『転生したら白虎だった件 〜三上を守るため最強になった俺は、白氷竜に見初められ世界の均衡を壊す〜』 作:Hiro
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# ■第2章 スライムとの再会
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森は静かだった。
いや、正確には“静かにさせられていた”。
ハクがそこにいるだけで、周囲の魔物は息を潜める。
捕食者としての本能ではない。
もっと根本的なもの――存在階層の差を本能が理解してしまっている。
白い獣は歩く。
音はない。
だが、その一歩ごとに世界がわずかに整っていく。
「……ここだな」
エイルが静かに告げる。
『反応検知。前方、既知個体と一致』
「既知?」
『はい。“リムル=テンペスト”』
その名に、わずかに胸が反応する。
三上。
いや、もうその呼び方は正しくない。
だが、まだ完全には切り替えられていない。
森の奥が開ける。
そこにいた。
青。
揺れるスライム。
そして、その中心にある“意志”。
「……また会ったな」
ハクが静かに言う。
スライムが一瞬止まる。
そして――
「いやいやいやいや待て待て待て!!」
爆発するようなツッコミ。
「なんでそうなる!? なんでお前そんな“森の神様みたいなやつ”になってんだよ!!」
やはり変わっていない。
その軽さに、少しだけ安心する。
「白虎だ」
「知ってるわ!! そういう問題じゃねぇよ!!」
スライムは跳ねるように動く。
いや、正確には“感情で揺れている”。
ハクはその様子を観測する。
(変わらない)
その事実が、少しだけ嬉しい。
だが同時に、別の情報も流れ込む。
エイルが静かに解析する。
『対象:リムル=テンペスト。魔力密度上昇中。進化段階に移行の兆候』
「進化?」
『はい。現象としては“異世界転生個体の適応進化”に該当』
「そうか」
それだけで理解できてしまう。
彼はまた、変わる。
それは当然だ。
この世界はそういう場所だ。
だが――
「問題はない」
小さく呟く。
リムルがこちらを見る。
「いやいや問題だらけだろ!? お前今“問題はない”って顔で言ったよな!?」
「事実だ」
「その事実が怖ぇんだよ!!」
少しだけ、口元が緩む。
会話は続く。
だが、その最中にも世界は勝手に変化している。
周囲の魔力が流れを変え始める。
空気の密度がわずかに歪む。
リムルもそれに気づく。
「……なんか、お前いると周りおかしくならないか?」
「気のせいだ」
即答。
エイルが淡々と補足する。
『否定は困難。因果関係としては“ハクの存在が環境を再定義している”』
「余計なことを言うな」
『承知しました』
リムルが固まる。
「今の誰!? 今の声誰!? なんか頭の中にもう一人いるんだけど!?」
「エイルだ」
「説明雑!!」
騒がしい。
だが、嫌いではない。
この“騒がしさ”が、前世の延長にある唯一の救いだ。
風が一瞬止まる。
遠くで魔物が逃げる気配。
それでも、ここだけは異様に穏やかだった。
リムルが少しだけ真面目な顔になる。
「で、お前さ……なんでここに来たんだ?」
その問い。
当然の疑問。
ハクは少しだけ考える。
答えは簡単だ。
だが、それをそのまま言うのは少しだけ躊躇われた。
「……お前がいたからだ」
沈黙。
リムルが固まる。
「え、重い重い重い!! その言い方重いって!!」
「事実だ」
「事実が一番重いんだよ!!」
エイルが静かに補足する。
『対象反応:動揺。情緒的負荷増加』
「お前も余計な分析をするな」
だが、悪くはない。
このやり取りは、前と同じだ。
だが違う。
何かが確実に変わっている。
リムルが少しだけ息を吐く。
「まぁ……生きてて良かったよ、お前が」
その言葉に、一瞬だけ間が生まれる。
ハクは答えない。
代わりに、視線を遠くへ向ける。
(生きている)
それだけでいい。
それ以上は、まだ必要ない。
だがその時だった。
エイルが静かに警告する。
『警戒。高魔力反応接近』
空気が変わる。
リムルも反応する。
「……来るな、これ」
森の奥。
“何か”が動き始める気配。
まだ形は見えない。
だが確実に、“こちらを観測している”。
ハクは一歩前に出る。
リムルが慌てる。
「おい待て、なんか嫌な予感するぞ!」
「問題ない」
「その問題ないが一番問題なんだよ!!」
だが、もう遅い。
世界はすでに動き始めている。
白い獣は静かに目を細める。
エイルが淡々と告げる。
『戦闘確率:100%』
ハクは小さく息を吐く。
「なら、終わらせるだけだ」