ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百二十三話。

夕暮れの光が、有星神社の鳥居を朱色に染めていた。蝉の声はすでに途絶え、代わりに秋の虫が静かに鳴き始めている。境内の奥、拝殿の裏手に回り込むと、木々に隠れるようにして小さなプレハブ小屋が建っていた。

それが妖怪探偵団の“事務所”だった。

「……ここで合ってるよね」

#朔夜は周囲を見回しながら、扉の前で足を止める。外観は簡素で、工具置き場と間違えられてもおかしくない。しかし中からは明かりが漏れていた。

ノックすると、すぐに中から声がした。

「入っていいよー」

アキノリの声だった。

扉を開けると、狭い室内には簡易の机とホワイトボード、そして大量の付箋が貼られていた。ホワイトボードには、乱雑な字でこう書かれている。

《行方不明事件・調査中》

その前にアキノリとトウマが並んで立っていた。

「呼び出してごめん。ちょっと急ぎの話があるんだ」

アキノリは真面目な顔でそう切り出した。

「最近、この辺りで行方不明が増えてるのは知ってる?」

#朔夜は首を横に振る。

「ニュースにはなってないけど……」

アキノリはそう言って、スマホを机に置いた。画面には掲示板サイトのようなものが表示されている。

《うすらぬら》

妖怪や都市伝説、不可解な事件が書き込まれる匿名サイトだった。

「ここに投稿がいくつかあるんだよ」

トウマが少し身を乗り出しながら説明する。いつもより落ち着いた声で、しかしどこか慎重な響きがあった。

「共通点があるらしいんだ。失踪した人たち……全員、“顔がいい男性”っていう話でさ」

#朔夜は一瞬言葉に詰まる。

「……イケメンってこと?」

「そういう言い方になるね」

アキノリが頷く。

「年齢もバラバラ。でも、写真が出てる人はみんな整った顔立ちだった」

沈黙が落ちた。

「だからって僕を呼ぶのはどうなの」

#朔夜が呆れたように言うと、アキノリはわずかに視線を逸らした。

「……いや、その」

言いにくそうにしながらも、結局ははっきり告げる。

「#朔夜って、そういう意味では……かなり目立つからさ」

「は?」

「中性的っていうか、目を引く顔立ちだし」

トウマがフォローするように言った。

「ごめんね、嫌な言い方に聞こえたら。でも、囮として動ける人が必要なんだ」

#朔夜は小さく息を吐く。

「まあ、いいけど」

アキノリはすぐにもう一人の名前を出した。

「トウマも一緒に出てもらう。二人なら、分散して動けるし」

「僕も行くよ」

トウマは少しだけ笑って頷いた。

「#朔夜一人に任せるのは不安だし……できる範囲で手伝う」

その言葉に、室内の空気が少しだけ緩む。

やがて話は具体的な行動に移った。

[newpage]

夕暮れのサクラニュータウン。

新興住宅地の区画は整っているが、人通りは少ない。電柱の影が長く伸び、街全体がゆっくりと夜へ沈んでいく。

「この辺、意外と静かだね」

トウマが周囲を見ながら言った。

「うん。逆にこういう場所の方が、目立たない」

#朔夜は軽く周囲を確認しながら歩く。人気の少ない道、細い路地、街灯の死角。行方不明が起きるには十分すぎる条件だった。

「とりあえず今日は分かれて動くんだよね?」

トウマが確認するように言う。

「うん。怪しい動きがあれば合図するから」

「了解。……無理はしないでね」

二人は別の方向へ視線を向ける。

そのときだった。

「おーい」

軽い声が響いた。

振り向くと、道の向こうから二人の姿が近づいてくる。

酒呑ハヤトと、姫乃アヤメだった。

「こんな時間に何しているんだ?」

ハヤトが不思議そうに言う。

「ちょっと調べ物だよ」

#朔夜は即座に答える。

アヤメは#朔夜を見て、わずかに目を細めた。

「……また厄介ごと?」

「まあ、そんなところ」

軽い会話のはずなのに、アヤメの視線だけが一瞬だけ鋭くなる。

しかしそれもすぐに消えた。

「気をつけてね。最近行方不明が多いって聞くし。」

その言葉は途中で途切れた。

四人の間に短い沈黙が落ちる。

やがてハヤトが肩をすくめた。

「じゃ、俺たちはこっち行く。姫、早く帰りましょう」

「うん」

二人は去っていく。

#朔夜はその背中を見送ったまま、しばらく動けなかった。

[newpage]

夜。

サクラニュータウンに街灯が灯り始める頃、スマホが静かに震えた。

アキノリからの通知。

《うすらぬら更新》

#朔夜は画面を開く。

そこには新しい書き込みがあった。

――『誘拐されかけた』

短い投稿。

場所や詳細は書かれていない。

だが、それはこの町のどこかで“何か”が起きた証拠だった。

#朔夜は息を止める。

そのとき、少し遅れてトウマからも連絡が入る。

《今の投稿、見た?》

同時に、別ルートで動いていたアキノリも現れる。

三人は路地の角で自然と合流した。

互いに顔を見合わせる。

誰も冗談を言わなかった。

「……本当に出たな」

アキノリが低く呟く。

「これ、偶然じゃないと思う」

トウマの声も真剣だった。

#朔夜は夜の街を見渡す。

さっきまで普通に見えていた住宅街が、少しだけ違って見えた。

誰かが見ているような気配。

どこかで息を潜めているような空気。

「明日、詳しく聞き込みだね」

アキノリが言う。

誰も異論は出さなかった。

夜は完全に落ち、街は静寂に包まれる。

その静けさの奥で、何かが確かに動き始めていた。

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