ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百十三話

「先生!」

城を飛び出した#朔夜、アキノリ、トウマの三人は、そのまま忍者講師の待つ広場まで駆け戻ってきた。

息を切らせたアキノリが、白紙の巻物を差し出す。

「これ……何も書いてありません!」

「もしかして失敗でしたか?」

トウマも不安そうな表情を浮かべる。

講師は巻物を受け取ると、ゆっくりと広げた。

そこには、やはり何も書かれていない。

真っ白だった。

「……ふむ。」

講師は満足そうに頷いた。

「うむ。それで正解でござる。」

「「「えっ?」」」

三人の声が綺麗に重なった。

「正解?」

アキノリが思わず聞き返す。

「この巻物は、昔より代々受け継がれてきた"無字の巻物"でござる。」

「無字……?」

「忍びの修行に終わりはない。」

講師は静かに巻物を閉じる。

「技は誰かから教わるものではなく、自ら学び、自ら磨き、自ら積み重ねていくもの。故に、この巻物には最初から何も書かれていないのでござる。」

三人は静かに耳を傾ける。

「これから先を書き記すのは、自分自身。」

講師は三人を順番に見回した。

「今日の試験で、お主らは十分それを証明してみせた。」

そう言うと懐から三枚の木札を取り出す。

木目の美しい札には、それぞれ龍の紋章が刻まれていた。

「上級忍者認定証でござる。」

「やった!」

トウマが思わず声を上げる。

アキノリも嬉しそうに札を受け取った。

「これ、神社に飾ろうかな……。」

#朔夜も受け取る。

龍の紋章を指先でなぞる。

重みは軽い。

しかし、その価値は決して軽くなかった。

「また修行に来るでござるよ。」

講師が笑う。

「忍びの道は、一日にして成らず。」

三人は揃って頭を下げた。

「ありがとうございました!」

[newpage]

ホテルへ戻る頃には、昼を少し過ぎていた。

ロビーへ入ると、

「あっ!」

ナツメが真っ先に手を振る。

「帰ってきた!」

「おーい!」

しずかやドラえもん達も集まってきた。

「どうだった?」

「楽しかった?」

質問が一斉に飛ぶ。

トウマは待ってましたと言わんばかりに身を乗り出した。

「聞いてくれよ!」

「城に潜入したんだ!」

「え?」

「衛兵が巡回してる本格的な城!」

「忍者みたいに屋根の上走って!」

「天井にも張り付いて!」

「最後は罠を見抜いて宝箱を取ったんだ!」

興奮気味に話すトウマ。

ジャイアンとスネ夫の表情が少しずつ変わっていく。

「……え?」

「そんな簡単に?」

「うん。」

「最終試験。」

その一言で二人は固まった。

「うそだろ……。」

スネ夫が青ざめる。

「去年はそんな簡単じゃなかったぞ!」

「俺達、途中で捕まっちまったからな……。」

ジャイアンも額を押さえる。

「もったいねぇことした……。」

「だから言ったじゃない。」

しずかが苦笑する。

「最後までやった方がいいって。」

「うぐっ……。」

「ぐぬぬ……。」

二人は本気で後悔していた。

その様子を見て皆が笑う。

 

 

夕方。

帰る支度が始まる。

旅行鞄へ土産をしまっていく。

恐竜レースのキーホルダー。

忍者認定証。

記念写真。

パンフレット。

それぞれ三日間の思い出だった。

#朔夜も静かに荷物をまとめていく。

その途中、

ふと一枚のパンフレットが目に入った。

『ドリーマーズランド』

表紙にはペガサスが描かれている。

「……。」

楽しかった。

恐竜。

童話。

忍者。

どれも初めての経験だった。

だが。

『君は何者?』

頭の奥で、その言葉だけが蘇る。

アヤメが口にした、あの一言。

本人は覚えていなかった。

今も普段通り笑っている。

考え過ぎなのかもしれない。

「……。」

#朔夜は静かにパンフレットを鞄へしまった。

答えはまだ出ない。

[newpage]

やがて発車時刻。

ホームにはスタッフ達が並んでいた。

恐竜の着ぐるみ。

童話のキャスト。

忍者講師までいる。

「ありがとうございました!」

「また遊びに来てください!」

大きく手を振る。

列車の汽笛が鳴った。

ゆっくりとミステリートレインが動き始める。

「また来たいね!」

ナツメが窓を開けて叫ぶ。

「次は西部劇の星かな!」

「宇宙海賊の星も面白そうだったぞ。」

「全部回るには何日必要なんだろうね。」

楽しそうな会話が続く。

車窓の向こうでは、小惑星群に広がるドリーマーズランドが少しずつ遠ざかっていく。

恐竜達の姿も、

ペガサス達の群れも、

忍者の城も、

やがて星空へ溶けていった。

「……楽しかった。」

#朔夜が小さく呟く。

その声にナツメが笑う。

「でしょ?」

「ああ。」

短い返事だった。

だが、その一言に三日間の思い出が詰まっていた。

こうしてミステリートレインの旅は終わりを迎える。

笑って、

遊んで、

競い合い、

少しだけ成長した三日間。

しかし誰も知らない。

あの旅で交わされた、たった一つの不可解な問いが――。

[chapter:『君は何者?』]

そして誰も気づかない。足元を小さな蜘蛛が横切ったことを。

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