We are Always Searching Happy Goal 作:Redemptor
「どうだ、法国の文明は」
「まあ、確かに自慢できるくらいにはなってるわね!」
アンティリーネとの手合わせを終えた後。
カリムはアンティリーネの案内を受け、法国の市内へと足を踏み入れた。
法国の市内を見渡したカリムの第一印象は、なかなか雰囲気の良い都市だというものだった。
もし、自分が最初にこの場所へ転移していたなら。
この都市に惚れ込み、彼らの頼みを聞き入れて、法国の後代の神として導いていたかもしれない。
そう思える程度には、悪くない場所だった。
「うーん。それでも単純な華やかさだけを比べるなら、やっぱりバハルス帝国が一番だな。まあ──法国の方が、バハルス帝国より全体のバランスはよく取れている感じがするけど」
「そう?」
極めて主観的で率直な彼の感想に、アンティリーネは少し満足げな表情を浮かべた。
先ほどのあの間抜けたちのせいで、冷酷で過酷な評価をされたらどうしようかと思っていたのだ。
「ただ、惜しい点が本当に一つだけある。たった一つだけな」
アンティリーネが柔らかな微笑みを浮かべ、軽く彼の腕に自分の腕を絡めていた時。
少し意外な答えが聞こえてきた。
惜しい点がある。
それも、一つだけ。
そんな彼の言葉に、彼女は目を丸くしてカリムを見つめた。
惜しい点とは、一体何だというのか。
「それはだな、──ふむ。飲み友達がいないってことさ!」
「……はぁ」
正直なところ、内心では少し悪戯っぽさを感じていた。
だから、まともな内容ではないだろうとは予想していた。
しかし、思ったよりもさらに突拍子もない内容だったため、アンティリーネは腕を組んでいない方の手で額を軽く押さえ、小さくため息をついた。
本当に、久しぶりに感じる感情だった。
「それなら、エ・ランテルだって同じじゃない」
エ・ランテルにも飲み友達はいなかったのだ。
アンティリーネの言葉に図星を突かれたカリムは、そっぽを向き、話題を変えようと努力した。
もちろん、何の効果もなかったが。
「本当に、変なところで人を拍子抜けさせるんだから」
多少唐突な理由を聞いたアンティリーネは、少し文句を言うように呟いた。
今回もある程度予想はしていた。
それでも、もう少しちゃんとした理由が聞けると思っていたのだ。
「ワハハハハ! 重要だぜ、飲み友達の有無は?」
彼女の文句に、カリムは少し気まずそうな表情で豪快に笑いながら言った。
彼なりに正論を展開しようとしたのだろう。
だが、誰が聞いても暴論であったため、アンティリーネの冷たい視線を浴びることになった。
「ふん。そんなに必要なら、神官長たちとでもしこたま飲めばいいじゃない」
「うーん。それはあまり良い選択じゃなさそうだけどな」
彼女の言葉を聞いた瞬間、カリムの脳裏に神官長たちの顔がよぎった。
どこか口うるさい職場の直属の上司に似ているような気がして、冷や汗を流しながら拒否する。
「何よ、その反応は」
「あまり関わりたくないタイプの人たち、だからさ」
これまで見たことのない反応を見せるカリムに、アンティリーネは少し面白そうな表情を浮かべ、くすくすと笑った。
それほど神官長たちに対する印象が悪かったのか。
それなりに気が合いそうに見えていたため、かなり意外だった。
「まあ、代わりに帰ったら禁酒令を解除してあげるわ」
新鮮で面白いものを見たお返しだった。
アンティリーネは、法国での用事を済ませてエ・ランテルへ帰ったら、断固として禁止していた禁酒令を解除してあげると彼に告げた。
バハルス帝国であれほどの苦労を経験した。
それなのに、エ・ランテルでも似たようなことをしでかすのを見て、アンティリーネはカリムに禁酒令を出していたのだ。
当然、カリムの立場からすれば、青天の霹靂とも言える出来事だった。
数少ない人生の楽しみを、そのように禁止されてしまったのだから。
ひどく落胆し、可哀想な表情で彼女を見つめたこともあった。
だが、ごく当然のことながら、何の役にも立たなかった。
それどころか、そのたびにアンティリーネの考えがより確固たるものになるだけだった。
カリムは、禁酒令がこのまま最後まで続いたらどうしようかと少し心配していた。
だが、どうやらその心配は今日で終わりそうだった。
「おお、マジで!? それじゃあ、帰ったらすぐに────!!」
「酔っ払ったら、すぐにまた禁止にするからね」
「──一本だけにしておこう」
最後まで突っ走るか。
