ホモビにでただけで異象ハンターにされる男 作:ニコラス―NICORUTH―
「 ぬわぁぁああん疲れたもぉぉぉぉん!
辞めたくなりますよぉ、ポスター貼りィ!! 」
しばらく経ったその日、その愛用の枕のごとくデカすぎる独り言の通り、田所は街中で迫真異象部の人員募集のポスターを貼り付けていた。
あれからいくつか異象ハンターとしての依頼を受けてはいたが、いくら彼が手練れであるとはいえ、やはり一人でできることというのは、限りがあるものであった。
迫真異象部は、MURやKMRに代わる人材を必要としていた。
しかし、一向に誰も来る気配はなく、TAXIやら配達やらを異象討伐と平衡してこなしながら、ポスターの数を増やしていく日々が続いている。
「 あれ、なんだったんだろうな。 」
そんな中でも、やはり田所は先日みた、あのノートのことが気がかりにはなっていたが、自分ではどうしようもないということで、どうにかして忘れようとしていた。
今は、あれのことよりも、今現在や自分の未来のことを考えなければと。
気にはなって仕方がないが、時として好奇心は猫を殺す。
意図せぬうちに、踏み入れてはならない危険な領域へと突入し、それが命取りとなってしまうことだって考えうる。
社会とは、都合の悪いものを排斥するようにできているのだ。知らないほうが良いことだって、世の中にはある。
「 ん? 」
その時、青い燃えるようなタイヤ痕を道路に刻んで疾走する影をみる。
「 あれは・・・デュラハンじゃな?
収容しなきゃ( 使命感 ) 」
田所は丁度ポスターも貼り終えたので、本業にかかることにした。
この異象を追うのだ。
早速、こないだ新しく気に入って購入した新車を呼び出して乗り込み、アクセルを踏んで追跡を始めた。
「 速いなやっぱり。ロダンもそこそこスピードはある車種だって聞いたけどここまでか。 」
田所が現在乗っているスポーティなフォルムの自動車は、
隠れ三大メーカーの一つ、Dzilla社の、RODANという。
あの後、ラーメン屋の店主の勧めもあってカタログ片手に店を見て回った彼は、この車をみてピンと来た。
75万ファンスとお安い割にはスペックはそこらのスーパーカーと遜色がなく、ギアも素の状態で6速までだせる。
このDzilla社も、かなり長い歴史を持つメーカーであり、
RODANもまた、Dzilla三大名車に数えられる傑作である。
田所が乗っているのは、五代目にあたる、
RODANⅤだ。現在は、最新モデルであるRODANⅥがでているが、基本的に性能に差異はない。
強いていえば、Ⅵの方が快適で、値段が張るくらいか。
さて、そんな車に乗ってデュラハンを追う田所は、やがて景色が変容していることに気づく。
異象空間だ。分かりやすくいうと、このデュラハンという異象の有する領域展開だとかそんなものだと思っていい。
真昼に関わらず、夜の廃墟のような景色の中、ブロロロロロロと、エンジン音を鳴らしながら、首無し騎手の大鎌が迫る。対する田所も得物を構える。
「 いいよ、来いよ! 」
あっさりと躱してお返しにちょっと刃を当てる。それでも十分にダメージは与えられてはいる。
ボクシングでいえば、多少加減したジャブが当たった程度だが。
だが、ジャブというパンチは黄金の精神の一族のそれごとく、連続して放たれるもの。
「 ホラホラホラホラほらほら!! 」
連続して繰り出される斬撃がデュラハンに振りかかり、その鎌の一撃を退けながら、その身を切り刻んでいく。
田所にとって、この失くした首を探してそうな異象の相手など手慣れたものだ。
この異象は見ての通り、バイクと鎌を使った攻撃を繰り出してくる。
なんなら分身まで走らせてくる。
色々面倒なので、とっとと始末したい田所であるが、
「 いいねぇ!月をバックにねぇ!
吉良イヅルみたいだぁ・・・(オサレ)
でももう終わりだよ( 佐倉杏子 )
・・・ん? 」
バイクから飛び降りて、鎌を振りかざそうとするデュラハンに相対し、とどめの一撃を刺そうとしたとき、
急に現れる、彼シャツ姿の女。
黒髪に、赤紫のメッシュをしていて、角とかトカゲのような尻尾まで生えている。
ドラゴニックな彼女は、デュラハンのバックを取ると、飛び蹴りをお見舞いした。
さらにそこからふっ飛ばされるデュラハンに先回りして、両足で蹴りを起点とした、怒涛の連撃を見せる。
そして、とどめの一撃で以て、たった一人でのしてしまった。
「 デュラハンは倒した。あとは任せて。 」
そうスマホ越しに誰かに連絡を寄越して、女はどこかへぴょんぴょんと飛び去ってしまった。
誰かは分からないが、名札が付いていたのを見るに、異象管理局の人間のようだった。
「 やりますねぇ。最近の若い人。こりゃヘテロシティの将来も安泰だぁ・・・ 」
たった一瞬その後ろ姿を、田所はどこか頼もしく、そしてどこか懐かしいと感じた。
その若さを残す姿に、以前の今のように一人になる前のことを少し思い返していたからだ。
といっても、彼もまだ24と全然若いが。
「 オレもあんくらいはなぁ、仲間も多くてなぁ。(懐古)
戻りたくても戻れないのに、なにいってんだか。 」
そう寂しく言い残した後、田所は、
異象空間を後にした。