レース終了から十分後。
恐竜レース会場中央には、大きな表彰台が設置されていた。
観客席は満員。
各地から集まった参加者たちも、自分の相棒となった恐竜たちと並びながら結果発表を待っている。
軽快なファンファーレが鳴り響いた。
「お待たせしましたー!」
司会のお姉さんがマイクを片手に笑顔で登場する。
「それでは、恐竜レース表彰式を始めまーす!」
大きな拍手が湧き起こった。
まず最初は陸上部門。
「第三位! アキノリ選手!」
「よっしゃ!」
アキノリが勢いよく壇上へ駆け上がる。
その後ろからラプトルも得意げに胸を張って付いてきた。
「第二位! アヤメ選手!」
「ありがとうございます。」
アヤメは落ち着いた笑みを浮かべながら表彰台へ。
隣に並んだ二頭のラプトルは、まるで競い合うように「キュルル!」と鳴いた。
「すげぇ……本当に仲いいな。」
のび太が感心する。
「いやぁ、それほどでも……」
アキノリは鼻の下を伸ばす。
「アンタじゃない。」
ナツメの一言で会場から笑いが起こった。
「そして第一位!」
司会が声を張る。
「トウマ選手!」
デルタドロメウスが勢いよく駆け出し、そのまま表彰台の前で華麗に停止する。
「おおーーっ!」
観客席から歓声。
トウマも照れ臭そうに笑った。
三人には順位に応じた恐竜キーホルダーと、相棒となった恐竜の飼育権が贈られる。
「おめでとうございます!」
拍手が鳴り止まない。
「続きまして、空部門!」
今度は空を見上げる観客も多い。
翼竜たちは広場の周囲で羽を休めていた。
「第三位!」
常連らしい参加者が表彰される。
そして。
「第二位! ドラえもん選手!」
「惜しかったなぁ。」
ドラえもんは頭を掻きながら表彰台へ。
プテラノドンも「クルル」と嬉しそうに鳴いた。
「安定した飛びっぷりでした!」
「ありがとう!」
ドラえもんは照れ笑いを浮かべる。
そして、司会は大きく息を吸った。
「それでは、空部門優勝! そして本大会総合優勝は――!」
照明が一斉に中央へ集まる。
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「#朔夜選手です!」
ドォォン!
紙吹雪が舞った。
観客席は今日一番の歓声に包まれる。
「すげぇー!」
「空の王者だ!」
「最後の急降下は鳥肌だった!」
ケツァルコアトルスも誇らしげに翼を広げ、高らかに鳴いた。
「ギャアアアアッ!!」
風圧で紙吹雪が舞い上がる。
「近い近い!」
司会のお姉さんが髪を押さえながら笑う。
#朔夜はいつも通り無表情で表彰台へ上がった。
「#朔夜、おめでとう!」
ドラえもんが拍手を送る。
「最後の急降下は反則だよ~。」
「僕じゃない。」
「え?」
「勝手に飛んだんだ。」
「……そういうこと?」
ドラえもんは苦笑する。
どうやら最後の加速はケツァルコアトルス自身の判断だったらしい。
司会は豪華な賞品を掲げた。
「総合優勝者には、空部門優勝の賞品に加えまして――」
スタッフが一枚のカードを運んでくる。
「ドリーマーズランド全施設でご利用いただける、スペシャル優待パスを贈呈します!」
カードは金色に輝いていた。
「こちらをお持ちのお客様は、アトラクションへ並ばずにご利用いただけます!」
「ええーーっ!?」
のび太が飛び上がる。
「ずるい!」
「いいなぁ!」
「それ欲しい!」
子どもたちからも歓声が上がる。
#朔夜はカードを一瞥した。
「これは貰うよ。」
「即答だ!」
ドラえもんが笑う。
「続きまして!」
司会はもう一つの賞品を差し出した。
「ケツァルコアトルスの飼育権になります!」
立派な証明書だった。
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しかし。
「辞退します。」
「……え?」
司会の笑顔が止まる。
「ええええぇぇぇぇぇ!?」
観客まで驚いた。
「え、いらないの!?」
のび太が叫ぶ。
「飼う場所がないし。」
#朔夜は真顔だった。
「庭もない。」
「理由そこ!?」
ドラえもんが思わずツッコむ。
「それに、餌代も凄そう。」
ナツメが冷静に付け加える。
「確かに……。」
全員が妙に納得してしまった。
その横でケツァルコアトルスは、
「ギュル?」
と首を傾げる。
#朔夜は巨大な嘴を軽く叩いた。
「また来るね。」
「ギュルル。」
満足そうに鳴く。
どうやら本人(本竜?)は全く気にしていないらしい。
司会も笑顔を取り戻した。
「それではケツァルコアトルスさんには、引き続きドリーマーズランドの人気スターとして頑張っていただきましょう!」
「ギャアアアッ!!」
大きく翼を広げる。
観客席から盛大な拍手。
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その様子を見ていたジャイアンは、証明書をじーっと見つめていた。
「……いいなぁ。」
「欲しいならあげるよ。」
#朔夜が何気なく言う。
「マジで!?」
ジャイアンの目が一瞬で輝いた。
しかし。
「あっ、それはできません!」
司会が慌てて止める。
「飼育権は譲渡禁止となっております!」
「なんだよぉぉぉ!
ジャイアンはその場に膝をついた。
「俺も空飛ぶ恐竜欲しかったぁぁ!」
「飛べないじゃん。」
#朔夜が即座に返す。
「そこじゃねぇ!」
会場は爆笑。
「ジャイアン、諦めなよ。」
スネ夫が笑った、その時。
「ブオォォォ――!!」
ブラキオサウルスが長い首を伸ばし、スネ夫をひょいと持ち上げた。
「うわあああああっ!?」
気付けばスネ夫は地上十数メートル。
「た、助けてぇぇぇ!」
「アハハハハ!」
「ブラキオサウルスも遊んでる!」
観客席はさらに大盛り上がり。
ジャイアンは大笑いしながら指を差す。
「スネ夫ー! 景色はどうだー!」
「笑ってないで降ろしてよぉぉ!」
その声にブラキオサウルスは嬉しそうに鳴き、ゆっくりとスネ夫を地面へ降ろした。
会場は最後まで笑い声に包まれる。
こうして恐竜レースは大盛況のうちに幕を閉じた。
しかし――。
ドリーマーズランドでの二泊三日の旅は、まだ一日目。
彼らの大冒険は、まだまだこれからだった。