ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百二十八話

袋小路での一件の後も、#朔夜の中には妙な引っかかりが残っていた。

――確かに、あそこには“何かの気配”があった。

しかし、アキノリの妖魔レーダーが示した妖力反応とは裏腹に、現場には痕跡らしい痕跡が何一つ残っていなかった。

帰宅後、#朔夜は短くメッセージを打つ。

「妖力反応があったんですけど.....現場には何もいなかったです」

送り先は石動零。きさらぎ駅の件以来、最低限の情報共有を続けている相手だ。

すぐに既読がつき、短い返信が返ってくる。

『状況整理。場所は』

#朔夜はサクラニュータウンの袋小路について簡潔に説明した。

さらにアキノリの妖魔レーダーで反応を検知したことも付け加える。

数秒後、零さんからリンクが送られてきた。

『これ』

再生すると、映し出されたのは数年前の配信動画だった。

画面の中で騒がしく笑う配信者――チャラトミ。

派手なリアクションと無謀な行動で、危険地帯へ平然と踏み込んでいく様子が記録されている。

#朔夜は眉をひそめた。

「これが……?」

今のチャラトミとは、明らかに違う。

少なくとも#朔夜の知る彼は、危険を察すればすぐに引くタイプだった。

そこへ零さんのメッセージが重なる。

『昔の動画だ。』

#朔夜は指を止める。

「昔……?」

『こいつは昔、迷惑系としてかなり有名だった。トラブルも多いし、恨みを買ってるケースもある』

事実としては理解できる話だった。

しかし、それが今の証言にどこまで繋がるのかは別問題だ。

零は続ける。

『重要なのは“信用度”だ。この動画も、本人の発言も、全部そのままは扱えない』

つまり、チャラトミという存在そのものが“情報源として揺れている”ということだ。

#朔夜は小さく息を吐いた。

「参考にはなるけど、決定打にはならない、ってことですね」

『そういうことだ』

短く返答が来る。

一瞬、空気が重くなる。

偶然か、それとも過去と現在が重なっているのか。

#朔夜は思考を巡らせた。

[newpage]

さらにメッセージが届く。

『あと、お前の人脈の広さだが』

その一文に、#朔夜はわずかに目を細める。

『妖怪探偵団と繋がってるよな。普通に』

「……やっぱりバレてた」

完全に隠していたつもりはなかったが、積極的に話したこともない。

それでも零さんは、必要な情報だけを正確に拾い上げている。

#朔夜は短く返す。

「少し関わりがあるだけです」

その曖昧な返答に対し、零さんは追及しなかった。

代わりに、別の文が届く。

『チャラトミの証言も含めて、現場の状況は信用しすぎるな』

#朔夜は画面を見つめる。

言われているのは、誰かが嘘をついているという話ではない。

もっと曖昧で、もっと厄介なものだ。

――見えているものが、そのまま真実とは限らない。

『現時点では断定できない。少し調べるから待ってろ』

[newpage]

その言葉の後、少し間を置いて、最後の一文が送られてきた。

『他に隠してることはないよな?』

軽い調子にも見えるその一文に、妙な圧が混ざっている。

#朔夜はしばらく画面を見つめたまま、指を止めていた。

窓の外では夜が深まり、風がガラスをかすかに揺らす。

袋小路で感じた“何もいなかった違和感”が、ゆっくりと輪郭を持ちはじめていた。

#朔夜は小さく息を吐き、画面を閉じる。

その胸の奥で、まだ言語化できない何かだけが静かに残っていた。

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