We are Always Searching Happy Goal   作:Redemptor

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We are Always Searching Happy Goal - 48

華やかでありながら、どこか奇妙でもあった結婚式が終わった翌朝。

 

二人が正式な夫婦となってから、初めて迎える朝だった。

 

アンティリーネは、自分を温かく抱きしめるカリムの腕の中で、静かに目を覚ました。

 

彼よりも先に目を覚ましたのは、これが初めてだった。

 

窓から差し込む柔らかな朝の陽光が、カーテンの隙間を縫うように部屋へ入り込み、薄暗い室内をほのかに照らしている。

 

すべてが平穏だった。

 

それゆえに、どこか現実ではないようにさえ感じられる朝だった。

 

アンティリーネはカリムの眠りを妨げないよう、慎重に身体の向きを変えた。

 

そして、まだ深い眠りの中にいる彼の顔を、じっと見つめる。

 

起きている時に見せる悪戯っぽさもない。

 

世界すら圧倒しそうな、あの力強さもない。

 

そこにあったのは、どこか無防備で、安らかな寝顔だった。

 

その姿を見つめるアンティリーネの瞳には、この上ない幸福が満ちていた。

 

「まだ、本当に……夢みたい」

 

アンティリーネは小さく呟いた。

 

少し前まで、こんな幸福がこの世に存在するとは思っていなかった。

 

一人の男の妻となり。

 

彼の腕の中で、このように平穏な朝を迎えることになるなど。

 

まったく想像もしていなかった。

 

「──もし、これが本当に夢なら。どうか、永遠に覚めませんように」

 

込み上げる感情に浸りながら、彼の顔をぼんやりと見つめる。

 

規則正しい寝息へ、静かに耳を傾ける。

 

その時だった。

 

突然、身体を強い力で引き寄せられた。

 

アンティリーネは、先ほどよりもさらに深く、カリムの胸元へ抱き込まれる。

 

「あっ!」

 

驚いて反射的に顔を上げると。

 

いつの間にか目を覚ましていたカリムが、にやにやと楽しそうな笑みを浮かべ、彼女を見下ろしていた。

 

どうやら彼は、とっくに目を覚ましていたらしい。

 

そして、アンティリーネが油断している隙に、腕の中へ強く引き寄せたのだ。

 

予想外の出来事に、アンティリーネは瞬間的に慌てた。

 

「おはよう、アンティリーネ」

 

カリムは、慌てる彼女の姿を可愛らしいものでも眺めるように、楽しげに言った。

 

「び、びっくりしたじゃない!」

 

「ハハ! 悪い悪い。あまりにも可愛かったからさ」

 

アンティリーネが驚いた声を上げると、カリムは相変わらず豪快に笑った。

 

「もう。朝から驚かせないでよ」

 

豪快に笑うカリムを見て、彼女は少し拗ねたように唇を尖らせる。

 

そんな姿さえ愛おしかったのか、カリムはもう一度アンティリーネを抱きしめた。

 

そして、先ほど彼女が口にしていた言葉を、そのまま返した。

 

「夢なら永遠に覚めないでほしい。俺も同じさ、アンティリーネ」

 

思いがけない言葉に、アンティリーネは少し呆然とした表情で彼を見上げた。

 

だが、すぐに恥ずかしさが押し寄せてくる。

 

アンティリーネは何も言わず、静かにカリムの胸へ顔を埋めた。

 

彼の腕に抱かれながら、身体の温もりと、規則正しく鳴る心臓の音を感じる。

 

この上ない幸福と安心感。

 

今の自分は、本当に。

 

何一つ疑う余地もなく、幸せなのだ。

 

そう実感できた。

 

幸福に浸っていると、ふと過去の記憶が脳裏をよぎった。

 

スレイン法国の冷たい秘密兵器として。

 

ただ強くなることだけを求められ。

 

他者と心を通わせることもなく、孤独に刃の上を歩き続けていた頃の自分。

 

もし時間を遡り、あの頃の自分と向き合うことができたなら。

 

こう伝えてやったら、どのような反応を見せるだろうか。

 

遠い未来。

 

世界の誰よりも強い男と出会い。

 

恋に落ち。

 

その男の妻になるのだと。

 

それまで得られなかった幸福を、心から味わうことになるのだと。

 

あの頃の自分は、どのような顔をするだろう。

 

