ミステリートレインの車内に戻った朔夜たちがまず向かったのは、待機していた仲間たちとの合流だった。
ケータ、のび太、スネ夫、ジャイアン、しずか――それぞれが別行動を取っていた面々は、朔夜の表情を見るなり、ただならぬ空気を察する。
#朔夜は簡潔に、しかし起きた事実だけは正確に伝えた。
ディアボロの急襲。複数の星の崩壊。避難船の発見。
そして現在進行している救難信号の発信源。
説明が進むにつれ、車内の空気は重くなっていく。
「ディアボロ……?」
その名を聞いた瞬間、のび太、スネ夫、ジャイアン、しずかの四人の表情が一斉に強張った。
しずかが小さく息を呑み、スネ夫は顔を青くし、ジャイアンは拳を握ったまま沈黙する。
のび太は椅子に座り込むようにして天井を見上げた。
「最悪だよ……あれは……」
誰が言ったわけでもない言葉が、重く車内に落ちた。
かつて彼らが体験した“月面探査機事件”――その記憶は、今もなお生々しく残っていた。
完全に破壊したはずの存在。それが再び“名前としてではなく現実として”現れている事実に、全員が言葉を失っていた。
ドラえもんは短く息を吐く。
「やっぱり……ただの再来じゃないね」
マスタード警部や車掌も状況の異常性を認識し始めていたが、まだ全体像までは見えていない。
その場でタイムパトロールとの調整が進められ、避難民の受け入れ先が二方向に分かれることが決定した。
ヒョーガ星系。
そしてバウワンコ王国。
環境適応・安全保障・収容能力――複数の条件をもとに割り振られる形だ。
朔夜はその中で、迷いなくバウワンコ王国行きを選んだ。
「こっちの避難民は、俺が見る」
そう短く告げると、ナツメやトウマとともに移動準備に入る。
避難船の中では、混乱と不安が広がっていたが、朔夜たちはできる限り声をかけ続けた。言葉は多くない。ただ、「大丈夫」という空気を作ることだけを意識する。
やがて一行は再び宇宙空間を抜け、目的地へと向かった。
[newpage]
アマゾンの奥地。
かつて戦火に包まれたバウワンコ王国は、今では徐々に復興の色を見せていた。崩れた建造物の修復が進み、王国としての機能も少しずつ戻りつつある。
避難船が着陸すると、最初に出迎えたのは――ペコだった。
「ようこそ、皆の者」
その言葉に、#朔夜は一瞬だけ安堵の表情を浮かべる。
ペコは王としてそこに立っていたが、同時にかつての仲間としての距離感も失っていなかった。
「ペコ、無事か」
#朔夜の言葉に、周囲の侍従が一瞬だけ渋い顔をする。しかしペコは気にした様子もなく頷いた。
「サーベル隊長は今、各地の補給路の護衛に回っている。贖罪としてな」
その言葉に、空気がわずかに変わる。
かつて敵として立ちはだかった存在が、今は国を支える側に回っている。その事実は、戦いの終わりではなく“続き”を感じさせた。
ちょうどその時、別の動きがあった。
タイムパトロールの一隊が前に出る。
「バウワンコ王国へ、正式に支援を申し出たい」
それは単なる提案ではなく、上層部からの決定事項に近いものだった。
王国の再建支援、治安維持、そして避難民の管理。
さらに――駐屯の許可。
その言葉が出た瞬間、場の空気が一瞬だけ張り詰める。
軍事介入ではない。しかし完全な“外部常駐”でもある。
ペコは静かにそれを聞き、しばらく考えたあと、ゆっくりと頷いた。
「条件付きで受け入れよう」
交渉は成立した。
だが#朔夜は、そのやり取りを最後まで見届けることはしなかった。
自分がこの場に深く関わるべきではない――そう直感的に理解していたからだ。
国家間の判断、軍事的均衡、避難民の受け入れ。
それらはもう、自分一人の領域を超えている。
#朔夜は静かに背を向けると、ミステリートレインへと戻っていった。
[newpage]
列車へ戻る途中、宇宙と地上の境界のような静けさが広がっていた。
戦いは続いている。だが、それはもう“剣を振るう段階”ではない。
もっと広く、もっと見えにくい場所で進んでいる。
#朔夜はそのことを、はっきりと感じていた。
そして次に何が来るのかを、まだ知らないまま――。