ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百二十七話

「ギャウン!?」

間の抜けた悲鳴と共に、人面犬の身体が地面に崩れ落ちた。

#朔夜が何気なく投げた鉄パイプは、狙ったわけでもないのに綺麗に頭部へ直撃していた。

「……当たるんだ、それ」

ケータがぽつりと呟く。

人面犬はそのまま動かなくなり、場には一瞬の静寂が落ちた。

「終わった、のか?」

トウマが警戒を解かずに近づく。

だがその瞬間、人面犬の身体の“奥”から、黒い影のようなものがにじみ出た。

それは形を持たないまま、ふっと空へ引き寄せられるように浮かび上がる。

「……は?」

誰も反応できないまま、影はそのまま上空へと消えていった。

まるで最初から“そこに実体などなかった”かのように。

そして残された人面犬は、ただの犬のように地面へ伏しているだけだった。

「今の……何だよ」

アキノリが眉をひそめる。

しかし人面犬自身は意識を失っているのか、何も答えない。

「おい、これもう一回聞くぞ。お前何だったんだ?」

トウマがしゃがみ込み、低い声で問いかける。

先ほど野良犬に逃げられた件もあり、その声音にはいつもより苛立ちが混ざっていた。

だが人面犬は、ただ小さく息を吐くだけだった。

「ワン……」

「……はぁ」

ケータが肩をすくめる。

その場に、妙な空気だけが残る。

そこへ、慌ただしい足音が近づいてきた。

[newpage]

「やばいって!マジでやばいって!!」

青ざめた顔のチャラトミが、息を切らして飛び込んでくる。

「蜘蛛の妖怪が……!あれ、普通じゃないって!!」

「蜘蛛?」

#朔夜が視線を上げる。

だがチャラトミは説明を続ける余裕もなく、その場に膝をついた。

「……やばい、ほんと……俺、死ぬかと思った……」

そしてそのまま、力が抜けたように気絶した。

「また倒れた」

ケータが呆れる。

周囲にはすでに騒ぎを聞きつけた警察が近づいてきていた。

「有名人だしな、こいつは」

アキノリが適当に結論づける。

「いや放置すんなよ」

トウマが一応突っ込むが、結局誰も助け起こさない。

チャラトミはそのまま現場に残されることになった。

一行は人面犬が来た方向へと歩を進める。

しかし――。

[newpage]

「……行き止まりだな」

住宅街の裏路地、フェンスと塀に囲まれた袋小路だった。

「何もねぇじゃん」

ケータが不満げに言う。

だがアキノリはスマホを見つめていた。

「いや、妖魔レーダーはまだ反応してる」

「え?」

確かに、微弱な反応が途切れず残っている。

だがそこに“姿”はない。

「消えたわけじゃない……?」

#朔夜は静かに周囲を見渡す。

しかし空気はもう通常と変わらない。違和感だけが、置き去りにされたように残っていた。

そして人面犬が、ぽつりと呟く。

「……知らねぇよ」

「は?」

トウマが振り返る。

人面犬は、珍しく目を細めていた。

「俺とは関係ねぇ。俺とは別に動いてるヤツがいるってことだ。」

「じゃああれは何だ」

「知らねぇって言ってんだろ」

言い切ると同時に、それ以上は何も語らなかった。

まるでそれ以上“思い出すこと自体が嫌”であるかのように。

やがて警察の介入もあり、その場は解散となる。

騒ぎは収束し、人面犬も回収される。

しかし誰の中にも、すっきりした終わりはなかった。

帰り道。

沈黙のまま歩く中、朔夜はふと立ち止まる。

胸元の宝石が、微かに熱を帯びていた。

(さっきの……あれは何だった?)

黒い影。

形を持たず、意味も持たず、ただ消えた存在。

説明も、正体も、何もない。

#朔夜はゆっくりと息を吐く。

そしてスマートフォンを取り出した。

画面に、ひとつの名前を打ち込む。

#朔夜はとある人に連絡することに決めたのであった_

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