We are Always Searching Happy Goal   作:Redemptor

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We are Always Searching Happy Goal - 60

最後の一撃が、カリムへ届くことはなかった。

 

確かに、命中したはずだった。

 

そう思った。

 

それなのに。

 

なぜ、通じなかったのか。

 

ここでも。

 

結局、自分は死ぬのか。

 

憤怒の魔王は虚ろな表情を浮かべながら、その巨体を倒した。

 

「────」

 

ビルにも匹敵するほどの巨大な身体が地面へ倒れ込んだ瞬間。

 

周囲一帯が激しく震えた。

 

続いて発生した強烈な地震によって、大地には亀裂が走り、地盤そのものが沈み込んでいく。

 

倒れてなお、自らの欲望と怒りを抑えきれないというのか。

 

カリムは倒れた憤怒を見つめながら。

 

その場へ崩れ落ちるように腰を下ろした。

 

荒い息を何度も吐きながら。

 

少しずつ状況を整理していく。

 

「────!」

 

身に纏っていた『栄光』を再びインベントリへ収納する。

 

同時に。

 

強力な回復効果を持つポーションを取り出し、一気に飲み干した。

 

その時だった。

 

倒れていた憤怒が。

 

ゆっくりと身体を起こし始めた。

 

その顔には虚無にも似た表情が浮かんでいた。

 

だが。

 

その奥には、何かを企んでいるような不可解な笑みも混じっていた。

 

「しぶといな」

 

体力は徐々に回復している。

 

だが、完全回復にはまだ程遠い。

 

さらに。

 

『神の試練』を再び発動できるようになるまでにも、多少の時間が必要だった。

 

カリムは一切警戒を解くことなく。

 

再び武器を憤怒へ向けた。

 

「虫けら、め……よくも……よくも、この我を……」

 

先ほど以上に異様な声を漏らしながら。

 

憤怒の魔王はゆっくりと立ち上がった。

 

そして。

 

何らかの行動へ移る。

 

その姿を見た瞬間。

 

カリムは再び集中し、最大限に警戒した。

 

次の攻撃か。

 

しかし。

 

憤怒の魔王が放ったのは攻撃ではなかった。

 

────ゲート。

 

「何……?」

 

プレイヤーや、プレイヤーによって創造されたNPCのように。

 

あまりにも自然にゲートを開く憤怒の姿を見て。

 

カリムは愕然とした。

 

ユグドラシルに存在していたワールドエネミーに。

 

あのような能力はなかった。

 

ならば。

 

この世界へ渡ってきたことで得た能力なのか。

 

もしそうなら。

 

これは非常にまずい。

 

別大陸で起きていることだからといって。

 

安心していられる状況ではない。

 

奴らは。

 

望む時に。

 

いつでも別の大陸へ侵攻できるということなのだから。

 

「ふん! 虫けらめ!」

 

憤怒が嘲るように叫ぶ。

 

「見たところ、貴様は魔法に関しては何一つ扱えぬ無能らしいな!」

 

「ならば!」

 

「そこから、貴様の住む土地が滅ぼされていく様でも眺めているがいい!」

 

「っ!」

 

その言葉を聞いた瞬間。

 

カリムは急いで態勢を整え、憤怒へ駆け出した。

 

だが。

 

すでに遅かった。

 

憤怒の身体はゲートの向こう側へ消え始めていた。

 

そして。

 

邪悪な笑い声を漏らしながら。

 

カリムへ、あまりにも衝撃的な言葉を投げつけた。

 

「くっ……くくく……」

 

「その間抜けな顔を見せてくれた礼に、一つだけ教えてやろう!」

 

「我らワールドエネミーが、この世界へ来た理由を!」

 

「カリム!」

 

「原因は、貴様が引き起こした、あの『大崩壊』だ!」

 

「貴様のおかげで!」

 

「無理やり世界に亀裂が生まれ!」

 

「我らワールドエネミーは、その裂け目を通って、この世界へ来ることができた!」

 

「そして!」

 

「九曜世界式までもが!」

 

「この世界へ来たのだ!」

 

「では、さらばだ! クハ、ハハハハハハ!」

 

「……何だと?」

 

全身を傷つけながらも荒々しく笑う憤怒を見て。

 

カリムは、頭を槌で殴られたような衝撃を受けた。

 

すべてを終わらせようとした、あの行動が。

 

『大崩壊』へ繋がった?

