ミステリートレインで訪れたドリーマーズランド、最終日。
ホテルで朝食を済ませた一行は、それぞれ興味のあるアトラクションへ散っていく。
「じゃあ行ってくる」
#朔夜が向かったのは、昨日から決めていた"忍者の星"だった。
同行するのはアキノリとトウマの二人だけ。
ドラえもんは当然のように、
「のび太君! そっちは違うよ!」
「待ってよドラえも〜ん!」
今日も今日とて、のび太のお守り役である。
ジャイアンとスネ夫はというと、
「オレ達はもう行ったからいい。」
「そうそう。あそこ結構難しいんだよ。」
以前訪れた経験から別行動を選んでいた。
「また後でな!」
二人は手を振り、別のエリアへ消えていく。
「しかし意外だった。」
忍者の星へ向かう途中、#朔夜がトウマを見る。
「トウマもこういうの好きなんだ。」
「好きだよ?」
トウマは当然と言わんばかりに頷く。
「侍とか忍者とか陰陽師とかさ。ああいう和風の格好いいの好きなんだ。」
「厨二病とも言う。」
「言うな。」
即座に返ってくる。
アキノリが吹き出した。
「いやでも分かるぞ。俺も神社の家だからな。」
「神社?」
「妖術の参考になるかもしれねぇし。」
そう言ってパンフレットを見せる。
『忍術・妖術体験』
「へぇ。」
#朔夜も少し興味を示した。
妖術という単語だけなら、自分も最近は嫌というほど関わっている。
もちろん理由は違うが。
「忍者も妖怪退治とかしてたのかな。」
「してそう。」
「なんか似合うな。」
三人は笑いながら忍者の星へ到着した。
目の前に広がるのは、本物さながらの忍びの里。
木造の屋敷。
石垣。
竹林。
屋根の上には瓦が並び、小川まで流れている。
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「雰囲気ある。」
#朔夜が辺りを見渡す。
入口には受付の忍者姿のキャストが待っていた。
「ようこそ、忍者の星へ!」
「まずは忍び装束へ着替えていただきます!」
案内され、更衣室へ。
数分後。
最初に出てきたのはトウマ。
黒い忍装束に身を包み、満足そうにポーズを決める。
「どう?」
「普通。」
「普通かぁ。」
続いてアキノリ。
「お、意外と悪くない。」
巫女や神主とは違うが、不思議と違和感はない。
そして最後。
#朔夜が暖簾をくぐった瞬間。
二人は固まった。
「……。」
「……。」
黒を基調とした忍装束。
腰には模造刀。
腕当て。
脚絆。
短くまとめた髪。
中性的な顔立ち。
必要以上の装飾が無いからこそ、その雰囲気が際立つ。
「…………。」
最初に口を開いたのはアキノリだった。
「なんか悔しい。」
「何が。」
「似合いすぎ。」
トウマも何度も頷く。
「映画とかに出てきそう。」
「そう?」
本人は全く自覚が無い。
キャストまで思わず感心していた。
「お客様、とてもお似合いですね。」
「ありがとうございます。」
「忍者役で出演できそうですよ。」
「それは遠慮します。」
即答だった。
装束へ着替え終えた一同は、まず基礎講習を受ける。
「忍者とは、力任せではありません。」
キャストが一本の苦無を持ち上げる。
「知恵、技術、観察力。」
「これらを駆使して任務を遂行する存在です。」
壁には様々な忍具が並んでいた。
クナイ。
手裏剣。
[[rb:撒菱 > まきびし]]。
鎖鎌。
煙玉。
水蜘蛛。
「意外と種類ある。」
#朔夜が呟く。
「クナイは本来、万能工具。」
「手裏剣は牽制。」
「撒菱は追跡阻止。」
一本一本、用途を説明していく。
アキノリは目を輝かせながら聞いていた。
「へぇ……。」
「妖術にも応用できそう。」
「そこなのか。」
トウマが呆れる。
説明が終わると、最初の体験が始まった。
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「それでは、的当て大会です!」
歓声が上がる。
他の参加者も続々集まり始めた。
どうやら人気のイベントらしい。
「距離は十メートル!」
「手裏剣を五枚投げていただきます!」
#朔夜も手裏剣を受け取る。
軽い。
だが重心が独特だった。
「弓とは違うな。」
弓は引く。
こちらは回転させて投げる。
全く感覚が違う。
「それでは!」
「始め!」
次々と飛ぶ手裏剣。
カン!
カン!
的へ刺さる音が響く。
トウマは三枚命中。
「惜しい!」
アキノリは二枚。
「思ったより難しい!」
#朔夜も投げる。
シュッ!
一枚目。
外れ。
二枚目。
端を掠める。
三枚目。
命中。
四枚目。
外れ。
五枚目。
命中。
「二枚!」
キャストが声を上げる。
「お見事です!」
「……。」
#朔夜は少し首を傾げた。
思ったより当たらない。
弓ならもっと当てられる。
「回転が安定してませんね。」
キャストが笑顔でアドバイスする。
「クナイも手裏剣も、力より手首です。」
「なるほど。」
素直に納得する。
武器が違えば扱い方も違う。
当然のことだった。
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「弓の方が得意そうだな。」
トウマが笑う。
「そうみたい。」
「珍しく苦戦してるじゃん。」
アキノリまで笑う。
「万能じゃない。」
「そこが人間らしくて安心する。」
「失礼だな。」
三人は顔を見合わせて笑った。
その時だった。
パンパン、と手を叩く音が響く。
「皆さん、お疲れ様でした!」
キャストが全員を集める。
「次はいよいよ、忍者修行の本番です。」
参加者達がざわつく。
「忍者に必要なのは武器だけではありません。」
「走る。」
「跳ぶ。」
「登る。」
「そして隠れる。」
「その全てを使った移動術を体験していただきます。」
トウマが目を輝かせる。
「来た!」
アキノリも嬉しそうだ。
「これが本命。」
そして#朔夜もまた、小さく口元を緩めていた。
昨日パンフレットを読んだ時、一番興味を惹かれたのがこれだった。
障害物を駆け抜ける忍びの移動術。
果たして、自分はどこまで通用するのか。
そんな期待を胸に抱きながら、三人は次なる修行場へと足を踏み入れるのであった。