ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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ケータはねぇ観客席で観戦中。妖怪連れてたから恐竜が怖がって近づいてこなかったらしい。


#百三話

レース会場中央。

広大なサバンナを切り開いて造られたスタートゲートには、参加者達がずらりと並んでいた。

陸部門と空部門。

二つのコースが同時に始まり、途中でそれぞれ別ルートへ進む。

ゴールは共通。

スタンドには多くの観光客が集まり、開始を今か今かと待ちわびていた。

『さぁ皆様、お待たせいたしましたーっ! これより恐竜の星名物、ダイノ・グランプリを開催しまーす!』

女性実況の元気な声が会場中へ響く。

『陸部門、空部門合わせて総勢十名! 本日はどんな熱いレースを見せてくれるのでしょうか!』

歓声が湧き上がる。

#朔夜はケツァルコアトルスの首を軽く叩いた。

「……暴れないでよ」

「ギュルル」

返事をしたのかしていないのか。

巨大な翼竜はどこか楽しそうに首を揺らす。

その様子を見たドラえもんは苦笑した。

「まだ言うこと聞いてくれないんだね。」

「半分くらいは。」

「半分?」

「飛ぶ方向は気分次第だと思う」

「十分困るよ!」

その隣では、のび太がデイノニクスへしがみついていた。

「よろしくね……お願いだから途中で振り落とさないでね……」

デイノニクスは短く鳴く。

今度はちゃんと受け入れてくれているらしい。

一方。

「行くぞぉーーーっ!」

ジャイアンはステゴサウルスの背中を叩いて気合十分だった。

「今日は絶対一番だ!」

対するスネ夫はブラキオサウルスの首を見上げている。

「お願いだから少しでも速く走ってよぉ……」

ブラキオサウルスは我関せず。

のんびり草を食べていた。

「食べてる場合じゃないって!」

その様子に会場から笑いが起こる。

アキノリとアヤメはラプトルの傍らで顔を見合わせていた。

「勝負だね。」

「負けないよ?」

二頭のラプトルも互いを意識するように鳴き交わす。

ナツメとしずかはパラサウロロフスを優しく撫で、トウマはデルタドロメウスの脚を確認している。

「準備は万全だ。」

『それでは――』

実況が息を吸う。

『スタートですっ!!』

パンッ!!

乾いた号砲が鳴り響いた。

一斉に恐竜達が飛び出す。

[newpage]

「うわっ!」

のび太のデイノニクスが矢のように加速した。

『速いっ!! デイノニクスがトップへ飛び出したぁぁぁ!!』

「え!? えぇぇぇぇっ!?」

予想以上の勢いに、のび太は悲鳴を上げながら必死にしがみつく。

「そのまま行けぇぇぇ!」

ドラえもんが思わず声援を送る。

後方ではジャイアンが叫んだ。

「待ちやがれぇ!」

ステゴサウルスを急かす。

しかし重厚な体はそう簡単には加速しない。

ドシン!

ドシン!

豪快に地面を踏み鳴らしながら追い掛ける。

一方。

「うわぁぁぁ!」

スネ夫だけは早くも泣きそうだった。

ブラキオサウルスは悠々と歩いている。

歩幅は大きい。

だが速くはない。

『おっとブラキオサウルス、最後尾だぁーーーっ!』

「お願いだから走ってぇぇぇ!」

ブラキオサウルスは首を傾げるだけだった。

その頃。

空では。

バサァッ!!

二頭の翼竜が同時に大空へ舞い上がる。

『空部門もスタート!』

ドラえもんのプテラノドンは真っ直ぐ高度を上げる。

実に安定した飛行だった。

「いい子いい子。」

ドラえもんが背中を撫でる。

対して#朔夜のケツァルコアトルス。

一直線に飛ぶかと思いきや。

ぐいっ。

突然、大きく右へ旋回した。

「……違う。」

さらに左。

さらに上昇。

『おっとぉ!? ケツァルコアトルスがコースを外れそうです!』

観客席がどよめく。

「戻って。」

「ギュルル!」

楽しそうに鳴く。

戻らない。

「聞いて。」

ようやく少しだけ進路を修正する。

その間にドラえもんが前へ出る。

『現在トップはプテラノドン! 安定した飛行です!』

ドラえもんは振り返って笑った。

「#朔夜ー! ちゃんと操縦して!」

「してるってば。」

「してるように見えない!」

#朔夜は小さくため息を吐いた。

どうやらこの相棒は、普通の翼竜ではないらしい。

[newpage]

レースは第二エリア、熱帯雨林へ突入する。

密集した木々。

複雑に入り組んだ地形。

先頭を走るデイノニクスが木を蹴りながら軽快に進む。

『トップは依然デイノニクス!』

しかし。

後方との差が徐々に縮まっていた。

デルタドロメウスが長い脚を活かして追い上げる。

パラサウロロフスも安定した走り。

ラプトル二頭は木々の隙間を縫うように駆け抜けていく。

『ここで集団が一気に接近!』

ところが。

ラプトル達が突然止まった。

「え?」

アキノリが目を丸くする。

二頭とも一点を見つめている。

色鮮やかな羽を持つ古代昆虫が、目の前をひらひら飛んでいた。

「おいおい!」

「今じゃないって!」

アヤメも苦笑する。

二頭のラプトルは興味津々に虫を追い掛け始めた。

『なんとラプトル寄り道ーーーっ!?』

観客席が爆笑する。

ようやく気付いたラプトル達は慌ててコースへ戻った。

一方その頃。

後方から聞こえてきたのは。

バキッ!!

メキメキメキ!!

凄まじい破壊音だった。

「何だ!?」

振り返る。

そこには。

ブラキオサウルスが真正面から木々を薙ぎ倒しながら進んでいた。

『すごいーーーっ!!』

『森を一直線に突き進んでおります!!』

「行けぇぇぇ!」

スネ夫が大喜びする。

歩幅の大きさも相まって、一気に差を縮め始めた。

「ずるいぞー!」

ジャイアンが叫ぶ。

「そんな道あったのかよ!」

ブラキオサウルスは気にする様子もなく、堂々と森を切り開いていく。

その頃。

空では依然としてドラえもんが先頭。

#朔夜はそのすぐ後ろ。

しかしケツァルコアトルスは、またしても岩山すれすれを飛び始める。

『危ない危ない! コースアウト寸前です!』

「……自由すぎるよ…。」

#朔夜が呟く。

だがケツァルコアトルスはどこか楽しそうだった。

風を切り裂き、岩壁の間を滑るように飛び抜ける。

その飛行は危険極まりない。

それでいて美しかった。

『さぁレースはいよいよ最終エリア!』

『勝負はここからです!!』

実況の声が響く。

熱帯雨林を抜けた先。

広大なサバンナが、ゴールまで一直線に広がっていた。

それぞれの恐竜が最後の力を振り絞る。

勝負の行方は、まだ誰にも分からない――。

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