 

そして。

 

その大崩壊によって。

 

ワールドエネミーたちが。

 

さらには九曜世界式までもが。

 

この世界へ渡ってきた?

 

もし。

 

あの言葉が事実だとすれば。

 

この世界を滅亡寸前まで追い込んでいる原因は。

 

他の誰でもない。

 

自分自身ということになる。

 

これまで自分が行ってきたことが。

 

あまりにも矛盾しているように感じられ。

 

眩暈すら覚えた。

 

「待て────!」

 

激しい衝撃を受けながら。

 

カリムは憤怒を捕らえようとした。

 

だが。

 

すでにゲートは閉じられていた。

 

憤怒の姿も。

 

どこにもない。

 

すぐにでも追いかけたかった。

 

しかし。

 

自分がここへ来るために通ったゲートも、すでに閉じている。

 

あまりにもどうしようもない状況に。

 

カリムは呆然と虚空を見つめた。

 

現状。

 

ここから帰る手段がない。

 

誰かが迎えに来る予定もなかった。

 

完全に八方塞がりだった。

 

今できることといえば。

 

低く悪態を吐くことくらいしかない。

 

「くそっ」

 

もちろん。

 

ここは自分が暮らしている大陸の外ではあるものの。

 

歩き続け。

 

移動し続ければ。

 

いつかは辿り着くことができる。

 

結局。

 

ここも同じ世界の中なのだから。

 

だが。

 

今は、そんな悠長なことをしている場合ではなかった。

 

憤怒の力は現在、大幅に弱体化している。

 

しかし。

 

再び休眠状態へ入り。

 

力を回復されれば厄介なことになる。

 

何より。

 

現在の憤怒は。

 

すでに『傲慢』までも取り込んでいる。

 

このまま放置すれば。

 

自分が幸福に暮らしていた大陸そのものが。

 

奴の糧となりかねない。

 

「スクロールくらい……買っておくべきだったか」

 

失策だった。

 

それも。

 

あまりにも大きな失策。

 

久しぶりに犯した自分のミスに。

 

カリムはしばらくの間。

 

その場で虚しく笑うことしかできなかった。

 

────*────*────

 

「ぐっ……う……虫けら、め……!」

 

傲慢を取り込んでおいて、本当によかった。

 

そうでなければ。

 

とうの昔に死んでいたか。

 

あるいは。

 

身動きすらできず、地面へ倒れ伏していたことだろう。

 

「忌々しい……忌々しい……忌々しい……!」

 

「忌々しい虫けらめ!」

 

二度目の死は。

 

幸運にも免れた。

 

だが。

 

それだけだった。

 

傲慢を取り込んだことで得た。

 

自分と同種の力を持つ存在でなければ滅ぼされない────同種の力を持つ者にならば滅ぼされる────限定的な不死性。

 

それがあったからこそ、生き延びただけだ。

 

事実上。

 

自分は再びあの男に敗北した。

 

そして。

 

再び討伐されたも同然だった。

 

身体をまともに動かすことさえ難しい。

 

それでも。

 

込み上げ続ける怒りだけは、どうしても抑えることができなかった。

 

「ふん!」

 

「死んでいないのなら、次の機会がある!」

 

再び負けたことは。

 

耐え難いほど腹立たしい。

 

だが。

 

これで完全に終わったわけではない。

 

再び休眠し。

 

力を蓄えればいい。

 

機会は必ず再び訪れる。

 

そして。

 

次の機会が訪れたなら。

 

今度は、今回と同じ過ちは犯さない。

 

他の魔王たち。

 

そして、他のワールドエネミーたちを先に倒し。

 

その力を吸収する。

 

その後で。

 

あの男を殺す。

 

「ん?」

 

そう考えながら動き出そうとした時。

 

憤怒は。

 

前方に立っている存在へ気づいた。

 

不吉な気配を放つ。

 

一体のリッチ。

 

「ほう!」

 

憤怒は苛立つと同時に。

 

僅かな興味を覚えた。

 

「こんな出来損ないまで、この我に挑むというのか!」

 

どれほど体力を失っていようとも。

 

