We are Always Searching Happy Goal   作:Redemptor

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いつも誤字脱字を見つけてくださる読者様、本当にありがとうございます。
ご指摘のおかげで、少しずつではありますが、より読みやすい形に整えられております。
この場を借りて、心より感謝申し上げます。


We are Always Searching Happy Goal - 17

「ねえ。あれ、本気だったの?」

 

「ん? 何がだ?」

 

少し怪しい部分はあったが、少なくともカリムよりは重みのある彼らとの酒席が終わった翌日。

 

アンティリーネは、カリムが彼らの提案――帝国に仕える話を断った理由が気になっていた。

 

彼女の目には、それなりに魅力的な提案に思えたからだ。

 

「ああ。どこかに縛り付けられるのは真っ平ごめんだからな。数え切れないほど経験してきたし」

 

──少し予想外だった。

 

思っていたよりも真面目な答えが返ってきたため、アンティリーネは少し驚いた。

 

同時に、気になるという表情を浮かべる。

 

これまで一緒に行動してきて、この男、カリムがどこかに縛られることを嫌うということは、すでに理解していた。

 

だが、それを数え切れないほど経験してきた。

 

それはユグドラシルでの経験なのだろうか。

 

それとも。

 

「それに、アンティリーネ。お前を置いてどこかへ行くつもりはないよ」

 

「あっ、そう」

 

ひどく真剣な顔で、カリムはアンティリーネの両手をぎゅっと握りしめて言った。

 

その姿に、アンティリーネは、やっぱりね、という表情を浮かべる。

 

「おいおい、本気だってば。もし俺が帝国に仕えることになったら、アンティリーネ、お前はどうする? ついて来れば、結局は法国にも知られることになる。そうなれば、とてつもなく面倒なことになるじゃないか」

 

合理的な理由だった。

 

彼の言う通り、もし彼がその提案を受け入れ、帝国に仕えることになったなら、アンティリーネも彼について行かなければならなかった。

 

法国へ行くことになれば、魔導国は法国を再び攻めるだろう。

 

かといって、彼と離れて放浪すれば、魔導国の獲物になるだけだ。

 

他の場所に定住しても、同じことである。

 

「そして何より、奴らと交わした約束もあるからな」

 

「あ」

 

完全に忘れていた。

 

自分を救った代償として、カリムは一生監視されるかもしれない立場になった。

 

一生、たった一人で。

 

誰かと協力することもできず、手を組むこともできない。

 

完全な一匹狼として生きていかなければならないかもしれないのだ。

 

その考えに至った瞬間、アンティリーネは自分でも気づかないうちに、少し心が重くなった。

 

もし、私があの時、あんな判断さえしなければ。

 

そうであれば、カリムはユグドラシルからこの世界へ転移した後、どうなっていただろうか。

 

今のようにあちこちを彷徨っていただろうか。

 

今のように、帝国からスカウトを受けていただろうか。

 

それとも、やはり。

 

──いや、そんなはずはない。

 

たとえそういう提案を受けたとしても、彼は今と同じように、間違いなく断っていただろう。

 

彼は、そういう人だからだ。

 

「……ずるい」

 

外に広がる雨雲のように、重苦しい感情を抱いたまま、アンティリーネは小さく呟いた。

 

主語はなかった。

 

それは魔導国へ向けた言葉だったのかもしれない。

 

あるいは、いつも自分の心を落ち着かなくさせる彼へ向けた言葉だったのかもしれない。

 

「クハハッ! まあ、仕方ないさ。全部、俺が選んだ道なんだから」

 

もちろん、カリムは彼女のそんな言葉にも、まるで気にした様子を見せなかった。

 

ただ豪快に笑う。

 

自分が選んだ道だと。

 

その選択に、少しの後悔もないと。

 

むしろ、最高の選択だったと。

 

そして、何度やり直しても同じ選択をするだろうと。

 

「……だから、ずるいって言ってるのよ」

 

彼に救われてから、それほど多くの時間が流れたわけではなかった。

 

二ヶ月を少し過ぎた程度。

 

短いと言えば、短い時間だった。

 

彼について完璧に、百パーセントすべてを知ったわけではない。

 

