ホモビにでただけで異象ハンターにされる男 作:ニコラス―NICORUTH―
「 田所〜、起きろ朝だゾ〜 」
「 んにゃぴ・・・ 」
この男、田所浩二の生活が一変したのは、突然のことだった。
奇妙な感覚を覚えた後に、特殊能力を得た彼は、その瞬間異象と戦うという宿命を背負うことを義務付けられた。
そんな彼が居としているのが、この絵空町にある一軒家である。
この異象ってなんだよ、という者が一定数いるかもしれないので一応説明すると、SCP染みた摩訶不思議な怪物体、と覚えればいい。
それらが人々と共存するこのヘテロシティにおいて、この異象を討伐、というよりは収容して鎮圧するのが、田所の仕事である。
そして今回、日曜の朝早くからお呼びがかかったということは、どこぞで異象が暴れているということに他ならない。
今日も今日とで、エイボンやらステリー急便やらと同様の環の下位組織、"迫真異象部"に依頼が舞い込んだ。
最も、彼らと比べれば、この組織の知名度はあまり知られていないが。
「 また異象だ。仕事シルルォ? 」
「 あ待ってくださいよぉ、せめてモーニングルーティンくらいさせて、どうぞ。 」
「 お、お前朝何やってんだ? 」
「 みんな大好きコールドシャワー( ようつべ広告 ) 」
どうでも良いことだが、最近田所はコールドシャワーに凝っている。
身体を温めるところを敢えて冷たいシャワーを浴びることで、色々いいことづく目であるらしいが、正直それのなにが良いのか、三浦にはわからなかった。
「 いいダルルォそんなもん。
あんなのしゃっこくて風邪引くだけゾ。 」
「 MURはん、美容には気ぃ使った方がいいみたいっすよ?
自分ら商売上人と関わるんで、身だしなみとかに熱い視線向けられるってそれ一番。 」
「 おっそうだな。だが田所、今こうしているうちに、依頼人が堪忍袋重点になってるかもしれないことを忘れてはいけないゾ。
自分らに被害がでて、俺らの仕事が半端だったのをいいことに料金踏み倒されて骨折り損になりかねないゾ。
嫌ダルルォ?アホみたいに汗水垂らした末にアガリ/zeroなんて。 」
「 そうっすね。いまいち調子がでねぇがしょうがねぇなぁ。じゃけん異象レ◯プしに行きましょうね。 」
「 おっその意気ゾ。 」
こうして、田所は三浦に連れられ、邸宅を後にして現場に向かった。
では、改めて紹介しよう、ヘテロシティ師匠だ。異象を取り扱う機関、異象管理局のお膝元として、世間で知られている。江戸幕府でいえば、江戸のような街である。
この街では、人はあれやこれやとしているが、時折そんな日常の中で、わけのわからぬ異象が非日常の領域展開をしてくる。
分かりやすくいうと、自分が手がけたアートをサーフ系異象にめちゃくちゃにされたり、海底が視えるトンネルの中をユーロビートでも聴きながら車で攻めていると異次元の門が開いてL◯Lの海で満たされたような空間にでて、クジラと格闘が始まったりする。
そんな怪奇現象が起ころうものなら、パンピーは
「 ああもうめちゃくちゃだよ 」となるのは自明の理。
そんな時の為に、超能力を得たり、異象と契約してるチェン◯ーマンのデビルハンターみてぇな業者、つまり異象ハンターがいるわけであり、田所と三浦はそんな業者の一人であるわけだ。
そして今回も、そんな異象が暴れている。
トレーラーとタコが合わさったような、トレーラータコである。
そのまんまな名前通り、緑色の車体から触手をだして、吸盤を張り付かせてウネウネと蠢くそれは、車の行き交う道路のど真ん中では邪魔を超えた邪魔以外の何ものでもない。
そこへ、
『 デッデデデーデデデデデドン!♪ 』
『 デドン!デドン!デーン!♪ 』
『 デッデドン!デーデデ!デデデドン!♪ 』
『 デドン!デドン!デーン!♪ 』
『 デッデードーン↓♪ 』
『 デッデードーン↓♪ 』
『 デードデードデードデン!
デェェェエエン↑♪(絶望) 』
この世の終わりのようなやかましい某怪盗の孫のテーマ曲みたいな不協和音をレコーダーから鳴らしながら、2台の車両が車の列を乱しながらタコの前で停まる。
それは車両というより、ゴーカートと呼んだほうが早いだろうか。
そう、あの配管工のヒゲの兄弟が乗ってそうな、K01と呼ばれている車種だ。
「 あれっすねぇ!管理局からの依頼にあったタコみたいなやつ。 」
「 確かにこんなところにでては迷惑千万もいいところで、反応に困るし、下手に手を出せないよなぁ。
プロの腕の見せどころさんゾ。
田所、ここで処すゾ。 」
「 オッスオッス! 」
田所が腰に差した刀を抜こうとしたその時、
「 ん? 」
トレーラータコが触手と目を引っ込めて、トレーラーにトランスフォームした。
そして、そうして次にどんな行動をとるかなど、おおよそ想像がついた。
「 逃げた! 」
「 追うゾ!
