『転生したら白虎だった件 〜三上を守るため最強になった俺は、白氷竜に見初められ世界の均衡を壊す〜』 作:Hiro
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# ■第19章 白と青の分岐
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テンペストの空は、静かだった。
だがその静けさは、もはや以前のものではない。
リムル=テンペストは拠点の上層で立ち、遠くを見ている。
「……来るな、これは」
エイルが即座に反応する。
『空間位相の再分岐を検知』
「再分岐?」
リムルの視線の先で、空がわずかに“割れる”。
いや、正確には違う。
“二重化”している。
白い空。
青い空。
同じ場所に、異なる層が重なって存在していた。
ハクはその下で静かに立っている。
何も言わない。
だが、その視線は明確に“上”を見ていた。
エイルが静かに告げる。
『存在軸の分岐兆候』
リムルは顔をしかめる。
「おい……これやばいやつだろ」
エイルは続ける。
『はい。魔王進化同期の副作用として、“可能性分岐”が発生しています』
「可能性分岐ってなんだよ!!」
その瞬間だった。
青い空の層から、わずかな“揺らぎ”が落ちてくる。
それは形を持たない。
だが“意志”だけはある。
リムルの背筋が冷える。
「……来る」
白い空の層は静かだ。
だが青い空の層は“動いている”。
まるで、別の未来がこちらを覗いているように。
ハクが一歩前に出る。
その瞬間、空間が安定する。
エイルが反応する。
『白層安定化:ハク起点』
リムルが舌打ちする。
「またお前かよ……」
だが青い層は止まらない。
そこから声がする。
曖昧で、重なったような声。
「――違う」
「――それはまだ確定していない」
リムルが目を細める。
「誰だ……?」
ハクは答えない。
ただ見ている。
青い層の“向こう側”。
そこには、もう一つの可能性。
“もしもハクが違う選択をしていた世界”。
エイルが静かに告げる。
『並行可能性存在:観測』
「並行……?」
その瞬間、青い空が波打つ。
そこから“影”が一瞬だけ形を持つ。
それはハクに似ていた。
だが違う。
冷たい。
鋭い。
そして、感情が薄い。
リムルが息を呑む。
「おい……それ……」
エイルが答える。
『分岐体:可能性ハク』
白いハクが一歩動く。
その瞬間、青い影も動く。
同じ動作。
だが意味が違う。
リムルが声を荒げる。
「やめろやめろ!! これ戦うやつじゃねぇだろ!!」
だが青い影は言う。
「この世界は不完全だ」
白いハクは答える。
「不完全でも問題はない」
対話。
同一存在から分岐した“二つの答え”。
エイルが静かに告げる。
『存在定義の衝突』
リムルは頭を抱える。
「もうなんでもありかよ……」
青い影が続ける。
「守るだけでは終わらない」
「支配しなければ、守れないものもある」
その言葉に、空気が重くなる。
リムルが横目でハクを見る。
ハクは答えない。
ただ、その言葉を“聞いている”。
白いハクが静かに言う。
「守ることは、それで完結している」
青い影が笑う。
「それは“まだ壊れていない世界”の理屈だ」
その瞬間――
青と白の空が揺れる。
エイルが警告する。
『分岐収束不安定化』
「収束しろ!!」
リムルの叫び。
だが止まらない。
青い影が一歩踏み出す。
白いハクも一歩踏み出す。
重なる。
衝突する寸前――
ハク自身が、静かに言う。
「どちらも、私だ」
その一言で、空気が止まる。
青い影が一瞬だけ揺れる。
リムルが息を呑む。
エイルが静かに反応する。
『統合条件発生』
青い影が問う。
「それでも選ぶのか」
白いハクは答える。
「選ぶ必要はない」
沈黙。
そして――青い層が少しずつ崩れる。
エイルが静かに言う。
『分岐:収束開始』
青い影が最後に言う。
「ならば見届けろ」
そして消える。
空は元に戻る。
白一色へ。
リムルはその場に座り込みそうになる。
「……ほんと、何なんだよ今の」
エイルが静かに補足する。
『可能性分岐の一時的顕在化です』
ハクは空を見上げる。
「私は変わらない」
リムルは苦笑する。
「いや、変わる前提の現象だったろ今の」
ハクは静かに言う。
「それでも、私はここにいる」
その言葉に、空気が少しだけ落ち着く。
リムルはため息をつく。
「……まぁ、お前がそう言うならそうなんだろうな」
だが、どこかで確信していた。
“青い分岐”は、まだ完全には消えていない。