ホモビにでただけで異象ハンターにされる男 作:ニコラス―NICORUTH―
その後、田所は現在の住居、味気ないマンションに戻っていた。のだが・・・
「 ん~~ココちゃ〜ん、擽ったいよぉ・・・そんなのいけないよぉ・・・♥ 」
「 暴れないでミント・・・暴れないで・・・ 」
「 急になんでこんなことをしようと思ったのぉ? 」
「 ダフォディールさんが言ってたんだよ。女の子はキズを舐めあって絆を深めるものだって。 」
「 本当にそうかなぁ?まぁいっか。 」
「 下のやつうるせぇなぁお前よぉなぁ。こっちは仕事をしなきゃならない(使命感)ってのによぉ。
ニヤァニャアしやがって。
コ↑コ↓ちゃんって人はレズなのかよ。同じマンションに同性愛者がいるとかたまげたなぁ・・・
しかもこの乳クセェ臭い、思い切りヤッてんじゃねぇかよ。 」
気にしている場合ではないと分かってはいながらも、最近このマンションの一室の不動産を買ったらしいご近所を迷惑に思いながら、スマホを弄くり回していた。
「 それにちらっと聞き覚えのある名前を聴いたが、あいつやっぱそのタチなのか・・・
元殺し屋ってくらいだし、性癖くらい歪んでても無理ないんかね?
・・・それよりも、あいつ出てくれるかね? 」
田所はそういいながら、スマホを耳に充て、応答を待つ。
親しい人物とSNSを通じて"公道の魔物"へのさらなる手がかりを得ようと考えたのだ。
専門家の知恵を拝借するのである。
「 兵器っつったら戦車やら戦闘機やらだろ?メカなんだし、多分知ってるか。 」
そんなことを言っていると、ブツッと通信が繋がる音がした。良かった。どうやら出てくれたようだ。
『 KMR、元気してるか〜? 』
『 先輩、ご無沙汰しています。 』
良く聞き知った声を聞けて、田所は何処か安堵していた。
以前に、異象部のメカニックとして腕を振るってくれていた後輩は元気そうだった。
『 久しぶりだな。お前も馴染んだか?研究員の仕事はよ。 』
『 ええ。だいぶ手についてきました。
それよりも先輩聞きましたよ。MUR先輩のこと。それと前の住居がもぬけの殻になって行方知れずになったって。 』
KMRは現在、ゼロゴン実験室の職員として働いている。
巨大共同体"環"の『認知』を司る機関であり、日々異象の実験、研究が行われているこの組織は、今日の社会に、多大な貢献を為している。
そんな大仕事に後輩が就いたことを、田所は誇りに思っていた。
『 MURはんのことはしょうがねぇよ。オレに止める資格はないんだからよ。決めるのは本人なんだし。
それとオレが失踪したって誰が言ってたんだ? 』
『 骨董品屋のご主人です。 』
ああ、あいつか。と田所は酒癖の悪い和服の女の姿を思い浮かべた。
『 すごい心配したんですよ。大丈夫なんですか?業務と暮らしの方は。 』
『 大丈夫だって安心シルルォ?生活に関しては宅配業者の仕事を引き受けたりして稼いで食いつないでっからよ。
あいつらいっつもエンドレス地獄だっつってんだぜ? 』
『 最近は物の流通が多くなってるので、彼らも本当に忙しい状態ですからね。
株価だって高騰傾向にありますし。 』
『 やっぱり宅配業者も大変か。 』
『 生活が便利になった恩恵ですね。スマホやパソコンから通販サイトを介して買い物ができるようになり、一部の異象の研究が進んで需要が生まれたことで、業界の体制も見直しの必要性が問われているとか。 』
『 はぇ~。 』
他愛もない世間話に花咲かせるところであるが、田所は早めに本題に移ることにした。
『 それよりもよKMR、今回はお前に聞きたいことがあってよ。 』
『 聞きたいこと、ですか? 』
『 ヘリックスって会社のこと、知ってるか? 』
『 自動車メーカー、ですよね? 』
『 そこなんでも、兵器作ってたんだろ?その時のこと、分かる範囲でいいから教えてくれないか? 』
『 兵器事業時代の、ですか?なんで急に? 』
