ホモビにでただけで異象ハンターにされる男 作:ニコラス―NICORUTH―
バトルはあっさり終わります。
最近、洒落怖系のホラー淫夢を見漁っていたが、あれいつ見ても面白いゾ。
ちなみにオレは三バカがバリ島行って、タクヤさんがキメションで除霊する奴が好きです。(隙自語)
「 この辺りだったよな?例の異象がでた現場ってのは。 」
人々が寝静まった、白尾樹山路公道。いつもならばこの時間は、走り屋たちの愛車たちがエンジン音を響かせてこのセメントの路上を駆けているが、車1台、人っ子一人の姿も見えないのは勿論のこと、鳥や獣でさえも気配を消してしまっている。件の魔物は恐ろしく、世界にとっての紛うことなき異物であることを示しているように。
「 この感じ、やっぱり異象なのか? 」
なにもない夜道の中、田所は確かに何者かの存在を感じている。こういった不自然な気配が、自然や人が営む街並みの中に溶け込んでいる様は、これまでに何度も見てきている彼であるが、今回は特に異様だった。
可笑しくない異象など存在はしない。そういうものだからだ。
この世において異質であるからこそ、人はそれを恐れる。
手に握られた、異様を探知するためのレーダー。昔にKMRが拵えてくれたそれも、まったく感知しない。
自身の感覚、正確にいえば、"直感と人間離れした嗅覚で嗅ぎ取られる臭い"だけが、それを感じとっている。
異象特有の臭いが香ばしく漂っているのだ。
「 KMRの言う通り、波数を誤魔化しているのか? 」
ヴォルテハイモー値は、如何なる物体にも存在する周波数だ。その多くが+の値を示しているが、異象のそれは決まって−の値に振り切っている。
ヘテロシティのいたるところに点在するヴォルテハイモー塔も、この異象の出現を周囲に知らせるためのものである。
手に持つ物は、それをデジタルかつ小型化したような機能を持っていて、このヴォルテハイモー値を検測して異象を判別する仕組みであるが、ものの見事に誤魔化されていた。
ここまで露骨な対策が為されてるなど、通常の異象では先ずあり得ない。彼らは人目など気にも止めず、進んで自分たちの存在を隠そうとしないからだ。となると、やはり人の手が入っているようであり、なおさらKMRの仮説が裏付けられているようだった。
頼れるア(ンテ)ナは田所だけというわけである。
「 しかしさっきからコイツ、この辺りに確かにいるんだが、なにもやってこないよな。 」
田所自身、異象の行動を訝しんでいた。こんな夜更けに男一人、なんのようもないはずが無い事くらい、人外であろうと察せられよう。露骨に自身に接近してきているのだから、攻撃の一つもしてきていいが、それが来ない。
E.T.Dにもきっとそうだったのだろう。
天敵になり得る相手に迂闊に手を出さない。自然界にも存在する由緒正しい生存戦略だ。
これを実施し、更に己も息を潜めてやり過ごすとなれば、誰もこいつに気づけない。
だから第四小隊も、異象の存在を確認できずになにも出来ずに捜査を打ち切らざるを得なかったのだろう。
あくまでターゲットは、ヘリックス社というわけだ。
「 目の付け所さんはいいねぇ。ただオレ一応モラルはそこそこあるから異象の使い方は褒めれねぇけどよ。
・・・この辺りかな? 」
バンッ!バンッ!と迫真の銃撃音が良夜から放たれる。
一見すれば、なにもない虚空に撃っているように視えるが、確かになにかに当たって、跳弾している。
バレているのに気づいたか、エネルギー弾らしき物がお返しとして発射されるが、田所は俊敏な動きでもってそれをすべて回避した。
そして田所は確認する。
暗闇の中、バチバチと小さく散る火花を。
あのエネルギー弾の発射装置は外付けなのだろうか。誤魔化しきれずに熱を帯びている。
