We are Always Searching Happy Goal 作:Redemptor
「あー、やっぱり何もできないわ」
時間は朝を過ぎ、昼時を少し過ぎた頃。
アンティリーネは何度もカリムに手合わせを申し込んだが、毎回同じ結果に終わっていた。
少しの誇張もなく、彼女は自分が使えるすべての奥の手を使った。
彼から贈られた武器も、全力で振るった。
しかし、それでも彼の本気に届くことはなかった。
防御が特技だという彼の言葉通り、カリムはまるで泰山のようだった。
「それでも、動きは少し良くなってたぞ」
「そう?」
もちろん、完璧に反応できたわけではない。
それでもカリムの言葉を聞くと、彼の速度にほんの少しだけ適応できたような気がした。
おかげで、妙な達成感を覚える。
「まだまだだけどな」
「……ちっ」
──すぐに続いた言葉で、一気に冷めてしまった。
わざと空気が読めないふりをしているのか。
それとも、これが本心なのか。
息を荒くしながら地面に寝転がったまま、アンティリーネはカリムを睨みつけた。
「まあ、始めてからまだそんなに経ってないからな」
そんな彼女の視線にも、カリムは特に気にした様子を見せなかった。
人懐っこく笑いながら、彼女を立ち上がらせる。
「ああ、疲れた」
アンティリーネはカリムが差し出した手を握った。
そして少し駄々をこねるように、その場へ再び座り込む。
その姿にカリムは小さく笑い、彼女の隣に腰を下ろして肩を抱いた。
アンティリーネはカリムの行動に大人しく身を任せ、彼の体に寄りかかるようにして抱かれる。
そして、そよ風を感じながら静かに目を閉じた。
「平和ね」
少し穏やかに。
少しゆっくりと。
平和だと口にした彼女の言葉に、カリムは静かに頷いた。
そして顔を向け、彼女を見つめる。
静かに目を閉じたまま、軽く微笑んでいる彼女の姿。
それを見て、カリムはそっと彼女の額に唇を重ねた。
──彼の行動に、アンティリーネは依然として静かに目を閉じたまま、彼に身を預けていた。
そうして、ゆっくりと口を開く。
「ねえ。エ・ランテルに行くこと。本気なの?」
平和な雰囲気とは少し対照的な、かすかに震える声だった。
そこには、懸念と恐怖が少しだけ溶け込んでいるように感じられた。
彼女の言葉に、カリムは少し間を置いた。
定住地を、目的地を、半ば勢いで決めたのは確かだ。
彼女の考えを十分に考慮しなかった。
その部分については、申し訳ないという気持ちもあった。
「ごめんな、アンティリーネ。独断で決めて」
「ふーん」
少し予想外の答えだった。
それを聞いたアンティリーネは、少し意外そうに小さく微笑んだ。
「でも、前にも言ったけど、俺の選択を信じてくれ」
カリムは非常に確信に満ちた声で、強く告げた。
俺の選択を信じて、ついてきてくれ。
決して、お前が傷つくようなことにはさせない。
その姿に、アンティリーネはそのままカリムの胸に顔を埋め、優しくもごもごと呟いた。
「分かった」
カリムは軽く微笑み、優しく彼女の頭を撫でた。
柔らかく、温かかった。
このまま立ち止まっていたかった。
毎回思うことだが、本当にこのまま時間が止まってくれればいいのに。
そう思った。
「あ」
そうして、どれくらい経っただろうか。
静かで平和な雰囲気の中、彼女の腹から小さな音が鳴った。
緊張が解けたからだろうか。
醜態を晒したような気分になり、アンティリーネの耳まで赤くなる。
「うーん。もう昼飯の時間か」
さっきのことでまたからかわれるだろう。
そう思うと、とても恥ずかしかった。
だが予想に反して、カリムは彼女をからかわなかった。
むしろ落ち着いた声で、淡々と口にする。
意外と繊細なのね。
そう思いながら、アンティリーネもまた、できるだけ落ち着いて言った。
「う、うん。そうみたいね」
「なんだ。俺がまさか、ぐうぐうって音を聞いてからかうと思ったのか? エヘイ、そんなことしないさ!」
──全然違った。
アンティリーネはありったけの力を込めて、カリムの胸元へ頭突きした。
その衝撃で、カリムはバランスを崩し、そのまま倒れ込む。
その姿に、アンティリーネは思わず爆笑した。
抱きしめた状態のまま、上半身だけがばたっと倒れ込むように転がったため、その格好がとても滑稽だったからだ。
「何よ、それ」
監獄から救い出された後。
共に旅をし、共に過ごし始めてから二ヶ月を超え、もうすぐ三ヶ月になろうとしていた。
毎回感じることだが、本当に大きく変わった。
最初は笑いもせず、ひどく深刻で、恐怖に怯えた表情ばかりだった。
それが今では、よく笑うようになった。
まだ後遺症は多く残っている。
それでも、恐怖から少しずつ抜け出しつつあることが見て取れた。
本当に、本当に良かった。
カリムはそう思いながら微笑んだ。
そして、彼女のために簡単な昼食の準備を始める。
同時に、彼女の後遺症と恐怖がいつか完全に消え去ることを祈った。
────────────
二人がこの世界のあちこちを放浪するうちに、時間は流れていった。
旅をする間に季節は移り変わり、それに伴って、互いの心もますます近づいていく。
ぎこちなさは次第に消え、二人はかなり自然な恋人同士のように見え始めていた。
旅の途中、多くの町や都市を巡る中で、以前なら否定していたことも、今では少しずつ変わっていた。
