We are Always Searching Happy Goal 作:Redemptor
SIDE-G
──アインズが、カリムとアンティリーネの間に子供ができたという知らせを受けた頃。
エ・ランテルのとある家庭で、穏やかで幸福な日々が続いていた一方。
ナザリック地下大墳墓の最深部。
その支配者が使用する豪奢な執務室では、深い溜息が何度も繰り返されていた。
「なんだと……妊娠? 妊娠、だと?」
アインズ・ウール・ゴウンは、たった今部下から提出された衝撃的な報告書を、もう一度最初から読み返していた。
表情の変化しない骸骨の顔のまま、骨だけの指をこめかみへ強く押し当てる。
──あの野郎。
確か、静かに暮らすと言っていなかったか?
それなのに、旅行を口実に各地へ出かけ。
結婚式まで挙げ。
それだけでは飽き足らず、今度は子供まで作ったというのか。
「厄介で恐ろしいロリコン野郎め……」
アインズは、誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。
やはり、奴とは根本的に相性が悪い。
ただでさえ、カリムの結婚という知らせだけで、アルベドとシャルティアから向けられる圧力は以前よりも遥かに強くなっていた。
それなのに今度は、後継者。
正妻の座を争う二人にとって、これ以上なく直接的で強力な口実まで与えてしまったのだ。
「間違いなく、この知らせがあの二人の耳に入った瞬間……私は終わる」
アインズは絶望的な心境で、近い将来に押し寄せてくるであろう光景を想像した。
『アインズ様! ご覧くださいませ! あの程度の者たちでさえ子供を授かり、自らの血統を未来へ残そうとしております! 至高なるアインズ様が、あのような者より後れを取る理由などございません!』
目を輝かせたアルベドが、息つく間もなく迫ってくる。
『アインズ様。私はいつでも、お后となる覚悟ができておりんす。ナザリックの未来のため、どうか私をお選びいただきたいでありんす』
シャルティアもまた、いつにも増して露骨な態度で自分を見つめるだろう。
現在は激しく正妻の座を争っている二人。
しかし、アインズに決断を迫るという一点においてのみ、一時的に手を組む可能性すら否定できない。
二人が休戦し。
共同戦線を築き。
自分を強引に寝室へ連れていこうとする。
そんな恐ろしい事態さえ起こり得るのではないか。
「いや……まさか、そこまではしないだろう」
アインズは小さく呟いた。
しかし、まったく自信はなかった。
それに、反応するのは彼女たちだけではないだろう。
コキュートスは、忠誠心と期待に満ちた眼差しで、ナザリックの栄光ある未来と後継者の必要性を説くに違いない。
パンドラズ・アクターもまた、過剰な身振りと演技がかった声で、偉大なる創造主の血を受け継ぐ弟か妹を望むだろう。
そしてアウラも。
無邪気な期待を込めて、
『アインズ様の子供、見てみたいな!』
などと言い出すかもしれない。
その時、マーレも姉に同意するように、小さく頷くのだろう。
想像すればするほど、逃げ道が塞がれていく。
火を見るより明らかだった。
アインズは、自分が完全に窮地へ追い込まれていくような気分になり、再び大きな溜息を吐いた。
「くそっ……あの厄介な男め」
本当に静かに暮らすと言っておきながら。
なぜ、こちらへばかり頭の痛い問題を増やしてくるのか。
今のナザリックには、ただでさえ解決しなければならない問題が山積みだった。
未知のワールドエネミーたち。
その出現地点と目的。
今後起こり得る戦闘への備え。
魔導国の運営。
各国との外交関係。
それだけでも、十分すぎるほど忙しい。
それなのに。
なぜ今、自分個人にとってはワールドエネミー以上に恐ろしい試練まで与えられなければならないのか。
もちろん、実際にワールドエネミーと後継者問題のどちらが危険かと問われれば、答えは明白である。
だが、アインズの精神へ直接与える負担という意味では、決して軽視できない問題だった。
「どうすればいい……」
一人を選ぶのか。
二人とも選ぶのか。
それとも、今までと同じように何らかの理由をつけ、さらに先延ばしにするのか。
しかし、カリムという同じユグドラシル出身者が、すでに結婚し、子供まで授かった。
その明確な先例が存在する以上。
これまで使用してきた言い訳が、今後も通用する保証はない。
アインズは報告書を机の上へ置き、天井を見上げた。
そして、誰にも聞かれることのない深い嘆きを漏らしながら。
迫り来る未来への苦悩と、終わりの見えない精神的重圧の中へ沈んでいった。
エ・ランテルでは。
カリムとアンティリーネが、まだ見ぬ子供の誕生を待ちながら、平穏で幸福な時間を過ごしていた。
しかし同じ頃。
魔導国とナザリック地下大墳墓の偉大なる支配者は。
その幸福な知らせによって、誰よりも深刻に頭を抱えていた。
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