弾丸は、あの辺りに命中したのだろうか。
「 こ↑こ↓ 」
火花にもう数発、弾をぶち込む。金属に当たって跳ね返る鈍い音がいくつかした後に、バンッと小規模な爆発が起きる。
「 ――――!? 」
あちらの動きが少し止まった後に、ガチャリと音が鳴り、草生した緑の地面に異物がぼとりと落ちる。
長方形の形をした金属のそれはプスプスと黒煙を上げていた。威力重視でカスタムされているとはいえ、ハンドガン数発でそうなるのかと以外に思うが、それよりも肝心なのは、それを受けて姿を隠しても無意味だと悟ったか、公道の魔物こと正体不明の異象が、とうとう潔く姿を見せたことだった。
レーダーが、ヴォルテハイモー値の異常値を観測する。
間違いなく、それまでのものと同じ類の存在であった。
赤黒い装甲に覆われた、肉食動物を思わせる、田所より少しデカいくらいの巨躯。
鋭い眼光を田所に向け、その口からは大きく鋭利な牙が覗かせる。
こんな姿を見て、このステロイドハゲには連想させられる生き物がいた。
「 サーベルタイガーみてぇだな。デザイン最優秀賞だろこんなんよ。 」
生物学的には時代遅れなその剣歯が、大口を開けて田所に迫る。そこはメタリックではないが、噛まれれば致命傷は免れないようなそれは、さながら通り魔の手に持つナイフのようであり、それだけでも十二分に脅威といえた。
が、忘れないでほしい。
「 暴れんなよ、暴れんな。 」
この男が、死ぬほどこういった手合いを相手取ってきたプロであることを。
レーダーを地面に落とし、良夜を宙に放り投げ、愛刀邪剣夜を瞬時に構える。
田所は数いる異象ハンターの中でも、かなりの武闘派だ。
空手に銃、と多様な戦い方をこなす。
そう、いま構えている刀もその中に含まれるわけだ。
「 邪剣夜"逝きましょうね"! 」
一閃。その新生代に闊歩していた古生物を思わせる異形は、真っ二つに切り裂かれて地に伏した。
その目からは光が徐々に失われていき、やがて生身の部分は塵となって消滅していった。
異象共通の機能を停止した時に起こる現象だ。
魔物と呼ばれるには、あまりにも呆気ない最期だった。
「 怪物は言葉を話してはならない。
怪物は正体不明でなければならない。
怪物は、不死身でなければ意味がない。
最後の覗けば、条件はクリアしてるんだけどよ。
だが、こいつは走り屋たちからすれば、怪物であることに違いはないんだよなぁ・・・ 」
昔見たアニメだかなんだかの登場人物のセリフを交えながら、田所は公道の魔物と呼ばれた異象の"残骸"を見た。
そう、残骸だ。機能を停止したにもかかわらず、装甲やあの黒焦げたビーム砲、精密機器の類に至るまで、機械的なパーツが残留している。
「 やっぱりKMRの言う通り、人の手が入ってるな。キューブになったり、まっくろくろすけみたいなのがでてこない辺り、そうなんだろうかね。これも回収しなきゃならないとなるとオレだけじゃ管理が大変だ、ん? 」
ふと田所は、恐らく腹の部分の辺りから、なにか光るものを見つけ、手に取った。
金色の人にもある臓器を思わせるそれは、メカニカルながらも生々しさを感じさせた。
「 これは、心臓か?明らかに、他のパーツと違うよな。これが動力源か。
なにはどうあれ、応援呼ぶべ。
流石にE.T.Dは気まずくて呼べないな。
執行隊にするか。でてくれるといいけどなぁ・・・ 」
田所はスマホを取り出して、先日自分の元を去った男に通信を繋げた。
これまた自分にとっては気まずいが、管理局が一度投げざるを得なかった事案である以上は、彼らも無関係ではない。
『 MURはん、オレだけどちょっといいか・・・
大丈夫だって気にすんな。MURはんの決めたことだルルォ?それよりもさ、まずうちさぁ・・・ 』
「 おう分かったゾ。今行くから待ってルルォ?
