We are Always Searching Happy Goal   作:Redemptor

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第31話

「おめでとうございます。ミスリル級への昇格、成功いたしました」

 

二つ目の条件を受け入れてから五日後。

 

カリムとアンティリーネは、二つ目の条件も完璧に達成した。

 

冒険者登録をしてから、わずか九日で成し遂げたことだった。

 

もちろん、二つ目の条件に含まれていたのは白金級とミスリル級の依頼だけだったため、それ以上の昇格はできなかった。

 

それでも、凄まじい速度であることに変わりはない。

 

あの漆黒のモモンに匹敵するほどの速度だった。

 

「うーん。それでも、少し残念だな」

 

ミスリル級のプレートを受け取りながら、カリムは少し残念そうな声で言った。

 

もう少し運が良ければ。

 

そうであれば、きっと可能だったはずなのに。

 

「もう、満足することも覚えなきゃ」

 

未練がましいことばかり言う彼に、アンティリーネは軽く釘を刺すように小言を言った。

 

時には、満足することも知るべきだ。

 

そう言うように。

 

「やっぱり、そうだよな?」

 

彼女の小さな小言に、カリムは少し照れくさそうに笑った。

 

確かに、彼女の言う通りだった。

 

満足すべき時には、満足しなければならない。

 

現在の状況では、これ以上受けられる依頼はない。

 

無理やり依頼を作ることも考えてはみたが、思いつくものはなかった。

 

──白金の竜王に頼んで、やられ役をお願いすることも一瞬考えたが、顔をかろうじて知っている程度の相手だったため、すぐにその考えは捨てた。

 

「そんなに急がないで。ただでさえ、あなたはものすごく強いんだから」

 

カリムが照れくさそうに笑うと、アンティリーネはそのまま彼の胸の中へすっぽりと収まりながら言った。

 

笑ってはいた。

 

それでも、彼女から見て、今の彼には少し慰めが必要に思えた。

 

だから、そうしたのだった。

 

そんな彼女の行動に、カリムもまた静かに彼女を抱きしめた。

 

周囲には多くの人目があった。

 

だが、皆それぞれ仲間同士で話に花を咲かせていたり、自分の仕事に夢中になっていたりして、二人へ目を向ける余裕のある者はほとんどいなかった。

 

「まあ、そうだな」

 

カリムは、ほんの少しの間、彼女の体温を感じた。

 

そして、ゆっくりと彼女を腕の中から離す。

 

「落ち着いた?」

 

彼の腕の中から離れたアンティリーネは、今度は自分が彼を慰めるように言った。

 

いつも慰められてばかりだった自分が、慰める側になる。

 

それは、なんだか少し不思議な気分だった。

 

「おかげさまで」

 

誰かを慰められたという事実に、アンティリーネは少し誇らしい気持ちになり、小さく微笑んだ。

 

それを見たカリムもまた、軽く笑う。

 

「行こう。とにかく昇格には成功したんだし……デートでも、する?」

 

「うん」

 

アンティリーネの言葉に、カリムは小さく微笑んだ。

 

まったく予想していなかった言葉が、彼女の口から出たからだ。

 

二人の関係は、アンティリーネが自分の意見を主張する時もあるにはあった。

 

だが基本的には、カリムが先に動き、カリムの主導で進んでいくことが多かった。

 

つまり、今回のアンティリーネからのデートの誘いは、この関係において初めて、彼女が明確に主導権を握った瞬間でもあった。

 

「ほら」

 

アンティリーネは、自分がこの関係で初めて主導したという思いから、少し誇らしげな表情で手を差し出した。

 

カリムは黙って、その手を握った。

 

今日の予定はこれで終わりだ。

 

多少の物足りなさはあった。

 

だが、収穫もあった。

 

それなら、自分たちへのご褒美として、デートを楽しんでもいいだろう。

 

そう考えながら、二人は外へと出た。

 

────────────

 

「……あの人たち、結局何がしたかったのかしら」

 

それぞれが自分の仕事に夢中だったり、同僚とおしゃべりをしていたりして、よそへ意識を向ける余裕がなかっただけで、見ている目は確かにあった。

 

受付嬢もまた、その「見ている目」の一人だった。

 

自分がはっきりと見ているにもかかわらず、気にする様子もなく恋人らしい触れ合いを見せていた二人。

 

カリムとアンティリーネ。

 

その姿を見て、受付嬢はなぜか羨ましさと、少しばかりの嫉妬を覚えていた。

 

「スキンシップ禁止の立て札でも置こうかしら」

 

彼らが今後、他の場所へ行く可能性もある。

 

だが、この街に居座る可能性も十分にある。

 

そうなれば、自分は毎回あのような光景を見せつけられることになるのだ。

 

そう考えると、なぜかどっと疲れが押し寄せてきた。

 

────────────

 

「もう、すっかり暗くなったわね」

 

「ああ、そうだな」

 

ミスリル級への昇格を成功させ、プレートを受け取ってから数時間後。

 

カリムとアンティリーネは、とても忙しいデートを終え、深夜、家路についていた。

 

カリムもそうだが、アンティリーネの場合、恋愛経験などまったくないに等しかった。

 

