ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百二十六話

夕暮れの有星神社裏、プレハブの小屋には妖怪探偵団の面々が集まっていた。神社の境内から少し外れたその場所は、普段は物置として使われているだけの静かな空間だが、今は張り詰めた空気が漂っている。

「つまり、人面犬は一体じゃない可能性が高いってことだ」

アキノリがスマホの画面を操作しながら言う。そこには“うすらぬら”という匿名掲示板の投稿が並んでいた。ここ数日、サクラニュータウン周辺で続く行方不明騒ぎ。それに似た目撃情報が断片的に書き込まれている。

「共通点はイケメン……ってことだね」

ナツメが腕を組んで呟くと、ケータが妙に真剣な顔で頷いた。

「なら分かりやすいじゃん! 俺とトウマと朔夜で囮やればいいんだろ?」

「軽く言うなよ……」

トウマは苦笑しながらも、視線は真剣だった。今回の件は冗談では済まない空気がある。

#朔夜は小さく息を吐くと、静かに言った。

「三手に分かれた方がいい。近くにいすぎると、逆に寄ってこない可能性がある」

「……確かに」

 アキノリが頷く。

「群れってより、単独で狩ってる感じだ。なら、広く撒いた方が遭遇率は上がる」

そうして作戦は決まった。朔夜、トウマ、そしてケータを中心に、それぞれ別ルートでサクラニュータウンの裏道や人気の少ない場所を巡ることになった。

さらに、今回はチャラトミも同行していた。前日の件で事情を知っており、現場の状況を記録する役目を半ば強引に買って出た形だ。

「いや〜これ配信したらバズるやつでしょ!」

「やめろ、余計なことするな」

#朔夜が即座に制止するが、チャラトミは悪びれない。

「分かってるって! ちゃんと空気読む系配信者だから!」

その言葉に、ナツメとケータが微妙な顔をする。

「信用していいのかそれ……」

そんなやり取りを経て、一行は夕暮れの街へと散っていった。

[newpage]

日が傾き、サクラニュータウンの影が長く伸びる。トウマは人気のない路地裏をゆっくりと歩いていた。風が生温く、どこか湿った匂いが混じっている。

「……犬?」

ゴミ捨て場の前で、小さな影が動いた。

トイプードルのような毛並みの犬が、ゴミ箱を鼻先で漁っている。やせ細っているが、怯えた様子はない。ただ必死に何かを探しているようだった。

トウマは少しだけ迷い、そして一歩近づく。

「……大丈夫か?」

しゃがみ込むと、犬は一瞬だけこちらを見上げた。

つぶらな瞳。あまりにも普通の、ただの野良犬。

なのに。

胸の奥が、妙にざわついた。

(なんだ、この感じ……)

トウマが手を伸ばそうとした瞬間、犬はビクリと身体を震わせた。

そして、弾かれたように駆け出す。

「お、おい!」

追いかける間もなく、犬の姿は路地の奥へ消えた。

その直後だった。

空気が変わる。

さっきまでの湿った匂いとは違う、妙な気配。

トウマがゆっくりと振り返る。

そこにいた。

「見つけたぞ。コンチクショウ!」

人面犬。

犬の身体に、不気味な中年男性の顔が貼り付いたような異形が、路地の奥からこちらを覗いていた。

「どいつもこいつも!イケメンすぎるんだよ!」

「……っ!」

トウマは一歩後退する。

だが、人面犬は楽しむように鼻を鳴らした。

「逃げてもいいぞ。匂いはもう覚えたからな!」

次の瞬間、地面を蹴って飛びかかってきた。

「っ、くそ……!」

トウマは全力で駆け出した。

[newpage]

一方その頃、別ルートを歩いていたチャラトミは、完全に別の空気を感じていた。

「え、なんかここ……気温低くない?」

スマホを掲げながら歩いていると、画面が一瞬だけノイズを走らせる。

「圏外じゃないのに変だな……」

そのとき。

視界の端に、何かが“揺れた”。

電柱と電柱の間。細い糸のようなものが一瞬だけ光る。

「……?」

見上げた瞬間だった。

天井ではない、建物の隙間から、何かが垂れている。

白い糸。

その先に、黒い影。

「え、ちょ――」

それは人型に近いが、人ではない。

蜘蛛のような脚と、女の上半身を持つ異形。

「いい匂い……騒がしい人間……」

「いやいやいやいや待って待って無理無理無理!」

チャラトミは即座に踵を返し、全力で走り出した。

「助けてええええええ!!」

その叫びは、夕暮れの街に響いていった。

[newpage]

そしてプレハブ小屋付近。

アキノリの端末に通知が入る。

「……トウマから位置共有だ!」

ナツメとケータが顔を見合わせる。

#朔夜は短く息を吐き、立ち上がった。

「分かれよう。挟み込むんだ」

「了解!」

全員が動き出す。

[newpage]

ただ一人。

スマホを握ったまま、チャラトミだけがその場に取り残されていた。

「……え、俺は?」

返事はない。

遠くで、何かが跳ねる音がした。

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