熱帯雨林を抜けた先。
視界が一気に開けた。
黄金色の草原。
ゴールゲートまで遮るものは何もない。
『さぁ、いよいよ最終エリアです! 栄冠を掴むのは一体誰だぁーーっ!!』
実況の声に、観客席の熱気がさらに高まる。
陸部門。
先頭を走っていたデイノニクスへ、ついに後続が並び始める。
「来た……!」
のび太が後ろを振り返る。
デルタドロメウス。
二頭のラプトル。
パラサウロロフス。
そして、木々をなぎ倒してきたブラキオサウルスまでもが、その巨体に似合わぬ勢いで迫っていた。
『横一列だぁぁぁぁっ!!』
誰が勝ってもおかしくない。
その時だった。
デルタドロメウスが僅かに身を低くした。
「行けっ!」
トウマが声を掛ける。
次の瞬間だった。
ダンッ!!
大地を蹴る音と共に、デルタドロメウスが一段階速度を上げた。
『出たーーーっ!! デルタドロメウスが抜け出したぁぁぁ!!』
一歩。
二歩。
三歩。
みるみる差が広がる。
「速っ!」
思わずのび太が叫ぶ。
デイノニクスも必死に追う。
しかし伸びない。
ここへ来て体力差が現れ始めたのだ。
「頑張れぇ!」
ドラえもんの声援が遠くから聞こえる。
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その横では。
「今だ!」
「行こう!」
アキノリとアヤメが同時に声を掛けた。
二頭のラプトルが顔を見合わせる。
まるで意思疎通したかのように左右へ散開。
互いに競り合いながら一気に加速した。
『ラプトルだーーーっ!!』
『最後の猛追!!』
まるで息が合った双子のような走りだった。
だが。
デルタドロメウスには届かない。
その頃。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
ジャイアンが絶叫する。
「行けぇぇぇ!!」
ステゴサウルスも必死に脚を動かす。
しかし。
後ろから。
ドシン。
ドシン。
ブラキオサウルスが迫ってくる。
「へ?」
ジャイアンが横を見る。
長い首。
巨大な身体。
そしてその上で得意げに笑うスネ夫。
「悪いねぇ~!」
「なっ!」
ブラキオサウルスは一歩でステゴサウルスを追い抜いていく。
「うわぁぁぁぁ!」
ジャイアンは思わず叫んだ。
「俺の方が似合うのにぃぃぃ!!」
観客席は大爆笑だった。
一方。
空部門。
ドラえもんは依然トップを飛んでいた。
プテラノドンは最後まで安定している。
「このまま行こう!」
優しく声を掛ける。
プテラノドンも短く鳴いた。
その後方。
ケツァルコアトルスは相変わらず自由だった。
右へ。
左へ。
時には上昇し。
時には下降する。
「……好きに飛ばないでよ。」
#朔夜が呟く。
すると。
ケツァルコアトルスの首が僅かに動いた。
前方。
ゴールゲートが見えてきた。
その瞬間だった。
巨大な翼がぴたりと閉じた。
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「……!」
#朔夜は何をする気なのか悟った。
「行くか。」
返事代わりに。
「ギャアアアアッ!!」
鋭い鳴き声。
次の瞬間。
急降下。
『な、何だぁぁぁぁぁぁっ!?』
実況の絶叫。
ケツァルコアトルスが一直線に落下していく。
猛烈な風圧。
音が遅れて聞こえる。
まるで空そのものが落ちてくるようだった。
ドラえもんが振り返る。
「速い!」
一瞬だった。
プテラノドンの横を巨大な影が通り過ぎる。
ゴォォォォッ!!
風だけが残った。
『抜いたぁぁぁぁ!!』
『ケツァルコアトルス、トップだぁぁぁぁっ!!』
最後の最後。
たった数秒で逆転した。
そのまま一直線。
ゴール。
『ゴーーーーール!!』
大歓声。
続いてドラえもんもゴールラインを越えた。
「負けちゃったか。」
ドラえもんは苦笑しながら空を見上げる。
「でも、最後は格好良かったよ。」
着地したケツァルコアトルスは満足そうに翼を広げる。
#朔夜は背中から降りると、その首を軽く叩いた。
「……最初からやって。」
「ギュル。」
全く反省していないらしい。
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数十秒後。
『陸部門トップ、ゴーーール!!』
デルタドロメウスが真っ先に飛び込む。
「やった!」
トウマが拳を握った。
続いて。
『二位争いだぁぁぁ!!』
ラプトル二頭が並ぶ。
右。
左。
最後まで譲らない。
ほぼ同時にゴールラインを駆け抜けた。
「どっち?」
「分からない!」
アキノリとアヤメが顔を見合わせる。
『写真判定です!』
観客席が沸く。
その後ろから。
「うわぁぁぁぁ!」
のび太がデイノニクスと共にゴール。
「疲れたぁ……。」
デイノニクスも肩で息をしていた。
さらに。
ナツメ。
しずか。
二人のパラサウロロフスが仲良くゴールする。
最後。
ドシン。
ドシン。
ブラキオサウルスが悠然とゴールした。
「やったぁ!」
スネ夫が大喜びする。
その直後。
「くっそぉぉぉぉぉっ!!」
ジャイアンの絶叫が会場中へ響き渡った。
「やっぱり俺が乗るはずだったんだぁぁぁ!!」
ブラキオサウルスはそんなジャイアンを一瞥すると。
ぷいっ。
そのままスネ夫へ首を擦り寄せる。
「ほら見ろ!」
スネ夫は鼻高々だった。
「選ばれたのは僕なんだよ!」
「ぐぬぬぬ……!」
悔しさに震えるジャイアン。
その姿を見て、会場は再び笑いに包まれる。
『以上をもちまして、ダイノ・グランプリを終了いたします!』
実況の締めくくる声と共に、大きな拍手が湧き起こった。
こうして、それぞれの相棒と駆け抜けた恐竜レースは幕を閉じた。
勝者も、敗者も。
誰もが笑顔だった。
――もっとも、一人だけはブラキオサウルスへの未練を最後まで捨て切れなかったようだが。