ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百二十九話

秋の町には、色づき始めた木々とともに屋台の明かりが並び始めていた。

焼き芋の香ばしい匂い、甘い飴の光沢、祭囃子の軽やかな音色。

この秋祭りは、かつては収穫祭と呼ばれていたらしい。

今では地域イベントとして親しまれているが、その名残か、どこか神社との結びつきが強い空気が漂っていた。

#朔夜たちはまずサクラニュータウンの秋祭りを楽しんだあと、次の会場である月見台の秋祭りへと移動していた。

こちらの会場は規模が大きく、地元の学校や団体も多く参加している。

その一角で、獅子舞を披露する予定の部活が準備を進めていた。

だが、開始時間が迫る中で問題が起きていた。

「まだ来てない部員がいるんです……」

引率していた社会科の教師は、時計を見ながら焦りをにじませていた。

本番まで、あと十分もない。

#朔夜はその様子に気づき、自然と足を止めた。

「何かトラブルですか?」

教師は困ったように説明する。

獅子舞の演者の一部が、連絡のつかないまま到着していないという。

代役もすぐには見つからず、進行は完全に止まりかけていた。

そのとき、#朔夜は近くの控室に置かれた衣装箱を見つけた。

あれなら。

巫女装束のような衣装と、神楽鈴が並んでいた。

ほんの一瞬だけ考えたあと、#朔夜は言った。

「時間稼ぎなら、できます」

教師が驚いた顔をする。

#朔夜は静かに続ける。

「神楽舞なら、少しだけなら」

もともと正式な舞手ではないが、形だけならできる。

今必要なのは完成度ではなく、“場をつなぐこと”だった。

数分後、会場の進行は急遽変更された。

アナウンスが流れる。

『予定を変更し、神楽舞の奉納を先に行います』

[newpage]

観客の視線が舞台へと集まっていく。

ドラえもんたちは客席にいた。

気づけば、#朔夜の姿が見当たらない。

「またどっか行ったの……?」とのび太が呟く。

しかし次の瞬間、アナウンスが続く。

そして舞台袖から現れたのは、先ほどまでとはまるで違う雰囲気の#朔夜だった。

化粧が施され、巫女装束に身を包み、神楽鈴を手にしている。

一瞬、会場の空気が静まる。

そして音が鳴り始める。

太鼓と笛の音に合わせて、#朔夜はゆっくりと舞い始めた。

無駄のない所作。

揺れる袖。

鈴の音が空気を切るたびに、観客の視線が引き寄せられていく。

気づけば誰もが言葉を失っていた。

「……すごいな」

思わず漏れた声は、アキノリだった。

隣でトウマとケータも息を呑んでいる。

「普通に綺麗すぎるだろ……」

ナツメとしずかは、少し誇らしげに微笑んでいた。

「やっぱり似合うね」

「#朔夜くんは、そういうのが自然にできるから」

一方でアキノリ、トウマ、ケータは納得がいかない様子で首を傾げる。

「なんであんなに似合うんだよ……」

その疑問に、ナツメがさらりと答えた。

[chapter:「だって#朔夜、ボーイッシュ系の女子だし」]

一瞬の沈黙。

「「「……え?」」」

アキノリ、トウマ、ケータの三人が固まる。

のび太たちは当然のように頷いている。

「え、知らなかったの?」

「普通に女の子だよ?」

三人は顔を見合わせたまま、固まっていた。

これまでの接し方を思い返すほどに、妙な気恥ずかしさがこみ上げてくる。

舞台の上では、朔夜の舞が静かに終盤へと向かっていた。

観客の拍手が広がる。

その音に包まれながら、収穫祭は何事もなく進んでいく。

ただひとつ、空気のどこかだけが、少しだけ騒がしかった。

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