エ・ランテルへ向かう道中、他の冒険者たちに出会った時など、むしろアンティリーネの方から肯定することさえあった。
その姿に、カリムが内心でとてつもない歓喜の声を上げたほどである。
そうしながらも、二人は手合わせを欠かさなかった。
もちろん、片方があまりにも圧倒的な強さを持っていたため、一分もかからず終わることがほとんどだった。
それでも、やめることはなかった。
命のかかった死地でもない。
金と名誉がかかった闘技場でもない。
だからこそ、関係なかった。
二人の手合わせはただ、互いの能力と強さを通じて、互いを知っていくための行為だったからだ。
「もう少し行けば、エ・ランテルみたいね」
カリムとアンティリーネ。
彼らにとって、これは最後の旅路になる予定だった。
そのため、できるだけゆっくりと移動した。
それでも一ヶ月もかからなかったため、互いに少し悩み始める。
もしかすると、これが最後かもしれない。
そう思うと、このまま終わらせるには少し名残惜しい感情が湧いた。
そしてその感情は、意外にもアンティリーネの方が強かった。
毎回、旅について小言を言っていた彼女だったが、いざ旅が終わりに近づくと、名残惜しさを感じていたのだ。
最初は当然、とても嫌だった。
助けてくれたことはありがたかった。
だが、何の同意もなく、選択すらできないまま、正体不明の男と二人きりで旅をするなど。
いくら戦士としての心構えを持っているとはいえ、少なくとも自分が女性であるという事実くらいは認識していた。
そういったこともあり、機会さえあれば常に逃げ出すことばかり考えていた。
彼らと交渉した?
法国が危険になる?
当然、信じなかった。
突然、正体も知らない異性が現れた。
しかも、別に美男子というわけでもない。
救い出してくれた後、あり得ないような言葉で自分を安心させようとし、旅をしようと言う。
これをすぐに信じる者など、誰もいないだろう。
その後の行動も、一般人には想像もつかない奇行の数々だった。
好感を持てる相手ではなかった。
何の反応も示さなければ、このまま自分を放してくれるだろう。
関心を失い、それぞれの道を行くことになるだろう。
そう思っていた。
しかし、彼は本気だった。
何の対価も求めず、彼女が必要とするものをすべて支援した。
自ら道化を買って出て、できる限り彼女の後遺症と恐怖心が消えるよう努めた。
そして最大限、彼女が平穏な心を持てるよう努力した。
そんな彼の努力のおかげだったのだろうか。
アンティリーネは、次第に後遺症と恐怖を乗り越え、少しずつ彼に心を開いていった。
あの頃の彼女なら、想像もできない変化だった。
それだけではない。
彼と一緒にいたおかげで、不便な制約から抜け出し、より広い世界を見て回ることができた。
法国の中で、隊員たちが上げる報告書だけを見ていた時代とは次元が違う。
直接、他の国々の姿を見た。
多様な文化に触れた。
毎日、新しいことを経験した。
もし法国の中にだけいたなら、こんな機会があっただろうか。
もし、あの時、自分が外へ出ていなければ、果たしてどんなことが起きていただろうか。
もし、あのダークエルフを相手に戦いを挑まなければ、どうなっていただろうか。
ダークエルフを相手に戦ったあの判断は、間違いなく無謀だった。
それでも、全体として見れば、幸運だったのかもしれない。
もちろん、誰かが自分を救ってくれるなど。
六大神と同じ出自を持つ神が、自分を救い出してくれるなど。
思いもよらなかったが。
「本当に、ありがとう」
旅は、もうほとんど終わりを告げようとしていた。
終わりに近づく前に、彼女はとても小さく呟いた。
私を救ってくれて、ありがとう。
この世界を見せてくれて、本当にありがとう。
私の祈りを聞き届けてくれて、ありがとう。
あまりにも小さく呟いたため、カリムには聞こえなかった。
だが、それでも構わなかった。
これからも彼とずっと一緒に過ごすのだから。
感謝を伝える日は、まだいくらでも残っているから。
「もう、半日も行けば着きそうだな」
彼の言葉に、アンティリーネは深く沈んでいた余韻から覚めた。
一緒に旅をし、これまでの出来事を思い出しながら歩いていたら、いつの間にか終わりが近づいていた。
ここを越えれば、この旅も完全に終わるのだろう。
この先には、新しい生活が待っているのだろうか。
ゼロからのスタートだ。
法国で過ごしていた時とは違い、間違いなく波乱はあるだろう。
解決しがたいこともあるはずだ。
困難なことも必ず起きる。
それでも、乗り越えていけるだろう。
一人で辛ければ、二人で共に歩けばいい。
そう学んだから。
──そして、その日の夜。
エ・ランテルを目前にして、二人は正式に互いの想いを確かめ合った。
互いが互いに、強く惹かれ合っていた。
拒む理由はなかった。
初めてだったため、少し不器用ではあった。
それでも、できるだけ互いを思いやりながら、互いの感情を静かに伝え合った。
この人なら、一生信じてもいい。
この人なら、一生背中を預けてもいい。
戦場の伴侶として。
そして、人生の伴侶として。
そうして夜は更け、やがて夜明けが訪れた。
それでも二人は、しばらく寄り添ったままだった。
やがて朝が近づく頃、満ち足りた温もりの中で、二人は静かに眠りについた。
本日もお読みいただき、誠にありがとうございます。
明日もまたお越しいただけますと幸いです。