『転生したら白虎だった件 〜三上を守るため最強になった俺は、白氷竜に見初められ世界の均衡を壊す〜』 作:Hiro
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# ■第15章 原初の気配
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学園という箱庭は、一見すれば平穏そのものだった。
だがその内側には、明確に“異物”が混ざり始めている。
リムル=テンペストは講堂の廊下で足を止める。
「……なんか、空気変わってきてねぇか?」
エイルが即座に応える。
『魔素分布に異常変動を検知』
「やっぱりか」
ハクはその横で、いつも通り静かに立っている。
しかし、その視線はわずかに遠い。
「ハク、お前も感じてるだろ?」
「……気配はある」
短い返答。
それだけでリムルは確信する。
(やっぱりこいつ、感覚が別格なんだよな……)
その時だった。
空気の“層”が一枚剥がれるような感覚。
講堂の奥。
誰もいないはずの廊下に、影が差す。
赤。
紫。
黒。
混ざり合うような“異質な色”。
リムルの背筋が一瞬だけ冷える。
「……おい、これマジでやばいやつじゃねぇか?」
エイルが沈黙する。
そして、わずかに遅れて告げる。
『高位魔素存在反応』
『分類:原初級に準ずる可能性』
「原初……?」
その単語に、リムルの表情が変わる。
(原初の悪魔……ディアブロ級のやつか?)
ハクは動かない。
だが、その場の空気だけが確実に“重く”なっていく。
やがて、影の中から声がする。
軽い。
楽しげ。
だが底の見えない声。
「へぇ……ここ、面白いじゃない」
もう一つ。
「人間の学園にしては、随分と歪んでるわね」
さらにもう一つ。
「ふふ……“匂い”がする」
リムルが固まる。
「……三つ?」
エイルが静かに告げる。
『複数個体反応確認』
「はぁ!? 原初が複数同時とか聞いてねぇぞ!!」
影が形を持ち始める。
赤の気配。
紫の気配。
そして、黒に近い圧。
リムルは即座に理解する。
(こいつら……“格が違う”)
その瞬間。
ハクが一歩前に出る。
それだけで、空気が変わる。
影が一瞬だけ“止まる”。
赤い影が笑う。
「なにあれ……あの白いの」
紫の影が興味深そうに言う。
「人間じゃないわね」
黒の影が、静かに言う。
「違う。あれは“人間の枠組みでは測れない”」
リムルがハクを見る。
「おい、下がれハク」
だがハクは動かない。
ただ、影を見ている。
エイルが静かに告げる。
『対象分析:不明』
『危険度評価:測定不能』
リムルは顔をしかめる。
「測定不能多すぎだろ最近!!」
影が一歩踏み出す。
その瞬間――
空間がわずかに“軋む”。
赤の影が楽しそうに言う。
「ねぇ、遊ぶ?」
紫の影が笑う。
「壊していいの?」
黒の影が答える。
「許可は必要ない」
リムルが舌打ちする。
「やっぱりそうなるか!!」
だがその瞬間だった。
ハクの周囲の“空気”が変わる。
エイルが反応する。
『戦場化抑制フィールド展開』
「またかよ!!」
しかし今度は違う。
抑制ではない。
“無効化”。
影たちの魔力が、触れた瞬間に“意味を失っている”。
紫の影が目を細める。
「……なにこれ」
赤の影が笑みを消す。
「面白いじゃない」
黒の影が、静かに言う。
「原初の領域に干渉している」
リムルが呟く。
「おいハク……それ、何してる?」
ハクは答える。
「侵入を防いでいる」
それだけ。
だがその“それだけ”が異常すぎる。
影たちが同時に動く。
空間が歪む。
しかし――
その全てが“届かない”。
エイルが静かに言う。
『接触阻害領域:固定』
赤の影が楽しそうに笑う。
「ねぇ、あなた」
「あなた、誰?」
ハクは答える。
「ハク」
紫の影が首を傾げる。
「それだけ?」
「それだけだ」
黒の影が小さく笑う。
「……なるほどね」
リムルが息を吐く。
「なるほどじゃねぇよ!!」
影たちは一歩引く。
だが撤退ではない。
“観察”。
赤の影が言う。
「また来るわ」
紫の影が言う。
「次はもっと面白い形で」
黒の影が静かに言う。
「世界は、まだ壊れていない」
そして影は消える。
リムルはその場に座り込みそうになる。
「……原初ってあんな軽いノリなのかよ」
エイルが静かに記録する。
『原初級存在:接触記録』
ハクは静かに空間を見ている。
「去ったか」
リムルは呟く。
「去ったっていうか……お前が追い返しただけだろ」
ハクは少し考える。
「そうかもしれない」
リムルはため息をつく。
「ほんとさ……お前いると話が終わらねぇな」
ハクは答えない。
だが、その存在がすでに“学園”という枠を超え始めていることだけは、誰の目にも明らかだった。