ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百三十四話

畳の香りが鼻をくすぐった。

重たい瞼をゆっくりと開くと、見慣れない木目の天井が視界に映る。

「……ここは……?」

身体を起こそうとした瞬間、全身を襲う気怠さに思わず顔をしかめた。

あのチカラを使い過ぎた反動だろう。

「……っ」

ゆっくりと周囲を見渡す。

どうやら神社の座敷らしい。

自分は布団へ寝かされていたようだ。

そして、すぐ隣にも布団が敷かれている。

「アヤメ……」

静かな寝息を立てる少女の顔は青白い。

あの場面が脳裏をよぎる。

女郎蜘蛛。

酒呑童子。

洞潔。

白い繭。

宝石。

結晶の小刀。

そして――。

「そうだ!」

勢いよく立ち上がる。

ふらりと身体が揺れるが、柱へ手を付き何とか堪えた。

障子の向こうから話し声が聞こえる。

自然と足はそちらへ向かっていた。

 

 

障子を開けると、そこには見知った顔が揃っていた。

「#朔夜!」

真っ先に声を上げたのはナツメだった。

ナツメ、アキノリ、ケータ、トウマ。

妖怪探偵団の面々。

さらに。

「目が覚めたか。」

静かに振り返った少年。

その肩には小さな目玉の妖怪。

隣には猫娘さんも立っている。

「鬼太郎さん……」

あの一件以来の再会だった。

部屋の空気は重い。

誰一人笑っていない。

「無理に動くな。」

鬼太郎が静かに言う。

「でも……!」

#朔夜は思わず言葉を遮った。

「アヤメは!」

[newpage]

その問いに答えたのは目玉おやじだった。

「……あまり時間がない。」

「!」

「女郎蜘蛛……いや、土蜘蛛の蜘蛛糸は生命力を少しずつ吸い続ける。」

部屋が静まり返る。

「このままでは……」

目玉おやじはゆっくり目を閉じた。

「一日も保つまい。」

「…………」

頭が真っ白になる。

一日。

たった一日。

#朔夜は何も言えなかった。

気付けば身体が勝手に動いていた。

「そんなの!」

座敷から飛び出そうとした瞬間。

「落ち着け。」

鬼太郎さんが肩を掴む。

「離してください!」

「今飛び出しても何も変わらない。」

「でも!」

「話を聞け。」

静かな声だった。

だが、不思議と逆らえなかった。

#朔夜は悔しそうに拳を握り締める。

 

 

「#朔夜が倒れた後。」

トウマが静かに話し始めた。

「突然、大きな炎の鳥が現れた。」

「炎の……鳥?」

「朱雀だ。」

アキノリが頷く。

「俺もビックリした。」

「朱雀は俺達をまとめて有星神社まで運んでくれた。」

「その直後に鬼太郎さん達が来たんだ。」

ナツメが続ける。

「ニュースになってたらしいよ。」

「ニュース……」

「元町タワー、大騒ぎだからな。」

ケータが苦笑する。

「SNSもすごいことになってる。」

「猫娘さんが知らせてくれたんです。」

トウマが鬼太郎さん達を見る。

猫娘さんは腕を組んだまま軽く頷いた。

「現場へ向かったけど、鬼太郎の指鉄砲でも蜘蛛糸は切れなかった。」

その言葉に朔夜は驚く。

鬼太郎さんですら駄目だった。

あの蜘蛛糸は、それほどまでに厄介なのか。

「だから事情を聞こうと思って、ここへ来たの。」

猫娘さんが説明を終えた、その時だった。

「……。」

それまで黙っていたオババが、ふいに立ち上がる。

皺だらけの顔が険しくなる。

[newpage]

「どうしたの?」

アキノリが尋ねる。

オババはゆっくりと神社の入口へ視線を向けた。

「結界に何かが触れた。」

一同の空気が張り詰める。

「何者かがこちらへ向かっておる。」

「敵!?」

ナツメが息を呑む。

オババは杖を掴んだ。

「確かめてくる。」

「オババ!」

アキノリが慌てて追い掛ける。

「僕も!」

#朔夜も後を追った。

 

 

神社の石段。

そこには一人の青年が肩で息をしていた。

「はぁ……はぁ……。」

腰には刀。

「零さん!」

#朔夜が思わず叫ぶ。

「……#朔夜。」

石動零は苦笑した。

「やっと着いた……。」

アキノリが警戒する。

「誰だ。」

鬼を見たオババの目が鋭く細まる。

伊吹丸さんもまた神社を見回した。

「ほう……結界か。」

互いの空気が一変する。

アキノリは札へ手を伸ばす。

零さんは刀の柄へ。

オババの静かな威圧が膨れ上がる。

「待って!」

#朔夜が二人の間へ飛び込んだ。

「敵じゃない!」

「#朔夜?」

「零さんは味方です!」

その瞬間だった。

「何事だ。」

鬼太郎さん達が追い付いてくる。

そして。

[newpage]

「……。」

鬼太郎さんの表情が明らかに曇った。

猫娘さんも眉をひそめる。

目玉おやじさんは小さくため息をつく。

「お前さんか……。」

「……。」

零さんも無言のまま鬼太郎を見つめる。

その空気だけで分かった。

この人達……知り合いなんだ。)

しかも。

あんまり仲は良くなさそう。)

そう思ったが、今は聞いている場合ではない。

#朔夜はぐっと唇を噛み締めた。

今、一番大切なのは――。

アヤメを助けること。

その一点だけだった。

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