『転生したら白虎だった件 〜三上を守るため最強になった俺は、白氷竜に見初められ世界の均衡を壊す〜』 作:Hiro
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# ■第29章 観測不能領域
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魔王会議が終わったあと、テンペストには妙な静けさが戻っていた。
だがそれは“平穏”ではない。
むしろ、嵐の前の静寂よりもさらに深い。
リムル=テンペストは執務室で腕を組む。
「……なんか、余計に静かじゃね?」
エイルが即座に応える。
『外部観測圧:低下。しかし残留異常値:増加』
「それなにが違うんだよ」
ハクはいつも通り、静かに立っている。
だがその周囲の“世界の情報”だけが、なぜか読み取りづらい。
ヴェルザードは窓の外を見ながら言う。
「ここから先です」
リムルが振り返る。
「何が?」
ヴェルザードは静かに答える。
「観測できない領域に入ります」
エイルが即座に反応する。
『警告:観測精度低下』
リムルが机を叩く。
「だからそれ何なんだよ!!」
その時だった。
エイルの声が一瞬だけ揺らぐ。
『……干渉検知』
リムルが固まる。
「エイル?」
『観測外接続発生』
空気が変わる。
重さでも圧でもない。
“情報そのものが曖昧になる感覚”。
リムルは思わず周囲を見る。
「おい……何も見えねぇぞ」
ヴェルザードが静かに言う。
「それが“観測不能領域”です」
その言葉と同時に、空間がわずかに歪む。
そこに“誰か”がいる。
だが、形がない。
名前もない。
認識しようとした瞬間に、滑り落ちる。
リムルが歯を食いしばる。
「なんだこれ……魔王でもないぞ」
エイルが静かに分析する。
『認識不可存在:複数』
ハクはその“中心”を見ている。
ただ一人、ぶれずに。
ヴェルザードが一歩前に出る。
「やはり来ましたね」
リムルが振り返る。
「知ってたのか?」
ヴェルザードは答える。
「いえ、“予測していた”だけです」
エイルが補足する。
『高次観測体:接続成功』
その瞬間、“声”だけが響く。
だがそれは言葉ではない。
意味だけが直接流れ込んでくる。
『ここにいるのか』
リムルは頭を押さえる。
「うわ……直接脳に来るタイプやめろ……」
ヴェルザードは静かに応える。
「はい」
『まだ壊れていないか』
リムルが叫ぶ。
「何を心配されてんだ俺たち!!」
エイルが淡々と記録する。
『観測者:確認不能』
ハクは静かに言う。
「私はここにいる」
沈黙。
その“言葉”に対して、存在は一瞬だけ反応する。
『固定』
『再認識』
『矛盾解消』
リムルが呆然とする。
「今ので何が解決したんだよ……」
ヴェルザードが静かに言う。
「彼は“基準”です」
リムルが反応する。
「またそれかよ!!」
エイルが補足する。
『基準存在:再確認』
空間の歪みがわずかに収束する。
だが完全には戻らない。
“何かが見えないまま存在している状態”だけが残る。
リムルはため息をつく。
「もうこれ、俺の理解超えてるんだけど」
ヴェルザードは静かに言う。
「それでいいのです」
リムルが振り返る。
「よくねぇだろ普通は」
ヴェルザードはハクを見る。
「彼の周囲では、“理解”は必要条件ではありません」
エイルが静かに補足する。
『存在維持条件:非理解許容』
リムルは机に突っ伏す。
「条件多すぎだろこの世界……」
その時だった。
ハクの視線がわずかに動く。
「戻る」
その一言。
空間の“歪み”が消える。
観測不能領域は、まるで最初から存在しなかったかのように消失する。
リムルは息を吐く。
「……終わった?」
エイルが静かに答える。
『一時停止』
ヴェルザードは静かに言う。
「まだ終わっていません」
リムルは顔を上げる。
「だろうな……」
ハクはただ立っている。
その存在だけが、“見えないものすら含めて成立している”という矛盾を抱えたまま。
そして世界はまた一つ、ハクという中心に対して“測定不能”へと近づいていく。