それでも、一緒に旅をして感じたことがある。

 

彼は多少身勝手で、奇行に走ることもある。

 

だが、今のように自分がとてつもなく損をするような場合であっても、最大限他人を思いやる。

 

悪人よりは、善人に近い姿を見せてくれる人だった。

 

──だから、アンティリーネは彼がずるいと思った。

 

彼はいつも見返りを求めることなく、惜しみなく与えてくれる。

 

奇行に走るのも、彼女の心の奥底に根付いた恐怖を消すためだった。

 

私は何もしてあげていないのに。

 

毎回こうして、私ばかりが慰められて。

 

「そうか」

 

彼女が少し憂鬱な表情を浮かべると、カリムは静かに彼女を抱き寄せた。

 

旅を始めてから初めて見せた彼の行動に、アンティリーネは少し戸惑う。

 

だが、すぐにカリムの胸へ顔を埋めた。

 

今、自分がどんな表情をしているのか。

 

その表情を、これ以上見せたくなかったからだ。

 

「ちっ」

 

やっぱり、ずるい。

 

カリムに抱きしめられたまま、アンティリーネは小さく呟いた。

 

妙な安心感を覚える。

 

それでもやはり、ずるいという思いは拭えなかった。

 

カリムはそんな彼女の反応を静かに窺いながら、背中をとん、とん、と軽く叩いた。

 

「俺は本当に大丈夫だ。全部、俺が選んだ道だからな」

 

彼女の背中を叩きながら、微かに震える反応と温もりを感じ、カリムは普段とは違う、とても真剣な声で言った。

 

そして――何かに引かれるように、ゆっくりと顔を近づける。

 

「……」

 

アンティリーネもまた、カリムと同じように、何かに引かれるようにゆっくりと顔を上げた。

 

そして、静かに彼を見つめる。

 

互いが互いに、同じ気持ちと思いで約束でも交わしたかのように。

 

重力に引かれるように、同時に同じ行動を取っていた。

 

静かに抱き寄せたカリムもそうだった。

 

抱きしめられたアンティリーネもそうだった。

 

それは互いにとって、突然の行動だった。

 

にもかかわらず、まるで最初から慣れていたかのように。

 

とても自然で、親しい恋人同士のような空気がそこにあった。

 

「あ……」

 

本当に、本当に久しぶりだった。

 

こんな風に、自分から望んで誰かに抱きしめられたのは。

 

誰かに慰められながら、その体温を感じたいと思ったのは。

 

「なんだ。なんで泣いてるんだ」

 

「……ふん。泣いてないわよ」

 

少し赤くなった頬と目元。

 

そして、わずかに滲んだ涙。

 

その姿を見たカリムは、くすっと笑って言った。

 

アンティリーネは少し恥ずかしそうに、消え入りそうな声で答える。

 

もちろん、いつものようにからかうつもりで言ったわけではない。

 

彼女もまた自分のことを心配してくれている。

 

その事実を知っていたからこそ、それは彼なりの感動の表し方だった。

 

そうして、彼はこぼれ落ちそうな彼女の涙をそっと拭った。

 

「大丈夫だ。たまには、な。アンティリーネ、お前が強いことはもう十分分かってる。だから、そんなに強いふりをしなくてもいいんだぞ?」

 

「……してないわよ」

 

真剣でありながらも、どこか図々しい彼の言葉に、アンティリーネもまた軽く笑いながら答えた。

 

やっぱり、すべて見透かされていたのだ。

 

本当に、ずるくて思いやりのある人だ。

 

そう思うと、アンティリーネは少しずつ心が落ち着いていくのを感じた。

 

「ハハ! まったく。その気の強いところさえ美しいんだからな」

 

特に否定しない彼女の姿を見て、カリムは再び彼女を抱き寄せた。

 

外から聞こえる雨音をBGMに、何も言わず、ただ彼女の体温を感じる。

 

胸元から伝わってくる、穏やかな寝息を感じる。

 

このまま、ほんの少しでもいい。

 

時間が止まってくれればいいのに。

 

そんなことを思いながら。

 

「……それにしても、雨が止む気配がないな」

 

もちろん、いつまでも互いに抱き合ったまま、こうして立っているわけにはいかない。

 

