ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百三十二話

「武器を思い浮かべよ!」

スマートフォンの向こうから響いたのは、伊吹丸さんの声だった。

『武器……?』

#朔夜は思わず聞き返す。

「え?」

突然の言葉に頭が追いつかない。

電話の向こうでは、零さんも困惑したような声を漏らした。

『……は? 何言ってるんだ、伊吹丸。』

『黙っておれ。あやつなら出来る。』

「出来るって……何を?」

『.....確かにやりかねないな。あいつなら。』

意味が分からない。

武器を思い浮かべろと言われても、それでどうなるというのだ。

その時だった。

「#朔夜!」

背後からアキノリの叫び声が響く。

「妖力を集めるんだ!」

「妖力……?」

#朔夜は息を呑む。

武器。

蜘蛛糸を断ち切る武器。

弓ではない。

矢でもない。

この蜘蛛糸を切るには――刃。

ナイフ……いや。

もっと強く、もっと鋭い。

#朔夜の脳裏に、一振りの日本刀が浮かび上がる。

その瞬間だった。

胸元に下げた青い宝石が、じんわりと熱を帯びる。

「っ……!」

淡い青白い光が服の内側から漏れ始めた。

宝石は鼓動するように明滅し、その光は朔夜の右手へと集まっていく。

空気中へ無数の光の粒子が溢れ出した。

粒子は互いに引き寄せられ、細く、鋭く形を変えていく。

やがて。

#朔夜の掌には、一振りの小刀が握られていた。

透き通る青白い結晶で形作られた、美しい刃。

[newpage]

「これが……。」

伊吹丸さんが低く笑う。

『それじゃ。行け。』

#朔夜は頷いた。

迷っている暇はない。

真っ先に駆け寄ったのは、アキノリたち妖怪探偵団だった。

「離れて!」

結晶の刃を蜘蛛糸へ振り下ろす。

ザシュッ!

これまで何をしても傷一つ付かなかった蜘蛛糸が、鮮やかに切り裂かれる。

「切れた!」

アキノリが驚きの声を上げる。

一本。

二本。

三本。

#朔夜は次々と繭を切っていく。

ケータ。

トウマ。

ナツメ。

トウマ.。

仲間たちが次々と解放されていく。

その度に、#朔夜の呼吸は荒くなっていった。

「はぁ……はぁ……。」

額から汗が滴る。

視界が揺れる。

それでも刃を握る手だけは緩めない。

「あと二人……!」

視線の先には、巨大な繭。

酒呑童子と洞潔が囚われている。

#朔夜は足を踏み出した。

「今助け――」

その瞬間だった。

パキッ。

乾いた音が響く。

「……え?」

小刀の刀身に一本の亀裂が走った。

嫌な予感が胸をよぎる。

「お願い……!」

もう一度振り上げる。

だが。

パリン――。

澄んだ音と共に、結晶の刃は粉々に砕け散った。

無数の光の粒となり、夕暮れの空へ溶けるように消えていく。

#朔夜は呆然と立ち尽くした。

「そんな……。」

もう、刃はどこにもない。

酒呑童子の繭は微動だにしない。

中では未だに意識を失っているのか、反応はなかった。

しかし。

「……十分だ。」

低い声が聞こえた。

繭の中。

洞潔だった。

呼吸は浅い。

それでも意識だけは辛うじて保っているらしい。

「無理をするな。」

#朔夜は繭へ駆け寄った。

「まだ助けられます!」

「いや。」

洞潔は静かに首を振る。

「その刃では……ここまでだ。」

#朔夜は拳を握り締める。

悔しい。

あと少しだった。

あと少しで届いたはずなのに。

洞潔は#朔夜を見つめた。

「よく……妖怪探偵団を救った。」

短い言葉だった。

だが、その声音には確かな賞賛が込められていた。

「聞け。」

「……はい。」

「この蜘蛛糸は……並の武器では断てぬ。」

呼吸を整えながら続ける。

「断ち切れるのは……宝剣殿に眠る妖聖剣。」

#朔夜たちは息を呑んだ。

「名を……ゲンブ法典斧。」

その名が、静かに境内へ響く。

「それならば…もしかしすると…」

アキノリが目を見開く。

「妖聖剣……!」

「宝剣殿へ向かえ。」

洞潔は静かに告げた。

「我らのことは……案ずるな。」

「でも……!」

「急ぐのだ。」

その一言には、有無を言わせぬ重みがあった。

#朔夜は何か言おうとして――

急に膝から力が抜けた。

「っ……!」

視界が大きく揺れる。

宝石の光は既に消え失せている。

全身から力が抜け、立っていることすらできない。

[newpage]

「朔夜!」

ナツメが駆け寄る。

アキノリも慌てて支える。

「しっかりしろ!」

#朔夜はかすかに微笑んだ。

「……よかった。」

仲間たちは助かった。

その安堵だけを胸に。

ゆっくりと瞼を閉じる。

意識は深い闇へ沈んでいった。

その場に残された者たちは、それぞれ胸に新たな決意を抱く。

目指すべき場所は、一つ。

――宝剣殿。

そこに眠る妖聖剣・ゲンブ法典斧だけが、この絶望を断ち切る唯一の希望だった。

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