ホモビにでただけで異象ハンターにされる男   作:ニコラス―NICORUTH―

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 早速で悪いが、オリジナル異象回です。


公道の見えざる魔物 1

 

「 店長、ここにはもう、誰もいないですよ。 」

 

「 もぬけの殻だねぇ。アイツ、もう出払ったみたいだ。

しかし局長サマも難儀なことをするものだよ。

人手不足は分かるけどね。 」

 

 銀髪の少女と和傘を差した和服の女の目の前には、伽藍の堂となったアパートの一室。

この部屋の主人がいなくなって久しいようだ。

 

「 どうして、アルフェード局長は引き抜きを? 」

 

「 単純な話、人手不足さ。ほら、管理局は使えるならファルディーヤみたいな危なっかしい奴や異象だって受け入れるだろう?

それで他所からも、こうやって引きこんでるんだよ。

実際、ヘテロシティは管理局のお膝元だし、よそにも支部を設けなきゃならないから、人の手なんていくらあっても足りないのが現実さ。

そんな気はないし言い方は悪いがまるで餓鬼道だね。 」

 

「 どんな方だったんですか、その人。 」

 

 鑑定士と呼ばれる淑女に聞かれ、月退潯は彼のことを思い返す。

 

「 明るい奴だった。それでいて仲間にも慕われる、良い大将だったと思うよ。 」

 

「 だった、というと? 」

 

「 あいつのいたグループはねぇ、それなりにできるとこだったのさ。

メンバーは一番多かった時は24人いたが、ある時を境にみんな出て行っちゃってねぇ、ついこないだ古株の最後の一人もいなくなっちまったのさ。

盛者必衰とはいったもんだが、ここまでとはね。 」

 

「 局長はどうしてその人まで引き入れようとしなかったんでしょう? 」

 

「 ・・・臭いだよ。 」

 

「 臭い? 」

 

「 そう。代償らしいけれどもあいつね、臭うんだよ。そのせいであまり集団行動には向かない。それで入れるのを躊躇ったんだろうね。

まあ、うちらも大人数での仕事なんて滅多にしないがね。 」

 

「 その人、田所さん、でしたっけ?どこでなにをしているんでしょう? 」

 

「 さあ?アタシにもさっぱりだよ。ただ、あいつは図太いからねぇ。

この程度じゃ、へこたれないさ。 」

 

 内心どこか心配にはなりながらも、潯はそういった。

 

 

 

 

 その頃、田所はというと・・・

 

「 うん、美味しい!こういう時はラーメン食うに限るってはっきりわかんだね。 」

 

 絵空町からミゲル区に居を移し、引っ越し手続きの済んだ後に丁度見つけたラーメン屋で麺を啜っていた。

その様子からは長いこと共に過ごした仲間の裏切りに唖然としていた様を感じさせない。

その手前では、白いバンダナを巻いた店長らしき男がスープを煮込ませ、麺を茹で、湯切っている。

男はチラリと外に視線を向け、なにかを察したか田所にこう尋ねた。

 

「 お前、見ない顔だがあれで公道を走ってるのか? 」

 

 店主は改めて田所の乗ってきたマフラーが増量されているK01に目をやる。口ぶりからするに車に一家言あるのだろうか。

 

「 そうっすよ。 」

 

「 悪いことは言わねぇから公道じゃまともな車に乗れ。 」

 

「 ・・・は!? 」

 

「 そいつはな、車というよりスクーターに近い性質のマシンだ。レースで使えないこともないが、厳密には原付なんかと同じ括り、ていうかニューホランドのデ◯ズニーランドに置いてあるゴーカートを魔改造したようなものだ。使い物になるよう手は加わってるようだが、

公共の道はちゃんとした普通車に乗れ。

お前の品位を疑われるぞ。

もちろん、お前の懐と相談した上での話だがな。 」

 

「 そうっすかぁ・・・ 」

 

 薄々勘づいてはいたが、今この場でダメだしされたことで、潔く田所は、手頃な車を探しに行くことにした。

そうして思い返されるのは、先日のMURのことだ。

あの時はどうも嫌な気ばかりしたものだが、よくよく考えればあんなマリ◯カートみたいなので公共の場を走ろうとするなんて道化以外の何ものでもない。

声をかけたのが管理局であろうがなかろうが、聡いMURが離れる動機の一つくらいにはなったのだろう。

よくよく考えれば、想像につくことだ。

 