カリムは本当に名残惜しく思いながらも、ひとまず彼女を腕の中から離した。

 

「うん。そうね」

 

「残念だが、今日は無理そうだな」

 

「そう? 私は大丈夫だけど」

 

今日から始めよう。

 

互いの実力を正確に確かめてみよう。

 

そう話していたはずなのに、突然厳しいと言い出すものだから、アンティリーネは不思議そうに首を傾げた。

 

まさか、今降っている雨のせいで。

 

まさか、自分の体を気遣って。

 

「それでも駄目だ。お前がどれほど大切だと思ってるんだ」

 

「……ふん」

 

──思った通りだった。

 

本当に、私はこんな雨なんて気にしないのに。

 

それでも気分は悪くなかった。

 

少し冗談めかしてはいる。

 

だが、本当に自分のことを思ってくれているのだという真心は感じられたからだ。

 

「まあ、それでも。いざ始めたら、絶世の美女だとしても、いくら好きな女だとしても手加減はしないぞ?」

 

「いいわ。望むところよ。手加減されたら、面白くないから」

 

お前だとしても絶対に手加減しない。

 

そう告げる彼の言葉に、アンティリーネは微笑みを浮かべた。

 

妙な負けん気が、胸の奥から湧き上がってくる。

 

指導とは言った。

 

練習試合とも言った。

 

だが、現在持っている力をすべて発揮するつもりだった。

 

愛用していた武器はない。

 

それでも、その代わりとして彼から貰った武器がある。

 

差は間違いなく、天と地よりも開いているだろう。

 

もしかすると、あのダークエルフよりも遥かに強いかもしれない。

 

それでも、彼女はそんなことを気にしなかった。

 

およそ戦士というものは、心の片隅にそういった本能を持っているものだからだ。

 

「楽しみだわ」

 

戦士としての最後は、およそ二ヶ月前。

 

魔導国のダークエルフに敗北した時以来だった。

 

久しぶりに武器を本気で振るうことができる。

 

そう思うと、アンティリーネは胸が高鳴り、瞳に光が宿るほどだった。

 

それほどまでに、彼女は胸を躍らせていた。

 

その姿を見て、カリムは自分でも気づかないうちに、微笑ましそうな笑みを浮かべる。

 

笑う姿も本当に美しい。

 

だが、こうして胸を躍らせる姿もまた、本当に美しかった。

 

「俺も同じだよ」

 

カリムもまた、彼女の言葉に同意した。

 

もっとも、それはあくまで、彼女のその姿が良いと思ったからだった。

 

カリムは圧倒的な武力を持っていた。

 

しかし、彼女のような戦士としての心構えや、燃え上がる負けん気、湧き上がる熱望といったものは持っていなかった。

 

とても重要なことに気づく前までは、そういう生き方をしてきた。

 

そして、それで十分だと思っていた。

 

これまで彼が歩んできた道。

 

そして、彼が最も重要だと考えていたこと。

 

それは、目の前にいる存在をすべて粉砕し、その心を折ることだったからだ。

 

──そのおかげで、大切なことをアンティリーネから学ぶことができたな。

 

時折、彼女は通り過ぎるように言っていた。

 

深く、深い絶望の中から。

 

悪夢の中から救ってくれてありがとう、と。

 

おかげで、様々な経験ができた、と。

 

彼に感謝の言葉を伝えていた。

 

そのたびに、カリムは彼女を何度もからかった。

 

だが実のところ、彼もまた別の意味で、彼女に救われたようなものだった。

 

それこそが、彼が彼女を慰め続け、何の見返りも望まなかった理由だった。

 

──まだ、外では雨が降り注いでいた。

 

先ほどよりも激しく降り、穏やかな雰囲気というよりは、妙に気が沈むような空気を作っている。

 

暇ではあった。

 

特に予定もなかった。

 

若干の無力感を覚えもした。

 

それでも構わなかった。

 

互いに対する気持ちをもう一度確かめることができた。

 

そして、そのおかげで二人の絆はさらに強くなったのだから。




本日もお読みいただき、誠にありがとうございます。
明日もまたお越しいただけますと幸いです。
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