We are Always Searching Happy Goal 作:Redemptor
「この国は、なんだか面白くないな」
竜王国に来てから、いつの間にか一週間が過ぎていた。
彼らは竜王国に到着するや否や、適当な場所に宿を取り、しばらく滞在しながらこの世界に関する情報を集め、再び旅立つつもりだった。
しかし、現在の竜王国は国家そのものが獣人たちの脅威にさらされている状況にあり、さらに魔導国と法国、その両国が綱引きをしているような状態でもあった。
おかげで、戦争や紛争に少しも興味のないカリムにとって、竜王国という国は非常につまらない場所だった。
少しでも竜王国のことを良く考えようと、どうにか面白いものを探してみたが、成果はなかった。
せめてこの国の王、竜王国の王ならば、この退屈さを吹き飛ばしてくれるのではないか。
そう考えたカリムは、現在の竜王国の国王であり、「黒鱗王」と呼ばれるドラウディロン・オーリウクルスに関する情報を調べ始めた。
そして、その情報は比較的簡単に手に入った。
彼女――ドラウディロンは、七彩竜王の曾孫娘であり、その血を八分の一ほど受け継いでいるという。
特徴としては、子供の姿と大人の女性の姿を自由に行き来できること。
それは、アンティリーネが竜王国に入る前に教えてくれた情報とも、ある程度一致していた。
子供と大人の女性の姿を自由に行き来できる。
その情報に、カリムは一瞬だけ興味を持った。
だが、隣にいるアンティリーネを見た瞬間、黒鱗王に対する関心は完全に消え去った。
もちろん、その前提として、彼が竜という種族にそれほど強い興味を持っていなかったことも大きい。
──もっとも、カリムはアンティリーネをじっと見つめすぎて、危うく一発殴られそうになったのだが。
「俺は少し怠け者で、退屈なことや単調なこともそれなりに楽しめる方だと思ってたんだが……ここはさすがに酷いな」
「あ、そう」
退屈そうな顔で竜王国への不満を吐き出すカリムを見て、アンティリーネは信じられないものを見るような表情を浮かべた。
退屈なことや単調なことを楽しめる?
そんな人間が、あれほどせわしなく町中で言いふらして回るものなのか。
あまりにも矛盾している気がして、彼女はじっと彼を睨みつけた。
「ん? どうした?」
「……う、ううん。何でもないわ」
あれほど睨みつけたにもかかわらず、彼はむしろ無邪気な表情で見つめ返してくる。
そのせいで、アンティリーネは今度こそ呆れたような顔になった。
どうして人は、ここまで図々しくなれるのか。
そして、どうしてここまで一貫してこうでいられるのか。
「それより、町中に言いふらして回るの、やめてくれない?」
「え、なんで?」
「……分からなくて聞いてるの?」
本当に分からなくて聞いているのだろうか。
それとも、からかうのが楽しくてやっているのだろうか。
分からなかった。
だが、一つだけ確かなことがある。
──この町に到着してからというもの。
酒場はもちろん、商店へ行くたびに、会う人会う人へ向かって、
「俺はこんなに美しい絶世の美女を連れ歩いている超幸運な男だ!」
などと町中に言いふらして回っているせいで、とてつもなく恥ずかしいということだった。
おかげで、この町では彼女のことを知らない者の方が少ないほどになっていた。
「あんたのせいで、この町の人たち全員が知ることになっちゃったじゃない! もう、本当に何なの! この前なんか、通りすがりの子供が私を見て『綺麗なお姉ちゃんだ』って言って通り過ぎていったのよ!」
「なんだ、間違ってないじゃないか!」
「間違ってないって! いや、間違った言葉じゃないとしても、その、顔が売れすぎたのよ! それに、あんた! 魔導国から出た時、静かに暮らすって言ったじゃない! でも今のこれ、一体何なのよ! うぅ、本当に! ああ、このままだと、本当に私が法国の外でこんな風に出歩いていることがバレたら……はぁ」
カリムが相変わらず図々しく、にやにやしながら言葉を続けるものだから、アンティリーネは思わず熱弁を振るってしまった。
確かに、彼女の言う通りだった。
現在の彼女の顔は、少なくともこの町では知らない者がいないほどになっている。
法国の切り札として、最終兵器として、知る者が極端に限られていた頃と比べれば、凄まじい違いだった。
ところが今は、まだ少数ではあるものの、カリムが何の対策もなしに自慢して回っているせいで、彼女の存在を知る者が少しずつ増えている。
このまま法国や白金の竜王がこの事実を知りでもしたら、本当に頭が痛いことになるだろう。
そして何より、彼は魔導国から出る時、静かに暮らすと約束したと言っていた。
しかし、今の彼の行動は静かさとは程遠い。
もしこれが静かに過ごしている状態だというのなら、騒がしく過ごした場合は一体どんな大騒ぎが起こるのか。
彼女には想像もつかなかった。
「お、綺麗だってことは否定しないんだな? まあ、それは俺も認めるぜ!」
「認める……って何よ! あぁ、もういいわ。私、疲れた」
今回も、下手をすれば彼の思い通りにされるところだった。
アンティリーネは顔をしかめ、そのままテーブルに突っ伏した。
──もちろん、カリムは相変わらずくすくすと笑いながら、愛おしそうな眼差しで見つめるだけだった。
「まあ、それでも。この国、竜王国には十分いたし、そろそろ他の国にも行ってみるか」
「……勝手にして」
アンティリーネは突っ伏したまま、もごもごと適当に答えた。
竜王国に到着してからカリムが口にした言葉の中で、最も嬉しい言葉だった。
だが、どうせ他の国へ行っても、絶対にこうなるに決まっている。
そう考えると、まったく嬉しくなかった。
「よし、それなら。次はここだ!」
もちろん、カリムは彼女の言葉通り、すでに好き勝手にしていた。
──こうして次の目的地は、彼女の意見など少しも取り入れられることなく決まった。
────────────
「アンティリーネ。バハルス帝国って何をしてる国なんだ? 他の国とは違って、一つだけ帝国を名乗ってるらしいが、なんだか生意気だな?」
「……知らないわよ、そんなの」
今回も思いがけない質問をされたため、アンティリーネは、そこまで深く考えたことはないと適当に受け流した。
もちろん、ごく当然のようにカリムのツッコミが入る。
「そうか? 知れば知るほど、完全に俺と変わらない気がするんだけど」
「は? 私のどこが? 一体!」
変わらないという彼の言葉に、アンティリーネは睨みつけながら呆れた声で返した。
まるで、お前と俺のレベルは似たようなものだ。
お前も俺のように突拍子もなく、何も知らない人間だ。
そう言われたように聞こえたからだ。
いくら自分に知らないことが多いとしても、この男、カリムと似ているなどという言葉は、彼女として到底納得できなかった。
「ふん! 変わらないだなんて! 全然違うから!」
アンティリーネは今度こそ、少し感情を込めて彼の尻を蹴った。
初めて表に出した強烈な意思表示だったため、カリムは一瞬だけ戸惑った。
アンティリーネが、ついに意思表示を?
