『転生したら白虎だった件 〜三上を守るため最強になった俺は、白氷竜に見初められ世界の均衡を壊す〜』 作:Hiro
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# ■第9章 終わりのない戦争
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都市は、静かに“戦争前夜”へと傾いていた。
表向きは平穏。
だが、空気の奥には確かに“軋み”がある。
リムル=テンペストはその違和感を、誰よりも早く察知していた。
「……やっぱり、ただの都市じゃねぇな」
その隣でハクは歩いている。
変わらない。
ただ静かに、そこにいる。
エイルが淡々と告げる。
『周辺勢力の衝突確率上昇中』
「やっぱり来るか」
リムルは小さく息を吐く。
その時だった。
遠くで鐘が鳴る。
一度。
二度。
そして――三度目で空気が変わる。
「……戦争か」
リムルが呟く。
ハクは止まらない。
「戦争?」
「いや、まだ始まってないけどな」
だが、その“まだ”は短い。
都市の外縁。
武装した集団が現れる。
旗。
統率。
敵意。
明確な“侵攻”。
リムルの顔が引き締まる。
「……やるしかないか」
ハクは静かに前を見る。
エイルが分析する。
『大規模戦闘発生予測』
『敵勢力:複数国家級戦力』
リムルは苦笑する。
「お前さ、毎回規模おかしくない?」
ハクは答えない。
ただ一歩前へ。
その瞬間だった。
空気が“変わる”。
戦場が始まる前に、すでに戦場が終わりかける。
兵士たちが進軍してくる。
だが、その足は揃っていない。
混乱。
恐怖。
そして――違和感。
リムルが目を細める。
「……おかしいな」
「統率が崩れてる」
エイルが答える。
『はい。戦意分断が発生しています』
「誰がやった?」
少し間。
エイルは答える。
『ハク』
リムルは即座にハクを見る。
「お前、何した?」
ハクは淡々と答える。
「何もしていない」
「それ聞き飽きた!!」
だが事実だ。
兵士たちは互いを見失っている。
“敵が誰なのか”が分からない。
戦争とは、本来“共通の敵認識”で成立する。
それが崩れている。
エイルが静かに言う。
『敵対概念の希薄化』
リムルが頭を抱える。
「戦争の前提壊してるじゃねぇか……」
その時。
戦場の奥から、一人の指揮官が現れる。
明確な“意志”を持つ存在。
彼は叫ぶ。
「怯むな! 敵はあそこだ!!」
指を向ける。
それは――ハク。
リムルが舌打ちする。
「やっぱりそうなるか」
兵士たちが動き出す。
一斉に。
だが、その瞬間。
ハクが一歩進む。
それだけで空気が変わる。
エイルが告げる。
『戦場構造固定化開始』
「またそれか!!」
リムルの叫び。
だがもう遅い。
兵士たちの動きが“途中で止まる”。
止まったのではない。
進む理由を失った。
ハクは静かに言う。
「止まれ」
それだけ。
命令ではない。
“現象”。
兵士たちは武器を握ったまま固まる。
戦えない。
逃げられない。
理由が消えた。
リムルは小さく息を吐く。
「……お前さ、本当に戦争嫌いだろ」
ハクは少し考える。
「無駄だからな」
その一言。
あまりにも単純で、あまりにも異常。
戦争そのものが“無駄”として切り捨てられている。
指揮官が叫ぶ。
「ふざけるな!! これは国家の――」
その瞬間。
言葉が止まる。
理由ではない。
“言葉として成立しなくなる”。
エイルが静かに言う。
『発言因果遮断』
リムルはもう笑うしかない。
「戦争ってなんだっけこれ……」
ハクは戦場を見る。
そこには、武器を持ったまま動けない人間たち。
戦う意思はある。
だが、戦う“意味”がない。
それが、この状況の本質だった。
リムルが呟く。
「なぁハク……これ、俺たちが戦ってるんじゃなくてさ」
「世界のほうが折れてないか?」
ハクは少し間を置く。
「そうかもしれない」
リムルはため息をつく。
「否定しろよそこは」
だが、もう遅い。
戦争は始まる前に終わっている。
あるいは――
“始まり続けているが、完結できない状態”。
エイルが静かに記録する。
『戦争状態:未成立』
『しかし継続的発生中』
リムルは空を見上げる。
「終わりのない戦争って……これかよ」
ハクは歩き出す。
「終わらせる必要はない」
リムルは横を見る。
「は?」
ハクは言う。
「最初から始まっていない」
その言葉に、リムルは沈黙する。
戦場は静かだ。
だが、それは平和ではない。
“戦争が成立しない世界”。
その中心に、白い存在が立っていた。