 事件を知らせるニュース記事の内容に俺は目を疑った。

 

『事業資金を横領して行方をくらませていた【薬売りのクロウ】遺体発見か?』

 

 なんだよコレ…俺は横領なんかしていない!

 それにまだ生きている!

 

『逃げられないと判断しての自殺だと推測され…』

『この事業には聖女リリアナ様も出資しており、彼女の信頼を裏切ったとして全国民が憤慨して…』

 

〖クロウの故郷である村長のコメント〗

『あいつは昔から素行の悪い奴だった。いつかこの様なことをしでかすと、心配しておったんじゃ』

 

〖聖女リリアナ様のコメント〗

『彼を心から信じておりました、残念でなりません。何か事情があったのなら、こんな事になる前に相談してくだされば、いえ、全ては私の不徳の致すところですね…』

 

 あのクソ村長が俺のボロクソに言い。

 リリアナが被害者面して、聖女らしい自責の念を演出している。

 新聞紙を力任せに握りつぶす。

 やったな、やってくれたな!

 マスコミも世間も何もわかってない。

 被害者は俺だ!俺は騙されただけなんだ!

 

「安心して、私たちの事業はあの村長さんが引き継いでくれる手筈になってるわ」

 

 全然安心できん!

 

「ちょっとお金を積むだけで、あなたのこと全部喋ってくれたわ。余程、あなたが目障りだったのねw」

 

 あいつマジ最悪。

 俺の育ての親と血が繋がっているとか嘘だろ。

 

「工場の運営権をあげたら、あなたのことは如何様にもしていいとホクホク顔で言ってたわね。これって私がお金を出してあなたを買った事にならない?つまり、あなたの処遇をどうしようが私の自由よね♪」

 

 人身売買じゃねーか!

 くそったれ同士で勝手に売り買いしてんじゃねーよ。

 

「わかったでしょ?誰も助けになんか来ないわ」

 

「あなたの帰る場所はもうないの【薬売りのクロウ】は死んだのよ」

 

 監禁されている間に、俺は犯罪者の汚名を着せられた挙句、もう死んだことにされていた。

 最低最悪すぎて言葉もない。

 

「あなたに出会えて良かったわ。ありがとう、本当に大好きよ、クロウ」

 

 ああそうかい。

 俺はお前という存在がこの世で一番嫌いだけどな。

 

 真実を知った今、リリアナに抱いていた恋心は反転し激しい憎悪と化した。

 死ねばいいのに。

 

「大丈夫よクロウ。あなたならちゃんと私の身代わりになれるわ」

 

 なってたまるかボケ。

 お前さっきからずっと気持ち悪ぃんだよ。

 

「邪神の花嫁になる。あなたを祝福してあげる♪」

 

 呪いの間違いだろうがカス。

 怒りで脳の血管がはち切れそう。

 

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