 本人はキャリアがどうとかといったが、実際のところは、自分と手を切る理由など、他に幾らでも付いたのだろう。

この体臭とか。

一応は香水などで誤魔化しようはあるが、それでも臭う。

田所自身、それまでそんなもの特に気にもせずに過ごしてきた。友人や仲間に、恵まれていたからだ。

しかし、MURがいなくなった今、自分を今一度見つめ直す必要があるのかもしれない。

これから自分は、しばらくは一人で仕事をすることになるのだろうし。

彼自身のこと自体は問題ないだろう。

部隊は違えど、あそこには知古もいるのだし。

あの犬面を久しぶりに見たくなるところだが、今はそれよりも、自身の印象をいくらかマシにするよう努めるほうを優先するべき。

麺を口に運びながらそんなことを考えていたが、思考ばかりではどうともならないので、先ずは行動に移さねばならなかった。

 

「 ご馳走さんした! 」

 

「 おう、お粗末。それと、車を買い替えるつもりなら、ここを勧める。 」

 

 店主はなにかの雑誌を手渡した。表紙に車の写真が載っているのを見るに、自動車メーカーの商品カタログなのだろうが、そこにある名前は彼の知るヘテロシティの三代メーカー、つまりはシンエツ、TerraX、そしてレガリアのいずれとも異なっていた。

もちろん、マップにもそんな名前はない。

 

「 ヘリックス、Dzzira、REMPO・・・どれも聞き覚えがないです。 」

 

「 いい店ってのはな、地図にも載ってなかったりするものだ。ウチだってそうだしな。

車も同じだ。レガリア、シンエツの二強に見えて、そうでもないってことだ。 」

 

 曰く、このメーカー群はミゲル区やニューホランド、絵空町といった商業区にチェーン店を展開しているらしく、田所はひとまず近場らしいDzziraの支店に向かうことにしようとした。

 

 

 しようとしたとした理由は単純明快だ。

 

「 店主!大変だ!またヤツがでた!! 」

 

「 何!? 」

 

 行こうと決めた直後に、それどころではなくなったからである。

ラーメン屋に駆け込んで来た男の焦る顔。

なにかしらの事件の臭いが、田所の体臭以上に香ばしく漂っていた。

異常事態であることは確かであろう。

治安局の仕事であろうが異象ハンターの仕事であろうが。

 

「 剛がやられた。まったく人気のないところからなにかに撃たれたみたいになって・・・ 」

 

「 管理局からは? 」

 

「 掛け合ったよ。でも前と同じだ。現状は対処のしようがないって。しかもどうにかするまで辺りの公道の通りを制限、ここらでレースができなくなるかもしれないって。 」

 

「 どのくらいだ? 」

 

「 わからない。でもあの体たらくなんだ、このままじゃ異象を収容するまで、未来永劫ミゲルで走れなくなるかもしれない。 」

 

「 チッ、E.T.Dはないやってやがんだ。 」

 

 苛立ち半分に店主は舌打ちをするさまは見て、田所はやはり彼も、公道の走りに生きた人間なのだと察しがついた。

しかし件の異象はかなりの曲者であるらしい。

 

しかし、彼らは幸運だ。

 

「 なぁ、店長。 」

 

「 なんだ? 」

 

 この場に、その公道に潜む怪物を退治してくれる勇者(プロ)がいるのだから。

 

「 まずうちさぁ、異象ハンター、やってんだけど、雇ってたかない?あぁ、オレ、こういうものなんだけどよ。 」

 

 ご丁重に、名刺を差し出して店主と走り屋の男に身分を明かした。

迫真異象部 部長 田所浩二 とある。

 

 

「 やってくれるのか・・・相場は? 」

 

「 話にもよるけど、人死怪我人がでてるんなら、レベルⅢくらいだと仮定すると・・・一体で、2万5000位すかね? 」

 

「 2万5000。モノを壊したりするエイボンの連中より良心価格じゃないか。

本当にそれで受けてくれるのか。 」

 

「 ラーメン美味かったし、商売だからね、多少はね? 」

 

 不敵に笑う、男の顔。なぜだかわからないが二人にはこの上なく頼もしく感じられた。

彼ならば、オレたちの公道を取り戻してくれるのかもしれない。

 

・・・それはそうと、臭うが。

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