蹴った瞬間、彼が何の反応も示さなかったため、アンティリーネは少し緊張した。
しかし、その緊張はすぐに疲労へと変わった。
「アハハッ! 女に尻を蹴られるのは十数年ぶりだぜ?」
「……自慢なの、それ」
蹴られたにもかかわらず、むしろ自分の経験談を語りながらにやにやと笑うカリムを見て、アンティリーネは急激な疲れを覚えた。
その様子に、周囲の視線も少し集まってくる。
恥ずかしさまで一緒に押し寄せてきた。
特に、周囲から「本当に仲が良さそうだ」「お似合いだ」といった言葉が聞こえてくるたび、穴があったら入りたい気分になる。
そして、ごく当然のことながら、カリムはそんな言葉を聞くたびに口元を大きく緩め、自慢をやめなかった。
「ああ、もう。まともな神様はどこかにいないの」
なぜ、よりによってこの男なのか。
なぜ、よりによってこの男に救われたのだろうか。
一体、なぜよりによって。
──もちろん、そう祈ったところで現実は変わらなかった。
彼女にできることは、この状況を恥ずかしく思いながらも耐えることだけだった。
耐えれば福が来るとか、何とか。
「クハハ! まあ、そんなに言わないでくれよ」
彼女の愚痴を聞いたカリムは、相変わらず図太く笑いながら言った。
そして、どうせユグドラシルをやっていたプレイヤーの中にまともな奴なんてあまりいなかった、特に頂点であるレベル百まで行った連中の中ではなおさらだ、と自分に都合の良いことばかり並べ立てた。
それを聞いたアンティリーネは、当然のように適当に聞き流した。
六大神たちのそんな姿など、まったく想像できなかったからだ。
「それはともかく。そろそろ出発してみようか! バハルス帝国だか、バルス帝国だかいう、生意気な国へ!」
「大声で言わないでよ……」
少し大げさに叫ぶカリムを見て、アンティリーネは今回も大きな溜息をつきながら言った。
果たして今回の旅路では、またどんな変なことが起きるのか。
そして到着してから、またどれほど自慢して回るのか。
考えただけで背筋に悪寒が走り、苛立ちと目眩が込み上げてくるようだった。
ただ、この慌ただしく無計画な旅が、最後にどんな結末を迎えるのか。
この男の奇行がどこまで続くのか。
時間が経てば経つほど気になってきたため、今回も彼女は文句を言わずに彼の後について行った。
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「それじゃ、入って寝な。心配しなくていいぞ!」
「……むしろ、あんたに襲いかかる奴らのことを心配しなきゃいけない気がするんだけど」
彼らは竜王国を出て、バハルス帝国へと向かった。
今回は目的地もはっきりしている。
何より、地図も手に入れていた。
以前のように時間はかからないだろう。
──どうか、そうでありますように。
アンティリーネはそう考えながら、今日一日もカリムの奇行に付き合わされたことで精気を吸い取られたような気分になり、疲れを癒すため眠りについた。
──それでも、少しは悪い気もするわね。
旅の目的自体は、あくまで彼の満足感を満たすためのものだったとしても。
自分をあの地獄のような場所から救い出してくれた人だ。
多少気に入らない部分は、確かにある。
だが、おかげで新しい経験をすることもできた。
少しずつ、自分自身を振り返るきっかけも得られた。
知らなかったことを知ることもできた。
まだ完全に彼を信じているわけではない。
それでも、少しなら頼ってもいいのではないだろうか。
「……法国の次代の神として来てくれたなら」
何度も考えていることだった。
本当に残念だった。
もちろん、神と言うには軽薄な部分も多い。
少々軽く見えるのも事実だ。
だが、彼の強さだけは本物だった。
何より――本人は、自分のことを第一に考えると言っていたが。
実際には誰よりも他人に配慮し、利他的な性格を持っているように見えた。
「まあ、惜しんだところで、変わるものは何もないだろうけど」
あくまで、彼女と法国の願望に過ぎない。
彼の性格を見れば、次代の神として推戴しようとした瞬間、姿をくらますことは明らかだった。
──そんな小さな願いを胸の奥で祈りながら、アンティリーネは夢の世界へと落ちていった。
本日もお読みいただき、誠にありがとうございます。
明日もまたお越しいただけますと幸いです。