そう叫ぼうとしたが、彼女の視線が恐ろしくて、目標を一本に変更した。
そうだ。
酔っ払うまで飲んではいけない。
適度に飲まなければ。
カリムは心の中で、自己暗示をかけるようにそう誓った。
「まあ、それじゃあ、市内を一度楽しんでみるか!」
カリムは照れくさそうに笑いながら、アンティリーネの手を握り、市内の中心部へと入っていった。
───────────
「さあ、それじゃあ、みんな元気でな! 機会があればまた来てみるからさ!」
カリムとアンティリーネが法国へ来てから、二週間という時間が過ぎた。
もう、帰る時間だった。
本来は少し立ち寄って帰るつもりだった。
だが、予想外に幸せそうなアンティリーネの姿を見て、カリムは法国にもう少し滞在することにしたのだ。
故郷という存在がもたらしてくれる温かさは、いくら説明しても足りないものだったから。
「もう、お帰りになるのですね」
帰るというカリムの言葉に、法国の者たちは非常に名残惜しそうにした。
もう少しこちらにいてほしい。
そう思ってはいた。
しかし、そんな無理な頼み事をすれば、かえって法国に背を向けられかねない。
そのため、誰も間抜けな行動を取ることはなかった。
それでも、何の収穫もなかったわけではない。
まず何より、番外席次、絶死絶命の生存が確認されたこと。
そして番外席次が神の恋人となり、定期的に神と手合わせを重ね、以前よりもさらに強い力を得たこと。
さらに非公式ではあったが、第一席次が彼の弟子となったこと。
もちろん、利益だけを得たわけではない。
魔導国に莫大な領土を奪われ、番外席次は事実上、漆黒聖典を脱退することになったのだから。
それでも、損害よりも利益の方が大きかった。
彼らは再び、希望を抱くことができるようになったのだ。
「本当は早く帰るつもりだったんだ。まあ、感謝の挨拶は俺じゃなくて、アンティリーネにしてくれよな?」
「────お目にかかれて、光栄でした。いつか、またもう一度」
「カリム殿。おかげで我々は希望を見出せました。あなたのお言葉通り、いつの日か、またお会いできることを」
どこか誇らしげな表情で笑うアンティリーネ。
そして豪快に立っているカリム。
そんな二人に、第一席次と闇の神官長マクシミリアンが代表して挨拶を交わした。
法国で過ごす中で、カリムが最も親しくなったのがこの二人だった。
だからこそ、法国の代表として挨拶をすることになったのだ。
第一席次については、アンティリーネほどではないものの、かなり繊細に手合わせの指導とフィードバックを行った。
同じ神人として、確かに途方もない成長の可能性がある。
それがカリムの目にははっきりと見えていた。
一方、闇の神官長マクシミリアンは、カリムが最も気安く話せるようになった人物だった。
第一席次とも仲は良くなった。
だが、どこか事務的な感覚が残っていた。
それに対し、マクシミリアンとは昔からの地元の友人のような感覚で親しくなった。
他の神官長たちとの酒の席は、少し気まずく受け止めていたカリムだったが、マクシミリアンとの酒の席だけは唯一、喜んで受け入れていた。
聞くところによれば、彼らの酒の席はまるで、番外席次に対する自慢話だけで満たされていたそうだ。
「ああ。それまで、死ぬなよ」
多くの意味が込められたカリムの言葉に、法国の者たちは希望に満ちた表情で応えた。
たとえ今は魔導国の進軍が止まっているとはいえ。
彼らが再び侵攻してきたとしても、最後まで抵抗し、生き残る。
そう誓うように。
「あ、そうだ。それから────俺たち、結婚することにしたから、適当に都合をつけて、エ・ランテルに来いよな! ワハハハハ!」
「────え、えっ?!」
「な、なに?!」
そのまま心温まる雰囲気で締めくくられるかと思われた。
しかし、カリムの爆弾発言によって、全員がひっくり返ることになった。
結婚。
まったく予想していなかった爆弾に、第一席次やマクシミリアンをはじめとする法国の者たちは、ひどく驚いた表情を浮かべた。
そしてアンティリーネは、彼ら以上に驚いていた。
まるで、そんな話は初めて聞いたと言わんばかりの表情だった。
考えたことがまったくないわけではない。
最初は無意識だった。
だが今では、彼の子供が欲しいと思うようになっていた。
ある程度、そうした未来を予想していたのも確かだ。
だからといって、今この場で結婚の話が出るのは、あまりにも突然すぎた。
「な、何言ってるのよ!」
アンティリーネは恥ずかしさを隠すため、彼の脇腹をとても強くつねった。
