ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百十七話

水木しげる記念館での見学を終え、一行は入口前へと集まっていた。

「全員いるな?」

先生が名簿を見ながら点呼を取る。

名前を呼ばれるたびに、生徒達が返事を返していく。

「よし。じゃあ駅までバスで移動するぞ。」

生徒達はそれぞれ荷物を持ち、停車していた観光バスへ乗り込んでいった。

車内は年季の入った造りで、座席の布地もどこか色褪せている。

天井の蛍光灯は時折、

チカ……。

と小さく明滅していた。

「このバス、古そうだね。」

誰かが苦笑すると、運転手がミラー越しに笑う。

「ははは。長い付き合いの相棒ですから。まだまだ現役ですよ。」

その言葉に、生徒達も安心したように笑った。

その一方で――。

「今日は本当に申し訳ありませんでした。」

社会科教師が小さく頭を下げる。

その相手は島之内先生だった。

「展示に夢中になる気持ちは分かります。」

島之内先生は苦笑しながら答える。

「ですが、引率は先生の仕事です。生徒から目を離してはいけません。」

「返す言葉もありません……。」

しょんぼりと肩を落とす社会科教師。

その様子を見た生徒達が小さく笑う。

「先生、また怒られてる。」

「さっきもだったよね。」

「ざまぁない。」

#朔夜も思わず口元を緩めた。

いつもは頼りになる先生も、今日は少しだけ情けなく見えた。

バスがゆっくりと走り始める。

窓の外では、妖怪のブロンズ像が次々と後ろへ流れていった。

しばらくすると、隣の席から声が掛かった。

「#朔夜君。」

アヤメだった。

「今日はいっぱいメモ取ってたね。」

「自由研究の参考になるかなって。」

「真面目だね。」

「アヤメちゃんは?」

「私は見るのに夢中だったかな。」

二人がそんな話をしていると、

「姫。」

低い声が割って入る。

ハルヤだった。

「そろそろ水分を。」

「え? うん。」

アヤメはバッグから水筒を取り出す。

「ありがとう。」

ハルヤは静かに頷く。

#朔夜はその様子を見て、小さく首を傾げた。

(姫、か。)

さっきからずっとそう呼んでいる。

しかも、少し話そうとするたびに間へ入ってくる。

(……仲がいいんだな。)

いや。

仲がいいというより。

(好きなのかな。)

好きな子が知らない男子と話しているのが気になる。

そんな風にも見えた。

(まあ、そういう年頃か。)

#朔夜は一人で納得した。

そんなことなど露知らず、ハルヤは窓の外を警戒するように眺め続けていた。

バスは一定の速度で走り続ける。

ガタ、ガタン。

古い車体が細かく揺れる。

心地よい振動。

冷房の涼しさ。

歩き回った疲れ。

少しずつ、瞼が重くなっていく。

(……眠い。)

朔夜は軽く欠伸をした。

ぼんやりと車内を見回す。

[newpage]

前の席。

後ろの席。

窓際。

その時だった。

数列前に座る、一人の青年が目に入る。

黒髪。

どこか冷たい雰囲気。

(……あれ。)

どこかで見たような。

今日だったか。

昨日だったか。

思い出そうとしても、頭が働かない。

少年は窓の外を見ていた。

こちらには気付いていないように見える。

(誰だったかな……。)

考えようとしたところで、またバスが揺れた。

ガタン。

その振動に合わせるように、意識もゆっくりと沈んでいく。

(……まあ、いいか。)

瞼が閉じた。

[newpage]

その様子を、数列前の青年――石動零は横目で確認する。

(眠ったか。)

小さく息を吐く。

(神卸しを成した者……。)

間違いない。

だが、この場で接触するべきではない。

そう判断し、再び前を向いた。

その瞬間。

チカ。

車内の照明が一度だけ点滅した。

「また消えそう。」

誰かが笑う。

運転手も苦笑しながら言う。

「すみませんねぇ。この照明、たまに機嫌が悪くなるんですよ。」

車内には、まだ和やかな空気が流れていた。

しかし。

零だけは静かに目を細める。

(違う。)

照明の異変ではない。

もっと別の――。

チカ、チカ……。

明滅の間隔が短くなる。

誰かが顔を上げた。

「え?」

その直後。

パンッ。

小さな破裂音とともに、車内の照明が一斉に落ちた。

窓の外の景色さえ見えないほどの闇が、バスの中を包み込んだ_。

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