『 ゼロゴン務めでメカに詳しいお前なら、なんか知ってるかなと思ったからよ。 』
『 なんで知る必要なんかあるんですか?(素朴な疑問) 』
『 実はさ・・・ 』
一切合切を説明した。MURが出ていったのを機に居を移そうとミゲル区に越したこと。
ラーメン屋で食事をしていたところ、地元のレースチームが異象の被害に遭ったこと。
それが"公道の怪物"と呼ばれていて、明らかにヘリックス社の車両を狙っていたらしいこと。
『 なるほど、ヘリックスの車を狙う異象ですか。姿が見えず、E.T.Dもお手上げな辺り、手強い相手みたいですね。流石に25,000で受けるにしてはリスクが高すぎませんか? 』
『 でもまぁ、受けちまったもんだし、多少はね? 』
『 そうですかねぇ・・・しかしヘリックスの厄ネタですか。
とすれば、アレでしょうかね? 』
『 アレ? 』
『 その当時のヘリックスの競合他社の一つですよ。
ゼネヴァって言うんですが。
異象を解析して兵器に組み込んだことで知られているのですが、それで事故が起きたのをきっかけによその企業に買収され、今はこの名は使われていないのだとか。 』
『 英語の綴りは? 』
『 Z、E、N、E、V、Aでゼネヴァです。 』
『 その事故ってのは? 』
『 言わずもがな、異象の暴走による災害ですよ。 』
『 暴走?自社の製品に組み込もうとするくらいなんだから、扱い方は知ってたんじゃないのか? 』
『 何分今より技術も知見も足りてない時代ですから、そんなことは割と起きていたらしいそうですよ。
学校なんかじゃ、社会の科目で軽く触れられるくらいなもので、詳しくは教えられてないと聞いています。
ただ業界ではゼネヴァの名前は悪い意味でそこそこ有名で、異象を悪用していた末に滅んだ小悪党、なんて呼ばれもされてるみたいです。 』
『 なんでそう呼ばれるようになってるんすかね? 』
『 異象の活用に意欲的な点自体は悪くはないと思いますが、その方向性が致命的だったんですよ。
異象の存在が公表されて五年足らずで、無謀にもそれらを戦争の道具として売り捌こうとした。
箇条書きすると悪役感丸出しですよ。
映画なんかで、恐竜や怪獣、宇宙人なんかで金儲けをしようとしたりするのと同じ事が、現実にも起きてたんですね。 』
『 言われてみれば、そうだな。今の異象との共存の体制からしてみれば、すっげぇ黒いってはっきりわかんだね。 』
『 しかし、彼らの最大の誤算は、異象への理解が浅かったこと。これに尽きますね。彼らは異象を、ただの有益な資源としてしか見ていなかった。
この世の如何なるものよりも、奥が深く、そしてその多くが未だに不明瞭だというのに。
ゼネヴァはあの時代の中でも研究熱心でありながら、同時に不足していた共同体だった。異象の本質を見抜けず、ビジネスのための道具としてしか見なしていなかったんです。
それ故に管理体制や運用のためのマニュアル作りがおざなりになって、事故が多発の後、株も他社に買収されて消えていった。
その点は、ライバル企業だったヘリックス社が勝っていた一つとして挙げられます。 』
『 ヘリックスも、異象で兵器作ってたのか? 』
『 厳密には、戦車のエンジンやらの部品といった機械パーツの補助程度の物だったみたいですが、対象的に管理を徹底していた上、研究者の人員も多数雇用し、その意見を尊重していた。そのお陰で二の舞にならずに済んだんです。そしてこれが、現在の自動車メーカーとしての活動に大いに役立っている。
彼らはぜネヴァの失敗から多くを学んで、今日まで生き残れています。 』
そんなことを聞かされて、田所はふと思い返した。以前にゼロゴン研究室が、傘下の企業であるマンダステクノロジーを介して流通させた異象製品が、後に危険性が発覚したという事案だ。今でさえそんなことが起きるのに、35年近く前でリスクを孕んだ体制を敷いていたとなれば、どうなるかなど一目瞭然だ。
