ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百二十四話

放課後の有星神社。拝殿裏の木々を抜けた先にあるプレハブ小屋には、いつも通り妖怪探偵団の面々が集まっていた。

#朔夜が扉を開けると、狭い室内には既にアキノリとトウマが待っていた。

「来たね」

アキノリが軽く手を上げる。

昨日はいなかったナツメとケータも、今日は同席していた。

「昨日はちょっと家の用事でさ」

ケータが頭を掻きながら言う。

「私は弟の世話でね。ちょっとバタバタしてたの」

ナツメはそう言って軽く笑った。

#朔夜は「そういう日もあるか」と小さく頷く。

机の上にはアキノリのスマホが置かれていた。画面には件の掲示板《うすらぬら》が開かれている。

「昨日の件、続きだよ」

アキノリがそう切り出す。

「“誘拐されかけた”って書き込み、あれ投稿者と連絡取れた」

「もう?」

#朔夜が眉を上げると、アキノリは当然のように答えた。

「DMでね。すぐ返事来た」

「軽ッ……」

トウマが苦笑する。

「で、その人来るって?」

「今からここ来るらしい」

その言葉に一瞬、室内が静かになる。

やがて扉が勢いよく開いた。

「どうもー!!」

入ってきたのはスマホ片手の男だった。

明るい茶髪に軽いジャケット。いかにも“配信者”といった風貌。

「チャラトミでーす!!今日は妖怪探偵団に潜入ってことで!」

スマホのカメラが一斉に回る。

[newpage]

「ちょっと待て」

#朔夜が即座に手を伸ばしてスマホを押さえる。

「撮影やめてください」

「えー?これ絶対バズるでしょ!」

「バズる前に話をしてください」

アキノリがため息をつく。

「いやマジで助かったわ、呼び出し」

チャラトミは妙に満足げに笑う。

「妖怪探偵団とか、ネタとして最高っしょ。昔見たことある気がするし!」

「いやそれ別作品の記憶じゃね?」

ケータがツッコむが、本人は気にしていない。

ナツメは腕を組んで軽く息を吐いた。

「……とりあえず、話は聞くわよ」

「了解っす!」

ようやくチャラトミはソファに座った。

彼の体験談はこうだった。

「コンビニの帰りっすよ」

夜道、ゴミ箱の前に“それ”はいたという。

「犬かなって思ったんすよ。普通に」

だが近付いた瞬間、違和感が走る。

ゴミ箱を漁るその犬は、ゆっくりと振り返った。

そして――

顔が、おっさんだった。

「……は?」

#朔夜が思わず聞き返す。

「いやマジで。顔だけ完全に中年サラリーマンみたいなやつ」

空気が一瞬止まる。

チャラトミは続ける。

「そいつがさ、俺見てこう言ったんすよ」

[chapter:『なんだその顔ァ!!』]

[chapter:『腹立つ!!』]

[chapter:『イケメンなんか全員さらってやる!!』]

[chapter:『こっち来い!!』]

「……いや理不尽すぎない?」

トウマが小さく呟く。

「それで?」

#朔夜が問うと、チャラトミは肩をすくめた。

「全力で逃げました」

「そりゃそうだ」

ケータが即答する。

「追ってきたんすけど、途中で見失って……それで“うすらぬら”に書いた感じっすね」

[newpage]

アキノリはスマホを見ながら頷く。

「投稿内容と一致してる。間違いないね」

ナツメが軽く目を細める。

「つまり……ただの目撃情報が拡散されてたってこと?」

「そうなるか」

#朔夜は短く答えた。

室内に一瞬の沈黙。

その後、ケータがぽつりと呟く。

「人面犬じゃん」

アキノリも頷く。

「人面犬だな」

トウマも同意するように言う。

「人面犬だね……」

ナツメも静かに一言。

「人面犬ね」

#朔夜は最後に言った。

「人面犬だね」

全員一致。

チャラトミがスマホを構えようとする。

「いやこれ絶対バズ――」

「やめろ」

#朔夜とアキノリの声が重なる。

チャラトミは渋々スマホを下ろした。

「じゃあさ、これ妖怪案件ってことでいいんすよね?」

「まあ……そうなるな」

アキノリが答える。

#朔夜は立ち上がる。

「とりあえず、明日もう一回現場周辺を調べる」

「そうだね」

トウマが頷く。

ナツメも軽く拳を握る。

「軽い妖怪でも、放置はできないしね」

チャラトミはその様子を見ながら、ぽつりと呟いた。

「……なんか普通にちゃんとした組織じゃん」

誰も否定しなかった。

夕暮れが窓の外に沈んでいく。

有星神社の境内には、秋の虫の声が静かに広がっていた。

そしてその夜。

まだ誰も知らない場所で、人面犬はまた誰かの顔を見ていた。

[chapter:「……なんだその顔ァ」]

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