・・・おいIRHィ、仕事だゾ。
ハナほじってないでこっち来て。 」
「 は、はい! 」
「 なんだこれは?たまげたゾ・・・ 」
その後、民間から借用したトラックに乗ってきたMURと羊のような耳と角の生えた女性を田所は出迎え、件の異象の残骸を見せた。
「 MURはん、こんな異象ってのは? 」
「 そんなんオラに聞くな。言われなくとも初めてゾ。
ていうかこないだまで一緒に仕事してたルルォ? 」
「 そう、ですねぇ。んで、この脇でハナほじってる方ってのはMURはんの女かなにかで? 」
「 そ、そんなんじゃないです!MURさんはあくまで同僚ってだけで。 」
「 そうだよ(便乗) 」
「 そう・・・んでも、鼻血でるからね、あまりハナほじるのは、すすめないっすよ。
ティッシュ使って、どうぞ。 」
「 どうだっていいダルルォ?そんなこと。
それよりもコイツゾ。こんなん一体誰が作ったんだゾ? 」
「 KMRが言うには、ぜネヴァって会社が怪しいらしいッスよ。
ヘリックスの大昔のライバル企業とかなんとかだとか。 」
「 ほうほう。それでそこの車に狙いを着けてたわけかゾ。
だが、詳しいことを知るのはこの残骸全部一旦ゼロゴンに持ってってからゾ。
KMRなら、なにか見つけてくれるかもしれないからな。 」
「 それでだけどよMURはん、これが動力源?見たいらしいッスよ。 」
田所はMURに、あの心臓のような物体を見せた。それは生きているかのように、ドクドクと鼓動を刻んでいた。
「 まだ動いてますね・・・ 」
「 なおさらセラエノにぶち込んどくわけにいかないゾ。早急に解析にかからせた方がいい。 」
「 でもいいんですか?一応規則ですよね?無力化した異象は環の収容を司るセラエノ館に収容する、と。 」
「 問題ねぇだろ。こうやって動いてるのを無力化できたとはいえないし、今はまだいいとしても、そのうち変な爆発でも起こされたら嫌だしな。
それが分からないほど、うちの局長殿もバカではないゾ。
ということで田所、コイツはオラたちが責任もってゼロゴン研究室にぶち込んでやるゾ。
KMRも喜んで研究してくれるだろ。 」
「 オッスお願いしまーす! 」
「 ところでお前、依頼を受けてこれ始末しにきたんだろ?報酬いくらで受けた? 」
「 25,000ファンスっすね。 」
「 流石に安すぎやしないかゾ?曲がりなりにもこいつはそれなりに被害をだした上、一度E.T.Dに匙を投げさせたんだゾ。危険度はそこらの異象と比べて高い水準だし、もっと値は張っていいダルルォ? 」
「 ん、おかのした・・・ん? 」
「 どうかしたか? 」
田所は暗闇の茂みの中で立っている人影を指さした。
それは、彼は勿論、MURもイロヒも知っている人物だった。
「 あれ、白蔵じゃないか? 」
「 おっ、本当だ。あいつ何しに来たんだ? 」
「 オレちょっと見てくるよ。MURはんたちはこれの回収作業してて。 」
「 おう、気をつけるんだゾ。 」
「 この辺りか。思ってたより厄ネタかもしれないな・・・ん?この臭い、浩二だな? 」
「 白蔵、お前こんなところで何やってんだ? 」
「 久しぶり!消息を絶ったとかって聞いたから心配しちゃったよ! 」
「 そんな大袈裟なモンでもねぇと思うけどなオレもな。 」
この気さくな男、E.T.D第四小隊隊長白蔵。
田所とは、古くからの友人の一人だ。
「 それでお前、こんなとこで何してんだよ。
また仕事サボってんのか? 」
「 生憎と今はオフでさ、ただ一度投げちゃった身としては、あの異象のことが気になってね。 」
「 そんならさっきオレが倒したぞ。 」
「 それはさっき見たよ。ただ、それで終わりじゃないと思う。 」
「 終わりじゃない?あの異象はあれ一体だけだろ?