鼻で笑い、くだらない戯言だと切り捨てるだろうか。

 

それとも、未来に訪れる運命を素直に受け入れるのだろうか。

 

あるいは、恋や結婚といった自分とは無縁だった言葉に戸惑い、慌てふためくだろうか。

 

それほどまでに。

 

カリムと出会い、共に過ごした時間は、アンティリーネの人生にとって天地が開けるほど大きな変化だった。

 

彼女の人生を根底から揺るがし。

 

まったく予想していなかった。

 

しかし、この上なく大切な方向へと導いた。

 

もちろん、彼と縁を結び、共に過ごしてきた時間そのものは、アンティリーネが生きてきた長い歳月に比べれば短い。

 

まだ一年が過ぎたばかりなのだから。

 

それでも、その短い時間の中で経験した変化と幸福は。

 

それ以前の数十年間に経験してきた、どの出来事よりも遥かに強烈で、意味のあるものだった。

 

「さあ、それじゃあ! 正式に夫婦になった記念に、手合わせでもしてみるか!」

 

「えー。このまま、もう少しこうしていたいのに」

 

「お? 意外だな。アンティリーネ、お前がそんなことを言うとは思わなかったぜ」

 

しばらく互いの温もりを確かめるように抱き合っていると、カリムが先に沈黙を破った。

 

結婚式の準備のため、長らくできなかった手合わせを再開しよう。

 

そう提案したのだ。

 

しかし、予想外の返事が返ってくると、カリムは驚いたように眉を上げた。

 

「やりたくないわけじゃないけど……うーん。もういいわ。とりあえず、もう少し寝る」

 

「ワハハハハ! 分かったよ! またやりたくなった時に言ってくれ」

 

どこか可愛らしいわがままを言う妻を見ながら、カリムは軽く彼女の頭を撫で、ベッドから起き上がった。

 

冒険者としては、すでに最高位であるアダマンタイト級へ到達している。

 

特に受けている依頼もない。

 

今日は手合わせをする予定もなくなった。

 

完全に暇な状態だった。

 

アンティリーネの隣へ戻り、そのままもう一度眠ろうか。

 

一瞬、そんな考えも浮かんだ。

 

だが、最近は結婚式の準備で、休む間もないほど忙しい日々を過ごしてきた。

 

たまには一人で静かに考えを整理するのも悪くない。

 

そう判断したカリムは居間へ出ると、それなりにこだわって選んだソファへ腰を下ろした。

 

「ふむ……」

 

ほとんど横たわるような姿勢で座りながら、静かにいくつかのことを考える。

 

まずは、長らく続けてきた課題。

 

賢者の石についてだった。

 

完成まで、本当にあとわずか。

 

早ければ、一ヶ月以内には最終段階へ到達できるだろう。

 

完全に完成したなら、カリムはアンティリーネへ賢者の石の存在を明かすつもりだった。

 

その成果を共に喜び、これからの未来について話す。

 

寿命の問題を解決することは、アンティリーネもまた望んでいることだったからだ。

 

次に考えたのは、昨日の結婚式が終わった後に正式に締結された、魔導国とスレイン法国の休戦協定だった。

 

あまりにも突然結ばれた協定だったため、当事国である魔導国と法国を除く各国は、かなり驚いていた。

 

しかし、少なくとも当分の間、この大陸で大規模な戦争は起こらない。

 

事実上、そう宣言するような協定でもあったため、各国は概ねその決定を歓迎していた。

 

もちろん、手放しで喜べる状況ではない。

 

魔導国からは、まだ新たな連絡は届いていなかった。

 

だが、この大陸だけではなく、世界全体を混沌と滅亡へ追い込みかねない、さらに大きな危険が迫っていたからだ。

 

「客か」

 

──そうして複数の問題について考え、回想に耽っていた頃。

 

家の周囲から強大な気配を感じた。

 

それとほぼ同時に、玄関の扉を叩く音が響く。

 

最初は魔導国の者かと思った。

 

だが、あの連中特有の不吉な気配は感じられない。

 

ひとまず警戒を少し緩めたカリムは、玄関へ向かい、扉を開いた。

 

「──竜に家の場所を教えた覚えはないんだがな。いや、それより、どうやってここまで来たんだ?」

 

扉の向こうに立っていた存在を確認し、カリムは低くため息をついた。

 

そこに立っていたのは。

 