そんな話、まだ聞いていない。
まだ、心の準備だってできていないのに。
「カ、カリム殿。その、結婚というのは、一体……」
「なんだ、言葉通りの意味だぜ」
マクシミリアンが聞き間違いかと思い、もう一度尋ねた。
だが、答えは同じだった。
もちろん、カリムはそんなことなどお構いなしに、依然として豪快なままだった。
「なんだよ、みんな。素人みたいに。こんなに強くて美しい伴侶が、世界の他のどこにいるってんだ。ワハハハハ!」
「はぁ────」
豪快に笑いながら肩を抱き寄せるカリムを見て、アンティリーネは小さくため息をついた。
気分が悪くてそうしたわけではない。
むしろ、嬉しいと言えば嬉しかった。
ただ、他の誰でもなく、かつての同僚たちの前でそのように振る舞われたため、少し複雑な感情を抱いただけだった。
「あ、分かりました。そ、それでは──後日、必ずお伺いいたします、師匠」
「師匠? ワハハハ! ああ。必ず連絡するからな。まあ、その前に魔導国の奴らと現在の状況を整理しなきゃならないが、それでも心配するなよ!」
師匠と呼ぶ第一席次を見ながら、カリムは豪快に親指を立ててみせた。
特にそうした呼称を望んでいたわけではない。
だが、そう呼ばれると、悪い気はしなかった。
「さあ、それじゃあ」
カリムとアンティリーネは、彼らに軽く手を振って背を向けた。
そして法国の者たちは、二人を見つめながら軽く目礼して見送った。
いつか再会する日を期待しながら。
そして、番外席次の幸せを心から応援しながら。
───────────
「……あの、ちょっと、さ。その──結婚するってこと。それ、本気なの?」
法国を後にし、エ・ランテルへ戻る道。
出発する直前のカリムの爆弾発言によって、多少感情が複雑になったアンティリーネは、普段とは違い、カリムと少し距離を置いていた。
普段のようにぴったりとくっつけば、おかしな感情を抑えきれなくなりそうだった。
だから、そのように行動したのだ。
カリムは最初、そんな彼女を少し不思議に思った。
だがすぐに、アンティリーネの感情を把握し、理解した。
「ああ。本気さ」
アンティリーネは少し震える声で、法国を出発する前の発言について尋ねた。
カリムは優しく彼女に答える。
少し距離を置いているはずなのに。
すぐ隣にいるかのように、その震えが伝わってくる気がした。
「ちっ。せめて先に言ってくれればいいのに」
やっぱり、卑怯だ。
本当に、ずるい。
非常に重大なことなのに、それをあんなに突然言うなんて。
「────それじゃあ、その、準備していることって、あるの?」
少し大げさに言えば、竜王国のような小さな国ならすぐに買えるほどの財力。
魔導王やその部下たち以上の武力。
そして、快適に過ごせる家まである。
正直なところ、生活面での準備はすでに終わっている状態だった。
だが、彼女が尋ねている準備とは、そういう意味ではない。
結婚式の話だった。
もちろん、以前の彼女であれば。
適当に結ばれ、結婚式や行事などは適当に済ませればいい。
そう考えていたかもしれない。
だが、カリムと一緒にいるうちに、その考えは変わっていった。
大切な人。
家族。
仲間。
そうした者たちとは、こうした行事をより大切にしなければならない。
そうした行事が、決して無意味なものではないと悟ったからだ。
「いや!」
「は?」
その瞬間、アンティリーネは初めて出会った時のことを思い出した。
あの時も無計画だった。
まさか、今も。
「でも、無計画に準備するつもりはないよ。これでも、素敵な場所を探していたんだぜ? まあ、無ければ建てるつもりだけどな」
あの時とは少し違う答えが返ってくると、アンティリーネは思わず軽く笑みをこぼした。
「うん、そうね。楽しみだわ」
カリムの答えのおかげで、アンティリーネの緊張は完全に解けた。
そして、いつもの彼女に戻る。
開いていた距離を少しずつ縮め、そっと彼の肩にもたれかかった。
複雑だった感情は、期待へと変わっていく。
結婚というものは、自分とは完全に縁遠いものだと思っていた。
する気もなかった。
そんな機会が訪れることもないだろうと、そう思っていた。
しかし、今は違う。
予期せぬ出来事が次々と起きている。
真の幸福とは何か。
そして、遠くにあるとばかり思っていた目標に、自分は少しずつ近づいている。
アンティリーネは、そんなことを静かに実感していた。
本日もお読みいただき、誠にありがとうございます。
明日もまたお越しいただけますと幸いです。