お前らが一旦捜査を打ち切ってから、今日まで暴れなかったんだし。 」
「 オレもそう思いたいけどね、見てくれ、この辺り。 」
白蔵が杖を突いた地面が、何処か盛り上がっているように見える。
まるで誰かがなにかを埋めた痕のようである。
田所は屈んで、匂いを嗅いでみた。
すると、どうも自然のそれではないものがするではないか。
「 前の捜査の時には、被害に遭った場所を重点的に調べていたせいで、殆ど手がかりを掴めなかった。
今日改めて来た時に、この辺りの植物たちが不自然ななにかに怯えているようで、ようやくこれの存在に気づけたんだ。 」
「 掘り返してみるか? 」
「 手伝うよ。 」
「 問題ないです。この分ならオレだけでそんなに時間かからないからよ。 」
地面を掘り返してみると、なにかの人工物らしき物がでてきた。
ドアだろうか。なにかのシンボルマークが刻まれている。
「 秘密の地下室かな? 」
「 こういうの昔憧れたよな?しかし、この蛇のマーク気になるねぇ。
白蔵、悪いけど、スマホでググってくんない? 」
「 いいけど、なんて? 」
「 ゼネヴァ社 マーク でヨロシクゥ! 」
言われるがまま、指定されたキーワードを打ち込んでみると、なんとそのままドアのマークの画像がでてきたではないか。
「 軍事産業か。オレミリタリーはそんなに詳しくないんだけどな。 」
「 KMRの予想が当たったな。ゼネヴァがすっげぇ黒くなっる、はっきりわかんだね。 」
「 KMR?今ゼロゴンにいるKMRだよな?一緒にいた。 」
「 そう。ついさっきまであいつと電話で話してたからよ。
それよりも、この中気になる・・・気にならない? 」
「 確かにな。調べて見る必要があるね。 」
「 じゃけん開けて入りましょうね! 」
ドアが開かれると、中は夜のそれよりも深い闇が支配していた。が、やはりここを調べないことには、あの異象が何故発生し、民間人を襲ったのかが分からず、根本的には解決には至れない。
その為、二人は臆することなく階段を降りていった。
「 やっぱり中暗いなぁ。お化けとかでてきそう。 」
「 大丈夫すよ。スマホのライトで一応見えないこともないからな。それにお化けなんてもん、今どきたちのそこそこ悪い異象どまりだから、オレらの敵にもならんだろ。 」
「 若干かび臭いね。ここができてからそれなりに時間は経ってるみたいだ。 」
「 ゼネヴァは異象に手を出して消えたって事を踏まえれば、ここはできてから三十五年近くか? 」
「 そんなに古くも無さそうだけども。 」
「 もしかして、誰かがここについ最近まで出入りしてたとか?大昔に倒産した企業の廃墟になんの用だよ。 」
「 実はね浩二、オレもこのゼネヴァって会社のことはほんの少しだけど聞いたことがある。
勿論、ついさっきググった時じゃない。もっと前に。 」
「 はえー、お前も知ってたんだ。 」
「 なんでも、ゼネヴァ倒産の後に、社長一家が全員揃って失踪したそうなんだ。
それで当時、なんらかの事件の可能性があるとして大規模な捜査が行われたらしいんだけども、結局彼らの行方は分からずじまいだった。
今も生きてるかどうかは分からないが、彼らはなにを思っていたんだろうね。 」
「 少なくとも世の中、というより、特定の誰かを良くは思わなかったのは、確かだろうよ。
・・・あんなもの、隠し持ってたんならよ。 」
「 あれは・・・! 」
「 お前の言うとおりだな。これはとんだ厄ネタかもしれないぞ。 」
二人が地下室の奥で見たもの。
それは、緑色の培養液に満たされた槽の中で、機能を停止しながらも良好な状態で保存されていた、
"公道の魔物"たちだった。
そのいずれもが、田所が倒した個体と同じ見た目をしている。
「 これは、不味いものを見つけたかもしれない。 」
「 ミゲルの連中はE.T.Dを快く思ってねぇから、気ぃ使うつもりつもりだったけどよ、そうも言ってられないなこれは。 」
二人は即座にスマホを取り出した。
「 翳、JTEと第六小隊も連れてすぐ来てくれないか。ミゲル区の異象のことだけども・・・ 」
「 MURはん、オレだよ。思ってたよりヤバいことになったかもしれない。
地下室あるからそこ来て、どうぞ。 」
次回、後日談。