ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百三十五話

重苦しい空気のまま、一行は再び座敷へ戻っていた。

零さんは無言でアヤメの傍らへ膝をつく。

首筋へそっと手を当て、ゆっくりと瞳を閉じた。

部屋に静寂が流れる。

やがて零さんは小さく息を吐いた。

「……予想以上に深い。」

その一言だけで、場の空気はさらに重くなる。

「助かるのか?」

アキノリが食い入るように尋ねる。

零さんは静かに首を横へ振った。

「このままなら、一日も持たない。」

誰も口を開かない。

「ただし。」

零さんはアヤメから手を離した。

「生命力を繋ぐ儀式ならできる。」

全員の視線が零へ集まる。

「儀式が成功すれば、三日ほどは保たせられる。」

「三日……。」

#朔夜はその数字を繰り返した。

「その間に土蜘蛛を倒し、蜘蛛糸を断ち切る。」

零さんは続ける。

「それしかない。」

オババも静かに頷いた。

「儂も同じ考えじゃ。」

鬼太郎が腕を組む。

「儀式には何人必要なんだ。」

「俺一人では無理だ。」

零さんはオババを見る。

「妖力を扱える者がもう一人必要だ。」

「なら儂がやろう。」

オババは即答した。

「儀式は儂ら二人で行う。」

目玉おやじさんが小さく頷く。

「これで命は繋げられる。」

「問題はその後だ。」

洞潔の言葉を思い出したようにアキノリが呟く。

[newpage]

「ゲンブ法典斧……。」

部屋の空気が張り詰めた。

「宝剣殿にある妖聖剣。」

零さんが静かに言う。

「蜘蛛糸を断ち切れる唯一の武器だ。」

「そこへ行くしかない。」

鬼太郎さんが言い切った。

「しかし。」

猫娘さんが眉をひそめる。

「土蜘蛛が黙って見送るとは思えないわ。」

その通りだった。

あれほどの力を持つ妖怪である。

宝剣殿へ向かうことを知れば、必ず妨害してくる。

「だから。」

鬼太郎さんは立ち上がった。

「僕達が時間を稼ぐ。」

「鬼太郎さん達が?」

ナツメが驚く。

「土蜘蛛を引き付ける。」

猫娘さんも続く。

「その間に宝剣殿へ向かって。」

#朔夜は鬼太郎を見る。

「ありがとうございます。」

「礼はいい。」

鬼太郎は静かに首を振った。

「助けたい命がある。」

「それだけだ。」

その一言に、#朔夜は深く頭を下げた。

 

 

準備はすぐに始まった。

必要最低限の荷物。

妖怪ウォッチ。

護符。

水筒。

それぞれが慌ただしく動き始める。

やがて。

境内へ巨大な炎の鳥が舞い降りた。

朱雀。

燃え盛る翼を広げ、その姿は神々しい。

「来たか。」

アキノリが呟く。

朱雀は一声鳴くと、その場へしゃがみ込んだ。

「乗れということか。」

トウマが苦笑する。

「よし。」

#朔夜は振り返る。

座敷では零さんとオババが既に儀式の準備を始めていた。

鬼太郎さん達も出発の準備を進めている。

アヤメは静かに眠り続けていた。

「必ず助ける。」

小さく呟き、朱雀の背へ飛び乗る。

妖怪探偵団も続く。

朱雀は大きく翼を広げた。

熱風が境内を吹き抜ける。

次の瞬間。

炎の軌跡を描きながら、大空へ舞い上がった。

[newpage]

その姿を。

少し離れた屋根の上から、[[rb:梟 > ふくろう]]が見つめていた。

酒呑童子の使い。

誰にも気付かれることなく。

「…………。」

朱雀は空の彼方へ消えていく。

梟は静かに目を伏せた。

(主様は……まだ繭の中。)

(洞潔様も。)

何もできなかった。

何も守れなかった。

監視しかできない己。

敵である妖怪探偵団へ助けを求めねばならなかった現実。

胸の奥が黒く濁る。

(私に……もっと力があれば。)

その時だった。

「ほう。」

背後から声が響く。

梟は素早く振り返った。

そこには一人の人物が立っていた。

夕日に照らされる赤い髪。

穏やかな笑み。

見覚えはない。

「誰だ。」

警戒を隠さず問う。

赤髪の人物は微笑んだまま答えない。

代わりに。

『わしなら。』

低く、年老いた声が響いた。

梟は目を見開く。

声は。

目の前の人物ではない。

胸元。

銀色のロケットネックレスから聞こえていた。

『お前の価値を上げてやれる。』

赤髪の人物は困ったように肩を竦める。

「……申し訳ありません。」

「この方は、思ったことをすぐ口にされるので。」

梟は黙ったまま二人を見つめる。

夕日が沈み始める。

新たな闇は、静かに幕を開けようとしていた。

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