『転生したら白虎だった件 〜三上を守るため最強になった俺は、白氷竜に見初められ世界の均衡を壊す〜』 作:Hiro
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# ■第8章 戦場の設計者
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都市は、森とは違う“音”を持っていた。
人の声。馬車の軋み。金属のぶつかる響き。
それらは雑音ではなく、ひとつの“秩序”として成立している。
リムル=テンペストはその中を歩きながら、周囲を観察していた。
「……やっぱり、森とは別世界だな」
その隣で、ハクは何も言わない。
ただ静かに歩いている。
白い毛並みは、明らかに周囲から浮いていた。
だが不思議なことに、誰も違和感を“疑問”として認識しない。
見えているのに、気に留めない。
それは異常な現象だった。
エイルが静かに告げる。
『認識阻害ではありません』
「じゃあなんだよ」
リムルが小声で聞く。
『“重要度の再配置”です』
「意味わかんねぇよそれ!!」
都市の中心へ向かう道。
そこには、すでに小さな騒ぎが起きていた。
兵士たち。
緊張した空気。
そして、明確な敵意。
リムルが足を止める。
「……やっぱりこうなるか」
ハクは視線だけを向ける。
エイルが分析する。
『人間種兵装集団。戦闘準備状態』
リムルはため息をつく。
「説明する前に囲まれてるの、毎回なんなんだよな……」
兵士の一人が叫ぶ。
「そこまでだ! 身元を明かせ!」
リムルは両手を軽く上げる。
「まぁまぁ、話し合いで――」
その瞬間だった。
空気が“変わる”。
ハクが、一歩前に出る。
それだけで、兵士たちの動きが止まる。
いや、正確には止められた。
恐怖ではない。
圧力でもない。
“戦うという選択肢の消失”。
エイルが静かに言う。
『戦闘意思の除去を確認』
リムルが横で小声で叫ぶ。
「おい今の何した!!」
ハクは答えない。
ただ見ている。
兵士たちは武器を構えたまま固まっている。
撃てない。
斬れない。
理由がない。
その“理由の喪失”こそが、ハクの本質だった。
リムルは頭を抱える。
「なぁ……お前さ、ほんとさ……」
「戦闘って概念壊してないか?」
ハクは少し考える。
「壊していない」
「じゃあ何だよ」
「成立させていない」
即答。
リムルは遠い目をする。
「同じだよそれ!!」
その時、別方向から別の気配。
魔力反応。
より強い。
兵士たちの奥から、一人の人物が現れる。
騎士。
明確に“格”が違う。
リムルが小さく息を吐く。
「やっと話ができそうなのが来たな」
騎士はハクを見る。
そして、一瞬だけ表情が変わる。
警戒。
そして、本能的な恐怖。
「……貴様ら、何者だ」
リムルが答えようとした瞬間。
ハクが言う。
「通り過ぎる者だ」
それだけ。
だが、その言葉で場が静まる。
騎士は歯を食いしばる。
「許可なく都市に入ることは――」
その瞬間。
空気が“設計”される。
エイルが静かに告げる。
『戦場環境再定義開始』
「またお前か!!」
リムルの叫び。
だが止まらない。
ハクは何もしていない。
ただ存在しているだけ。
しかし――その存在に合わせて“世界が再設計されていく”。
騎士の足元が揺れる。
地形ではない。
“戦場という前提”が崩れている。
リムルが気づく。
「おい……まさか……」
エイルが答える。
『戦闘成立条件を再構築しています』
騎士の顔が強張る。
「……何をした」
ハクは答える。
「無駄を減らした」
騎士の武器が下がる。
いや、下げざるを得ない。
“戦う理由が消えている”。
リムルが呆然とする。
「……お前さ、それもう“設計者”だろ」
ハクは首を傾ける。
「設計?」
リムルは苦笑する。
「戦場そのものを作り替えてる時点でな」
その言葉に、ハクは少しだけ沈黙する。
そして、静かに言う。
「護衛のためだ」
その一言は、あまりにも真っ直ぐだった。
だからこそ、騎士は何も言えなかった。
エイルが記録する。
『評価更新』
『対象ハク:戦場構造干渉個体』
都市の喧騒が戻る。
だが、さっきまでの“敵対”は消えている。
リムルは小さく息を吐く。
「……もういい、説明するの疲れた」
ハクは歩き出す。
「問題ないな」
リムルは笑う。
「お前の“問題ない”は信用してねぇけどな」
だが、その後を追う。
二人は都市の中へ進む。
その背後で、誰も気づかないまま“戦場という概念”がわずかに書き換わっていた。