だから、すべてが新鮮だった。

 

もちろん、カリムと共に旅をし、竜王国やバハルス帝国にいた時と状況そのものは似ていた。

 

だが、あの時とは感覚がまるで違う。

 

あの時は、まだ恋人同士になる前だった。

 

今は、恋人同士になった後だ。

 

今も昔も、すべてが新しく、興味深いことに変わりはない。

 

だが、あの頃はそこに大きな気まずさが混ざっていた。

 

今は違う。

 

自然に触れ合い、市場で買い物をし、他の人々とも自然に交流するようになっていた。

 

『漆黒聖典』の『絶死絶命』という仮面を被っていた頃と比べれば、自分でも本当に大きく変わったと思う。

 

もちろん、だからといって、かつて自国民に危害を加えたり、あからさまに無視したりしていたわけではない。

 

今のように交流する機会が極端に少なかっただけだ。

 

ごく特別な場合を除けば、同じ国の人々に危害を加えるとか、自分から無視するといった発想をしたことはなかった。

 

ただ、あの頃の自分は、多くの時間を『漆黒聖典』の『絶死絶命』として過ごしていた。

 

それに対して今は、『絶死絶命』の仮面を下ろした、一人の市民である『アンティリーネ』として過ごしている。

 

それこそが、最大の違いだった。

 

そのような変化のせいだろうか。

 

それとも、彼女の抜きん出た美貌のせいだろうか。

 

行く先々で、エ・ランテルの住民たちは彼女に好意的で、温かく迎えてくれた。

 

竜王国やバハルス帝国では経験できなかったことだったため、最初は少し戸惑った。

 

恥ずかしさを覚えることもあった。

 

けれど、少しずつ慣れていった。

 

もし、カリムに出会った後も、あの重い仮面を脱ぎ捨てることができていなかったなら。

 

果たして、こうした大切なものに気づけただろうか。

 

そんな思いから、アンティリーネは過去の縁について考えを巡らせた。

 

──もし、ナズルおばさんと一緒に過ごしていたら、こんな感じだったのだろうか。

 

漆黒聖典の隊員たちと、もう少し親しくしていたら、こんな感じだったのだろうか。

 

そう思うと、少しの懐かしさと、少し厳しく接しすぎてしまったことへの後悔が、同時に胸へ押し寄せてきた。

 

「何をそんなに考えてるんだ、アンティリーネ」

 

「ん? ああ、ちょっとね。昔のこと」

 

アンティリーネが憂いを帯びた眼差しで何かを考え込んでいると、カリムは気になったように声をかけた。

 

彼の声を聞いた彼女は、過去の回想から抜け出し、少しすっきりとした表情で答える。

 

──過去について後悔したところで、変わるものは何もない。

 

過去に囚われたところで、何かが変わるわけでもない。

 

それよりも重要なのは、現在と未来なのだから。

 

「ただね。私が最初から『漆黒聖典』の『絶死絶命』じゃなくて、『アンティリーネ』として生きていたら、どうだったのかなって。そんなこと」

 

カリムの腕に自分の腕を絡め、肩へ軽く寄りかかったまま、アンティリーネはゆっくりと口にした。

 

その言葉を聞いたカリムは、黙って彼女の話に耳を傾けるだけだった。

 

「でも、遅くはなったけど、今からでもアンティリーネとして生きていけるようになって、良かったなって思うの」

 

何も言わず、ただ真剣に聞いてくれるカリムの顔をちらりと見て、アンティリーネは淡々と話を続けた。

 

遅くなったけれど。

 

それでも、今からでも本当の自分として生きていけて良かった。

 

そう思うのだと。

 

そして、もしかすると。

 

魔導国に敗れ、監獄に投獄され、彼に救い出されたあの瞬間から、『漆黒聖典』の『絶死絶命』という仮面は、少しずつ剥がれ始めていたのかもしれない。

 

「本当に、ありがとう」

 

具体的に、何がありがたいとは言わなかった。

 

しかし、その感謝の言葉には、数え切れないほどの意味が込められていた。

 

カリムもまた、それを分かっていた。

 

だから、その言葉を聞いた時、軽く微笑んだ。

 

別に、感謝の言葉をもらうためにしたわけではない。

 

それでも。

 

「いや、どういたしまして」

 

もうすっかり口癖になってしまった返事だった。

 

だが、言うたびに少し照れくさかった。

 

何か見返りを求めて助けたわけではない。

 

何かの目的があって救ったわけでもない。

 

ただ、好奇心と運命に導かれただけだったのだから。

 

「あー、疲れた」

 

──そうして二人は、仲睦まじく過去のことを語り合い、互いに感謝しながら歩いていった。

 

そして、いつの間にか自分たちの家へと到着していた。

 

互いに約束でもしたかのように、二人は何も言わず目を合わせる。

 

それから軽く笑い合い、同時に幸せそうな表情を浮かべた。

 

その夜、二人は静かな安らぎの中で、幸せな夢へと落ちていった。




本日もお読みいただき、誠にありがとうございます。
明日もまたお越しいただけますと幸いです。
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