We are Always Searching Happy Goal   作:Redemptor

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We are Always Searching Happy Goal - 30

市場でのデートを終え、家へ帰る道すがら。

 

赤く染まった夕焼けを眺めながら、アンティリーネは静かに呟いた。

 

「……本当に、平和ね。夢みたい」

 

約半年前までは、『漆黒聖典』の『絶死絶命』という仮面の下で、スレイン法国の秘密兵器として過ごしていた。

 

意味もなく過ぎていく時間の中、隊員たちが上げてくる報告書に目を通す日々。

 

そして出撃した先で魔導国に敗れ、魔導国の牢獄へ投獄され、恐怖と絶望の中で過ごした時間。

 

それらすべてが遠く感じられるほど、今この瞬間は平和で、幸せだった。

 

自分を縛りつけていた運命から逃れ、愛する人と共に過ごす平凡な日常。

 

その日常が、あまりにも非現実的に感じられるほどだった。

 

その言葉を聞いたカリムは、ふと歩みを止めた。

 

そして悪戯っぽい表情を浮かべると、両手を伸ばし、アンティリーネの柔らかな頬を優しく掴んで、軽く引っ張った。

 

「な、何するのよ、急に! 痛い、痛いってば!」

 

予想外の行動に、アンティリーネは眉をひそめながら、彼の手を払いのけようとした。

 

苛立ちの混じった声だったが、その中にはどこか愛嬌のある甘えも滲んでいた。

 

その姿に、カリムは軽く微笑み、手を離す。

 

「夢じゃないってことを、こうして確認させてやらないとな。こんなに痛いんだから、夢のはずがないだろ?」

 

カリムの目には、彼女のそんな反応すら愛おしいというような、こぼれ落ちそうなほどの優しさが込められていた。

 

アンティリーネはまだ少し頬をひりひりさせながらも、彼の悪戯に小さく笑った。

 

そう。

 

これは夢ではなく、現実なのだ。

 

そこに至るまでの過程は、酷いほど恐ろしく、形も結果も少し違っていた。

 

それでも、心の底から望んでいた幸せな日常であることに変わりはなかった。

 

「うん、そうね。夢であるはずがないわ」

 

もしこれが夢なら、それは本当に、言葉では表せないほど残酷なものだろう。

 

アンティリーネは軽く考えを振り払い、カリムの隣へぴたりと寄り添った。

 

彼女が隣に寄り添うと、カリムは静かにその肩を抱き寄せる。

 

「あるはずがないわね。これほどまでに精巧な夢を、ずっと見せ続ける魔法なんて」

 

アンティリーネの言葉に、カリムも同意した。

 

これほど精巧で、しかも継続して見せ続けるような魔法など、少なくとも彼の知る限り存在しない。

 

いや、そんな魔法は決して存在してはならない。

 

想像すらしてはならない魔法だ。

 

そう思った。

 

「まあ、それはそれとして。実は今日は、出会ってから六ヶ月が経った記念に、俺が直接選んだ服を贈ろうと思っていたんだけどな。残念ながらそれは無理になっちゃったから、別のものをあげないとな」

 

「……気持ちだけ受け取っておくわ」

 

カリムは悪戯っぽさの混じった声で言った。

 

アンティリーネは「プレゼント」という言葉に、以前彼から受け取った『死の舞踏』や、なかなか良い装飾品のことを思い出し、少しだけ興味を抱いた。

 

しかし、先ほど店で彼が選んでいた服が、別の意味で凄まじかったため、その興味は一瞬で冷めた。

 

まさか、あの服を贈るつもりではないでしょうね。

 

「ハハッ! 少し恥ずかしがりすぎじゃないか?」

 

「……どこを見て言ってるのよ」

 

気持ちだけ受け取ると言ったアンティリーネを見て、カリムは相変わらず恥ずかしがり屋だな、と思った。

 

そして、それを聞いたアンティリーネは、彼を少し睨みつける。

 

「そんなに恥ずかしがらなくてもいいぞ? ちゃんと準備したんだから!」

 

もちろん、アンティリーネに睨まれたところで、カリムは気にする様子もなく屈託なく笑うだけだった。

 

そして、軽く彼女の頭を撫でる。

 

「ふん。変なものをくれたら覚悟してよね」

 

ちゃんと準備したという彼の言葉に、アンティリーネは少し警告めいた言葉を返した。

 

それでも内心では、密かに期待していた。

 

服屋で見た、色々な意味で凄い衣装を渡される可能性もある。

 

だが、『死の舞踏』のようなとてつもないアイテムや、軽くてもそれなりに実用的な装飾品をもらえる可能性もあったからだ。

 

「もちろんだとも!」

 

密かに期待するような表情を浮かべる彼女を見て、カリムは非常に自信ありげな顔をした。

 

その姿に、アンティリーネはくすりと笑う。

 

本当に、自分勝手な男なんだから。

 

そうして二人は、市場デートの余韻を楽しみながら、家へと戻った。

 

────────────

 

「これは、予想してなかったわね」

 

市場でのデートを終えて家へ戻った後。

 

カリムは真っ直ぐ自分の部屋へ向かい、あらかじめ用意しておいたアイテムを持ってきて、彼女へ差し出した。

 

