We are Always Searching Happy Goal 作:Redemptor
SIDE – A | カリムが魔導国と交渉した直後。
「……なぜ。そのような。決定を。下された。のですか」
忠誠を誓った主君に対する疑いではなかった。
そして、主君の命令に対する拒否感でもなかった。
ただ、そのような決定を下した理由が、純粋に気になっただけである。
「疑問を抱くのも無理はないな」
コキュートスの問いに、アインズはゆっくりと自身の顎を撫でながら言葉を継いだ。
「第八階層を越え、第九階層に、たった一人の力で到達した者はこれまで誰もいなかった。だが、奴はどういうわけか、単独での突破に成功したのだ」
ここまでは、コキュートスも知っている内容だった。
これまで、第八階層を突破した存在は誰もいなかった。
何らかの理由があったにせよ、第八階層を越え、第九階層まで。
それも、アインズの執務室にまで入り込んだのは、あの男が唯一だった。
「そして奴はまるで、ここナザリック地下大墳墓のすべてを見透かしているかのような発言をした」
アインズは一拍置き、低く言った。
「『少しずれたな』と」
「……確か。に。そのような。ことを。言って。いました」
『成功か』
『少しずれたか』
奴が第九階層に到達した際に口にした言葉だ。
成功とは、間違いなくナザリックへの侵入に成功したという意味だろう。
だとすれば、その後の言葉の意味は一体何なのか。
「まさ。か」
「そうだ」
アインズは静かに頷いた。
「奴は、来るや否やそのエルフの釈放を要求し、交渉を試みた。まるで、この状況をすべて知っているかのように。それに、守護者たちが同時に攻撃したにもかかわらず、軽く受け流してもいた」
「それ。は。申し訳。ありません」
「いや、謝る必要はない」
一人でもなかった。
守護者統括アルベド。
最強の守護者であるシャルティア。
そしてコキュートス。
三人による挟撃だった。
それなのに、傷一つ負わせることができなかった。
不覚だ。
失格だ。
そう思い、コキュートスは主君に対して最大限の謝意を示した。
もちろん、アインズはこれを守護者たちの失態だとは考えていなかったため、素早くその行動を制した。
「早く気づけなかった私の不覚だ」
常に考えていた。
自分一人だけがこの世界へ転移したわけではない。
間違いなく、他の存在もこちらに来ているはずだ。
そして、この世界には強大な存在も確実にいるだろう。
そう考え続け、警戒しているつもりだった。
だが、完全には備えきれていなかった。
不安が現実へと近づいた瞬間だった。
「危険な男だ」
瞬く間に第九階層まで到達したこと。
ナザリックの内部をすべて知っているかのような反応。
守護者三人を相手にしても、なお上回るかもしれない実力。
そして、何よりもロリコンである点まで。
あの男は、非常に危険だ。
そのエルフを得る代わりに、一生こちら側の監視を受けながら生きていく。
そう言ったとはいえ、それだけで完全に信用するのは愚か者のすることだ。
「よし。それなら約束通り、徹底的に監視するとしようか」
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SIDE – B | カリムとアンティリーネが竜王国の国境を抜けた直後。
『一生、我々がお前を監視する。
お前は誰も助けることはできず、誰もお前を助けることはできない。
国家に所属するな。
尖兵として、先陣として、ナザリックが未曾有の事態に直面した時は必ず来い』
カリムがアンティリーネを牢獄から救い出す際に、ナザリックと交わした約束の内容である。
そして魔導国は、この約束を徹底的に利用するつもりだった。
もしかすると、我々全員を上回る力を持つかもしれない存在が、先に頭を下げて交渉を試みてきた。
意図がどうであれ、途方もない好機であることは明白だった。
あのエルフをアンデッドにしたり、単なる尖兵にしたりするのとは、次元の違う利益である。
そのため、彼らはカリムが過ちを犯すのを待っていた。
約束を破る瞬間を待っていた。
獲物を前にした猛獣のように。
──そして、その瞬間は思いのほか早く訪れた。
「やはり、ですね。アインズ様」
邪悪な笑みを浮かべながら、デミウルゴスが言った。
さすがはアインズ様。
いかに強大な力を持つ存在であろうとも、結局はアインズ様の掌の上。
デミウルゴスは今日も、自身の主君に対する畏敬と尊敬の念を深めていた。
「ああ。こ奴は、アガネイアか?」
現在、カリムたちはいつものようにテントを張り、野営していた。
中にはあのエルフが入り、カリムが外で見張りをしている状況。
そんな中、アガネイア――白金の竜王、プラチナム・ドラゴンロードと呼ばれる存在がカリムに近づき、二人は何やら話し続けていた。
「デミウルゴス」
「はい、アインズ様」
もしかすると、約束を破るかもしれない。
考えすぎかもしれない。
だが、あの二人が力を合わせれば厄介なことになる。
「今すぐ、シャルティアと共に向かえ。力不足だと判断した場合は、コキュートスと魔将たちを帯同することを許可しよう」
「承知いたしました、アインズ様」
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「どうやら奴は、本気でその約束を最後まで守り抜くつもりのようです」
「そうか?」
少し意外だった。
まさか、あの極めて理不尽な約束を、本気で一生守るつもりなのか。
それほど自信があるのか。
それとも、何か別の魂胆があるのか。
本心が読めなかった。
「それなら、その意のままにさせておこう」
だからといって、監視をやめるつもりはない。
自信があるのなら、その自信をへし折ってやればいい。
魂胆があるのなら、先に王手をかけてやれば済む話だ。
そして何より、カリムは自分と同じく現実の世界を知る存在でありながら、自分とは違い、たった一人でこの世界へ転移した。
しかも、異世界人と共に旅をしている。
果たして、現実の世界を知る者が異世界でどのように適応し、どのような姿を見せるのか。
それを観察できる機会など、そうあるものではない。
「途方もない好機を自ら捨てるなど、愚か者のすることだ」
途方もない収穫だ。
途方もない好機だ。
その思いにアインズはひどく興奮した。
やがて強制的に精神安定化が発動し、その興奮は急速に鎮められる。
そして彼は、少し退屈そうな眼差しで観察を続けることになった。
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