ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

110 / 165
#百十話

ミステリートレインで訪れたドリーマーズランド、最終日。

ホテルで朝食を済ませた一行は、それぞれ興味のあるアトラクションへ散っていく。

「じゃあ行ってくる」

#朔夜が向かったのは、昨日から決めていた"忍者の星"だった。

同行するのはアキノリとトウマの二人だけ。

ドラえもんは当然のように、

「のび太君! そっちは違うよ!」

「待ってよドラえも〜ん!」

今日も今日とて、のび太のお守り役である。

ジャイアンとスネ夫はというと、

「オレ達はもう行ったからいい。」

「そうそう。あそこ結構難しいんだよ。」

以前訪れた経験から別行動を選んでいた。

「また後でな!」

二人は手を振り、別のエリアへ消えていく。

「しかし意外だった。」

忍者の星へ向かう途中、#朔夜がトウマを見る。

「トウマもこういうの好きなんだ。」

「好きだよ?」

トウマは当然と言わんばかりに頷く。

「侍とか忍者とか陰陽師とかさ。ああいう和風の格好いいの好きなんだ。」

「厨二病とも言う。」

「言うな。」

即座に返ってくる。

アキノリが吹き出した。

「いやでも分かるぞ。俺も神社の家だからな。」

「神社?」

「妖術の参考になるかもしれねぇし。」

そう言ってパンフレットを見せる。

『忍術・妖術体験』

「へぇ。」

#朔夜も少し興味を示した。

妖術という単語だけなら、自分も最近は嫌というほど関わっている。

もちろん理由は違うが。

「忍者も妖怪退治とかしてたのかな。」

「してそう。」

「なんか似合うな。」

三人は笑いながら忍者の星へ到着した。

目の前に広がるのは、本物さながらの忍びの里。

木造の屋敷。

石垣。

竹林。

屋根の上には瓦が並び、小川まで流れている。

[newpage]

「雰囲気ある。」

#朔夜が辺りを見渡す。

入口には受付の忍者姿のキャストが待っていた。

「ようこそ、忍者の星へ!」

「まずは忍び装束へ着替えていただきます!」

案内され、更衣室へ。

数分後。

最初に出てきたのはトウマ。

黒い忍装束に身を包み、満足そうにポーズを決める。

「どう?」

「普通。」

「普通かぁ。」

続いてアキノリ。

「お、意外と悪くない。」

巫女や神主とは違うが、不思議と違和感はない。

そして最後。

#朔夜が暖簾をくぐった瞬間。

二人は固まった。

「……。」

「……。」

黒を基調とした忍装束。

腰には模造刀。

腕当て。

脚絆。

短くまとめた髪。

中性的な顔立ち。

必要以上の装飾が無いからこそ、その雰囲気が際立つ。

「…………。」

最初に口を開いたのはアキノリだった。

「なんか悔しい。」

「何が。」

「似合いすぎ。」

トウマも何度も頷く。

「映画とかに出てきそう。」

「そう?」

本人は全く自覚が無い。

キャストまで思わず感心していた。

「お客様、とてもお似合いですね。」

「ありがとうございます。」

「忍者役で出演できそうですよ。」

「それは遠慮します。」

即答だった。

装束へ着替え終えた一同は、まず基礎講習を受ける。

「忍者とは、力任せではありません。」

キャストが一本の苦無を持ち上げる。

「知恵、技術、観察力。」

「これらを駆使して任務を遂行する存在です。」

壁には様々な忍具が並んでいた。

クナイ。

手裏剣。

[[rb:撒菱 > まきびし]]。

鎖鎌。

煙玉。

水蜘蛛。

「意外と種類ある。」

#朔夜が呟く。

「クナイは本来、万能工具。」

「手裏剣は牽制。」

「撒菱は追跡阻止。」

一本一本、用途を説明していく。

アキノリは目を輝かせながら聞いていた。

「へぇ……。」

「妖術にも応用できそう。」

「そこなのか。」

トウマが呆れる。

説明が終わると、最初の体験が始まった。

[newpage]

「それでは、的当て大会です!」

歓声が上がる。

他の参加者も続々集まり始めた。

どうやら人気のイベントらしい。

「距離は十メートル!」

「手裏剣を五枚投げていただきます!」

#朔夜も手裏剣を受け取る。

軽い。

だが重心が独特だった。

「弓とは違うな。」

弓は引く。

こちらは回転させて投げる。

全く感覚が違う。

「それでは!」

「始め!」

次々と飛ぶ手裏剣。

カン!

カン!

的へ刺さる音が響く。

トウマは三枚命中。

「惜しい!」

アキノリは二枚。

「思ったより難しい!」

#朔夜も投げる。

シュッ!

一枚目。

外れ。

二枚目。

端を掠める。

三枚目。

命中。

四枚目。

外れ。

五枚目。

命中。

「二枚!」

キャストが声を上げる。

「お見事です!」

「……。」

#朔夜は少し首を傾げた。

思ったより当たらない。

弓ならもっと当てられる。

「回転が安定してませんね。」

キャストが笑顔でアドバイスする。

「クナイも手裏剣も、力より手首です。」

「なるほど。」

素直に納得する。

武器が違えば扱い方も違う。

当然のことだった。

[newpage]

「弓の方が得意そうだな。」

トウマが笑う。

「そうみたい。」

「珍しく苦戦してるじゃん。」

アキノリまで笑う。

「万能じゃない。」

「そこが人間らしくて安心する。」

「失礼だな。」

三人は顔を見合わせて笑った。

その時だった。

パンパン、と手を叩く音が響く。

「皆さん、お疲れ様でした!」

キャストが全員を集める。

「次はいよいよ、忍者修行の本番です。」

参加者達がざわつく。

「忍者に必要なのは武器だけではありません。」

「走る。」

「跳ぶ。」

「登る。」

「そして隠れる。」

「その全てを使った移動術を体験していただきます。」

トウマが目を輝かせる。

「来た!」

アキノリも嬉しそうだ。

「これが本命。」

そして#朔夜もまた、小さく口元を緩めていた。

昨日パンフレットを読んだ時、一番興味を惹かれたのがこれだった。

障害物を駆け抜ける忍びの移動術。

果たして、自分はどこまで通用するのか。

そんな期待を胸に抱きながら、三人は次なる修行場へと足を踏み入れるのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。