反面教師としては、この上ないケースだろう。
『 なるほどなぁ、それでそのゼネヴァが臭いわけだ。 』
『 確実に、とは言えませんが可能性としてはあり得ますね。ゼネヴァは異骸なんかに手を加えた生体兵器の類も作っていたという情報がユグアッシュ邸に残っているらしくて、それが残存し当時目の敵にしていたヘリックスの製品を識別するためのなんらかの機能を備えていたって、可笑しくありません。
実際に迷彩の研究もしていたそうですし。 』
『 迷彩?そんなもんでE.T.D、特に白蔵の目を誤魔化せるのかよ。あいつがそんなモン見破れねぇわけないじゃんか。 』
『 確かにそうなんですが、これはボクの推測なんですが、その異象は恐らく、それの発する周波数すらも誤魔化せるのではないでしょうか。
異象は基本的にヴォルテハイモー値でその存在を確認出来ますから、兵器化異象が一定の需要を得た時、或いは対抗する戦術が確立されるのを見越して、それをカバーするのは自然なことです。
自分たちと同じように異象の兵器化を画策する勢力が現れるだろうことだって想像つきますからなおのことですよ。
それなら、第四小隊が見つけられなかったのも納得出来ます。それもレーザーポインタのくだりを鑑みるに、恐らく兵器としてある程度洗練されている。
戦闘用として改良されているなら、E.T.Dほどの部隊の追跡もやり過ごせてしまうのも納得できます。問題ないとは思いますが先輩、本当にこれ25,000ファンスで受けてよかったんですか? 』
『 大丈夫大丈夫平気平気だから。
あの店のラーメン美味かったし、ミゲル区の連中もヤツのせいで困ってるみたいだしよ。
その為だったら多少はね?
しかし、異象兵器とはたまげたなぁ。 』
『 あくまで仮説なんでまだたまげないで下さい。 』
『 KMR、色々ありがとよ。突然電話掛けたりして悪かったな。 』
『 いえ、迷惑だなんてそんな。 』
『 そうか。後でラーメン奢っからよ。そんじゃな。 』
『 ご健闘を。 』
通話は、それで切れた。
プーン、プーン、という電子音が止んだのを確認すると、田所はテーブルに置かれていた黒いトランクケースを開けた。
その中には、銃がいくつか収納されている。
「 異象の兵器活用かぁ。言われてみれば、そんなのこれまで聞かなかったりしていたことの方が可笑しいのかもしれない。
人間欲が張ると手が付けられないからなぁ・・・ 」
そういいながら、今回持っていく武器のコンディションを確認していく。
こういうメンテナンスこそは、KMRの方が得意だったよな、だとか、すっかり迫真異象部も寂しくなったもんだとかと思いつつも、そんなこと考えたって仕方がないので手、手と手先を動かすことを優先する。
こうやって一人でいると、どうしても昔を懐かしく思ってしまうが、過ぎ去った時間が戻らぬことが分からぬ田所ではない。
戻りたいとも思わない。仲間たちはそれぞれ、自分の道を見出しているのだから。
そう、MURも同じだ。
それに元カノのことも、気がかりにはなっていた。
彼女は、良い縁に恵まれたのだろうか。
異象ハンターを続けているらしいことは確かな様だが。
KMRがそうであるように、自分も異象ハンターとは別の生き甲斐を見つけなければならないのかもしれない。
「 ネガティブになりかけてるな。ヤヴァいヤヴァい。これから仕事だってのによ。
・・・良し、概ね問題ないな。 」
その手には長年愛用し続けたハンドガン、『
新品同然にキズ一つ目立たないが、田所はこの銃や愛刀『 邪剣夜 』とともに、幾つもの修羅場を潜り抜けてきた。
今度も同じだ。万全な準備の後にこれまでと同じ仕事をする。
「 さてと。行きますよ、いくいく。 」
田所は部屋をでて、変わらずイチャイチャしているご近所を尻目に愛車のゼロイチを呼び出し、その場を走り去った。
ロボット物はガンダムばっか目立つけども、ZOIDSもかっこいいってそれ一番言われてるから。