ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百六話

恐竜レースを終えた一行は、夕焼けに染まるドリーマーズランドを後にし、宿泊先であるホテルへ戻ってきた。

「いやぁー! 腹減ったぁ!」

真っ先に叫んだのはジャイアンだった。

「お前、レース中も食うことしか考えてなかっただろ」

スネ夫が呆れたように肩をすくめる。

「失礼な! ちゃんと優勝も狙ってたぞ!」

「結果は?」

「……聞くな。」

ブラキオサウルスを思い出したのか、ジャイアンは悔しそうに唸る。

その様子を見て、皆が笑った。

ホテルのレストランは昼間とは違い、落ち着いた雰囲気に包まれていた。

テーブルへ案内されると、それぞれが思い思いにメニューを開く。

「ぼく、このハンバーグ!」

「僕はステーキ!」

「スイーツセットも付けようかなぁ。」

「ドラえもん、それ絶対食べ過ぎだよ。」

賑やかな声が飛び交う中、#朔夜だけは静かにパンフレットを取り出していた。

「#朔夜、何頼むの?」

しずかに尋ねられ、

「……これ。」

指差したのは和風御膳。

「渋いねぇ。」

「好きだから。」

短く答え、再びパンフレットへ視線を落とした。

今日一日は恐竜の星。

では明日はどこへ行こうか。

ドリーマーズランドは広い。

恐竜の星以外にも、まだ数え切れないほどのエリアが存在している。

ページをめくる。

童話の国。

西部の町。

宇宙アトラクション。

海底王国。

そして——。

[newpage]

『忍者になろう!』

大きく書かれた見出しが目に留まった。

#朔夜はそのページで手を止める。

紹介文にはこう書かれていた。

『忍術修行を体験!』

『手裏剣や吹き矢に挑戦!』

『忍者屋敷を突破し、一流忍者を目指そう!』

「……」

料理が運ばれてきても、#朔夜は静かに紹介文を読み続けていた。

そんな様子を横から覗き込んだジャイアンが、嫌そうな顔をする。

「あー、そこか。」

続いてスネ夫も覗き込み、

「あぁ……忍者ね。」

二人とも何とも言えない表情だった。

「行ったことあるの?」

のび太が尋ねる。

「ある。」

ジャイアンが即答する。

「前の時にな。」

「でもよぉ……。」

腕を組み、大きくため息を吐いた。

「難しすぎるんだよ!」

「そうそう!」

スネ夫も力強く頷く。

「音を立てるなとか、隠れろとか、敵に見つかるなとか!」

「忍者屋敷も罠だらけでよ!」

「気付いたら失敗してるんだ。」

「全然忍者になれねぇ!」

二人は同時に肩を落とした。

どうやら相当苦い思い出らしい。

「だからオレ達はおすすめしねぇ!」

ジャイアンが断言する。

「西部の町の方が百倍楽しいぜ!」

[newpage]

しかし。

「……そう。」

#朔夜は淡々と返事をしただけだった。

「え?」

「難しいんだ。」

「そりゃ難しいさ!」

「そう。」

パンフレットを閉じる。

「明日はここへ行くよ。」

「「えぇっ!?」」

思わずジャイアンとスネ夫が声を揃えた。

「なんで!?」

「難しいから。」

「普通逆だろ!」

ジャイアンが頭を抱える。

「やめとけって!」

「忍者になるの、結構大変なんだから!」

「そう。」

それでも#朔夜の考えは変わらない。

むしろ難しいと聞いたことで、興味が深まったようだった。

「まぁ……#朔夜なら何とかしそうだけど。」

ドラえもんが苦笑する。

「確かに。」

トウマも納得するように頷いた。

「#朔夜なら忍者っぽいもんね。」

「そう?」

「気配消すの上手いし。」

「確かに!」

のび太まで納得してしまう。

「いや、それ褒めてるのか?」

アキノリが笑う。

そんな賑やかな夕食は、笑い声の絶えないまま終わっていった。

[newpage]

翌朝。

まだ太陽が昇りきらない時間。

ホテルの廊下を、二つの小さな影がこっそり歩いていた。

「静かにね。」

「うん。」

しずかとナツメである。

二人は周囲を確認すると、カードキーで#朔夜の部屋を開けた。

音を立てないよう慎重に扉を閉める。

ベッドでは#朔夜が静かに眠っていた。

「まだ寝てる。」

「起こそ。」

二人は忍び足で近付き、そっと肩へ手を伸ばす。

ゆさ。

ゆさゆさ。

「#朔夜。」

「起きて。」

すると。

「……何。」

目を閉じたまま声が返ってきた。

「「きゃっ!?」」

二人は同時に飛び退く。

#朔夜はゆっくり目を開けた。

「起きてたの?」

「入ってきた時から。」

「えっ!?」

「鍵、開いた音。」

さらりと言う。

「それなら声かけてよ!」

ナツメが頬を膨らませる。

「様子を見てた。」

「怖いよ!」

しずかまで苦笑する。

#朔夜は身体を起こした。

「……それで?」

こんな朝早くに来た理由を尋ねる。

しずかとナツメは顔を見合わせると、にっこり笑った。

[newpage]

「今日は人気アトラクションへ行くの!」

「白雪姫!」

「朝一じゃないと混むから!」

「だから迎えに来たの。」

「……白雪姫。」

#朔夜は首を傾げる。

「うん!」

「それとね。」

二人はどこか期待に満ちた笑みを浮かべた。

「#朔夜に可愛い服着てもらいたいの!」

「……?」

一瞬、思考が止まる。

「絶対似合うから!」

「ボーイッシュなのもいいけど、一回見てみたい!」

熱弁する二人。

その時。

「おはよー。」

部屋の扉が開き、アヤメが顔を出した。

「……何してるの?」

事情を聞いたアヤメは、少し困ったように笑う。

「本人の意思は?」

「あっ。」

二人が固まる。

勢いだけで来てしまったらしい。

三人の視線が#朔夜へ集まる。

しばらく沈黙。

やがて#朔夜は小さく息を吐き、

「……別に。」

「着てもいい。」

「「やったー!!」」

しずかとナツメはハイタッチ。

一方アヤメは、

(……完全に着せ替え目的だったんだ。)

と苦笑するしかなかった。

こうして二日目の朝は、女子三人——いや、#朔夜を含めれば四人——の妙な盛り上がりと共に始まる。

 

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