『転生したら白虎だった件 〜三上を守るため最強になった俺は、白氷竜に見初められ世界の均衡を壊す〜』 作:Hiro
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# ■第16章 帰還と違和感
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学園での“原初の気配”が消えたあと、しばらくの間、空気は妙に静かだった。
静かすぎる、と言った方が正しい。
リムル=テンペストは廊下を歩きながら眉をひそめる。
「……逆に気持ち悪いな」
エイルが即座に応える。
『高密度魔素反応:一時的減衰を確認』
「減衰って言い方やめろ、余計怖い」
ハクはその隣を歩いている。
いつも通りだ。
変わらない。
だが、リムルは気づいていた。
(こいつが“いるだけで何かが起きる状態”になってる)
学園の誰もが、無意識にハクを避ける。
恐怖ではない。
敬意でもない。
“現象としての認識”。
それが一番近い。
校門を出る。
外の空気は少しだけ軽い。
リムルは肩を回す。
「とりあえず今日は戻るか」
「戻る」
ハクは短く答える。
その瞬間だった。
エイルが微かに反応する。
『空間位相変化検知』
「は?」
リムルの声と同時に、視界が揺れる。
学園の門が、一瞬だけ“遠ざかる”。
いや――
“戻っている”。
リムルは即座に理解する。
「転移……いや、違う」
「逆再配置か?」
ハクは動かない。
ただ、空間を見ている。
エイルが静かに言う。
『帰還座標固定プロセス:開始』
「勝手に始めるな!!」
だが抵抗する前に、世界が“折れる”。
風景が切り替わる。
一瞬の無重力感。
そして――
ジュラの大森林。
テンペスト領域。
そこに戻っていた。
リムルが膝に手をつく。
「……帰ってきた、はずなんだが」
ハクは静かに周囲を見る。
「変化はない」
リムルは即座に突っ込む。
「いやあるだろ!! さっきまで学園だぞ!?」
エイルが静かに補足する。
『時間経過差異:ほぼゼロ』
「それが一番気持ち悪いんだよ!!」
だが違和感はそこだけではない。
森の“気配”が違う。
静かすぎる。
魔物の反応が少ない。
いや、“いない”。
リムルは眉をひそめる。
「……なんか、減ってねぇか?」
エイルが即答する。
『生態系圧縮傾向』
「圧縮って何だよ」
その時だった。
森の奥から、見慣れた気配。
ベニマルでもシオンでもない。
もっと“曖昧な気配”。
リムルが身構える。
「誰だ……?」
ハクは一歩前に出る。
そして――止まる。
そこにいたのは、何も“異常ではないはずの森”。
だが違う。
森が“こちらを見ている”。
リムルが小声で言う。
「……おい、これさ」
「嫌な予感しかしねぇんだけど」
エイルが静かに告げる。
『環境側認識変化を確認』
「環境側ってなんだよ!!」
その瞬間。
森の一部が揺れる。
ではない。
“認識が揺れる”。
そこにあったはずの枝が、次の瞬間には違う形になっている。
リムルが息を呑む。
「……世界の整合性がズレてる?」
ハクは静かに言う。
「ここは元からこうではなかった」
リムルは振り返る。
「どういう意味だよ」
ハクは答える。
「変わったのではなく、気づいた」
その言葉に、リムルは沈黙する。
エイルが静かに記録する。
『認識層の再構築進行』
森は静かだ。
だがそれは“元の静けさ”ではない。
“更新された静寂”。
やがて、リムルは小さく息を吐く。
「……もういい、考えるのやめる」
「お前といると頭が追いつかん」
ハクは首を傾ける。
「問題か」
「問題だよ!!」
だが、そのやり取りの中にも変化はあった。
帰還はした。
だが、“元の場所に戻った”という感覚がない。
どこかが少しずれている。
リムルは歩き出す。
「まぁいい、戻るぞ」
ハクも続く。
その背後で、森がわずかに揺れる。
まるで――
“観測されていない部分が書き換わった”かのように。
エイルが静かに言う。
『帰還処理:完了』
『ただし環境は未同期』
リムルは遠くを見ながら呟く。
「未同期ってなんだよ……」
ハクは静かに歩く。
変わらないようで、すべてが変わり始めている世界の中で。