小鳥の囀りと共に意識が覚醒する。といっても、この地域はそこまで自然豊かじゃないからこれはアラームの音なんだけどな…。
スヌーズにでもなったらうるさいことこの上ないし、さっさとアラームを切ろう。そう考えてスマートフォンに向かって腕を伸ばそうとするがどうにも動かしづらい。
まるで腕が何かに縛られているみたいだ。
その何かを知るために頭を動かすと、それは誰かの腕だった。
ああ、いや違う。そう、姉貴の腕だ。深夜2時に帰ってきた姉貴のだ。寝たのが遅いせいか、少し寝不足気味だ。
「姉貴ちょっと腕動かすからね……っと。」
ぬぐ…ぐ…結構力強いな。てか腕やわらか…。
よしっ、アラームは切ったっと。
さてさて、今は何時かな〜って4時半かよ。遅く寝ても生活リズムは崩れてないみたいで安心安心〜。
さてと、もう起きちゃったんだし着替えとか朝飯とかした方がいいよな?
「姉貴、姉貴?俺ちょっと起きないとなんだけど、腕離してくんね?姉貴?」
ぜんっぜん離してくんねーな。
「あねき?あ〜ね〜き!」
ぐっ……このっ…ほんっとうに力つよいな!
この!このっ!…………まじで離してくんねぇ。
よし!もういい!今日は休日なんだし、二度寝しよう!まぁ〜多分7時くらいに起きるでしょ!
「ショウタ……どこ行くんデスカ……?」
っ…………!!?
びっくりした、ただの寝言か…。
「どこにも行かねえよ、二度寝するし。おやすみ」
返事は……ないか。まあ、寝言だしな。
………………やっべ、今何時!?まじで何時!?
10時!……10時!??
は!??マジ?マジで!?
やっばい、寝過ぎた。えっ、えっ、バイトどうしよう。早く連絡しないと……って今日休みじゃん、よかった〜。
姉貴は……姉貴どこ?
えっ、俺姉貴より遅く起きたの?
気ぃ抜けすぎじゃん…
まずは着替えるか。そういえば、私服少ないな…。
昔着てたやつはもう小さいし、買わないとだよな。
今までは見せる人もいなかったけど…今は姉貴いるしな。
うん…とりあえず着たけど地味だな。まっ、着替え終わったし一階に降りるか。
「姉ちゃんいるー?」
「ハーイ、オネエチャンデース!ショウタのゴハンもありますヨー!」
シャワー上がりなのか、姉貴の体は少しだけ湿っていた。何でもないはずなのに、妙に目のやり場に困る。
「ありがと、これ目玉焼きトースト。覚えててくれたんだ。」
「ハイ!オネエチャンですから!好きでしたヨネ?目玉焼きトースト」
「またパン焦げてるし…」
「アハハ…美味しくなかったデスカ?」
「味は……うん、昔通りマズイ。」
「そうですか…アッ!ウインナーもありマスヨ!ケチャップたっぷりデス!オネエチャンがあーんしてあげます!」
「ばっ、別にいいって!自分で食えるし」
つい恥ずかしがってしまう。
「ショウタは変わりましたね、昔はもっと甘えてくれてました。」
「まあ、高校生にもなったしな。身長もおっきくなった。てか、姉貴は全然変わってねーな。相変わらず能天気だ。」
「むー、オネエチャンも成長してるんですよ?身長だってオネエチャンの方が大きいです!」
「はいはい、姉貴って今日予定ある?」
「イイエ、ショウタと一日中一緒デス!」
「そっか、よかった。なら服でも買いに行こーぜ。」
「ワカリマシタ!ショウタとのお買い物楽しみデス!」
どこに行こうか、やっぱりユニクロか?デパートとかもいいな。あそこのおばちゃんに久しぶりに姉貴の顔も見せてやりてぇ。
「アッ!ケチャップついてますよ、ショウタはおっちょこちょいデス!オネエチャンが取ってあげます!」
「んっ、ありがと。…………うん……?姉貴?」
「ケチャップは美味しいデス!…どーしたんデスカ、ショウタ?顔が真っ赤ですよ?」
「……っ、なんっでもねぇ!」
「デモ、すごい赤いデス!もしかしたら熱があるのかも…………。」
「ばっ…バカ!アホ!近ぇんだよ!俺ちょっと水飲んでくるから!」
「あっ…、ショウタ……!水ならワタシが取ってきてあげますのに……。」
熱くて熱くてたまらない……。
水を飲んでも飲んでも喉が渇く。
あれは姉貴だ。ただのスキンシップ。
そう、その程度にすぎない、はずだ……。