白金の竜王、ツァインドルクス=ヴァイシオンだった。

 

「絶死絶命の外部活動を黙認する代わりに、法国からある程度の情報提供を受けていた」

 

ツァインドルクスは、カリムの不機嫌そうな態度にも特に反応せず、淡々と答えた。

 

「それに、君ほど圧倒的な気配を持つ存在であれば、所在を探ることもそれほど難しくはない。昨日からは臨時の休戦状態にも入った。少し立ち寄る程度ならば、問題はないと判断した」

 

「そういうものかね」

 

カリムは納得していない様子だったが、ひとまずツァインドルクスを家の中へ通した。

 

多少気まずい相手ではある。

 

それでも、昨日の結婚式へ祝いに訪れたことも事実だった。

 

少なくとも、魔導国の者たちよりは危険性の低い存在だと判断したのだ。

 

「それで、何の用だ?」

 

家へ入るやいなや、カリムは訪問の理由を尋ねた。

 

互いの存在と顔を知っている程度の関係だ。

 

わざわざ自宅まで訪ねてくるほど、親しい間柄ではない。

 

「最近になって、非常に不吉な気配が感知され始めた」

 

「────何?」

 

「魔導国を上回るほど、不吉な気配だ」

 

ツァインドルクスの言葉を聞いた瞬間、カリムの動きが止まった。

 

不吉な気配。

 

それも、魔導国以上だという。

 

それならば、七大罪の魔王たちか。

 

あるいは、別のワールドエネミーか。

 

どちらにせよ、状況が良いはずはない。

 

予想していたよりも遥かに早く、決戦の日が訪れる可能性があった。

 

「もっとも、現時点では気配を捉えただけだ。正確にどのような存在なのかまでは、まだ把握できていない」

 

「そうか」

 

まだ正体を特定できる段階ではない。

 

その言葉に、カリムは内心で安堵の息を吐いた。

 

気配を捉えただけで、本格的に動き始めていないのであれば。

 

少なくとも、今すぐ決戦になる可能性は低い。

 

まだ数ヶ月程度の猶予が残されているかもしれない。

 

それだけの時間があれば、賢者の石は確実に完成できる。

 

アンティリーネの鍛錬も、さらに進めることができるだろう。

 

「──それで、それを知らせるためだけに来たのか?」

 

「礼だ」

 

「礼?」

 

「戦争を防いでくれたことへのな」

 

「そうか」

 

カリムは少々素っ気なく答えた。

 

だが、ツァインドルクスも特に気にした様子はなく、無味乾燥な調子を崩さなかった。

 

「では、用件も済んだ。私はこれで戻るとしよう」

 

言うべきことをすべて伝え終えたツァインドルクスは、そのまま玄関へ向かった。

 

そして、扉を開ける直前。

 

ふと思い出したように振り返った。

 

「ところで、まだ君自身の名前を直接聞いていなかったように思うのだが」

 

「昨日、結婚式で全部聞いていただろ」

 

「それはそうなのだが」

 

「────はぁ。カリムだ。俺の名前は、カリム」

 

直接名乗らなければ、いつまでも面倒なことを言ってきそうだった。

 

カリムは仕方なく、自分の名前を改めて告げた。

 

その答えを聞いたツァインドルクスは、わずかに満足したような気配を見せる。

 

「そうか。では、また会おう。カリム」

 

そう言い残し、白金の竜王は帰っていった。

 

「ん? 誰か来てたの?」

 

閉じた扉をぼんやりと見つめながら考え込んでいると。

 

いつの間にか目を覚ましたアンティリーネが、寝室から居間へ出てきていた。

 

早朝から居間の中央にぽつんと立ち、玄関を見つめているカリムを見て、不思議そうに首を傾げる。

 

「いや。何でもない」

 

「そう? まあ、いいけど」

 

アンティリーネは適当に誤魔化すカリムを見て、少しおかしいとは感じた。

 

だが、それよりも重要なことがあった。

 

「もう寝たのか?」

 

「うん。だから、手合わせにでも行きましょう」

 

薄く微笑みながら告げるアンティリーネ。

 

それを見たカリムもまた、にやりと笑った。

 

「ワハハハハ! そうこなくちゃな!」

 

そうして二人はいつものように、並んでベースキャンプへ向かった。

 




本日もお読みいただき、誠にありがとうございます。
明日もまたお越しいただけますと幸いです。
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