この程度の相手ならば。

 

弄びながら倒すことができる。

 

ちょうどいい。

 

怒りをぶつける相手として。

 

これ以上ないほど都合がいい。

 

「出来損ない、か」

 

リッチは。

 

憤怒の挑発を受けても。

 

まるで気にした様子を見せなかった。

 

「随分と久しぶりに聞く言葉だな」

 

そのリッチ。

 

アインズは。

 

軽く片手を上げた。

 

「〈心臓掌握(グラスプ・ハート)〉」

 

アインズは。

 

目の前の存在が何者なのか。

 

よく理解していた。

 

七大罪の一体。

 

ワールドエネミー。

 

『憤怒』。

 

本来であれば。

 

一人で討伐できるような存在ではない。

 

そして。

 

この程度の魔法が通用するはずもない。

 

しかし。

 

今は状況がまるで違っていた。

 

体力は。

 

ほとんどゼロに近い。

 

魔力も不安定に揺らいでいる。

 

さらに。

 

本来ワールドエネミーであれば当然備えているはずの。

 

数々の耐性すら失われていた。

 

────ロリコン野郎め。

 

本当にやり遂げるとはな。

 

やはり。

 

ワールドエネミー以上に厄介な奴だ。

 

「な……に────」

 

本来ならば。

 

通用するはずのない魔法だった。

 

この程度の魔法など。

 

鼻で笑いながら。

 

簡単に無効化できたはずだった。

 

しかし。

 

憤怒には。

 

それができなかった。

 

カリムとの死闘で。

 

すべての力を使い果たしたからなのか。

 

今の自分は。

 

あらゆる面において。

 

目の前のリッチより。

 

明確に『下』だった。

 

そして。

 

憤怒は本能的に悟った。

 

このリッチは。

 

自分と近しい種類の力を持つ。

 

似た存在なのだと。

 

魔法が通じた。

 

それでも。

 

すぐには倒れない憤怒を見て。

 

アインズは。

 

『計画』通り。

 

次の魔法を発動した。

 

「超位魔法────」

 

「〈失墜する天空(フォールン・ダウン)〉!」

 

「な、何────」

 

まるで。

 

太陽そのものが墜ちてきたかのようだった。

 

憤怒の存在していた場所へ。

 

凄まじい熱が爆発的に広がり。

 

そこに存在するすべてを焼き尽くしていく。

 

憤怒の魔王も。

 

例外ではなかった。

 

極限まで弱り切っていた彼は。

 

まともに抵抗することすらできず。

 

そのまま。

 

この世界から完全に消滅した。

 

本来であれば。

 

超位魔法であっても。

 

致命的な損傷を与えることは難しかっただろう。

 

しかし。

 

現在の憤怒は。

 

実質的には瀕死を通り越した状態だった。

 

だからこそ。

 

圧倒的なダメージを与え。

 

『討伐』することができた。

 

「良い『経験値』だ」

 

完全に消滅していく憤怒を見ながら。

 

アインズは。

 

その力を完全に吸収した。

 

そして同時に。

 

魔将たちにも何らかの影響が及んだことを感じ取った。

 

「ワールドエネミーには……ならなかったか」

 

ユグドラシル時代。

 

特定の条件を満たした状態でワールドエネミーを討伐すると。

 

討伐者自身がワールドエネミー化するという。

 

正気とは思えないほど強力な強化効果が存在していた。

 

だが。

 

残念ながら。

 

今回はそうならなかった。

 

特定条件そのものがユグドラシル時代とは異なっていたのか。

 

あるいは。

 

この世界へ転移したことで。

 

すでにユグドラシルの法則から外れてしまったのかもしれない。

 

それでも。

 

得られたものは極めて大きかった。

 

まず。

 

ユグドラシルの法則から完全に解放された影響によって。

 

アインズ自身のレベルは、およそ二倍にまで上昇していた。

 

さらに。

 

魔将たちのレベルもまた。

 

上昇していた。

 

────後に。

 

アインズは。

 

『憤怒と傲慢の魔王』と呼ばれることになる。

 

だが。

 

それはまだ。

 

遥か未来の話である。

 




本日もお読みいただき、誠にありがとうございます。
明日もまたお越しいただけますと幸いです。
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