車と呼ぶにはあまりにもチープというか、イレギュラーすぎる愛車に乗って、二人は金蔓の影を追跡し始めた。
異象ハンターからは逃れられない。
たったの140馬力とは思えない速度で、公道を突っ走るゼロイチ。
対してトレーラータコは、ひたすら逃げの一手。
なのだが、仮にもトレーラーであるとするには、不自然なほどのスピードがでている。
「 ファッ!?なんすかアイツ、170位はでてないすかね? 」
「 エンジン系に手を加えられてるな。このパンパンうるせぇ音、ミスファイアリングシステムか?ラリーとかで使うやつゾ。 」
「 なんでそんなもん積んでんすかね?そもそもあれ改造できるんすか? 」
「 それをオラに聴くな!? 」
「 しかしこのままだと見失うゾ。
幾らエンジンや駆動系を弄ってるといっても、所詮ゼロイチはゼロイチゾ。こんな速度差じゃ吹っ切られる。 」
「 んじゃあMURはん、タイヤに弾射って脚を止めましょうよそうしましょうよ。 」
「 お、いいゾ。
・・・ということで頼むぞ、ポッチャマ・・・ 」
「 ミトケヨミトケヨーっ 」
三浦の影から現れた、青いデフォルメされたペンギンのような物体。
三浦と契約している異象である。
ポッチャマと呼ばれたそれはトレーラーめがけて、超高圧水流を数発発射するが、キュルルルルルと音を立てて車体を横に逸らされたことで、そのいずれも外れてしまう。
その後には、パンパンという、未燃焼ガスの排気音がなるばかりだ。
「 ダメだな、アレじゃ躱されるゾ。 」
「 んじゃあ、どうすんすかね?このまま走らせて疲れが来るのでも待つか? 」
「 いや、このまま追うゾ。 」
「 おう大丈夫か大丈夫か?それだとこっちがガス欠になるじゃない? 」
「 狙い目はある。この先は・・・ほれ、見ろよ見ろよ。 」
MURが指さした先、前方の緑の車台が、横になって道路を滑り始めている。
「 曲がり角ゾ。ドリフトの隙をつかせて貰う・・・そこだ!(ニュータイプ) 」
放たれる水流は、今度は命中し、トレーラーのタイヤを見事に撃ち抜いた。
それでいて尚も走ろうとするトレーラーであるが、空気の抜けた状態では、猛スピードで突っ走ることなどできやしない。キュルルルルルと悲鳴を上げて、火花を散らすばかりだ。
結局、逃げ切れないと悟り、ゲソを展開して戦闘態勢に移らざるを得ない。
しかし、一つ明確な見落としがあった。
それは・・・
「 おっ、止まったな。よし、んじゃぶち込んでやれ!! 」
「 オッス! 」
相手が、自分を狩りに来た百戦錬磨の異象ハンターであることだ。
「"邪剣夜"、逝きましょうねっ!」
停車したK01から飛び上がった田所の一閃が炸裂する。
これまで幾多もの異象を葬ってきた必殺の一撃だ。
それを受けてトレーラータコは潔くその姿を消滅させ、それがいた場所には、キューブがグルグルしている。
「 収容しますよ〜、するする。 」
田所がキューブに近づくと、
ピチュ、ピチュ、チュウ!!
と汚ぇ音を立てて、それを取り込んだ。
無力化した異象が、また起動して暴れ出さぬようにするシークエンス、それが収容である。
これを施して、異象ハンターの仕事が一つ片付くのだ。
「 トレーラータコ、収容完了、でいいっすかぁ? 」
「 いいゾ・・・それより田所、依頼人から早速報酬来たゾ。 」
「 幾らすかね? 」
「 20000ファンスゾ。 」
「 ファッ!?あんな危なっかしいので2万!?ぼったくりやろ! 」
「 文句いえないゾ。なにせ相手は・・・ 」
「 相手は誰だよ。 」
「 異象管理局局長その人ゾ。 」
「 ・・・ファッ!? 」
二万ファンスという高いようで高くないような報酬金から、どこぞの業者かなにかだと思っていた田所は面を喰らった。
まさか、管理局の長直々の依頼だったとは。
しかし、ここで新たな疑問が生まれた。
ならば何故、わざわざ自分達に仕事を回したのだろうか。
異象管理局は、その名の通り、異象の収容、制御を主の目的の一つとしている。
もちろん、そのための部隊だってある。
それなら自分たちであのトレーラータコを無力化したほうが早いはずだ。
なにがあって、
それはすぐに答えがでた。
「 これはな、オラの実技試験だったんだゾ。 」
「 実技試験・・・MURはん、つまりそれって!? 」
試験という言葉を聴いて、田所が察したもの。それは、裏切りだ。この坊主頭の。
迫真異象部設立以来苦楽を共にしてきた仲間が、また一人。
「 収容執行隊に誘われてな。お前もダメかと言ったら、あくまでオラだけだと言われたゾ。 」
「 ファッ!? 」
「 すまないな田所。本当に申し訳ない(メタルマン)
だが、収益やらキャリアやらを取らねばならない時もあるゾ。人間は義理人情では生きられないんだ。 」
「 MURはん・・・! 」
「 二万ファンスはそのままお前にやる。
お前とはもう、これっきりゾ。 」
MURはポッケからなにかを取り出して、胸元につける。
名札だ。MURの顔とともに確かに異象管理局とある。
それと、迎えらしき車両がMURの手前で停まった。
Pendragon。レガリア社製の高級車である。その高貴かつシャープなデザインはまさにラグジュアリーに相応しい。
その額は1200万ファンス。31万2000ファンスのK01とは雲泥の差だ。
その様相もあって、田所はMURが、自身の手の届かぬところにいるのだと否応なしに思い知らされた。
「 じゃあな、田所。できればオラを、許さないでほしいゾ。 」
自身に背を向け、
彼らは長い付き合いであったが、
人間は、長いものに巻かれる他ない。
田所の肩には、そんな非常な現実が重くのしかかっていた。
彼は孤独だった。最早仲間などいなかった。
淫夢という多様性という観点から、ネタ盛り沢山なNTEは相性いいってそれ一番言われてるから。