そして、そのアイテムを見たアンティリーネは少し驚いた。

 

てっきり、店で見たあの凄まじい服を出してくるものだと思っていた。

 

だが、彼女の予想とは裏腹に、カリムが持ってきたのはまったく別のものだった。

 

『死の舞踏』と同じような、きちんとしたアイテムだった。

 

「どうだ。素敵だろ?」

 

カリムは非常に自信満々な表情を浮かべた。

 

ユグドラシル時代における、彼の傑作の一つだったからだ。

 

アンティリーネはそんな彼の表情を見ながら、少し戸惑った気持ちでプレゼントを受け取った。

 

──カリムが持ってきたそれは、鎧の形をしたアイテムだった。

 

全体的に濃い紫色を基調としている。

 

多少荒々しい印象があり、妙な威圧感もあった。

 

そしてどこか、兜の部分を除けば、かつて自分のアイテムであったもの。

 

六大神の一人、『輝煌天使ネコニャン』の白いフルプレートアーマー。

 

『風神の鎧』に似た雰囲気も、わずかに感じられた。

 

「ええ。懐かしいわね」

 

受け取った瞬間、多少の重量感が手に伝わる。

 

その感触に、まだナザリックの内部に残されている自分の神器たちが思い浮かび、懐かしい感情がこみ上げてきた。

 

「それで、今回のこれは?」

 

前回の『死の舞踏』のように、このアイテムにも名前があるはずだ。

 

アンティリーネがそう尋ねると、カリムはにやりと笑って答えた。

 

「アンティリーネ、お前も知っての通り、俺のネーミングセンスがだいぶ駄目なのは分かってるだろ? このアイテムも、名前はそのまま持ってきたんだ。『海神ジャックショー』ってな」

 

「『海神』ジャックショー? へえ」

 

カリムの言葉を聞き、アンティリーネは興味深そうに微笑んだ。

 

六大神が遺したアイテムは風神。

 

そして今度は海神。

 

その奇妙な縁に、興味が湧くのも無理はなかった。

 

「着用時、強靭な体力と高い防御力を提供する。さらに、各種属性への耐性はもちろん、魔法に対する耐性も確保してくれる」

 

カリムは、彼女が興味深そうに見つめているのを見て、嬉々として説明を始めた。

 

「それに、戦闘が長引けば長引くほど、装備者の各種防御力を引き上げる。さらに、装備者を攻撃した相手には、属性別の反撃ダメージを与えるんだ」

 

「反撃まで?」

 

「ああ。体力回復もおまけで付いている。加えて、装備者がスキルを使用する時、キャストタイムを少し短縮してくれる」

 

その説明を聞いたアンティリーネは、驚いた表情を浮かべた。

 

前回の『死の舞踏』もそうだった。

 

そして、今回の『海神ジャックショー』もそうだ。

 

これほど凄まじいアイテムを、また自分に贈ってくれるなんて。

 

こうして受け取ってばかりでいいのだろうか。

 

私も、何かを返すべきではないだろうか。

 

そんな思いから、アンティリーネは静かにそのアイテムを見つめた。

 

「……ええ、ありがとう。これも、大切に保管しておくわ」

 

そうして、静かに彼へ感謝の言葉を告げた。

 

初めてプレゼントをもらった時よりも、さらに大きな感動が胸に押し寄せてくる。

 

期待していなかったからだろうか。

 

恋人になってから初めてもらったプレゼントだからだろうか。

 

それとも、偶然とはいえ、六大神の装備と似た雰囲気を感じたからだろうか。

 

「────」

 

静かに礼を言い、大切そうに抱きしめる彼女の姿を見ながら、カリムは軽く微笑み、彼女の頭を撫でた。

 

──まだ、彼女に贈るプレゼントはたくさん残っている。

 

そして、見せるべきアイテムもたくさん残っている。

 

修練に修練を重ね、さらに多くのアイテムで武装すれば、魔導国の連中にも決して引けを取らないだろう。

 

そんな時、ふとカリムは思い出した。

 

彼女は自分のようなプレイヤーではない。

 

つまり、インベントリがない。

 

それは欠点と呼ぶほどのものではないかもしれない。

 

だが、そのせいで、時折彼女は自分が贈ったアイテム──『死の舞踏』を抱きしめて眠ったり、散歩の時にも持ち歩いたりしていた。

 

その姿は惜しくもあり、少し非効率的にも思えた。

 

適材適所で様々なアイテムを使い分けることができれば。

 

もしかすると、まだ弾けていない彼女のポテンシャルを、さらに開花させることができるのではないか。

 

もし最初からそうしていれば、今よりもっと強くなっていたのではないだろうか。

 

もちろん、カリムはその考えを口にはしなかった。

 

彼女が純粋に喜び、感動している姿を見ていると、どうしても言い出せなかったのだ。

 

その代わり、彼は優しく彼女を抱きしめた。

 

彼女がまだアイテムを抱えていたため、姿勢は少し中途半端だった。

 

それでも、互いの体温を感じるには十分だった。

 

夜明けが訪れるには、まだ少し時間があった。

 

深夜。

 

二人は互いに感謝しながら、静かな幸福感に浸っていた。




本日もお読みいただき、誠にありがとうございます。
明日もまたお越しいただけますと幸いです。
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